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自動車業界動向レポート 2006.01.28 No.445

復活するFiat:多彩な提携を活用し、2008年までに20の新型車を投入
2007年生産は210万台規模に回復



Fiatは、中核であるFiat Autoの不振によって2001年にGroupで最終赤字となり、Fiat Autoの欧州生産能力削減や人員削減等のリストラを行い、03年には航空機用エンジン部門Fiat Avioと保険部門Toro Assicurazioniを売却した。

Fiatによれば、Fiat Autoは既に、為すべきリストラの 80% を完了して (Groupでは20% 進行した段階)、engineering-driven な企業から market-oriented な企業に生まれ変わったとしている (05年第3四半期業績発表資料)。Fiat Autoを中心とする自動車部門の目標は、06年に営業損益Breakeven、07年に売上高比2~4% の営業利益である。


Fiat は2005年 2月にGMとの包括提携を解消したが、分野を限定したGMとの提携を維持している。また、PSA/Ford/スズキとの新たな提携を発表、インドのTata Motors、中国の上海汽車とも長期的な幅広い提携を検討中とされる。

モデル計画では、GMと共同開発したFiat Punto/Opel Corsa用platformとPremium platform、およびGMのEpsilon platformの3つの platform と、05年に発表したPSAとの小型商用車の共同開発およびFordとのFiat 500/次期型Ford Kaの共同開発、等の提携を活用して2005~08年に20の新型車と23のマイナーチェンジ車を発売する。これらのモデルには、06年から順次生産を開始する、新たなPowertrainが搭載される。


CSM Worldwide 社によれば、Fiat のLight Vehicle 生産は、06年には190万台、07年以降は210万台規模に回復する。加えて、Fiat車をベースとする他ブランド車生産が大幅に増加して、2010年には93万台に達する。Fiat 車との合計では、2007年に250万台規模、2009年には300万台規模となる。


■2005年は、Fiat Groupで4年振りに最終黒字見込み

Fiat Groupの2005年 1~ 9月業績は、Fiat Autoの営業赤字幅が6.7億Euroから3億Euroに半減した。

Groupの純損益は、財務面からの特別利益が (注)、税引き後で26億Euroに達したことで、04年の11億Euroの赤字から、13億Euroの黒字に改善した。また、Net Industrial Debt (販売金融部門を除く純負債) は04年末の94億Euroから05年9月末に47億Euroに半減した。

2005通年では、Fiat Autoの営業赤字が04年の8.4億Euroから3.4億Euro程度に縮小するとし、Fiat Groupの4年振りの最終黒字を見込んでいる。

Fiat Autoの世界販売台数は04年の176.6万台から、05年は170万台程度に減少する見込みだが、販売台数より収益性を優先させた結果としている。またPanda販売台数の18% がディーゼルエンジン車で、14% が4x4車、新型Cromaの23% がATを搭載するなど、上級仕様車の比率が拡大し、利益率が向上したとしている。

