事件【主張】敬老の日 災害弱者つくらぬ配慮を2011.9.19 03:11

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【主張】
敬老の日 災害弱者つくらぬ配慮を

2011.9.19 03:11

 今日は「多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う」と祝日法にうたわれた「敬老の日」である。

 しかし、東日本大震災や原発事故によって避難所、仮設住宅などで困難な生活を強いられている多くのお年寄りは、この日をどんな思いで迎えたことだろう。一刻も早く安らぎの日々が戻ってくるよう願ってやまない。

 警察庁によると、大震災における死者(身元判明分)のうち約56%が65歳以上の高齢者だった。一概には決めつけられないが、災害時にはどうしても体力的な制約を受ける高齢者が逃げ遅れたり、傷病を引き起こしたりするケースが多くなる。

 紀伊半島を中心に大きな被害をもたらした先の台風12号の時も、夜の暗がりの中を避難するのをためらったお年寄りが多かったといわれている。

 「長寿大国」であるわが国は同時に、地震や津波、台風などの脅威に頻繁にさらされる「災害大国」でもある。そこで防災面だけでなく万一の被災時についても、例えば段差のない仮設住宅の普及や孤独化の防止といった、高齢者が「弱者」とならないようなきめ細かな施策が望まれる。

 平成23年版『高齢社会白書』(内閣府)でも、「東日本大震災への対応」と題する一項が設けられ、被災高齢者が適切な介護サービスを受けられるような取り組みに言及している。

 もちろん行政だけに任せるのではなく、家庭でも高齢者への日常的な配慮が欠かせない。避難しても持病の薬がなく、薬の名前を本人が思い出せない例もあった。身元を書いたメモのほか当座の薬を緊急持ち出し袋に入れておくことや、避難時に眼鏡や入れ歯も忘れないよう注意することなども、家族の重要な役目だろう。

 もっと心配なのは、核家族化によって高齢者だけの世帯が急増していることだ。普段から近所の人たちに病名やかかりつけの病院名などを知ってもらっていれば、いざというとき救いの手も差し伸べてもらえるだろう。

 災害はいつ襲ってくるか分からない。高齢者が災害弱者とならないような安心できる長寿社会の実現のために、個人レベルでも今日からできる対策はいろいろとあるはずだ。「敬老の日」をきっかけに、みんなで考えてみたい。

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