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[29265] 【ネタ・完結】どうでしょう班がハンター試験で試験官をするそうです。 【HxH × 水曜どうでしょう】
Name: あぶさん◆5d9fd2e7 ID:9f632b24
Date: 2011/09/16 20:43


水曜どうでしょうって見たことないんだよね?0Nちゃんってだれ?という方々はごめんなさい。読んでも意味がわからないネタばかりです。

ハンターとゼロ魔の二本立てです。

ハンター試験の方にはいつもの4人が、

ルイズさんの方には黄色いアイツがでてきます。




[29265] 【一発ネタ】ルイズさんが黄色いアンチキショウを召還しました。(前)【水曜どうでしょう×ゼロ魔】
Name: あぶさん◆5d9fd2e7 ID:9f632b24
Date: 2011/08/13 10:04




「それでは、ミスヴァリエール、召還の儀式を始めてください。」








サモンサーヴァントに何度も失敗してしまう私。その失敗が100を数えた頃には、私の心の大半を絶望が支配していた。


私に・・、魔法はつかえないの?


<爆音>


いや・・・!認めたくない!


<爆音>


お願いだから!


<爆音>


私が、


<爆音>


貴族で


<爆音>


ある為に!


<爆音>


あたりに舞いおこるのは土埃と砂礫のみ。


サモン・サーヴァントすら成功できない私、これじゃあ、本当にゼロのルイズじゃない・・。


自嘲する、口の端が吊り上る。


・・・まだ、大丈夫、自分を笑えるだけの余裕がある、諦めるには・・、まだ早すぎる!


もう、贅沢なんて言わない、ミミズでも、ムカデでもなんでもいい!神様・・・!お願い・・・!!


私は神にすがるような気持ちで呪文を唱えつづける。


この願いをかなえてくれるというのなら、プリミル様でなくともいい。


邪神だろうが、異世界の神だろうが・・・誰でもいいから、私の願いをきいて!!


私の心の叫びは、知らぬ間にだれも聞いた事のない呪文をとなえていた。


「宇宙の果ての何処かにいる私の使い魔よ! 神聖でなくとも、美しくなくとも、強力でなくてもいい!私は・・心より求め訴える、わが導きに答えて!!サモンサーヴァント」


爆音・・・・


・・・しかし、私の直感はこういっていた。「成功した」と・・。


爆煙が消え去った後、そこには、一人の男が立っていた。


プリミル様か、あるいは何処の世界の神かはわからないが、私の願いを聞き届けてくれた!


私は思わず泣き出しそうになってしまうのを必死に堪える。


「やーい、ルイズが平民を召還したぞ!」


「おい、ルイズ!いくらサモン・サーヴァントに成功する自身が無いからって、平民をつれてくるなよな。」


同級生達の野次が聞こえる、


「ミス・ヴァリエール、解っているとは思いますが、春の召還は神聖な儀式です、やり直すわけにはいきませんよ」


コルベールに釘をさされる。


しかし、私はやり直す気など毛頭無かった。同級生の野次も全く気にならなかった。


なぜ?もう一度やっても成功する自身がないから?・・・いや、違う、正直に言おう。


目の前の男の、とても・・・、とても悲しそうな、それでいてなにか辛い事を耐えているような深い瞳に、私は一目で惹かれてしまったのだ。


一目惚れとは・・、違うと思う。だってあの人は私の使い魔になる人なのだから。


でも、これからきっと、この目の前の男と長い人生を歩むであろう事に、不満や不快感などはまったく感じていなかった。


だから私は、いつもより少しだけ素直に、彼に語りかけることができた。


「初めまして、私はルイズ、ルイズ・ヴァリエール。突然召還してごめんなさいね。今日から私、あなたの主人になるのよ・・・。よろしくね・・。」


男の背がずいぶん高いせいで、どうしても見上げる形になってしまう。わたしは、かれの首に腕を回す、契約の口付けを交わす為に・・・。


「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」


唇を近づける、ドキドキしているのはなぜだろう、これは使い間の儀式、只の儀式だと、自分に言い聞かせる。


心臓の鼓動が目の前の男に聞こえているような気がして、恥ずかしさに顔が熱くなる


そして・・・、唇と唇が触れ合おうとした、その瞬間・・・・













「シャーーーーッ」












まるで・・、蛇口をひねったような音と共に、使い魔になるはずの男の口から、ありえない量の白い液体が私の顔に降り注いだ。




・・・あ・・、これ、牛乳だわ・・・。






恐らく、このトリスタンの長い歴史の中でもワースト3に入るであろう間接キスをした私。


そしてその私を悲しそうに、とても申し訳なさそうに見つめる男。


これが私と、ONちゃんこと安田の、初めての出会いだった。



**************************************


ルイズの願いを聞き届けた異世界の神とは笑いの神でした。




黄色い物体が召還されると思っていたみなさん、ごめんなさい。召還されたのは、中身でした。対決列島収録中、岩手県は小岩井牧場から召還されてしまったようです。


後編は明日投稿。後半で、黄色いアンチキショウになります。


まあ・・、その・・いろいろ言いたい事もあるとは思うが、夏だからということで、許して欲しい。



[29265] 【一発ネタ】ルイズさんが黄色いアンチキショウを召還しました。(後)【水曜どうでしょう×ゼロ魔】
Name: あぶさん◆5d9fd2e7 ID:9f632b24
Date: 2011/08/13 10:07




【対ギーシュ戦)





「なんですって?安田がギーシュと決闘ですって?」


キュルケによってもたらされたその知らせは、私を驚かせるには十分だった。


バカで、グズで、不器用で、何もできなくて、本当に役立たずな使い魔だけど、使い魔は使い魔、死なれてしまっては目覚めが悪い、


私は、急ぎ、ヴェストリの広場へと向かうことにした。












・・・・・・・・・・・・・。




「・・・で、この大量の牛乳は一体何なのかしら?」


「あなたの使い魔が提案した。ギーシュが一杯牛乳を飲めば、あなたの使い魔は10杯飲む、つまり、10倍のハンデ戦。あなたの使い魔が勝ったらギーシュはメイドに謝る、まければ、ギーシュの頼みをなんでも一つ願いを聞くらしい。」


青髪の少女(・・タバサだったかしら)がわたしの疑問に答える。


「ちょっと安田!!なに勝手な約束してんのよ!あなたは私の使い魔なのよ!!負けたら、ギーシュの願いを何でも聞くって、あんたに一体何ができんのよ!!・・というか、なんで牛乳早飲み対決なのよ!もっとましな勝負しなさいよ!!」


私の声に安田は振り返り無言でグッと親指を立ててくる。


「・・って、なんでそんなに自信満々なの!?あんたのソレは不安しか煽らないのよ!!いいからとっとと謝りなさい!ついでに生まれてきたことにも謝りなさい!!」」















「それでは、牛乳早のみ対決、制限時間は3分。よーい、初め」



・・・なにはともあれ、ギーシュと安田の牛乳早飲み対決は始まった。

いつの間にかタバサが審判を引き受けていた。タバサの合図と共にギーシュと安田が牛乳へと手を伸ばす、牛乳を手に取るまでは、全く同じタイミングだったのだが・・・・


「・・・な!?早い!!」


周りのギャラリー達が一斉に驚く、私も安田が牛乳を飲むのは初めてみたが、そのスピードは異常だった。もはや人間業だとは思えない、なんで牛乳飲むときのときの音がゴクゴクではなく、「カポンッ」なのだろうか、それはもう飲むというよりも、安田というバケツに牛乳を入れているようにしかみえない。


しかし・・・・、


「いくら早くともハンデ10倍は無理、ギーシュはもう一杯飲み終えた。」


タバサが冷静に戦況を分析する。そう、いくらなんでもハンデを与えすぎた。もしハンデが5倍だったら、いい勝負ができたのかもしれないけれど・・・。


7杯を越えたあたりで、目に見えてスピードが遅くなる安田、




・・・そして、10杯目を飲み終えたとき、あの、最高に悲しい目でこちらをみつめてきた。






あー・・、あれは、・・・やっちゃうわね・・・。





私にはもう、この後に起こる惨劇が理解できていた。


鼻から、ぴゅるっと牛乳が出たかと思うと、後ろを向いた安田。・・・そして、





「シャーーーーーッ」





やはり、水道の蛇口をひねったような音とともに、安田は、今飲んだばかりの牛乳を嘔吐する。


目の前でありえない勢いの嘔吐を見せられ、ドン引きのギーシュ。文字通り2,3歩後ずさっている。そりゃあ、靴が安田の吐いた牛乳で汚れてしまうのが嫌な気持ちはわかるが・・


「あんたはまだいいわよ!!わたしはあれを顔面にぶっかけられたのよ、わかってんの?」


私は召還の儀式のアレ以来牛乳が飲めなくなっていた。私の幾分控えめな胸を育てる最後の希望だったというのに・・・。





「・・・っう、・・な、なんというか、とりあえず、勝負はボクの勝ちということで・・・」



勝ち名乗りにも覇気がないギーシュ、そりゃそうね、あんな後味悪い勝ちはないわ。




だれもが、ギーシュの勝ちをなんともいえない表情で見ていたときに、嘔吐し終えた安田が動いた。そして・・、11杯目の牛乳をつかんだ。




「・・な!?君は負けたはずだろう!!」


「いいえ、ルールでは吐いたら負けとは決めていなかった、この勝負まだ終わりじゃないわ」


タバサが冷静にルールの穴を指摘する。


「そんなルール決めておくわけないでしょ!!!ここは貴族学院なのよ!!なんで牛乳吐いたり、それを頭からぶっかけられなきゃなんないのよ!!!」


私の言葉に、クラスメートの皆がうんうんと頷くが、安田の手はとまらない。既に15杯目の牛乳にその手を伸ばしていた。


「・・・な、くそっ!・・わかった、飲めばいいんだろう!飲めば!!」


ギーシュも2杯目のコップに手を伸ばす。しかし、その動作には明らかにためらいが見られる。・・まあ、飲みすぎてアレと同じ醜態をさらすことになったら、ガールフレンドどころか、一生嫁がこないかもしれないものね。