(注) 財務面からの特別利益の要因は、①GMとの包括提携解消に伴い、GMが支払った解決金15.5億Euro、②Italenergia Bis株式の売却、③銀行団からの融資30億EuroのFiat Group株式への転換。
■Fiat Group の業績 (100万Euro)
  1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 04. 1-9月 05. 1-9月
Net Revenues 48,123 57,555 58,006 55,649 47,271 46,703 33,419 33,404
Trading Profit
Operating Result
Result Before Taxes
Group Net Result
788
1,024
353
855
1,050
664
318
(497)
(445)
(762)
(4,817)
(3,948)
(510)
(1,298)
(1,900)
22
(1,577)
(1,586)
175
3
(696)
(1,084)
639
1,854
2,070
1,293
Net debt
Industrial net debt
Stochholders' equity
12,874 13,320 12,170 7,641 6,793 25,423
9,447
5,099
4,928 19,105
4,658
9,277
Investments in fixed assets
R&D costs
2,712
1,406
3,236
1,725
3,438
1,817
2,771
1,748
2,011
1,747
2,112
1,810
1,035 1,007
No. of Employees 221,319 223,953 198,764 186,492 162,237 160,549   174,183
資料:The Fiat Group in 2004, Interim report 2005.01-09
(注)1. 05年1~9月の Group 最終利益 1,293百万Euro には、以下の①~③を含む(いずれも税引き後)。
①GM が支払った解決金 857百万Euro。
②Italenergia Bis 売却益 878百万Euro。
③銀行団が 3年前にFiat Group に融資した 30億Euro を、株式転換したことに伴う特別利益 858百万Euro。
2. Trading profit は、売上高 - (販売原価 + 販売一般管理費 + R&D費 + その他経費)。
Operating results は、Trading profit - (資産売却損益 + リストラ経費 + その他特別損益)。
3. Net Debt は、総負債額から現金と受取勘定を控除した金額で、05年に会計基準を従来の Italian accounting principles から IAS/IFRS に変更するのに伴い、新たに採用した指標。
Industrial net debt は、連結負債から販売金融部門の負債を除いた金額。

 

■Fiat Group の部門別売上高・営業利益 (100万Euro)

 

  売上高 (Net Revenues) 営業利益 (注1)
2002 2003 2004 04.1-9 05.1-9 2002 2003 2004 04.1-9 05.1-9
自動車 (Fiat Auto) 22,147 20,010 20,539 14,297 13,971 (1,343) (979) (840) (666) (302)
Ferrari and Maserati 1,208 1,261 1,512 1,101 1,317 70 32 6 (24) 11
Fiat Powertrain
Technologies (注2)
- - - - 1,153 - - - - 22
大型商用車 (Iveco) 9,136 8,440 9,292 6,527 6,722 102 81 357 223 277
農機・建機 (CNH) 10,513 9,418 9,796 7,622 7,628 163 229 407 478 538
鋳鍛造部品 (Teksid) 1,539 844 911 681 773 27 12 35 35 33
部品 (Magneti Marelli) 3,288 3,206 3,804 2,847 2,919 (16) 32 116 118 113
生産システム (Comau) 2,320 2,293 1,716 1,213 1,091 (101) 2 32 10 10
航空機エンジン (FiatAvio) 1,534 625 - - - 210 53 - - -
出版・通信 (Itedi) 360 383 407 302 286 3 10 12 8 9
Business Solutions 1,965 1,816 1,572 754 559 67 45 36 29 21
保険 (Toro Assicurazioni) 4,916 1,654 - - - 147 44 - - -
その他・連結調整 (3,277) (2,679) (2,846) (2,343) (2,399) (91) (71) (139) 1 (63)
Fiat Group 55,649 47,271 46,703 33,419 33,404 (762) (510) 22 175 639

 

資料:The Fiat Group in 2004, Interim report 2005.01-09
(注) 1. 04年までの営業利益は Operating Result、04/05年 1~ 9月の営業利益は Trading profit。
2. Fiatは、Fiat-GM Powertrain を解消した後、Fiat/Iveco/Magneti Marelli の Powertrain 部門を統合し、
新ビジネスユニット Fiat Powertrain Technologies を設置した。
3. Fiat Avio と Toro Assicurazion は 2003年に売却。

 

■自動車部門は、2006年に営業損益をBreakeven、07年に2~4% の営業利益率を見込む

Fiatは2006年に、Fiat Autoを中心とするAutomobiles部門営業損益のBreakeven と Fiat Groupで7億Euro以上の純利益、07年にはAutomobiles部門で営業利益率2~4%、Groupで16~20億Euroの純利益を達成するとしている。

■Fiat Group:利益と Cash Flow の目標

  2004年実績 2005年目標 2006年目標 2007年目標
営業利益 Break-even 達成     売上高比 5-6%
Cash Flow     営業 Cash Flow プラス  
純利益   特別利益により黒字
転換(GMからの入金等)
7億Euro以上 16~20億 Euro

