非国民通信

未来なんてあるわけがない

こんな調子で人員削減が進められてはたまらない

2011-06-04 23:02:42 | ニュース

「中電のリストラでやって」 岡田氏、燃料費増加分負担を拒否(中日新聞)

 中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)の全面停止を受け、夏場の電力不足が心配される愛知県の大村秀章知事ら中電管内5県の幹部が31日、衆議院本館に民主党の岡田克也幹事長らを訪ね、電力の安定供給の確保をあらためて要請した。電気料金値上げにつながる懸念から、火力発電への切り替えに伴う中電の燃料コスト増加分を国が負担するよう求めたが、岡田幹事長は「中電のリストラでやってほしい」と拒否した。

 停止した原発分を火力発電で補うと中電の燃料コストは2500億円増加するとされる。大村知事は「浜岡は法律に基づかない国の要請による停止。そのコスト上昇分を中部の産業界などがかぶるのはいかがなものか」と反論したが、岡田幹事長は「党として(国の)負担は認めない」などと話したという。大村知事は今後、民主党へ再検討を要請する考え。要請に訪れたのは、長野県の和田恭良副知事と岐阜、三重、静岡各県の東京事務所長。

 原発は実は高いのだと主張するのが昨今では流行りでもありますが、取りあえず当座の運転に必要な電力会社が負担する燃料代は、ロクな準備期間もなく迫られた浜岡原発停止によって増大せざるを得ないのでしょう。日本を筆頭に外国でも発作的な反原発に傾くところもあって発電目的での燃料需要が急増しているようですが、これは必然的に価格高騰の要因ともなります。電力会社も燃料サーチャージの導入を検討するなんてこともあるかも知れませんね。

 東京電力のケースでもわかるように、世論は税負担での電力会社支援を好みません。そうなると電力会社は電気料金を値上げする形で埋め合わせすることになりますから、概ね税金による損失補填を行った場合よりも逆進的な形で国民が負担を強いられる形になるわけです。そういう「結果」までを考えるのなら、税金による穴埋めの方が弱者に優しいと言えますが、まぁ普通の人はそこまで考えないのでしょう。かつては弱者を慮る風を装っていた人でも、最近はすっかり頭がメルトダウンしている人が多いようですし。

 というより、いかに重く「罰する」か、それこそ世論が追求しているものであるようにも思われます。そのためなら後先考えず、とにかく電力会社及びそこに所属する人々にとって最も「損」になる決定を期待している人が多いのではないでしょうか。だから公的な支援などもってのほか、従業員のリストラや賃下げを歓迎する気運も高まるばかりです。ましてや重大事故を起こした東京電力の煽りを受けて、電力会社と言うだけで悪者にされがちな時代でもあります(九州電力の営業所には火炎瓶が投げ込まれたとか)。東京電力がJAL化しそうだと以前に書いたものですが、どうも中部電力までJAL化させようと政府与党の幹事長が煽り立てているようです。

 しかるに、人件費を削って得られるものなどたかが知れています。先日の公務員を対象とした給与削減の場合でも触れたことですが(参考)、人件費削減で捻出できる額など組織全体から見れば微々たるもの、にも関わらずそこで働く人の生活には深刻な影響を及ぼすわけで、まぁ本来であれば避けるべき事態です。だからこそ「本来であれば」リストラは最後の手段であるはずなのですが、実際はどうでしょうか。どうにも売上を伸ばすことよりコストカットの方を目的としているかの如き経営も目立ちますし、公務員なりJALなり電力会社なり「嫌われ者」の賃下げや人員削減には世論も快哉を叫ぶばかりです。まぁ世論に歓迎されているという意味では国民の「心」を満たす行為ですらあるのかも知れませんが、いうまでもなく国民の財布は満たされません。

 増加する燃料コストをどこがどういう形で負担するかには議論の余地があるのかも知れませんが、「リストラで」というのが最低最悪の方法であることだけは間違いないと言いたいです。それが世論の支持を得やすいものであるとしても、やはり労働者としての権利が侵害されようとしている、それを政府が推奨しようとしていることには断固として立ち向かうべきです。善良な市民が電力会社を攻撃したとき、私は声をあげなかった、私は電力会社の社員ではなかったから―― そう悠長に構えていると、いずれは労働者全体に災禍が及ぶことでしょう。今の政治家に利害調整なんて望むべくもないのは諦めるほかないとしても、労働者なりその他の「嫌われ者」にツケを押しつけることで自己の正当化を図るような輩をのさばらせるようなことだけは、あって欲しくないものです。

 

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3 コメント

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Unknown (ノエルザブレイヴ)
2011-06-05 16:56:26
かなり前になるかと思いますが日ハムのヒルマン前監督によるマネージメントについての講演だかで「へこませる必要がどこにありますか?」と聴衆に言った、というような記事が紹介されていた記憶があります。確かに説教や叱責は成長のために行われるべきだと私も思いました。
しかるに「いかに重く「罰する」か、それこそ世論が追求しているものであるようにも思われます。そのためなら後先考えず、とにかく電力会社及びそこに所属する人々にとって最も「損」になる決定を期待している人が多いのではないでしょうか。」という状況になってきていることはどうにも否定できないことであり…。つまり「へこませる」ことが最も求められているように私にも思われるのです。
定数削減と根が同じ (不肖の弟子)
2011-06-05 18:36:30
大阪で、府議会の定数削減が強行採決されたことは、ご存じのとおりです。

一票の格差が3倍強になるし、少数派や立場の弱い人々に耳を傾けようとする議員を消そうとしているのにもかかわらず、孫崎亨のように「88議席の中に選ばれる努力をしろ」と本末転倒のことを言う人間がいるからタチが悪いです。
Unknown (非国民通信管理人)
2011-06-05 18:50:10
>ノエルザブレイヴさん

 ひたすら「悪」を糾弾するばかりで、原発問題の早期収拾や今後の電力供給の安定のために何が求められるかという観点など窺うことすら出来ない意見が多いですからね。かつては冷静な態度を取ってきた人でも、原発や電力会社が相手となると橋下みたいなのとまるっきり同じような主張を叫ぶばかりの人が多いですし。

>不肖の弟子さん

 世論が「敵」なり「悪」として認定した対象への態度とはそういうものです。より深刻なのは橋下がやるような憎悪扇動を、相手が電力会社となるや橋下に反対している「つもり」の人までが賛同しているところですね。

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