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K−POP、したたかな海外戦略 

産経新聞 9月19日(月)2時39分配信

K−POP、したたかな海外戦略 
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K−POPの代表的存在となった「少女時代」。日本でも高い人気を誇る(写真:産経新聞)
【境界〜夢を見せる】(1)

 お盆時期の8月13、14両日、千葉・幕張で開かれた夏恒例のロックの祭典「サマーソニック2011」。国内外あまたの出演者の中、スペシャルゲストとして今年のトリを務めたのは、韓国ポップス「K−POP」の女性9人組グループ「少女時代」だった。

 東京・文京区の女性看護師(23)は、初めて少女時代のライブを見た。もともと硬派系のバンドが好きで、当初はK−POPを冷ややかにみていたが、高いレベルの歌とダンスに触れ「自分でも信じられないくらいハマった」という。

 会場では途中、音楽が途切れるハプニングがあったが、音が止まっても歌っていたことで、図らずも「口(くち)パク」でないことまで証明してみせた。「あれだけ激しい踊りをしながら歌うなんて…」。期待通りのライブを堪能した女性は「K−POPには新鮮さ、芸術性を感じる。今、あれだけのパフォーマンスができるアイドルは、日本にはいない」と言い切る。

 すらりとした痩身(そうしん)で繰り出す一糸乱れぬダンス、卓越した歌唱力、抜群のルックスで、昨年来、日本でも爆発的人気となったK−POPのガールズグループ。中でも少女時代は、5人組のKARAとともに、代表的存在として瞬(またた)く間にスターダムに駆け上がった。

 「これほど早く人気が沸騰するとは思わなかった」。傘下レーベルに両グループが所属する大手レコード会社「ユニバーサル・ミュージック」の小池一彦CEO兼社長(58)ですら、驚きを隠さない。両グループとも、若い女性ファンが多いのも特徴的だ。

 一方、番組制作などで15年来、アジア音楽の発信を手がけるNHKエンタープライズのエグゼクティブ・プロデューサー、山中宏之氏(43)は、日本の人気アイドル「AKB48」とK−POPグループとの違いを、明確に見つめる。

 「K−POPは『完成されたもの』としてのあこがれの対象、AKBは、親近感があり『一緒に育てていく』対象なのではないか」

 韓国発のエンターテインメントといえば、かつてはやぼったい印象もあったが、山中氏は「今の若者は、メードインコリアは、むしろクールでおしゃれととらえている」と話す。

 「完成されたもの」の背後には、すさまじい淘汰(とうた)がある。オーディションをくぐり抜け、養成所などで徹底的に鍛え上げられ、勝ち残った者だけがデビューできる。その後も続く熾烈(しれつ)な競争の中で、生き残れるのはごくわずかでしかない。

 K−POP界は海外進出を明確に見据え、10年来の試行錯誤を重ねながらノウハウを蓄えてきた。日本や欧米から質の高い音楽性やパフォーマンスを吸収する一方、言葉の壁を取り払う試みも戦略的に進めた。

 メンバーたちは驚くほど語学を勉強する。おおむねコミュニケーションが取れるレベルで進出先の言葉をマスターし、当地に一定期間滞在する。小池氏は日本での活躍について「素人っぽいアイドルが受けている中で、圧倒的なパフォーマンスを見せ、しかも日本語が話せるとなれば、人気が出るのは必然だ」と語る。

 したたかな戦略はこれだけではない。K−POP界は異業種産業を巻き込み、大手企業の製品とリンクさせるなどして海外に売り出している。インターネットの動画サイトを大胆に活用し、デビュー前からファンを広げる。国自体も、各国に文化関係の出先機関を作るなどサポートしている。

 K−POP人気は日本だけでなく、中華圏やタイにも及ぶ。国内市場のパイが小さいが故に、海外に打って出ることを否応(いやおう)なく求められる“宿命”を逆に強く自覚し、優れたエンターテインメントを擁して境界を越え、国家を挙げて突き進むさまが見て取れる。

 対して、日本の海外戦略はどうか。今月16日、人気グループ「SMAP」が初の海外コンサートを北京で開き、成功を収めた。しかし、国内に巨大市場を有する中で、トップアーティストが海外に滞在して本格的に売り出すような動きはほとんど見られない。

 「今や、海外での日韓の立場は完全に逆転しつつある」と山中氏。「経済は中国、文化コンテンツは韓国が強くなった。日本は何をカードに勝負していくのか」と危機感を募らせる。

 山中氏は日本のポテンシャルを信じつつ、ブランド力回復のため、異業種や官民の連携も含め、早急に手を打つべきだと強調する。

 「臆せずどんどんやっていかないと、切り開いていけない。すぐにでもやらないと、扉は閉まってしまう」

 ボーダーレス化の中、第1部では人材獲得など、第2部ではものづくりや技術開発の分野で隣国の台頭を見つめ、日本の在り方を探ってきた。第3部では文化や教育、スポーツに焦点を当て、あらゆるジャンルの第一線で躍進する隣国のパワーの源や問題点を追い、日本の針路を問い直す。

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最終更新:9月19日(月)2時39分

産経新聞

 

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