■部門別営業利益率目標

  2004年実績 2005年目標 2006年目標 2007年目標
Automobiles (4.2%) (1.5%) Breakeven 2-4%
CNH 4.7% 6-6.5%   10%
Iveco 4.2% >4%   7.5%
Components 2.6% ~3%   5-7%

 

資料:Fiat 広報資料 06.01.14
(注) Automobilesは、Fiat Auto, Ferrari, Maserati と Fiat Powertrain Technologies。
Components はMagneti Marelli と Teksid。

 


■2005~08年に、20の新型車と23のマイナーチェンジ車発売を計画

Fiatは、今後数年間に発売する新型車のplatformと主要部品の準備を完了したとし、2005~08年の4年間に、20の新型車 (フルモデルチェンジ車11と新規モデル9) と23のマイナーチェンジ車を投入する計画。08年のモデル年齢はFiatの歴史上最も若くなり、09年には生産台数の 75% 超を4つの主要platformをベースに生産する計画としている (05年には、6つのplatformベースで75% を生産した)。

FiatはGMとの包括提携を05年02月に解消したが、共同開発したPremium用 platform/Small用platformおよびGMのEpsilon platformを使用できる契約を結んでおり、05年5月発売のupper-medium車Fiat CromaはGMのEpsilon platformベース。05年に発売したAlfa Romeoブランドの4モデル・ボディースタイルと、08年発売予定のFuture high-end range車は、GMと共同開発したPremium platformベースの開発。

■新型Puntoベース車で、年産100万台を計画

FiatはGMと共同開発したSmall用platformを使用することで、05年秋に発売した新型Puntoの開発費を90百万Euro節減できたとしている (開発と設備への投資総額は900百万Euro)。

PuntoはFiat最大の量販車で、新型Punto をFiat復活のキーモデルとして、イタリアのMelfi工場の年産36万台の設備に加え、06年にMirafiori工場に年産10万台のラインを設置、欧州で年販45万台とする計画。

FiatはPunto (3ドア・5ドアハッチバック) とPuntoベースのD200 (4ドアセダン) を、world carとして途上国で販売している Palio (ハッチバック)/Albea (セダン) の後継車として、07年から順次、トルコ、ブラジル、中国で生産する。トルコで07年からPSAと共同生産する小型商用車Minicargoと08年発売予定のMinicargo Panoramaも新型Puntoベースで、2010年までにPuntoベース車の世界年産を100万台とする計画。

Lanciaブランドでは、スズキからOEM供給を受けるSUV、次期型Fiat StiloのLanciaバージョン、Fulviaコンセプトに基づくクーペの、新規3モデルを06~07年に投入する。

■Fiat:乗用車と小型商用車の、新モデルと Platform の計画

青色表記は platform を GM と共有するモデルで、Croma は GM の Epsilon platform ベース、Punto/D200/Panorama/Minicargo は GM と共同開発した small セグメント用 platform ベース (GMはOpel Corsa に使用)、Alfa Romeo の5モデルは Saab と共同開発した Premium platform ベース。小型商用車の Scudo/Ducato は PSA との共同開発・共同生産車。
  2005年 2006年 2007年 2008年
Fiat Croma (注1) Future C Segm.
(注3, 注4)
500 (注5) Future MPV (注7)
新型 Punto (注2) D200 (注6) Minicargo Panorama
SUV (スズキが供給)    
Lancia   SUV (スズキが供給) New C/D Segm. (注3)
Specialty (注8)
 
Alfa Romeo 159 Sedan
Brera (クーペ)
159 Sportwagon
Brera Spider
  Future C Segm. (注3) Future high-end range
(Kamal コンセプト)
小型商用車   Future Scudo
Future Ducato
Minicargo  

 

