東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 速報ニュース一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

原発事故対応拠点の線量低減設備 保安院、「不備」指摘を放置

2011年9月19日 07時05分

 原発周辺に設置され、事故発生時に対応拠点となる国のオフサイトセンター(OFC)のうち五カ所について、総務省の行政評価で二〇〇九年二月、放射性物質が入り込まないようにする換気設備などが不十分と指摘を受けながら、所管する経済産業省原子力安全・保安院が対策を講じていないことが分かった。 (宮尾幹成)

 指摘の対象には、福島第一原発事故で機能しなかった福島県大熊町のOFCも含まれていた。OFCは周囲が放射性物質で汚染された中での作業が想定されており、保安院の安全軽視があらためて浮かび上がった。

 指摘したのは、総務省の「原子力の防災業務に関する行政評価・監視結果に基づく第二次勧告」。国が防災対策の重点地域(EPZ)とする原発から半径十キロ内のOFC七カ所を調査し、宮城(女川原発)と福島(福島第一、第二原発)、静岡(浜岡原発)、石川(志賀原発)、愛媛(伊方原発)の五県の施設に不備があるとした。

 建物内の放射線量を減らす高性能フィルターなどの換気設備がないとし、「(汚染された)外気を室内に取り入れてしまう」と指摘。「適切な対応」を求めていた。

 これを受けて保安院は、〇九年と一〇年に総務省に回答を提出。外気を内部に入れないよう、OFCの運営マニュアルに気密性確保を明記したなどと報告していたが、フィルターの設置など本格的な防護策は講じていなかった。指摘を受けたOFCを管理する石川県の当時の担当者は、取材に「OFCを建てた当時、フィルターを付けるよう国に提案したが、必要ないと言われた」と証言した。

 保安院原子力防災課の担当者は対策の不備を認め、「フィルターなどの必要性は重々認識している」と釈明。原子力安全委員会がEPZの範囲やOFCの立地見直しを進めており、「結論を踏まえ対応したい」と話した。

 一方、総務省の勧告も、放射線量の低減措置の明確化などを求めたものの、フィルター設置など具体的な対応を要請していなかった。同省行政評価局の担当者は「当時は(今回の原発事故のような)長期間かつ広大な災害は想定されていない。フィルターは高価でもあり、現実的な対応をした」と話している。

<オフサイトセンター(緊急事態応急対策拠点施設)> 1999年の核燃料加工工場「JCO」(茨城県東海村)の臨界事故を受け、全国の原発など原子力施設ごとに整備された。事故時に、国や自治体などの担当者が集まる拠点になる。原子力災害対策特別措置法施行規則は、被ばく放射線量を低減するため、コンクリート壁や換気設備の設置を求めている。福島では原発から約5キロのセンターが震災で停電し、放射性物質の防護も不十分で使えなかった。

(東京新聞)

 

この記事を印刷する

PR情報





おすすめサイト

ads by adingo