そして、安田が20杯目を、ギーシュが2杯目の牛乳を飲み終えたとき、再び




「シャーーーーッ」




牛乳が大地に還っていった・・。




「・・ま・・、まだまだ飲めます・・」




もはや、ドン引きという言葉する生易しい空気のなか、安田は21杯目の牛乳に手をのばす。



「アンタそれ牛乳飲んでないじゃない!牛乳がアンタを経てるだけよ!アンタを経て大地に還ってるだけじゃない!!謝りなさい、お百姓さんとか、乳牛とかに全力であやまりなさい!!」



周りの人間は、脅威の人間ポンプを、終わりのない永久機関をただただ、みつめていることしかできなかった。










・・・そして、結果は、




「ギーシュ4杯、ルイズの使い魔41杯、この勝負、ルイズの使い魔の勝ち」


タバサがやはり抑揚の無い声で判定を下す。他の全員はただ声を失うのみだった。体中のいろんな穴から牛乳を垂れ流している私の使い魔。その顔は哀れというか、惨めというか、とても悲しそうだった。


今、安田の足元にはまっしろな巨大な水溜りができていた。



「あ・・・、あの・・・、たすけてくれて・・?・・ありがとうございます・・、これで、顔でも拭いてください」



安田から5メートル以上離れたところからタオルを投げるメイド、しかしタオルは安田の元まで届かず、ぽちゃんとミルクの水溜りの中に落ちてしまう。


そのタオルを、やはり最高に悲しそうな目で見つめる安田。


メイドは「あ・・、その・・、新しいタオル、もってきますね」といって、どこかに走っていった。


ギーシュは、「あ・・、え・・、えーと、そうだ!彼女に謝れって言ってたよね、それじゃあ!」と言って、メイドが走っていった方へと同じく消えていった。


ギャラリー達は、「そ・・、そういえば、授業始まるね・・」


といいながら、やはりそそくさと帰っていった。





静寂の中、一人水溜りに佇む安田に私は声をかける。




「ねえ、安田」


「・・なんでしょうか、ルイズさん」


「ちゃんと後片付けしときなさいよ」


「・・・はい・・・」


そのまま振り返り去っていく私、後ろからくぐもった嗚咽のようなものが聞こえた気がした。













【フーケ戦】






「あ・・、あなたは、秘書のミス・ロングビル!まさかあなたが!!」


「そう、学園の宝物庫から、『黄色い悪魔』を盗み出したのはこの私、土くれのフーケよ!!」


ゴーレムに気を取られ完全に油断していた私は、フーケに人質にとられてしまった。タバサもキュルケも動けない、安田にはハナから期待していない


「それで、なぜあなたは正体を明かしたの?」


タバサがフーケに尋ねる、・・・確かに、ここまで正体を隠しておいて、今明かすのはおかしい。あるいは、ここにいる全員を殺す気なのか・・。


死が迫っている現実に冷や汗がながれる。いや、それよりも足手まといでしかない自分が歯がゆい、唇をかみ締める私。キュルケもタバサも杖を握り締める。


「・・フンッ、そんなに警戒しなくてもいいじゃないか、わたしが正体を現したのはね・・・、
使い魔さん。あなた、この黄色い悪魔を復活させる方法、しっているんでしょう?」


「な・・!?」


安田のことは最近視界から無意識に外そうとしていたので、まったく気づいていなかったが、どうやらこの「黄色い悪魔」を知っているそぶりを見せていたらしい。


あの安田が「黄色い悪魔の抜け殻」とよばれているこれを復活させることができるというの!?


ただの、グズで、ノロマで、不器用な、役立たずの人間ポンプじゃなかったの!?



「・・・はい、知っています」



私の驚愕をよそに、安田はうなずいた。



「ふふっ、素直な人は好きよ。それじゃあ、復活させてもらおうかしら、黄色い悪魔をね。・・あ、もちろん、私の命令には従うようにするのよ。」



安田はもう一度うなずき、黄色い悪魔の抜け殻へと向かう、そして






ジーーーーッ






確かにチャックをあけるような、音がした。そのあと、






ジーーーーッ






またチャックのしまる音、
それから、





シューーーーッ






という音がし始めたかとおもうと、その体がゆっくりとふくらんでいった。


程なくして、それがまん丸に膨らんだとき、その黄色い悪魔、もとい黄色い物体は、






くるくるくる、ビシッ






三回廻って、ポーズをきめた。


あっけにとられる私たちをよそに、黄色い悪魔は、パタパタと手をうごかす。可愛いらしい仕草ではあるのだが、なぜか猛烈に腹立たしい。





・・・あー、そういえば・・、





私はふと思い当たる事があり、安田(in黄色い物体)に尋ねる、


「・・・それ、ひょっとして、Onちゃん?」


召還の儀式のあと、安田のことをいろいろ訪ねたときに聞いた事があった。なんでも、安田の本職(?)は黄色いマスコットの中身だと。


Onちゃんは声を出さず、ぐむっと頷く(?)ことで正解だと答えた。



「あれが・・・Onちゃん!!」



タバサは目をキラキラ輝かせてOnちゃんを見ている、さすがマスコットキャラ、子供には受けがいい。


キュルケが控えめな足取りでこちらにやってくる。



「・・・ねえルイズ、正直聞きたくないんだけど、あれは・・」


「ええ、ただの着ぐるみよ。」


私たちのやりとりを聞いてがっくりとうな垂れる土くれのフーケ、わたしの拘束はいつの間にかとけていた。





安田・・・もといOnちゃんは、両足をひらきながら、ピロピロピローっと、手を振っている。タバサは先ほどから体育座りでOnちゃんの一挙一動に視線が釘付けだ。



「ねえ、フーケ」


「なんだい、ヴァリエール」


「ヤッちゃって」


「あいよ」


「パンッ」という音とともに、安田in Onちゃんはゴーレムの拳に潰された。



「お・・Onちゃーーーん!!!」



タバサの悲鳴をよそに、私たち3人は、学園への帰路へとつくのであった。


*******************************

終わりです。もう続きません。

Onちゃん in ハルケギニア、稼働時間はまさかの3分。





[29265] 【一発ネタ】どうでしょう班がハンター試験で試験官をするそうです。(一次試験) 【HxH × 水曜どうでしょう】
Name: あぶさん◆5d9fd2e7 ID:9f632b24
Date: 2011/08/20 08:47



「ステーキ定食弱火でじっくり」


ナビゲーターのキリコ(凶狸狐)が、店員に人差し指をたててこういった。

頷き、自然な流れで私達3人を奥の扉へと誘う店員。

キリコが振る手に、ゴンも大きくその手を振り返していた、私も軽く会釈を返すことにした。


ゴン、レオリオ、そして私ことクラピカのハンター試験は今始まった。





・・しかし、そのときはまだ、このハンター試験があんなにも恐ろしいものになるとは、私達の誰も、予想だにしていなかった・・。





奥の扉をぬけ、エレベーターで、地下に向かった私達が辿り着いたのは、酷く暗くて、大きな駐車場であった。



そこには・・・化け物がいた。




二つの光る目、低い唸るような不気味な音、巨大な胴体、頑丈な足回り。そう、それは・・・












長距離バスだった。








どうでしょう班がハンター試験で試験官をするそうです。

【ハンター×ハンター×水曜どうでしょう】





「オ・・、オイ・・、こ、このバスは・・・、まさか・・、今回の試験官はアイツラなのか!!?
冗談じゃねえ!新人潰しなんぞやってられるかよ!!俺は帰る、帰るぞ!!」


背丈の低い太った中年の男が、わめきながら、元来たエレベーターで地上へと戻っていった、彼の後を数人の男達が続いていった。


「ここにたどり着くだけでも大変な苦労だったろうに・・、惜しい事をするものだ。」


そう私は呟いたものの、あの男の残した言葉が気になっていた。


あの男は、「今回の試験官はアイツラなのか」確かにそういった。


彼はこの駐車場に停車している数台のバスをみて、試験官が何者であるかを悟った。そして恐らくは、ある程度の試験内容も・・、

その上で、自身ではこの試験に絶対に受かる見込みがない、あるいは試験を受ける上でのリスクが高すぎる。そう判断したからこそリタイアしたのだ。未だ試験が始まっていないにも関わらず。


もちろん、私は尻尾を巻いて逃げ出すつもりなど毛頭なかった。自分の全てを失ってでも、仲間の復讐を、蜘蛛への復讐を果たすと誓ったのだから・・・。



「へーえ、ハンター試験って、割とおもしろそうじゃん♪」


気がついたら銀髪で癖毛の少年が側に立っていた、まるで、テレビゲームでも始めるかのような軽い口調だ。


「うん・・。なんだかオレ、どきどきしてきた」


怖気などとは無縁のゴン、その目は期待に輝いている。


「・・ま、どんな試験だろうが、やるっきゃねえぜ!」


パンッと、拳で手のひらを打つレオリオ、


銀髪の少年、名前はキルアと言うそうだが、ゴンとは歳も同じこともあり、すぐに意気投合していた。・・それにしてもこのキルアという少年、喋りだすまで気配など全く感じなかった。相当な力量であることは間違いない。試験内容によっては、手を組んだほうがいいかもしれない・・・。


・・・と、考えるのはここまででいいだろう。なぜなら、そのバスがゆっくりとこちらへと旋回してきたからだ。


一体このバスになにがあるというのだろうか、私達受験生一同はそのバスを注意深く観察していた。一見なんの変哲もないバス。これからこのバスで試験会場へと移動するのであろうか、そんな事を考えていると、一台のバスの扉がゆっくりと開いた。


そして、そのバスから4人組の男達が降りてきた。


アフロのような髪型の男に、唇の大きいジャージ姿の男、髭面眼鏡の男に、カメラを持った細身の男。どこをどうみても、一般人でしかない4人の男達の登場に、私達は皆唖然とした。すると、その中の一人の男が前に進み出た。


「皆さん、こんばんはー!わたしたちは、ローカルハンターの「チーム水曜どうでしょう」でーす。私達はですね、いつもは、この広いハンター世界を、ぶらりぶらーりと旅をしている、ただの旅集団なんですが、今回、みなさんのハンター試験の審査を引き受けさせていただくことになりました。申し遅れましたが、私は司会の鈴井と申します、ミスターと呼んでいただいて結構です。」