資料:Fiat 広報資料 05.08.03, Automotive News 05.09.19, その他
(注) 1. Fiat Croma は Fiat ブランドの新しい Flagship モデルで、94年に前代 Croma の生産を中止して以来のUpper-medium セグメントへの参入。GM の Epsilon platform を使用し、Opel Signum とボディーパーツやパワートレインを共有する。
2. 新型 Punto は、開発と設備投資に 900百万Euro を投資。全長は 4,030mm で、Renault Clio やVW Polo を含む欧州の B セグメントで最大。7つのエアバッグ, ABS, ESP 等、装備も最高レベル。
3. Fiat/Lancia/Alfa Romeo ブランドの Future C Segm.は、次期型 Fiat Stilo/Stilo の Lancia バージョン/次期型 Alfa 147 で、現行 Stilo の platform を使用する計画とされる。
4. 次期型 Stilo は 5ドアハッチバック車のみとし、3ドア車は車体を一回り大きくした Punto の 3ドア車、ワゴンはミニバン Multipla (06年初めにマイナーチェンジ、08年にフルモデルチェンジを予定) でカバーする計画。
5. Panda をベースに、Ford と Fiat 500/Ford Ka 後継車を共同開発する。
それぞれ年 12万台、合計年 24万台をポーランド工場で生産する。
6. D-200 は新型 Punto ベース (3ドア・5ドアハッチバック) の 4ドアセダン。Albea (Palio ベースのセダン) の後継車として、トルコ, ブラジル, 中国で生産予定 (現行 Albea はトルコのみで生産している)。
7. Future MPV は次期型 Multipla とされる。
8. 2003年 Frankfurt Auto Show に出展した Fulvia コンセプトに基づくクーペとされる。

 


■新ビジネスユニットFiat Powertrain Technologiesを設立、外販拡大を目指す

FiatはFiat-GM Powertrain解消後、05年3月にFiat Powertrain Technologiesを設立した。新技術を開発してFiat/Ivecoの商品ラインアップ強化を図るとともに、現在20% のPowertrain外販比率を高める計画。

GMとの新合弁会社が運営するポーランド工場での1300ccディーゼルエンジン生産も、07年央を目処に、年産規模を1.5倍の80万基に拡大する計画。

■05年 3月、新ビジネスユニット Fiat Powertrain Technologies を設置

Fiat は、Fiat-GM Powertrain の解散を受け、05年 3月に新しいビジネスユニット Fiat Powertrain Technologies を設置した。Fiat/Iveco/Magneti Marelli のパワートレイン部門を統合し、従業員数 23,000人、12ヶ国に 26工場と 12のR&D施設を持つ。年間 220万基のエンジンと 200万基のトランスミッションを生産し、売上高規模は約 60億Euro。05年の売上高比率が約 20% のグループ外売上の拡大を目指す。

■ポーランド工場 (GMと合弁) のディーゼルエンジン生産を年 80万基に拡大

Fiat と GM は包括提携解消後も、1300cc ディーゼルエンジンを生産するポーランドの Bielsko Biala 工場を折半出資の合弁で運営する。07年央を目処に生産量を 45% 拡大し、年産 80万基レベルに引上げる計画。1300cc ディーゼルエンジンは Fiat Panda/Punto/Doblo, GM Agila/Corsa/Meriva, スズキ Wagon R+/Swift 等が搭載。Fiat と Ford が共同開発し、07年から生産する Fiat 500/Ford Ka 後継車も搭載する計画。

資料:Fiat広報資料 05.03.24, Automotive News 05.11.28

■多様な新Powertrainを開発して、商品力を強化

Fiat Powertrain Technologiesは、16バルブ1400ccガソリンターボエンジン、1600ccコモンレール式ディーゼルエンジンを新開発し、いずれも2007年から生産する。

各シリンダーの空気吸入量を均一にすることで性能と燃費を向上させるMultiair Technologyも開発中で、08~09年に実用化予定としている。 同じ技術を使用する2~3気筒の小型エンジンも、2010年の実用化を目処に開発中。

