「それでは、ミスヴァリエール、召還の儀式を始めてください。」
サモンサーヴァントに何度も失敗してしまう私。その失敗が100を数えた頃には、私の心の大半を絶望が支配していた。
私に・・、魔法はつかえないの?
<爆音>
いや・・・!認めたくない!
<爆音>
お願いだから!
<爆音>
私が、
<爆音>
貴族で
<爆音>
ある為に!
<爆音>
あたりに舞いおこるのは土埃と砂礫のみ。
サモン・サーヴァントすら成功できない私、これじゃあ、本当にゼロのルイズじゃない・・。
自嘲する、口の端が吊り上る。
・・・まだ、大丈夫、自分を笑えるだけの余裕がある、諦めるには・・、まだ早すぎる!
もう、贅沢なんて言わない、ミミズでも、ムカデでもなんでもいい!神様・・・!お願い・・・!!
私は神にすがるような気持ちで呪文を唱えつづける。
この願いをかなえてくれるというのなら、プリミル様でなくともいい。
邪神だろうが、異世界の神だろうが・・・誰でもいいから、私の願いをきいて!!
私の心の叫びは、知らぬ間にだれも聞いた事のない呪文をとなえていた。
「宇宙の果ての何処かにいる私の使い魔よ! 神聖でなくとも、美しくなくとも、強力でなくてもいい!私は・・心より求め訴える、わが導きに答えて!!サモンサーヴァント」
爆音・・・・
・・・しかし、私の直感はこういっていた。「成功した」と・・。
爆煙が消え去った後、そこには、一人の男が立っていた。
プリミル様か、あるいは何処の世界の神かはわからないが、私の願いを聞き届けてくれた!
私は思わず泣き出しそうになってしまうのを必死に堪える。
「やーい、ルイズが平民を召還したぞ!」
「おい、ルイズ!いくらサモン・サーヴァントに成功する自身が無いからって、平民をつれてくるなよな。」
同級生達の野次が聞こえる、
「ミス・ヴァリエール、解っているとは思いますが、春の召還は神聖な儀式です、やり直すわけにはいきませんよ」
コルベールに釘をさされる。
しかし、私はやり直す気など毛頭無かった。同級生の野次も全く気にならなかった。
なぜ?もう一度やっても成功する自身がないから?・・・いや、違う、正直に言おう。
目の前の男の、とても・・・、とても悲しそうな、それでいてなにか辛い事を耐えているような深い瞳に、私は一目で惹かれてしまったのだ。
一目惚れとは・・、違うと思う。だってあの人は私の使い魔になる人なのだから。
でも、これからきっと、この目の前の男と長い人生を歩むであろう事に、不満や不快感などはまったく感じていなかった。
だから私は、いつもより少しだけ素直に、彼に語りかけることができた。
「初めまして、私はルイズ、ルイズ・ヴァリエール。突然召還してごめんなさいね。今日から私、あなたの主人になるのよ・・・。よろしくね・・。」
男の背がずいぶん高いせいで、どうしても見上げる形になってしまう。わたしは、かれの首に腕を回す、契約の口付けを交わす為に・・・。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
唇を近づける、ドキドキしているのはなぜだろう、これは使い間の儀式、只の儀式だと、自分に言い聞かせる。
心臓の鼓動が目の前の男に聞こえているような気がして、恥ずかしさに顔が熱くなる
そして・・・、唇と唇が触れ合おうとした、その瞬間・・・・
「シャーーーーッ」
まるで・・、蛇口をひねったような音と共に、使い魔になるはずの男の口から、ありえない量の白い液体が私の顔に降り注いだ。
・・・あ・・、これ、牛乳だわ・・・。
恐らく、このトリスタンの長い歴史の中でもワースト3に入るであろう間接キスをした私。
そしてその私を悲しそうに、とても申し訳なさそうに見つめる男。
これが私と、ONちゃんこと安田の、初めての出会いだった。
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ルイズの願いを聞き届けた異世界の神とは笑いの神でした。
黄色い物体が召還されると思っていたみなさん、ごめんなさい。召還されたのは、中身でした。対決列島収録中、岩手県は小岩井牧場から召還されてしまったようです。
後編は明日投稿。後半で、黄色いアンチキショウになります。
まあ・・、その・・いろいろ言いたい事もあるとは思うが、夏だからということで、許して欲しい。