鈴井と名乗った男が、場に似合わぬ軽い雰囲気で自己紹介する。ローカルハンターなどという言葉は初めて聞いたが、油断などできる筈はない、彼らはプロのハンターである。おちゃらけてはみえるが、このハンター試験の審査を任されている以上、只の一般人の筈はない。鈴井の説明はつづいていく。


「それではですね、さっそくですが、一次試験を始めさせていただきます。みなさん、いったいこれから何が始まるのか、ドキドキしていることだとおもいますが・・・、まずはこちらをみてください、ジャジャン!」


鈴井の芝居くさい語り口調が少々鼻につくが、それは気にしないほうがいいだろう。私は男が手荷物プラカードに注目した。

そこにはカラフルに色分けされた表と、1から6までのサイコロの絵、そして、意味不明の文言が書きこまれていた。



1)新鮮な魚介類が食べたい!くじら島


2)観光もいいな、ククルーマウンテン


3)一度は行きたい天空闘技場


4)遊ぶのなら命がけ、ヨークシンシティー


5)ええ?どうやっていくの?グリードアイランド


6)文明はどこだ?NGL自治国




「それでは!一次試験では、みなさん4人一組になっていただいて、ゴールのサッポロまで、向かっていただく事になります!各チームそれぞれワンセットずつ、このサイコロとプラカードを持っていただいて、サイコロの出た目通りの交通手段を使って無事ゴールへとたどり着いてください。ジャパンまでは少―し離れているので、制限時間はたっぷりの30日間。それでは、よーい、スタート!!」
















・・・30日後、




私たちは、制限時間ギリギリに、ギリギリの体と、ギリギリの容姿でようやくゴールへと辿りついた。

道中、ゴンが早すぎる里帰りすることになったり、キルアが兄に連れ戻されそうになったり、サイコロの出た目をごまかそうとしたレオリオに何故か雷が落ちたり・・・、と、他にもいろいろな事があったがここでは割愛しておこう。


とにかく今は、30日ぶりのベットで眠りたい・・、それだけが私達の今の望みだった。




・・・しかし、そんな私達の願いを嘲笑うかのように、司会の鈴井という男は二次試験の即時の開始をつげたのであった。



「それでは、二次試験はグルメ試験です。みなさんには、いまからシェフ大泉の作るフルコースを完食して頂きます。」




一次試験を無事終えた私達受験者の人数は17組68名とおよそ六分の1、二次試験で、我々は再び厳しいふるいの目にかけられてしまうのであった。





*******************************************



【能力名】 
六分の一の夢旅人【ダイスジャーニー】 操作系

【能力者】 
鈴井貴之

【能力】
4人組の人間にサイコロを振らせ、そのサイコロが出た目の通りの行動をさせることができる、使用されるプラカードは、一度サイコロを振る度に自動的に更新される。

【制約】
4人一組でなければならない。
使用するサイコロはサイコロキャラメルを使わなければならない。





[29265] 【一発ネタ】どうでしょう班がハンター試験で試験官をするそうです。(二次試験) 【HxH × 水曜どうでしょう】
Name: あぶさん◆5d9fd2e7 ID:9f632b24
Date: 2011/08/20 08:49



【二次試験】


「お見舞いするぞー!」


コック帽を被った男が声をあげる。一体、料理で何をお見舞いしようというのだろうか。私と同様の疑問を周りの受験生達も抱いているようだ。一次試験に比べ明らかに難易度の低そうな課題に、皆ホッと息をついていた。

もちろん、料理だからといって油断はならない。一次試験のことを考えると、ただ料理を完食すればいいという話ではないだろう・・。


「すまないが、一つだけ質問がある。フルコースというが、品数は何品だろうか?」


「本日のビストル大泉のメニューは、シェフの気まぐれイタリアンでございます。前菜、メイン、デザートの、3つのメニューとなっております。」


もじゃ毛にコック帽の大泉と名乗る男がお辞儀をしながら答える。

どうでもいいが、ビストルとはなんだろうか、・・まあ、ただの言い間違だろうが・・。


「もう一つ質問だ、コースは、4人が等分の量をたべる必要があるのだろうか」


二つ目の質問には、司会の鈴井がこたえてくれた。

「いえ、この試験の合否は、制限時間以内に完食していただければ、その過程は問いません。あ、ボクちょっとおなかすいてるなあ、とおもえば、一人で四人分食べていただいても結構です。・・・でも、その時は喧嘩しないでね!!」


鈴井のわざとらしい口調にまたもや、イラっときてしまったが、必要なことは聞き出せた。

時間以内に完食しろという以上、この試験が大食い審査なのはほぼ間違いないだろう。

人間の満腹中枢というのは、胃がいっぱいになっても、満腹だと判断するまでに、5分ほどの時間がかかる。

だから、少しずつ時間をおいて食べるよりも、体が満腹だと感じる前に一気に胃に詰め込んだほうが、結果的に多くの量をたべられものなのだ。

4人で全部を完食することが条件であれば、例えば一人の人間が全員分の前菜を食べ、2人がメインを、最後の一人がデザートを食べる方が、結果的に多くの量を食べることができる。


私は、ゴン、キルア、レオリオの三人と作戦を立てる、うなずく3人。
私たちの間には、1ヶ月にも及ぶサイコロの試練のなかで、強い仲間意識が芽生えていた。この4人ならば、どんな試練でも耐え切ってみせる。私はそう確信していた。




「それでは、まずは前菜のエビチリパスタでございます。」


大泉の声にあわせて、給仕たちが料理をテーブルにはこんでくる。


「・・って、なんで前菜でパスタなんだよ!!」


レオリオが不満の声をあげる。


「落ち着けレオリオ、本場イタリアではパスタは主に前菜として食べられる。パスタが前菜というのは、とりたてて珍しいことではない。そんなことよりも・・・・。」


私は、大きく息を吸い、続く言葉を一気にはきだす。


「・・・なんでこの量なんだ!!おかしいだろう、前菜だぞこれは!!バケツ一杯のパスタをそのままひっくり返したような量じゃないか!!!そもそも何故エビチリとパスタを混ぜる必要がある!!!普通のエビチリでいいじゃないか!!!」


わたしの意見に対し、大泉はこちらを指差しながら「おみまいするぞー。」と声を上げる。この男とは会話というものが全く成立しない。・・まあいい、今はそんな事をしている場合じゃない。



「じゃあ、俺からいくよ」



当初の予定通り、我々のチームの切り込み隊長であるゴンが、目の前の大量のパスタへと手を伸ばす。そして、それを一口食べたとき




「・・えっほ!・・、えほっ!!」




むせた。




「・・か、辛い!!!なにコレ、すっごく辛いよ!!!!舌が!!舌がー!!!!」



舌を出しながらごろごろとのたうちまわるゴン。どうやら、この料理の真に恐ろしいのは、その量ではなく、辛さにあるようだ。



「そんなに辛いのか?これ?」



レオリオがエビを一匹つまみあげる。


「・・レオリオ!待て!!」


私の制止も聞かず、エビをひょいっと口に放り込んだレオリオ、そして・・・




「・・えっほっ!!・・・えほっ!!!!」




やっぱりむせた。


テーブルの下をごろごろと転げまわる二人、あたりを見回すと、どこのテーブルでも同じような惨状が展開していた。大量のパスタを前にして、たった一口でむせ返ってしまう受験生達。早く食べねばという焦りが、焼きつくような辛さのパスタを気管に流し込んでしまう、しかし落ち着いて食べれば間に合わない。この千日手の状況を覆したのはキルアの一言だった。



「・・みんな、ここはオレに任せろ。」



テーブルにつくキルア、その手にしっかりとフォークを握り締める。


「・・かはっ・・・、待て・・!キルア、こ・・いつはただのエビチリじゃねえ・・!エビチリを超えたなにかだ!!・・やめるんだ!!」


喉をやられたレオリオが、必死に声をしぼりだす。


「心配すんなって、オレんち暗殺一家だらさ、小さい頃から毒をご飯に混ぜてたおかげで、刺激物には強いんだ。」


キルアはレオリオに自信に満ちた笑みを返すと、凄まじいスピードでエビチリパスタを食べ始めた。


「・・キ、キルアお前・・・」


「キルア・・・・」


ゴンとレオリオが心配そうに見つめる中、エビチリパスタをまるで蕎麦のように流し込むキルア。


周りの受験生達も、キルアの食事の様を驚きの表情で見つめている。

そして私は、・・いやきっとゴンとレオリオも、自身のふがいなさに拳を握り締めていた。



・・・毒になれているから、刺激物には強いだと・・?なんともないだと・・?

そんなはずはない!物には限度というものがある。大丈夫だというのなら、さっきから垂れ流している、大量の汗と、涙と、鼻水は一体なんだというのだ・・・!?


キルア・・お前は私達の為に一人犠牲になろうというのか・・・・!!


私たちはキルアに声をかけることができなかった。ただ、だまって見守り続けることしかできなかった。なりふり構わず、一心不乱にパスタを流し込むキルア。

・・もしも今、キルアの姿を笑うものがいたら私の瞳は紅く染まって、そいつを殺してしまったに違いない。


しかしまわりを見渡せば、他の受験者たちも同様に、体中の穴という穴から水分を垂れ流しながら、パスタとよぶにはイタリア人に失礼な物体と格闘していた。どうやらキルアの姿に刺激され、皆何かを吹っ切ったようだ。もちろん、キルアのように4人分を一人で食べる猛者はいなかったが。




「・・こ・・、これで、終わり・・」


・・キルアの手からカランとフォークが地面におちた。


「「「キルアー!!!!」」」


最後の一本を食べ終えたキルアはそのまま気を失ってしまった。

わたしは、キルアの口元のエビチリをそっとぬぐい、白目をむいたままの眼を優しくとじる。


「・・キルア、安心して眠るんだ。あとは俺たちに任せてくれ」


キルアを地面に横たえて、オレ達はメインの料理を待つべく再びテーブルへとつく。
私たち三人の闘志は燃え上がっていた。キルアの犠牲を無駄にするわけにはいかない。今なら、豚の丸焼きだろうが、全て食べつくす自身があった。



程なくして、まわりの受験生たちもなんとかパスタを食べきったようだ。見たところ、リタイアしたのは2組だけ、さすがに皆、あの魔の30日間を乗り越えてきただけのことはあるようだ。


