【コラム】「左派活動の場」に成り下がった韓国現代史(下)

 今回のドキュメンタリー放映問題についてKBSは、本来なら社長のいすを懸けてでも放映に踏み切るべきだった。韓国現代史は「大韓民国を守ろうとする勢力」と、「大韓民国の名誉を失墜させ否定する勢力」の厳しい対立の舞台だ。今回の放映中止は、KBSがこの事実を理解できていなかったため起こったことにほかならない。

 今回の問題には民族問題研究所という民間団体が関与していた。この団体の事務局長と名乗る人物は今年7月、ある集会に姿を現した際「今後は何度も顔を合わせることになるだろう。8月には李承晩を称賛するドキュメンタリーに関する問題があり、9月は上岩洞に朴正熙(パク・チョンヒ)記念館がオープンする。さらに来年12月には米国大使館横に大韓民国歴史博物館が建設されるからだ」などと語った。集会で配布された文書には「李承晩を称賛する放送を阻止できなければ、次は朴正熙を“国を興した民族指導者”として崇拝する、まさに歴史歪曲(わいきょく)の決定版を目にすることになるのは明らか」などと書かれていた。

 このような一連の事実から、この団体が李承晩ドキュメンタリーの放映を必死で妨害した理由について、ある程度は納得できるような気がする。彼らは大韓民国の現代史を「何としても勝たねばならない戦場」と見なし、李承晩ドキュメンタリー問題は「現時点で何としても勝利を収めるべき最前線」と考えていた。彼らの目的は李承晩による建国と、その土台の上に築かれた産業化と民主化、さらに世界の最貧国から世界10位圏の経済大国にまで成長した大韓民国の歴史を否定することにある。その戦いの最前線で、公営放送のKBSが膝を屈してしまったのだ。

 韓国現代史が左翼勢力の活動の場に転落したのはかなり以前のことだ。李明博(イ・ミョンバク)政権は韓国現代史の中での左翼勢力との戦いで、明確な勝利の知らせを一度も聞かせてはくれなかった。このままでは「9月の朴正熙記念館」や「来年12月の大韓民国歴史博物館」など次の対決の場では、一体どのような事態が起こるだろうか。相手は戦いでの長期・短期の目標を早くから設定し、タイムスケジュールに沿って緻密な戦術を駆使しながら、すでに多くの戦果を上げている。しかしこちらには、この手ごわい相手と対決して勝つ自信も、また勝たねばならないという哲学もない。しかも、これが戦いであることさえ理解できない無知な状態であれば、戦いの結果は火を見るよりも明らかだ。

金泰翼(キム・テイク)論説委員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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