2010年12月9日
遠藤さんは当初、自ら三朝書を入手する考えはなかったが、96年ごろから地元の女性たちが手元に残る三朝書を海外から来た人に売り始めたと聞き、散逸を防ぐためにもと資料として集め始めた。中国の研究者らが私有しているほか、何冊かは地元政府なども所有しているとみられるが、現存数は不明で、遠藤さんの三朝書は希少価値がある。
遠藤さんは、中国の機関への寄贈も考えたが、在日中国人研究者の協力で中国語と日本語に訳していることなどもあり、保存体制の整った国会図書館に15冊を寄贈。同図書館は一般への閲覧も考えていくとしている。
「女文字が使われていた地域は50歳以上の女性の識字率は1割に満たない。女たちが集まって織物や刺繍(ししゅう)をしながら詩を詠み、遠くに嫁ぎ、会えなくなる『姉妹』への思いを伝える手段として文字が必要だったのだろう」と遠藤さんはみている。(編集委員・大久保真紀)