ようやく一心地いたわれわれ受験生に、司会の鈴井が次の戦いの始まりを告げる。


「それでは、お時間になりましたので、メインの料理をお運びいたします。シェフ大泉さん、どうぞ!!」





「皆様お待たせいたしました、メインもパスタでございます。」





大泉の声にあわせて、私達の目の前に、先ほどの倍の量はあるパスタが運ばれてきた。



「メイン『も』ってなんだ!?絶対にソレ、前菜のときに湯ですぎた残りだろう!!しかもなんだ!そのタライいっぱいのパスタをひっくり返したような量は!?あやまれ、イタリアの方角を向いて全力で土下座しろ!!」


わたしの言葉に、シェフ大泉は「うっせえ!うちぬくぞー」と罵声を返す。そして、彼はメニューを高々と読み上げる。



「本日のパスタはぺペロンチーノの、ハバネロ添えでございます。」






・・そして、二次試験のビストル大泉に半分以上の受験生は打ち抜かれてしまうこととなる。

残るは8チーム、32名。


しかし、第三次試験で本当の地獄が待っているとは、私たちにはまだ知る由もなかった・・。

それは、まさしく、大惨事試験と呼ぶのにふさわしかった。


*********************************


デザートもパスタ

冷パスタのオレンジソースかけ、アイス添え。


【能力名】
極光の飽食【オーロラクッキング】 具現化系


【能力者】
大泉洋


【能力】
微妙に不味く、異常に辛い料理を、異常な量作る能力。食べた者はみな「お見舞いされる」


【制約】
作るのに異常に時間がかかる。






[29265] 【一発ネタ】どうでしょう班がハンター試験で試験官をするそうです。(三次試験+軍艦島エピソード) 【HxH × 水曜どうでしょう】
Name: あぶさん◆5d9fd2e7 ID:9f632b24
Date: 2011/08/24 00:22




「31番竹林寺!!!!」


私は両手を高く天に掲げる、その両脇では、ゴンとキルアが両手を三角形にしてしゃがみこむ


「どうだ?レオリオ!!」


私はカメラマン役のレオリオに問いかける。


「ああ、バッチリだ!!まっすぐ伸びる竹林と、まだ土から顔を出したばかりの筍が二本。三角構図のダイナミックないい映像になったぜ!!」


レオリオが、力強くわたしに答える・・・・が、その顔の疲労はやはりかくせない。私はレオリオに心の中でわびる、レオリオには無理をかけている、だからせめて私たちは私達のできることを全力でやらねばならないのだ。・・・と、その時、


「31番竹林寺ー」


我々から僅かに遅れてやってきたあるグループの声が響く。先ほどから我々と先頭争いを続ける一団である。


「なんだ、あいつら、あのハゲを針でつついてるだけじゃないか?」


レオリオが感想を漏らす。確かに彼らのポーズには動きや、勢いといったものはない・・・しかし!!


「よく見ろレオリオ!!あのハンゾーとか言う忍者を!!」


「・・な!?あれは、頭に丸が6つ、それに亀のマークの拳法着!!!」


「・・そう、クリリンのコスプレだ。そして隣の二人はクリリンを針でつついている・・・。つまり、ちくちくクリリン竹林寺(ちくりんじ)というわけだ!!まさか、こんな手を使ってくるとは・・!!」


我々の動揺が聞こえたのだろう、ハンゾーが勝ち誇ったような表情でこちらを見てくる。



「あの忍者、クソむかつく!」


キルアがわれら全員の気持ちを代弁する。・・が、しかしあの男にイラついたところで、勝負に勝てるわけではない。私はキルアを諭す。


「落ち着けキルア。勝負は長い、次で逆転すればいいだけの話だ。わかっているな、次の禅師峰寺(ぜんじぶじ)は・・」


「うん、バンジー(ゼンジー)ジャンプで、全部無事(ぜんぶぶじ)だったよね」


ゴンが私の言葉を続ける。


我々4人は参道を一気に書け降り、次なる聖地へと向かうのであった・・・・。






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二次試験を何とか終えた私たちは、その日の最終便で四国は高松へと向かった。

深夜0時、我々に白装束と、竹傘、そして「同行二人」とかかれた杖が支給された。

一体なにを始めるつもりだといぶかしむ受験生を前に、司会の鈴木が次なる試験の始まりを告げた。


「それではみなさん。次の試験内容ですが、今からこちらに用意してあるレンタカーを使っていただいて、72時間以内に四国88箇所を全て回っていただきます。」


「・・な!?88箇所を3日以内だと!?」


「知っているのか、クラピカ?」


私の驚きにレオリオが反応する。


「・・ああ、四国88箇所、弘法大師空海の開いた真言衆徒の修行の為の巡礼路だ。全行程およそ1400キロ、健全な大人の足だと40日、車で回っても通常10日かかると言われている。」


「・・って、ハナッから無理じゃねえかよ!!そんなの!!」

いきり立つレオリオであったが・・・。

「・・・いや、10日といっても、休憩・宿泊を除いて一日8時間の行動で全て回れる計算だ。夜を徹して走れば不可能な数値ではない。しかし・・・」

そう、数値自体は不可能ではない。だが、私たちのチームは編成上他のチームにはない大きなハンデを負っていた。・・・なぜ、・・なぜ私はハンター試験が終わった後でソレを取得しようと思っていたのか、なぜソレがハンター試験に必要ないなどと思っていたのか、私は自らの甘さに唇をかみ締める。


「・・・!!・・・心配すんなクラピカ、徹マンには慣れてんだ。おめえはオレに任せて助手席で鼾かいてりゃいいんだよ。」


私の表情から言わんとする事を察するレオリオ、レオリオの暖かな言葉に胸が熱くなる。



・・そう、私たちのチームが負うハンデとは・・・・、私も、ゴンも、キルアも、








運転免許をもっていなかった。








「・・・すまない、レオリオ。急いで回れば一日2、3時間程の仮眠は確保できる筈だ。」


「だから、気にすんなって言ってるだろ、運転は嫌いじゃねえんだからよ。」


「・・・すまない・・。」


レオリオの気遣いに、私は謝る事しかできなかった。


「でも、それだけだと少し簡単な試験だよね。」


「お前は空気を読め」とも思ったが、ゴンの言う事は確かに正しい。この試験確かに辛いが不可能ではない。特に他チームは殆んどが成人である、ローテーションで運転すれば回るだけなら可能である。1次、2次のあの冗談のような難易度に比べれば、いささか易しすぎる。


「・・・つまり、それだけじゃないってことだろ。」


キルアが私の言葉を代弁する。そしてその声が聞こえたかのように、司会の鈴井が話を続ける。


「しかしですね、ただ88箇所回るだけではちょっと簡単なので、皆さんにはそれぞれ本堂の前で寺の名前を叫びながら、カメラの前でポーズを取っていただきます。それを私たちが採点させていただいて、上位4チームが次の4次試験へ進む資格を手に入れることができます。」


「「一度も回ったことないくせに簡単とか言ってんじゃねーよ」」と、試験官の4人組の間で仲間割れが起きていたが、それはまあ、どうでもいいだろう。


運転手が一人しかいない我々にとっては、88箇所回るだけでも大変な作業なのだ、一刻も早く始めなければならない。



これが、私たちの3日間に渡る、大リアクション大会の始まりであった。






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「88番大窪寺!!!」


最後の寺の前でポーズを決める私たち3人、


「いい絵だぜクラピカ、3次試験突破間違いなしだ!」

「やったー!終わったー!」

「・・ったく、なんでこの歳で88箇所まわんなきゃなんねーんだよ。」

レオリオ、ゴン、キルアの3人がそれぞれ感想を述べる、キルアもああはいっているがその表情はどこか晴れやかだ。

私たち4人は殆んど飲まず食わずで、ついに最後の大窪寺へとたどり着いた。
その間、一人運転を続けるレオリオの事を思ってか、ゴンもキルアも、もちろん私も、レオリオが運転する間は一睡もしなかった。88箇所を回りきったわれわれは、以前よりもさらに強い絆で結ばれていた。
・・もっとも、途中空腹からクリームパンの奪い合いになってしまった事もあったが・・。


「あとは、このレンタカーを返して、0時までにホテル軍艦島までたどり着けばいいだけだ。あと残り45分、時間は十分だが油断はするな!」


わたしの言葉に皆が頷く。試験官一同はホテルで待機中だそうだ。我々がこの3日間車内泊を続けている間に、彼らはホテルでゆったりと過ごしていたかと思うと若干腹はたつが・・・。


「・・・でもこれで、これでやっと・・」


「ああ、そうだな、ようやくだ」


「・・まったく、やっとだっつーの」


ゴン、レオリオ、キルアの声、そして最後に我々全員の声が重なる。




「「「「ようやくベッドで横になれる!!!!」」」」




一次試験から始まり、30日と3日間。我々は、常に車内泊を強いられていた。ホテル軍艦島というのが、なんとも怪しい響きだがホテルはホテル。温かいシャワーとベッドぐらいはあるだろう。

我々は逸る気持ちを抑えてホテル軍艦島へと急いだ、他の受験生達もだいたい同じ時間にゴールへと辿りついていた。
我々は録画テープを試験官へと手渡す。今晩中に試験管が各チームのリアクションを吟味した後、明日の朝合否を言い渡されるそうだ。

もっとも、我々にも他の受験生にも不安な様相は一切みえない、皆の心は一つである、「早くホテルで休ませろ!」と、


今にもホテルへなだれ込もうとする受験生であったが、髭面眼鏡の男がそれを制した。



「えーと、それでですね、大変言いづらいことではあるのですが・・・・」


そう言いながら、男が前に進み出る。


「・・・実はですね、ちょうど今3連休の中日でして・・・」


男が言葉を濁す、「「「「「「・・・まさか!!」」」」」」」私たち受験生の間を嫌な予感が漂う。


「どこもホテルは一杯でしてね・・・、ホテルに交渉して、なんとか毛布だけはお借りできたんですが・・・・。」


我々の嫌な予感は止まらない、ハンゾーのチームの大きな帽子を被った少女は、続く言葉を予想してしまったのか、既に涙ぐんでいた。彼女も女としていろいろと譲れないものがあるのだろう。・・・いや、もちろん我々も譲りたくはないのだが・・。