なお、04年発売のPanda 4x4、Alfa Crossowagon Q4で開始した4WD車設定によるラインアップ強化も継続する。

■新しい Powertrain を開発し、商品力を強化
■商用車用 6速MT を新開発し、06年から生産

Fiat は商用車用 6速MT を新開発し、06年から Termoli 工場で生産する。現行の PSA 製 MT を代替する計画。

■1400cc ガソリンターボエンジンを新開発、07年から生産

Fiat は 1400cc 16バルブのターボガソリンエンジン (Fire Engine と呼称) を新開発し、07年から Termoli 工場で生産する。段階的に、現行の自然吸気 1600cc/1800cc エンジンを代替する計画。

■1600cc コモンレール式ターボディーゼルエンジンを新開発、07年から生産

Fiat は 1600cc コモンレール式ターボディーゼルエンジンを新開発し、07年から Pratola Serra 工場で生産する。現行の 1300cc/1900cc Multijet ディーゼルエンジンの中間の位置付けで、1900cc ディーゼルエンジンの 100hp/120hp バージョンを代替する計画。

■性能を高め、燃費を向上させる Multiair Technology を 08~09年に実用化

Fiat は約 10年間をかけて開発してきた Multiair Technology を 08~09年に実用化するとしている。各シリンダーの空気吸入量をモニターし、電子制御により均一化することにより、2000cc ガソリンエンジンの場合で出力を 7%、トルクを 9% (低速域では20%) 向上させ、CO2 排出量を 8.5% 削減できるとされる。ディーゼルエンジンに適用した場合は、燃焼温度を下げ、NOx を減少させる効果があるとされる。

■CO2 排出量 100g/km 以下の、2~3気筒小型ガソリンエンジンを開発

Fiat は、電子バルブ制御 Multiair Technology を活用した、2~3気筒の低公害エンジンを開発中で、2010年を目処に生産する計画。排気量 1000cc 以下で、CO2 排出量は 100g/km 以下の計画。Ford と共同開発する Fiat 500/次期型Ford Ka に搭載予定とされる。

■06年後半に Panda CNG 車を投入、CO2 排出量は 105g/km 以下

Fiat は 06年後半に、1200cc ガソリエンジン車ベースの Panda CNG 車を投入する計画。CO2 排出量は 105g/km 以下。Fiat は、Punto/Multipla/Doblo に CNG 車を設定しており、欧州の CNG 車市場シェアは 50% 以上。

資料:Fiat 広報資料 05.08.03, Automotive News Europe 05.08.22


■GMとの包括提携解消後、PSA/Ford/スズキとの新たな提携を発表

Fiatは2005年 2月にGMとの包括提携を解消した後、分野を限定した新たな提携を、相次いで発表した。インドのTata Motors、中国の上海汽車とも、長期的に幅広い提携を検討中。

■PSA/Ford/スズキと共同開発・共同生産

Fiatは1978年から小型商用車とミニバンで提携しているPSAと、新たに小型商用車を共同開発し、トルコで生産する提携で合意した。FordともAセグメント乗用車を共同開発し、07年からポーランド工場で生産する。スズキからのSUVのOEM供給では、当初計画のFiatブランドに加え、LanciaブランドでのOEM供給も受けると発表した。(これらの提携では、開発・生産投資は新モデルを生産するTofas、Fiat、スズキが行う)

■PSA/Ford/スズキとの共同開発・共同生産
■PSA と共同で小型商用車を開発し、08年からトルコで年 13.5万台生産

Fiat, PSA, Fiat のトルコ合弁パートナー Tofas の 3社は、共同でエントリーレベルの商用車 (仮称 Minicargo) を開発し、08年から Tofas で生産する計画を発表した。新型 Punto の platform をベースに、年 13.5万台生産し、2/3 を Peugeot/Citroen ブランド、1/3 を Fiat ブランドで生産する。開発と生産設備への投資額は約 350百万Euro。

