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真理を探究する科学研究の公正な発展のために

大阪大学大学院生命機能研究科長 近藤寿人

 

科学研究は、自然界についての真理(真実と原理)を明らかにする行為であり、科学者はその行為を社会から委託されています。

真理を探究する方法を設計するために、しばしば、さまざまな作業仮説(モデル)が用いられますが、研究はその作業仮説の肯定のために行われるのではなく、作業仮説と事実としての実験結果を対峙して、真理により接近するために行うものです。研究の過程で事実が曲げられれば、真理を明らかにすることはできません。

現代の科学では、複数の研究者が共同して作業を行うことが多いのですが、ある結論が導かれ、それが論文として発表(投稿)される際には、論文の内容と掲載されるデータが、研究に参加した科学者によって精査される必要があります。これは儀式ではなく、結論の根拠と結論についての誤謬を避けるのに不可欠なプロセスです。

大阪大学生命機能研究科では、当研究科の杉野明雄教授を責任著者とする2論文について、8月9日より研究公正委員会によって調査を進めるとともに、9月22日に調査結果を公表しました。この調査の結果は、次のように要約されます。
1.2論文とも、杉野教授が単独で行ったデータの捏造、改ざんを含む。
2.共著者全員による最終原稿確認と投稿の同意という当然とられるべき手続きを行わずに、杉野教授が2つの論文を投稿した。この作為のために、刊行にいたるまで、共著者による不正の発見を不可能にした。
3.データの捏造、改ざんには共著者たちは関わっていない。

この杉野教授の行いは、真摯な科学研究に対する著しい冒涜であり、また社会から委託された科学者の役割に反する、著しく反社会的なものです。

生命機能研究科は、科学研究上の不正防止を強化するために、次の対策を講ずることを確認しました。
1.研究倫理教育の強化:研究倫理に関する教育を、学生から教員に至るまでさらに徹底して実施すること。科学研究の不正の種をなくすことが大切です。
2.研究室の閉鎖性の排除:研究室をより開放的にし、研究室間の交流をより盛んにして、研究活動が閉鎖的になることを防止すること。このことが、研究の不正の芽を摘むことにつながります。
3.告発者の保護:雑誌の査読者の目をくぐり抜け、研究者によって認知されかけた不正が今回明るみに出たのは、共著者の勇気ある行動によるものです。このことを肝に銘じ、学術上の不正を正義にもとづいて指摘する行為者を保護する体制を、一層強化すること。
4.調査の公正性の保証:学生、研究員、教員が研究の不正に気がつき、告発を行おうとしたときに安心してそれを行えるよう、また被告発者の人権を損なわぬよう、公平に行う調査のプロセスを開示すること。
5.研究科全体による対応:学術上の不正にとどまらずさまざまの問題について、学生、研究員、教員などすべての研究室メンバーが研究室内では解決困難な問題に直面した時に、それを相談して解決するためのシステム、迅速かつ柔軟な対応ができる体制を、研究科内に制度として整備すること。

生命機能研究科は、本研究科の教授の行為が科学への信頼を著しく傷つけたことを深く反省し、自戒の念を持って、本調査報告書を以下に開示することに致しました。



不正行為があった疑いのある2論文に関する調査報告書(平成18年9月21日;9月22日公表)(PDF形式, 26.2MB)大阪大学大学院生命機能研究科 研究公正委員会

 

 

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