男は少し広めの道端で止まり、我々のほうを振り返ってこういった。
















「ここをキャンプ地とする!!!」













次の日、初春の朝露の中、私たちは目をさました。毛布一枚で野宿したものの、久々に横になって眠ったせいか、意外にぐっすり眠れてしまったのが逆に腹立たしい。もっとも、寒さだけはいかんともし難かったが・・・・・。


ポンズという名の少女は一晩中泣いていたのか目を赤く晴らしていた。気持ちは解る、ホテルを目の前にして道端で眠らねばならないなど、まるで浮浪者にでもなったような惨めな気持ちを味わったに違いない。


サングラスをかけたスナイパー風の女性は、黒眼鏡で顔色こそ伺えなかったものの、化粧に涙が流れた後の筋が数本浮かんでいた。

彼女と目が合ってしまった。どうやらぶしつけに見つめていたようだ。私は謝罪の意味を込めて彼女に頭を下げる。

彼女は私を見て自嘲気味にこう呟いた。


「目が覚めたとき、何か大切なものを失ったような気がしたわ。こんな朝を迎えるのは女として2度目の経験よ・・」


・・・私は、彼女にかける言葉を持たなかった。


そして、司会の鈴井の口から、合格チームの名前が告げられる。我々のチームも、ハンゾーのチームも合格していた。不合格になったチームは、悔しさよりもどこか安堵の表情を浮かべていたかのように思えた。


サングラスの女性も脱落していた。彼女は私に向かって分かる程度に手を振るとそのまま去っていった。



私はやはり、彼女に何もいえなかった。







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3次試験 72時間以内にトリックタワー制覇→72時間以内に88箇所制覇

軍艦島エピソード→ここをキャンプ地とする!

の回でした。


ジャンプの最新号で、終わりが分かっていても先が読めないシリアスな展開を読んだ後に、こんなものを書いている自分は一体なんなのだろうか。


【能力名】
ここをキャンプ地とする(ホテル・ブルースカイ)操作

【能力者】
藤村D

【能力】
どこだろうとキャンプ地にする。

【制約】
そんなものはない



[29265] 【一発ネタ】どうでしょう班がハンター試験で試験官をするそうです。(四次試験) 【HxH × 水曜どうでしょう】
Name: あぶさん◆5d9fd2e7 ID:9f632b24
Date: 2011/09/15 00:36



朝露の中、道端で目を覚ました後、我々16名の受験生達は、そのままバスで移動する事となった。もはや数えるのも馬鹿らしいほど回数を乗った長距離バス。狭い車内とはいえ昨晩道端で野宿していた私達とっては、屋根があるというのは幾分ほっとできた。


また、ここにきて受験生の数は16名、試験官を入れても20名。私たちは二席を一人で使うというこれまでにない贅沢が許さていた。この程度の事がそこはかとなく嬉しい自分が少し悲しかった。

レオリオなどはなにも考えていないのだろう。ゆったりと後ろで幸せそうにいびきをかいている。ゴンやキルアなどの体の小さい年少組みは座席に横になってまるまっている。

他の受験生達も今までの道程とは違い、こころなしかくつろいでいるように思える。



ただ一人、ポンズという名の少女だけが、


「なんで毎度毎度バスなのよぉ・・、飛空挺とか、せめてフェリーでもいいからお風呂のついてる乗り物にしてよぉ・・・・」


と、涙ながらに訴えていたが、チームメイトの忍者に


「贅沢言うなよ、トイレがついているだけマシだろう?」


とたしなめられそれ以来黙ってしまった。


・・・ああ、わかる。わかるぞハンゾー。トイレのついていない長距離バスほど辛いものはない、2時間おきに無理矢理起こされてはサービスエリアでトイレに行かねばならないあの辛さといったら・・・・・(以下略)・・・。





・・兎も角バスは一路南へ、そこは鬱蒼とした熱帯雨林のど真ん中であった。


この秘境で我々は、七日間にも及ぶジャングル生活を強いられる事になるのである。





【どうでしょう班がハンター試験の試験官をするそうです 4次試験 】




<一日目>


「それではみなさんには、今日から一週間、このタマンヌガラ国立公園で過ごしていただきます。今回の試験内容ですが、まずはこちらの写真を見てください」


われわれ受験生達は、鈴井に促され、もじゃ毛の男が持つ写真を見る、そこには緑と赤の美しい鳥が写されていた。


「この鳥は、世界でも数少ない珍種、ケツァールといいます。今回は、このケツァールをカメラに収めてくる事が合格の条件となります。」


「な!?ケツァールだと!!」


ハンゾーチームの一員である背丈の低い男が驚きの声を上げる。


「知っているのか、ポックル!」


チームメイトのハンゾーが彼に尋ねる。


「ああ、世界中でも50羽と存在しないといわれている幻の鳥だ。その姿の美しさから裏世界では鑑賞用に高額で取引されている。その額は10億ジェニーを超えるとすらいわれている。」


「な!10億ジェニー!!?」


過剰に反応するレオリオを、ポックルが冷たい目で睨む。


「裏世界での話しだ。ケツァールはトリプルAの絶滅危惧種、売買目的の捕獲は厳しく罰せられる。もし、アンタがケツァールを捕獲して売りさばくような男ならば、俺は容赦するつもりはない。もっともケツァールは目にすることすら難しいといわれる珍獣中の珍獣、金に目がくらんだ男に見つけられるとはおもわないけどな。」


「・・ぐっ・・・、売りさばこうなんておもってねーよ。」


ポックルだけでなく、ゴンや私にも睨まれたレオリオはおとなしく引き下がる。あれは絶対にあわよくば捕まえようとしていた目だった。それはさておき、私はポックルに声をかける。


「博識だな、大したものだ」


「い、いや・・、俺、幻獣ハンターになりたいからさ。知ってるのは動物や幻獣についてだけだよ」


ポックルは照れたように下を向いた。


「フーン、ようやくハンター試験らしい試験内容になったじゃん。」


キルアの言葉に私は心の底から同意する。まったく、これまでの試験内容といったら・・・(以下略)・・・。


「おれ動物見つけるの得意だよ!綺麗な鳥だよね、楽しみだなー!」


ゴンは今にも駆け出さんばかりの勢いだ。くじら島では、毎日一人で森で遊んでいたというゴン。ゴンにとってはこの広大な森林も絶好の遊び場なのかもしれない。


「ということで、皆さんには一週間このジャングルで過ごしていただくわけですが、今回、宿泊場所として動物観察小屋を用意してあります。」


私たちは試験官の指差す方向をみる。そこには、鬱蒼としたジャングルのなかに隠れるように存在する二棟のバラックがあった。


「一週間、みなさんにはこのブンブンブラウとブンブンクンバンで生活していただきます。ただ、残念ながら建物は二つしかないので、一つの小屋につき2グループのみなさんが寝起きを供にしてもらうことになります。今から全員にデジタルカメラを支給しますから、一週間後の正午12時、だれか一人でもケツァールをカメラに収めることができたチーム全員が、最終試験へとコマを進めることができます。なにかご質問はありますか?」


「はい!はい!はい!!シャワーはありますか?」


そこで真っ先に声を上げたのはポンズだった。どうみてもシャワーなどついているわけもないボロ小屋なのだが、尋ねずにはいられなかったのだろう。その質問に答えたのは髭面眼鏡の男だった。


「残念ながらシャワーはついていません、トイレなら一応ありますが・・・」


ポンズは目に見えて落胆していた。私は「一応ある」というトイレにむしろ不安を覚える。そして、男は言葉を続ける


「・・・しかし、一週間シャワーがないというのも酷な話ですから、よろしければ簡易シャワーを支給する事はできます。」


簡易シャワーという言葉に目を輝かせるポンズ。

・・しかし、男がリュックサックからだしてきたのは、バケツ程度の大きさの袋に申し訳程度にシャワーヘッドがついたただの水袋だった。
一体あれのどこがシャワーだというのだろうか、あの程度の水量では30秒も浴びることができないだろう。


「あ、それとここタマンヌガラは国立公園ですので、市販のシャンプーや石鹸の使用は禁じられています。ですので、シャワーを浴びる時は、こちらの『髪に優しいかどうかはわからないけど、環境には優しい石鹸』をおつかいください。」


そういって男は水袋と石鹸を差し出した。ポンズはしばし逡巡した後、結局それを受け取っていた。


「それではみなさん、一週間後にお会いしましょう。・・あ、いい忘れてましたが、タマンヌガラ国立公園には非常に凶暴なマレー虎が多々生息しておりますので、気をつけくださいね。」


最後に爆弾発言を残し去っていく試験管たち、残された我々がまず最初にやったことは、




じゃんけん大会であった。




ブンブンブラウとブンブンクンバン、二つとも木造の小屋であることにかわりはないが、ブンブンブラウの方は今にも崩れ落ちてしまいそうな、なんとも異様な雰囲気をはなっていた。あんな小屋ではマレー虎に襲われた場合一撃で粉砕されてしまうだろう。

「同じブンブンならせめてクンバンで」というのは受験生達共通の認識だった。




・・結果我々のチームと、ハンゾーのチームがブンブンブラウで枕を並べることとなった。



その後キルアからジャンケンの必勝法を教わったのだが・・・、そんなものがあるなら先に教えておいてくれ、キルア。



その日は既に午後3時、一日目はケツァールの捜索はせず、食料や、薪の確保に我々は向かうことにした。他のチームも一日目は本格的な捜索はしない様子だった。


そしてその日、ブンブンブラウでの最初の夜、わたしは、自分とハンゾーのチームの面々の前である提案をすることした。


「「共同戦線だとぉー!?」」


ハンゾーとレオリオがそろって嫌そうな顔をする。この二人は88箇所めぐりでたびたび衝突していたから無理もないだろう。


「ふーん、で、その理由は?」


キルアもハンゾーの事は気に食わないといっていたはずだったが、年齢に似合わず心は誰よりも冷静なキルア、まずは私の考えを聞いてみることにしたようだ。」


「ああ、手を組む理由はまずは探索範囲を広げる為。ケツァールを見つけることは至難の業だと思われる。仲間は多いに越した事はない」


「つまり、8人で手分けしてケツァールを探すということ?」


ゴンが私の言葉を受ける。その表情から察するには、ハンゾー達と組む事に全く異論はないようだ。


「そういうことだ、ただし、8人がそれぞれバラバラに探すのではなく、二人一組で4つのグループにわかれて東西南北の4方向を探索する事を提案する」


「ちょっとまてよ、なんで二人一組になる必要があるんだよ、全員がカメラ持ってんだから4人が4つの方向を探索すりゃあいいじゃねえか。」


レオリオが疑問と不満の声を上げる、


「一人二組で行動する理由は、まずは見落としを避ける為、人間は180度の視界を持っていはいるが、目に映ったものをハッキリと認識できるのは、せいぜい60度が限界だ。例えば欲しいものを探すため買い物にいっても左右の陳列棚を一度に探しながら歩くのは難しい。片方の棚だけを探すほうが簡単だろう?一人で探すよりも、二人で探すほうが、効率は2倍・3倍に跳ね上がる。」