■Ford と共同で A セグメント車を開発、07年に新型 Fiat 500 として発売

05年11月、Fiat と Ford は共同で A セグメント車を開発する契約に調印した。ショートホイールベースの Panda 用 platform をベースとした 4人乗り 3ドア車で、全長 3400mm (日本の軽自動車と同じ)。07年に、Fiat は Fiat 500 として、Ford は次期型 Ka として発売する。Fiat のポーランド Tychy 工場で、各年 12万台生産する計画。スタイルを差別化するため、ドアも含めてボディーパネルは共有しない計画とされる。

■スズキ製小型 SUV を、Fiat/Lancia ブランドで発売

Fiat とスズキは03年 4月、スズキが開発する小型 SUV の Fiat への OEM 供給で合意。スズキ Swift ベースで開発してスズキのハンガリー Esztergom 工場で生産し、Fiat ブランドで06年から年 2万台 (モデル名はSedici) 、Lancia ブランドで07年から年 1万台を供給する。スズキ製 1600cc ガソリンエンジンと Fiat 製 1900cc ディーゼルエンジンを搭載。Fiat は87年に off-roader SUV Campagnola の生産を中止して以来、19年ぶりで SUV を発売する。

資料:Fiat 広報資料 05.03.31/ 05.11.07, Automotive News Europe 05.08.22

■インドのTata Motors、中国の上海汽車と、幅広い提携を検討

FiatはインドのTata Motorsとの完成車やパワートレイン相互供給での協力関係を検討することを発表、将来は東南アジア市場への輸出用を含めてインドでの合弁生産も検討するとされる。

中国の上海汽車とも、既に南京汽車と提携している乗用車を除いて、幅広い分野で協力する計画とされる。

■インドの Tata Motors、中国の上海汽車と幅広い提携を検討
■インド Tata Motors と、完成車・パワートレインの開発と相互供給で提携

Fiat とインドの Tata Motors は05年 9月、完成車やパワートレインの開発、相互供給等での協力関係を検討することで合意した。具体案として、Fiat が D200 やブラジルで生産する乗用車ベースのピックアップ Strada を供給、Tata がフレーム構造のピックアップ 207DI を Fiat の南米事業に供給、またFiat がディーゼルエンジンを供給、Tata は Fiat がインドで生産する Palio にガソリンエンジンを供給、等を検討中とされる。
Tata Motors は売上高 47億ドル。欧州ではイタリア, スペイン, 英国等で、Safari SUV, Safari ベースのピックアップ TL、小型乗用車 Indica を販売しており、欧州でのラインアップを拡大する方針とされる。

■中国の上海汽車と、乗用車以外の分野で幅広い提携を検討

04年12月、Fiat Group の商用車メーカー Iveco は、中国の上海汽車と長期的な提携関係構築について基本契約を締結した。Fiat Group は、南京汽車と提携している乗用車分野を除き、長期的に、Iveco の中大型商用車にとどまらない幅広い分野で協力していく方針とされる。

資料:Fiat 広報資料 05.09.22, Automotive News Europe 05.11.14, その他

■スズキへのディーゼルエンジンのライセンス供与を2000ccにも拡大

スズキは、ハンガリー生産車に搭載する1300ccディーゼルエンジンを、ポーランドのFiat/GM合弁から購入してきた。加えて、05年秋から、スズキはインドMaruti Udyogで、Fiatのライセンスによる1300ccディーゼルエンジン生産を開始した。Fiatは更に2000ccディーゼルエンジンのライセンスをスズキに供与すると発表、スズキは2010年までにアジアで生産を開始する。

■スズキへのディーゼルエンジン・ライセンス供与を拡大
■スズキが Fiat のライセンスで、1300cc ディーゼルエンジンをインドの Maruti Udyog で生産

