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きょうの社説 2011年9月20日
◎「買い物弱者」支援 「民」の力で持続させたい
「買い物弱者」の生活を支援する官民共同の取り組みが石川、富山県で活発になってい
る。9月に入って金沢市が「買い物利便性向上スタートアップ事業」と銘打った支援事業を社会実験として開始し、富山県の補助を受けた民間事業者の「高齢者向け買い物代行サービス」が高岡市でスタートしている。これらの取り組みが国、自治体の補助事業や社会実験の段階にとどまらず、新たなビジネスとして持続することが望まれる。歩いて行ける地域の個人商店が減少し、日常の買い物が困難な高齢者を買い物弱者、あ るいは「買い物難民」などと呼ぶようになっている。高齢者の生活意識調査などから、経済産業省は買い物弱者を約600万人と推計しているが、現状のままではその人数は増えるばかりである。 小売業界の変化に伴う高齢者の不便解消は社会的な要請であり、スーパーやコンビニチ ェーンなどは、インターネットで注文を取り宅配するサービスや移動販売を拡大させている。福祉政策や地域の商業活性化策の観点から行政も後押ししており、金沢市の支援事業では、地域の商店街や市民グループが宅配事業、買い物代行サービスなどを行う。 富山市は買い物弱者の生活を応援する団体に助成金を出す制度を設けており、七尾市は 国のモデル事業として、地元の企業グループと共同で、電化製品修理など高齢世帯の困り事に応える事業に乗り出す計画である。 こうした高齢者の生活支援事業は、金沢市が社会実験と位置づけるように、まだ試行錯 誤の面もある。特に地方では採算面で継続が難しく、せっかく補助金制度を設けても応募する事業者があまりいないという例もみられる。 しかし、買い物弱者に対するサービス事業の主体は、やはり民間である。補助金がなく なった途端に事業が止まるといったことがないよう、創意工夫で持続力をつけたい。高齢者の生活支援は公共的な性格も持つ大切な事業であり、企業の新たなビジネス、あるいは地域住民主体のいわゆるコミュニティービジネスとして定着するよう努力してほしい。
◎スポーツマスターズ 「生涯現役」シニアに刺激
全国から7800人余が参加して、石川県内で開催されている「日本スポーツマスター
ズ2011石川大会」は、きょう閉幕する。シニア世代による高度なレベルの競い合いによって、いくつになっても競技力を高める真剣さとスポーツの楽しさを県民に示した。参加者は競技志向の高い中高年層で、地域スポーツのけん引役となっている人も多い。 国際大会などで活躍したトップアスリートたちも第2の活躍の舞台として参加しており、「生涯現役」を目指す参加者たちの熱戦が刺激となって、シニア世代の生涯スポーツの裾野が広がることを期待したい。 日本スポーツマスターズは中高年層が競技力を競う最高峰の大会といわれ、石川大会は 県内各会場で13競技が実施された。石川国体20周年記念事業でもあり、当時の選手を含めて、トレーニングを重ねてきたシニアたちが成果を競った。勝負や記録にこだわって力を発揮することが、生きがいや励み、体力づくりにもつながっているのだろう。今後も自らの目標を追求し、地域スポーツのリーダーとして活躍してほしい。スポーツに打ち込む姿は生涯スポーツ実践のよき見本となり、同世代の人々や後輩たちがスポーツに関心を寄せるきっかけにもなるだろう。 今大会のスローガンが「とどけよう スポーツの力を東北へ!」であったように、今年 はスポーツを通じて東日本大震災の被災者を励まそうという取り組みが目立ち、心身の健康に関わるスポーツの役割の大きさが再認識された。生涯スポーツの普及に向け、幅広い層が競技力向上や健康、交流促進などの多様なスポーツの場に参加できる一層の環境整備が求められている。 全国から過去最多の参加者を迎えた今大会は、石川の文化や自然のよさを発信する機会 でもあった。スポーツを通じた交流と各地のもてなしが石川ファンを増やし、リピーターにつなげることになる。北陸新幹線金沢開業を見据えて、だれもが石川の魅力に触れることができる受け入れ体制を整えていきたい。
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