「・・う、まあ、確かにそうかもしれねえけどよ・・。」


「そしてなにより二人で行動しなければいけない理由は・・」


「マレー虎だな」


ポックルが私のことばを遮る。彼は私が共同戦線を提案したときから全く拒否反応を示していなかった人間のひとりだ。あるいは私が提案していなければ彼のほうから同じ提案があったかもしれない。ここタマンヌガラ国立公園に住むといわれるマレー虎、凶暴な上、集団で狩りをするという頭の良い生き物だ。


「なんだよ、虎ぐらいどーってことねーじゃん」


そういったのはキルアだ、私も長い旅の間でキルアの力量は十分に理解している。確かに彼なら虎が相手でも引けはとらないだろうが、


「キルア、たしかにお前なら一人でも大丈夫だろう。しかし、私や、レオリオ、ゴンはそうはいかない。集団で虎に襲われてしまえばひとたまりも無いだろう。」


キルアは、ハッとして口をつぐむ、どうやら理解してくれたようだ。やはりこの旅で一番成長したのはキルアなのかもしれない。


「そして最後に、我々が組む一番のメリットはグループ同士の争いを避ける為だ。」


私の言葉に驚く一同、私は言葉を続ける。


「いいか、試験管はケツァールを収めたカメラを提出したチームが4次試験に進めるといった。つまり・・」


「チッ・・、カメラさえ渡しゃあ合格、つまり奪い合いもアリってことかよ。」


ハンゾーが私の言葉を続けた。。


「そう、だからこその共同戦線だ。ハンゾー、安心して眠れないのはお互い望むところではないだろう。もちろん他2チームからの強奪も警戒する必要がある。それについてもわれわれ2チームが組めば他のチームも簡単には手出しできないはずだ。」


もはや誰も反論するものはいなかった。われわれは適正、戦闘能力などを考え、8人を4つのグループにわける、


グループA ゴン、ハンゾー
グループB レオリオ、ポックル
グループC キルア、バーボン
グループD クラピカ、ポンズ


各々の探索グループにそれぞれハンゾーと、私のチームの人員が一人ずつ組むことにする。
こうすることによって、ケツァールを見つけた場合には、両方のチームが一度に写真をとることができるからだ。


こうして我々は、次の日から探索を始めることとなる。長い、長い、ジャングル生活は、今その幕を開けたのだった。




【二日目】


早朝、日が登る前からわれわれは、東西南北4つの方向に別れて、それぞれ探索を始める。ポックルの話では、ケツァールが姿を現すのは、早朝から昼過ぎまでだという。夕方には巣に帰るそうだから、大体午後15時ぐらいまでが勝負となる。

われわれは、日が登る頃から沈むまで、一日中探してはみたが、我々の誰もケツァールの痕跡すら捉えることはできなかった。


また、ゴンとハンゾーが、捜索の途中登山家と遭遇したそうだが、それはどうでもいいことだろう。





【三日目】


今日も、私はポンズと共に、東の方角を探索している。ポンズは昨日よりも一回り大きなリュックサックを背負っていた。なにが入っているのかとも思ったが、女性の荷物を詮索するのもよくないだろう。私達は黙々と探索をつづける。

・・そして、人気のないジャングルの深部で、ポンズは私にこう切り出した。


「あの・・、クラピカ、・・その、こんなこと突然言い出して、はしたない女だとおもわないでほしいの・・・、でもわたし、もう我慢ができないの!!」


わたしは、彼女の言わんとすることを理解する。最後まで彼女に言わせるのは無粋というものだろう。


「・・わかった。このあたりには他に誰もいない。君の気が済むようにすればいい。」


私はこういって、ポンズに背を向ける。彼女は私に短い感謝の言葉を述べる。


衣擦れの音が聞こえる。彼女がその身に纏うものを全て脱ぎ捨てたのがわかる。そして・・・・





シャー、シャカシャカシャカ





水の落ちる音と、頭を洗う音。ポンズは結局あの簡易シャワーを使う事にしたらしい。彼女は先日も泉か川がないかと探していたが、結局このタマンヌガラ国立公園にあるのは、沼か水溜りのみ。一晩悩んだ末の決断であったのだろう。


しかし、30秒もたたないうちに、水の音がやんだ。

そして、あたりにポンズの嗚咽が響き渡る。


・・・ああ、やっぱり水が全然たりなかったのか・・・。




私にできることは、そっと後ろ手にタオルを差し出すことだけだった。


その後再び探索を始める私とポンズ。彼女からは終始、安い石鹸のにおいが漂っていた。




そしてその日も、われわれ全員の収穫はゼロ。


ゴンとハンゾーは写真家に遭遇したそうだ。先日の登山家とそっくりだったらしい。というか、それは登山家がカメラ持ってただけじゃないのか?





【4日目】


探索範囲をさらに広げるも、一向にケツァールは現われず、今日で4日目、残りの期間は半分。焦りが我々の精神を責め立てていく。


この日、ゴンとハンゾーは達磨屋に遭遇したそうだ。・・・なんでジャングルのど真ん中で達磨を売っている人間と遭遇できるんだ、お前達?本当に真面目に探しているのか?



・・・そして、その日の深夜2時のことだ、私は何者かに揺さぶられて、目をさました。



目を開ければそこにはポンズの顔が間近にあった。彼女は唇に手をあて、わたしに黙っているように指示する。ポンズに促され、私は彼女と供にそっと寝室を抜け出す。

寝室を出たあと、彼女は泣きそうな小声で私に訴えかけた。


「・・ごめんなさいクラピカ・・、何度も、何度も我慢しようとおもったんだけど・・・、もう無理なの・・・、お願い・・、一人じゃ、一人じゃ怖くて、・・どうしようもなくて」


わたしは、彼女の言わんとする事を察して無言で頷く

この後何があったかは、私の口から語るつもりはない。彼女の為にもこの秘密は墓まで持っていくつもりだ。


・・・ただ、一言「照らしてあげた」とだけ言っておこう。





【5日目】


今日もただただ探索の日々、やはりケツァールの影すら見当たらない。残り日数はあと2日、我々に諦めの影が忍び寄る。


その日、ゴンとハンゾーは、土井 善晴氏に遭遇したそうだ・・・って、誰だそれは!!お前達、絶対真面目に探してないだろう!!なんでこの密林のなかで、毎日毎日誰かと遭遇できるんだ!

わたしは、彼らと3時間程腹をわって話したあとに、ようやく眠りについた。




【6日目】


ジャングル生活も6日を数える。今日見つけられなければ、7日目は正午までの6時間程度しかチャンスは無い。われわれは神に祈るような気持ちでジャングルを探検した。


・・しかし、この日も結局収穫はなし。われわれは最終日の午前中に最後の望みを託すことにする。


この日、ゴンとハンゾーはパイ魔人に遭遇したそうだ。・・・もうどうでもいい。



・・・そして、悲劇はこの日の夜起こってしまった。


我々は最終日に備え、綿密な作戦を立てていた。


我々は、今まで見つけたポイントでケツァールがいそうな所をもう一度探索することにして会議を終える。新たなポイントを探すよりも、今まで見つけたポイントをもう一度探してみるほうが、効率がいいと判断したからだ。

ただ、ゴンとハンゾーだけはパイ魔人とやらが教えてくれた場所にいってみるらしい。
・・コイツ等にはもう何も期待はしない。


長い会議が終わった時間は、ちょうど深夜0時。消灯して、明日に備え眠りにつこうとした正にその時、レオリオが闇夜に光る二つの目を見つけた。


レオリオの指差す方向を見ると、そこには確かに怪しく光る二つの目があtった。その目はわれわれをまっすぐに、値踏みするように見つめていた。


「おい、クラピカ・・、あれってやっぱり・・・」


レオリオは、自分のセリフを続けることができない。しかし、私にはその光る目の正体が理解できていた。


「ああ、あの目の大きさから判断するに。猫や犬でないことは間違いない・・・、そう、マレー虎だ!!」


私の言葉に全員が戦慄する。


「虎一匹ぐらい大したことねーじゃん。」


一人気楽なキルアを私はたしなめる。


「確かに今見えているのは一匹だけだ、しかしマレー虎は集団で狩りをする生き物だ。恐らくアレの役目は斥候と見張り、仲間が集まるまで俺たちを監視しているに違いない。」


私の言葉にレオリオが驚きの声を上げる。


「つーことは、なにか?この後虎が集団で襲ってくる可能性があるってことか?」


レオリオの疑問に答えたのは、幻獣ハンター志望のポックルだった。


「マレー虎は常時10匹前後、多いときでは30匹程の集団で狩りをするそうだ。昼間ならともかく、この暗闇の中やつ等とやりあうのは危険すぎるぜ。」


ポックルが震える声でそうこたえた。全員に緊張が走る。私は皆を鼓舞し、指示を与えることにした。こういう場合じっとしているよりも、動き始めることが重要だからだ。


「大丈夫だ、向こうが集団ならこちらも8人のハンター志望の手練たちだ。獣などに遅れをとるわけがない!ポックル、レオリオ、そのまま見張りを続けろ!ゴンとハンゾーは反対の窓を見張れ、虎を発見したらすぐに知らせるんだ!バーボン、キルアは、火を用意しろ!野生動物は火に弱い!戦いになったときにも明るいほうが有利だ!!
ポンズと私はいざというときの為のバリケードをつくる!!」