Fiat は04年5月、スズキに 4気筒 1300cc ディーゼルエンジンのライセンスを供与し、スズキは05年秋にインドの Maruti Udyog で生産を開始した。同じエンジンを欧州では、Fiat/GM 合弁のポーランド Bielsko Biala 工場が、スズキがハンガリー工場で生産する Wagon R+、Swift 等に供給している。

■Fiat がスズキに 2000cc ディーゼルエンジンのライセンスを供与

Fiat とスズキは05年10月、Fiat がスズキに、EuroⅤ規制に対応する 2000cc Multijet コモンレール式ディーゼルエンジンのライセンスを供与すると発表した。スズキはアジアで (インドが有力候補地とされる)、2010年までに生産を開始する。当初の年産規模は 10万台の予定だが、規模拡大も検討する。Fiat Group の Magneti Marelli がコモンレールシステムを供給する。

資料:Fiat 広報資料 04.05.19/ 05.10.20, Automotive News Europe 05.10.31


■イタリア国内で、2008年に135万台を生産、稼動率100% を目指す

Fiatによると、イタリア国内での Fiat Autoの年産能力は2005年時点で143万台だが、08年には136.5万台に縮小する (07年10月からの環境規制強化に対応して、05~07年に150百万Euroを投資して塗装工程を水性塗料使用に改装するため。生産能力減少は、水性塗装化により塗装スピードが落ちるためだが、Fiat は当面の能力としては十分としている)。

Fiat Autoのイタリア国内での生産台数は、04年が90万台強、05年見込みが約100万台。08年計画は135万台で、ほぼ100% の稼働率とする計画。

■ブラジル工場に380百万Euro超を投資、イラン/ロシア/セルビアではKD生産開始

イタリア国外での生産では、Fiatは2005~07年の3年間にブラジル工場に380百万Euro超を投資すると発表した。主に先端技術とブラジル工場での生産車種開発に投資するとしている。ブラジル工場は05年後半からイランへのKDセット供給を開始し、07年からは新型PuntoとPuntoベースのセダンD200の生産を順次開始する。

03年からPandaを生産しているポーランドのTychy工場は、07年からFiat 500とFord Ka後継車をそれぞれ年12万台、合計24万台生産する。

Fiatはこの他、05年後半からイランで、07年からロシアとセルビアでKD生産を開始する計画を発表した。

■05年からイランで、07年からロシアとセルビアで KD 生産を開始
■05年後半からイランで Fiat の 7モデルを KD 生産、08年に 10万台生産を計画

Fiat はイランの PIDF (Pars Industrial Development Foundation) と提携し、05年後半から Fiat の Multipla, Palio 等 7モデルを KD 生産する。PIDF は 200百万Euro を投資して、08年までに年産 10万台、2011年までに年産 25万台を目指す。Multipla や Doblo は、ガソリンと CNG を使用できる bi-fuel 車とする計画。Multipla の KD セットはイタリアから供給。他のモデルはブラジルから KD セットを供給するが、エンジンは中国の南京 Fiat から供給する。

■07年から、ロシアで Palio と Albea を KD 生産

Fiat は06年 1月、ロシアの Severstal Auto と提携し、07年からロシアの Naberejniye Chelni工 場で、Fiat Palio/Fiat Albea を生産すると発表した。Palio と Albea を生産しているトルコの Tofas が KD セットを供給する。両社は生産モデルを Fiat Doblo 等に拡大することも検討している。Severstal Auto は、Fiat の完成車も輸入販売する計画。

■07年初めから、セルビアで Punto を年 16,000台 KD 生産

Fiat は05年09月、セルビア・モンテネグロの自動車メーカー Zastava と、Punto の販売と KD 生産について調印した。Zastava は07年の第1四半期から、年 16,000台の Punto を KD 生産する。生産開始までに、Fiat は約 7,000台の Punto 完成車を供給する。Zastava は1955年から Fiat 600D をライセンス生産した経緯がある。

