「戦線を離脱することをお詫(わ)びいたします」--。18日、JR北海道の中島尚俊社長(64)が遺体で発見され、同社は緊急会見を開いて社員向けの遺書の内容を公表した。5月のJR石勝線トンネル内での列車脱線炎上事故を受け、信頼回復に取り組む部下を励まし、感謝の言葉をつづっていた。小池明夫会長は「社長の死亡を、このような形で皆様に報告することは大変申し訳なく、つらく、残念だ」と沈痛な表情で語った。
同社は中島社長が失踪した12日以降、社員を動員し自家用車が見つかった北海道石狩市の海岸周辺などを捜索していた。18日午前10時ごろ、道警から身元不明の遺体発見の連絡を受け、役員らが札幌市中央区の本社で待機していたが、午後6時ごろに悲報が入った。
遺書は家族向けなど複数が自宅に残されていた。午後7時半から本社で会見した小池会長は、このうち社員に宛てたA4判1枚のワープロ打ちの文書を読み上げた。
遺書で中島社長は「脱線火災事故を反省し、全社をあげて企業風土の改善などに取り組んでいる時に、真っ先に戦線を離脱することをお詫びいたします」と陳謝。そのうえで「お客様の尊い人命をお預かりしているという事実を認識し『お客様の安全を最優先にする』ということを常に考える社員になっていただきたいと思います。長い間のご支援、ご協力ありがとうございました」と記されていた。
小池会長は自殺の動機について「社長が失踪したのは国土交通省に事業改善報告書を提出する週。心労が重なっていたのではないか。本人にしか分からない大変な重さだっただろう」と推測。「社長を突然失う事態は会社発足以来最大の危機。遺志を継いで取り組んでいく」と述べた。後任の社長人事については「白紙」とした。【吉井理記、岸川弘明、小川祐希】
毎日新聞 2011年9月18日 21時25分(最終更新 9月18日 23時51分)