全員が各々の役割を果たす為に散らばっていく。ハンゾーチームともこの長いジャングル生活で十分に分かり合えている。俺たち8人に死角はない。


私は備え付けのマットレスを入り口に集め、バリケードを作った。


ポンズが私に不安そうな顔で問いかける。


「ねえクラピカ、こんなふにゃふにゃのマットで大丈夫かしら・・」


ポンズの指摘はもっともだが、今は他に代わるものがない。


「それでもないよりはマシだ、いざとなったらこの身を挺してでも仲間達だけは守る。ポンズ、君は下がっていろ。」


「クラピカ・・・!!」


ランタンの明かりのせいかポンズの目は潤んでいるように見えた。・・・その時だった。レオリオが私の方に近づいてきたのは。


「あー・・・、その、クラピカ、すまん」


「なにをやっているレオリオ!持ち場を離れるな!見張りを続けろ!」





「いや・・・、その・・・、シカでした。」








私は大きく天を仰いだ。



ポンズが私の肩を優しくたたいたが、今はただそっとしてほしかった。私はバリケード代わりのふにゃふにゃマットに顔をうずめる。



・・・泣いてなんかいないぞ。





【7日目】


昨日一睡もできなくて体調は最悪に近いが、泣いても笑っても今日が最終日。

僅かな希望にしがみつき、私は今日もポンズと供に探索をする。





・・・しかし・・・・


・・・私とポンズは、結局ケツァールを見つけることができなかった。




仲間達とは12時前に集合場所で待ち合わせることになっている。あとは他の仲間達がケツァールをカメラに収めていることを祈るしかない。


集合場所にはすでに、キルア、レオリオ、ポックル、バーボンの4人がいた。皆一様に顔が暗い。どうやら、ケツァールの写真はとれなかったようだ。かれらが視線だけでこちらに問いかけてくるが、私もポンズも首を横に振ることしかできなかった。


あとは、ゴンとハンゾーに全てをかけるしかない・・・・、最後の希望の糸としては、あまりにも細い糸だが・・・・。



・・と、そこへ、ハンゾーとゴンの二人がこちらに駆けてくるのが見えた。
二人の顔は・・・明るい!


・・ひょっとして!!私達の顔も希望に花開く





「みんなー聞いてよ、さっきセニョール・マリーノさんに会ってさー!!」




・・・私たちは再び絶望した。かれらに期待したのが間違いだったのだ。もう過ぎたこととはいえ、私は一言ゴンに物申さねば気がすまなかった。




「マリーノって誰だ!マリーノって!どこのラテン人だ!!お前達最後の最後まで、なんで無関係の人間と遭遇してるんだ!!ケツァールの写真をとるのが試験内容だろうが!!」


わたしの罵声にゴンはきょとんとして、



「だから撮ったよ、ケツァール」



と、何気なく爆弾発言をする・




「「「「「「なにぃぃいいいいいいいい!!!!!!」」」」」」




驚くわれわれにゴンとハンゾーがデジタルカメラの画像を見せる、そこにはたしかにケツァールがいた。





・・しかも、5,6匹、





・・・おいケツァール、おまえら、絶滅危惧種じゃなかったのか?




「いやー、マリーノっておっさんにケツァール探してるっていったら、じゃあちょっとまってろって、マリーノが一人で森の中に入ってってよ。そしたらホントに出てくるんだもんな。」


「うん、おどろいたよね。今まであんなに探しても見つからなかったのにね。凄かったんだよ!マリーノさん」


ハンゾーとゴンが喜々としてマリーノという男の事を話す。


・・・どうやら、この試験に必要だったのは、ケツァールを探すことではなく、マリーノを見つけることだったらしい・・・。





なにはともあれ、われわれとハンゾーのチームは合格した。



総勢8名が最終試験へとコマを進めることになるのであった。













【おまけの他チームの模様その1 キルア、バーボンチーム】




「おいおっさん、なんで洞窟なんか探索すんだよ。」


「これだけ探しても見つからんから、どこかに姿を隠しとるとおもったんだがのう・・、もうちょこっとだけ探索させてくれい。」


そういってバーボンは、洞窟の更に奥へと進んでいく。


・・そして、こうもりの大群を抜けた後にソレはいた。


「スネーク!スネーク!」


そういって、あわてて穴から逃げ出してくるバーボン。どうやら、蛇に遭遇したらしい。


「あんた、蛇使いだろ!なんで蛇使いの癖に蛇怖がってんだよ!!」


「わしが使えるのはわしが飼っとる蛇だけじゃー!野生の蛇は嫌じゃー!!」


「んな蛇使い聞いたことねーよ!!」


二人は罵りあいながら、我先にと洞窟からぬけだしたそうだ。









【おまけの他チームの模様その2 レオリオ、ポックルチーム】




「・・よし、一思いにやってくれ」


「わかった。任せろ」


レオリオはポックルに尻をむけて、ズボンを下ろした。


・・・そしてポックルはレオリオのほうへと手を伸ばし、


シャーッ


虫除けスプレーを振り掛ける。


「おう、いいぞ!よし、いいぞ!よし、もういい!!」


レオリオは、そのまま茂みの中へと消えていった。ここ蚊の多い熱帯雨林では、トイレをするとき臀部に虫除けスプレーをかけなければあっというまに何十箇所とさされてしまう。

その後しばらくして帰って来たレオリオだが、彼の顔は妙にさえない。


「どうしたレオリオ、なにかあったか?」


心配して尋ねるポックルに、レオリオはポツリポツリと言葉をかえす。


「・・いや・・、その・・、なんつーか、袋の方にもやってみたんだがよ・・・、その、・・なんだか燃えるように痛えんだ。」


「・・・それはつまり、○袋に虫除けスプレーをかけたということか?」


ポックルの問いに頷くレオリオ。どうやら、蚊に刺されるのが嫌で、前のほうまでスプレーをかけてしまったらしい。


「それはちょっと・・、不味いんじゃないか?このスプレーは発泡スチロールも溶かすほど強力なんだぞ。洗ったほうがいいと思うぜ、レオリオ」


「・・・洗うって、・・・ここでか?」


ここタマンヌガラ国立公園に、泉や川など存在しない、あるのは淀んだ沼だけだ。


しかし、袋がとけだしてしまっては、一大事だ、レオリオはズボンとパンツをぬいで、沼の中へと歩みを進める。



「うお!!蛭が!!蛭がー!!!」




その後、レオリオの尻にかみついていた蛭はポックルが最高に嫌そうな顔をしながらとってあげたそうだ。





*************************************


【能力名】
本性を暴かれる小部屋【ブンブンナイトフィーバー】具現化

【能力者】
嬉野D

【能力】
ブンブンブラウと、ブンブンクンバンという二つの動物観察部屋を作り出す
また、ブンブンブラウでは、シカを凶悪な野生動物と見間違えることがあるらしい

【制約】
異常にボロイ(ブンブンブラウの方)



ブンブンブラウはもちろん改築前のブンブンブラウ。

今回、どうでしょうネタを詰めれるだけ詰めてみたら、こうなってしまった・・・・。一体何人の人間をおいてけぼりにしたのだろうか・・・。ネタが全てわかった人は凄いと思う。本当に。


ハンター側の面子ですが、味皇様の時から、いつもクラピカだけが可愛そうな目にあってしまっているので、今回は他のメンバーにも焦点を当ててみました。

作者はクラピカもポンズもレオリオも好きですよ。いや、本当に。


次回、最終話です。



あと、ヒソカとギタラクルは、一次試験のサイコロ中、馬鹿らしくなって棄権してしまっているので出てくる事はありません。






[29265] 【一発ネタ】どうでしょう班がハンター試験で試験官をするそうです。(最終試験) 【HxH × 水曜どうでしょう】
Name: あぶさん◆5d9fd2e7 ID:9f632b24
Date: 2011/09/16 20:41



【どうでしょう班がハンター試験で試験官をするそうです。(最終試験)】






ジャングル生活を耐え抜いた私たちは、再びサッポロへと移動する。
・・・やはり、長距離バスで。

我々受験生一同は、「なぜ、毎回毎回、深夜バスなんだ!」と試験官を問い詰めたが、


「だって、予算ないし」


の一言を返されてしまった。昨今の不況の中、ハンター協会というのもなかなか世知辛いものらしい。


3つの深夜バスを乗り継いで移動する我々。その際、比較的空席の多かった「はかた号」の後方部にて、最終試験の前の面談がおこなわれた。面談を担当したのは、髭面眼鏡の藤村という男だった。


「えー、それでは、受験番号404のクラピカさん、あなたが今食べたいもの、たべたくないものを、お答えください。あと他になにか一言あればどうぞ。」




・・・藤村の質問に、私は嫌な予感しか抱けなかった。




「その質問に答える上で二つ質問がある。」


「なんでしょうか」


藤村の顔色からは、何を考えているかは全く読めない。ここは正直に答えるべきか、否か。うかつな答えは「あの大惨事」につながりかねない。私は質問を質問でかえすことにした。


「それは最終試験の内容に関わるものだろうか?」


「まあ、大きな関係があるとだけいっておきましょう。」


やはり、只の面談ではないことはたしかだ。多かれ少なかれ、この面接での答えが最終試験の内容に影響を与えるのは確かであろう。この問いに答える上で、私は一番大事な質問をする。


「それともう一つ、仮に嫌いなものを正直に答えたとして、それを無理矢理食べさせられるようなことは?」


「それだけは絶対にない、とだけ言っておきます。」


「そうか、ならば・・・」


私は迷いなく答えを述べる。この質疑応答がどんな結果を生み出すかはともかく、藤村の言っていることが真実であれば、ここは正直に答えておくのが正解のはずだ。


私の答えはこうだった。



*今食べたいものはなんですか?
文化的な食事ならなんでもいい。・・そうだな、一般に市販されているものが好ましい。

*今食べたくないものはありますか
大泉試験官の作った料理だ。

*なにか一言あればどうぞ
正直、あなた方がハンターと言うことに、いや、ハンターという職業そのものに疑問を抱いてしまった。


その後、次々と8人の受験生達が呼ばれる。狭い車内、面談の内容は筒抜けであった。



【ゴン】

*今食べたいものはなんですか?
きびだんごとかたべてみたいな。桃太郎にでてくるやつ。

*今食べたくないものはありますか?
辛いモノ。ようやく舌の腫れがひいたところだもん。

*なにか一言あればどうぞ
おじさんたち普段はどうやって生活してるの?