資料:Fiat 広報資料 05.01.26/ 06.01.03, Automotive News Europe 05.10.03


■2007年には210万台規模に回復するFiat の世界生産 (CSM Worldwide予測)

CSM Worldwide社によれば、FiatグループのLight Vehicle 生産は、世界合計で2005年の168万台から、06年は190万台、07年以降は210万台規模に回復する。イタリアでの生産は05年の70万台から06年88万台、07年以降は96~97万台の規模に拡大し、ブラジルは50万台強の規模を維持する。

加えて、FiatをDesign Parentとする他ブランド車生産が、大幅に増加する。2010年にはOpelブランド72万台、Fordブランド12万台、Peugeot-Citroenブランド8万台強等で、合計93万台に達する。Fiat グループブランドとの合計では、2007年に250万台規模、2009年には300万台規模となる。

■Fiat の国別 Light Vehicle 生産台数 (CSM Worldwide予測) (台)
Country Brand 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年
Brazil Fiat 432,076 493,701 553,892 566,055 567,740 565,546 503,863
China Fiat 25,895 30,299 44,221 57,006 53,527 62,871 76,906
Lancia     2,363 5,777 5,638 5,096 4,090
Total 25,895 30,299 46,584 62,783 59,165 67,967 80,996
India Fiat 6,575 1,628 7,048 43,384 43,864 41,678 43,640
Iran Fiat   684 7,435 11,303 16,272 19,328 15,420
Italy Alfa Romeo 161,668 146,494 212,143 215,770 253,676 260,188 253,639
Ferrari 4,954 4,929 4,987 4,875 4,825 4,775 4,793
Fiat 534,443 423,666 548,788 638,023 594,038 571,505 566,474
Lancia 110,565 121,316 104,153 96,372 97,813 123,477 134,434
Maserati 5,106 6,230 7,106 8,602 10,305 12,764 13,793
Total 816,736 702,635 877,177 963,642 960,657 972,709 973,133
Poland Fiat 306,427 290,780 255,181 237,266 303,619 275,719 274,800
Hungary
(注2)
Fiat     14,280 25,053 23,545 22,214 19,553
Lancia     2,666 12,871 10,084 9,745 8,742
Total     16,946 37,924 33,629 31,959 28,295
South Africa Fiat 5,797 6,814 6,727 6,639      
Thailand Alfa Romeo 112            
Turkey Fiat 145,792 152,143 144,034 147,153 183,691 181,801 184,177
Venezuela Fiat     1,320 7,792 10,234 10,599 10,677
Total 1,739,410 1,678,684 1,916,344 2,083,941 2,178,871 2,167,306 2,115,001
■Fiat が Design Parent の他ブランド車生産
Brand Country 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年
Opel France             25,528
Germany     46,200 115,770 129,823 153,230 153,041
Portugal         58,477 67,024 65,737
Spain     82,970 250,642 286,909 243,133 237,095
Poland         97,731 198,203 232,667
Ukraine       57 407 969 984
Total     129,170 366,469 573,347 662,559 715,052
Ford Poland         66,541 114,654 119,006
Peugeot/Citroen Turkey       11,821 81,255 86,006 83,029
Yugo Serbia-
Montenegro
    550 8,268 14,556 14,729 15,000
Total     129,720 386,558 735,699 877,948 932,087

 

Grand total 1,739,410 1,678,684 2,046,064 2,470,499 2,914,570 3,045,254 3,047,088

 

資料:CSM Worldwide "Light Vehicle Forecast (October, 2005)"
(注) 1. Light Vehicle は乗用車と車両総重量 3.5t以下の小型商用車。
2004年実績、2005年実績見込みも CSM Worldwide による。
2. Fiat が Design Parent のモデルの生産だが、
Hungary でのFiat/Lancia の生産車はスズキが Design Parent。
3. 本表の無断転載を禁じます。転載には CSM Worldwide 社の許諾が必要となります。

 


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