【レオリオ】

*今食べたいものはなんですか?
大泉って奴の作った料理じゃなきゃなんでもいいよ。・・あぁん?・・まあ、しいていえば、パイかな・・・。甘いパイだぞ、辛いパイじゃねえぞ!!

*今食べたくないものはありますか?
だから、大泉の作った料理だっつってるだろ!

*なにか一言あればどうぞ
オイ、今までの試験は本当に意味があったのか?最後ぐらいまともな試験なんだろうな?・・「どうでしょうなあ」じゃねえよこの野郎!!



【キルア】

*今食べたいものはなんですか?
お菓子を腹いっぱい、ジャングルではロクなもん食ってねーからな。つーか、いきなりジャングル放り出すなら調味料ぐらいよこせっつーの。・・って、「あっ、ごめん、忘れてた」じゃねえよオッサン!!

*今食べたくないものはありますか?
エビチリパスタ、あれ食うなら毒食ったほうがマシだって。つーか、あのテンパ殺す。

*なにか一言あればどうぞ
てめーら、試験終わったら、ぜってえ暗殺しにいくかんな!ぜってえだかんな!



【ハンゾー】

*今食べたいものはなんですか?
うちの里の名物におやきがあってよ、あれうめえんだよな。・・あぁん?中身はあんこか野沢菜だよ。それがどうかしたのか?


*今食べたくないものはありますか?
モジャ毛ヤロウの作ったパスタだ。

*なにか一言あればどうぞ
忍者っつーのはな、耐え忍ぶ者って書くんだよ。・・つまり、なにが言いてえかというとだな・・・、こんな試験オレはぜんぜん堪えてないからな!!本当だからな!!



【ポックル】

*今食べたいものはなんですか?
ハハ・・、少し胃がやられてるからな、固形物はちょっと・・・。牛乳とか飲みたいかな。

*今食べたくないものはありますか?
辛いものと、パスタだ。

*なにか一言あればどうぞ
俺、この試験終わったらNGL に行くんだ・・。



【バーボン】

*今食べたいものはなんですか?
実は妻の生まれがジャパンの秋田での、ワシ、きりたんぽが好物なんじゃ。・・・丸呑み???できるわけないじゃろ?うちの蛇達じゃあるまいし。

*今食べたくないものはありますか?
辛いパスタ。あれはもう二度と食べたくないのう。

*なにか一言あればどうぞ
ところでワシ、なんで最後まで残れとんじゃろ?



【ポンズ】

*今食べたいものはなんですか?
・・・お母さんのハニービスケット

*今食べたくないものはありますか?
・・・パスタ

*なにか一言あればどうぞ
・・・もうお家に帰して





もはや詮無きことだが、あの時、誰か一人でも「甘いものが嫌い」とか、「まんじゅうこわい」とかいっていればあの悲劇は回避できたのだろうか。



最終試験は私達8人vs魔人藤村による「対決列島」と言う名の、ジャパン縦断、甘いもの早食い対決であった。何で勝負するかについては、われわれの意見をできるだけ汲み取ってもらえるらしい。さらに、


「みなさんの誰か一人でも私に勝つことができれば、全員の合格を認めましょう。・・まあ、その代わり、いつ勝負をするか、何をどれだけの量を食べるかは、コミッショナーである私が決めさせていただきます。」


ぜったいに負けるわけが無いという余裕からだろうか、藤村はこんなことをいいだした。一人でも勝てば、全員が通過できる。しかも相手は藤村一人、我々の勝機は十分にある筈だ。少なくとも最初はそう思っていた。


しかし、甘いものを水でも飲むかのように食べる髭面の男。笑いながら、常に一定の、しかし凄まじいスピードで、パイが、団子が、饅頭が、藤村の口の中へと消えていく。勝ってもなお、相手のずんだまで飲み込むその所業は、もはや人間の域を大きく逸脱していた。

目の前の光景に、われわれは、ただただ、息をのむことしかできなかった。


しかも、只でさえ勝ち目の無い戦いに「奇襲」「朝駆け」「4つともアンコ」という卑劣な作戦が私達の勝機を奪う。ゴンが、キルアが、レオリオが、ハンゾーが・・、次々と魔人の前に倒れていく。




・・・そして、最後の鹿児島での白熊対決、ここまで、0勝7敗、私達にはもう、後は無かった。



「文化的な食事」といった私の意見を反映して、わたしの品目は、カキ氷になったらしい。・・・しかし、その量はどうみても文化的ではなかった。しかも店の人間に無理を言って、ジャンボサイズのさらに2倍のおおきさ、1,5リットルサイズのカキ氷だという。カキ氷をリットル単位で数えるのは初めて聞いた。というか、この半分のサイズを普通に市販していることにも驚いた。



我々は、ジャパンの偉人、西郷隆盛の前でその雌雄を決することとなった。
西郷像以外は何の変哲もないただの公園。そこがわれわれのハンター試験の最後の舞台となったわけだ。


私と藤村の目の前には、バケツ一杯のカキ氷が鎮座していた。




「それでは、対決列島最終戦、白熊対決です。クラピカ選手が勝てば8人の受験生は全員合格!負ければユーコン!レディー・・ゴー!!!!」




なんだか不穏な単語が聞こえた気がしたが、私の気のせいだろう。勝っても負けてもこの試験官達とはもう二度と会うつもりはないのだから。

大泉の合図と供に、私と藤村は巨大なカキ氷に手を伸ばす。


「・・クッ・・!固い!!」


カキ氷の氷はその重量の為に、まるでこおりの塊のように固く引き締まっていた。さらに、無理に詰め込もうとすれば、頭に激痛が走る。これは人間の生理上仕方のないことではあるが。
対する藤村は、削氷と咀嚼を交互に繰り返し、やはり一定のペースでみるみると氷を減らしていく、

気がつけば、藤村のカキ氷はもう、半分ぐらいまで減っていた。私のカキ氷はまだ3分の2も減っていない。私の心を諦めが支配した、まさにその時だった。


「クラピカ頑張って!」


「諦めんじゃねえぞ!クラピカ」


「クラピカ・・、頼む!」


ゴンが、レオリオが、キルアが私のカキ氷のバケツに手を当てる。・・まさか、お前達!!


「おーっと、受験生チーム、これは、全員の体温でカキ氷を溶かす作戦か!?」


ゴンと、キルアと、レオリオの手が私のカキ氷のバケツを支える。さらに、私を囲み必死に応援つづける、ハンゾー、ポックル、バーボン、ポンズ。

カキ氷ですっかりいてついていた筈の私の体が、胸の奥から温かくなっていくのを感じた。


「みんな・・・!私は・・負けない!!!」


目に、暖かい物がこきあげてくる、そしてその時、生まれて初めて怒り以外で緋の目が発動した。


体の底から力が沸いてくる。私の体がなにかもやのようなものにつつまれた。プラスチックのスプーンに不思議な光が宿り、固かったはずの氷を、まるでプリンのように掘り進めることができるようになった。

さきほどまで私を悩ませていた筈の頭の痛みがスッと消えていく。氷による痛みを感じなくなった私は、いくらでも食べ進めることができた。

先ほどまであれだけ苦労していたのがまるで嘘のようだ。今ならタライ一杯の氷も食すことが可能だろう。


猛然とスパートし、追い上げていく私。バケツの中の氷がどんどんとその姿を消していく・・・。






・・・そして、結果は














負けました orz






わたしがスピードを上げるのを見るやいなや、藤村の体にも、なにか不思議なオーラのようなものが纏われるのが私にはみえた。
そして、残りの氷を口に一気に詰め込んだかと思うと、まるで鉄の玉を飲み込むおじさんのように、ぐいっとソレを飲み込んでしまった。
テレマークを決めた藤村の口内には、確かに一片の氷も残っていなかった。



あとで解ったことであるが、私や藤村がだしたオーラは「念」という能力らしい。私が念に目覚めた為、試験管も念を使い本気を出したのだろう。結果、にわか仕込みの私の念ではあの男に勝つことはできなかった。


そして、私に残されたのは、プラスチックスプーンで氷を簡単に掘ることができるという能力と、氷をいくら食べても頭が痛くならないという、メモリーの無駄遣いにしかならない二つの能力であった。

この二つの能力が私の今後のハンター人生の大きな足枷となってしまうのだが・・、まあ、それはまた別の話だ。




「いやー、最後は大接戦でした。しかし、残念ながら受験生チームの敗北ということで、今年のハンター試験の合格者はゼロということになります。それではみなさん、来年のハンター試験がんばってくださいね。」



そういって彼らはレンタカーで去っていった。



西郷像の前に残されたわれわれ八人、終りとは、斯くもあっけないものなのだろうか。

ほぼ、2ヶ月近くを費やした我々のハンター試験は、こうして幕を閉じたのであった。

西郷像の前の噴水が吹き上がる。西郷氏が、我々を慰めているように思えた。



しばしの間、静寂がその場を支配していた。3分だろうか、5分だろうか、一時間ほどあったようにも思える。

長い長い沈黙の後。誰からともなく、こういい始めた。



「・・・・次こそは・・・」


「ああ・・、次こそは・・・、」


「うん、次こそは・・・」


「次こそ・・、絶対に・・」




われわれ8人の願いは今、一つになっていた。








「「「「「「「「次こそは他の試験管でありますように!!!!」」」」」」」」









おわり、完結しました。







【エンディング曲】

自動車ショー歌(小○旭 with ゴン)



オヤジをマジタニみたくって、ヒソカに探すが、アベンガネ
   (間近に)      (密か)   (あかんがね)


あそこにイータとキルアけどー、カイトがいたゲンスルーしたー
    (いた)(聞いた)      (いたけん、スルーしたー)


おギタラクルまでキキョウする。ミトさんゴンコツ、もうネテロー
(起きたら車で) (帰郷)     (ゲンコツ)  (寝てろ)




******************************************


【能力名】
大魔神の胃袋(ホワイトベアー・リベンジャー)強化

【能力者】
藤村D(大魔神)

【能力】
甘いものならいくらでも食べられる。つーか、飲む。
白熊をも制した彼にもはや死角はない。

【制約】
ミスターとの白熊対決に勝利したこと。
それでもやっぱりすっぱいものだけは苦手。







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