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政府、原発放射能拡散を過小評価-不運だった雨と風向き


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 日本の政府系研究機関が今週発表したリポートによると、福島第1原子力発電所事故に伴う放射能汚染について、降雨や風向きの変化が一因となって、政府は放射線の拡散を当初過小評価していた。その結果、住民を不必要に被曝させたことがわかった。

Reuters

福島第1原子力発電所(3月24日)

 日本原子力研究開発機構(JAEA)の報告によると、政府の初期対応に問題があったとみられる上、不運なことに大雨が降ったことや風向きが変わったことが重なって、大気中の放射性物質が広範な地域に降下したという。このように天候が変わる前は、放射性物質は太平洋に向かうと考えられており、少なくとも短期的には健康リスクが少ないと予想されていた。 

 東京工業大学の澤田哲生准教授(原子炉工学)は、降雨の危険について知らされていたら、住民は屋内にとどまり、もっと放射性物質を避けられただろうと話した。 

 3月11日の地震と津波で原発の冷却機能が失われ、炉心が溶融したことを受けて、日本政府が当初設定した避難区域は原発から半径20キロ圏内だった。しかし、この報告が浮き彫りにしたように、放射性物質は実際には20キロ圏よりもはるか広範に拡散した。大雨が土壌汚染をもたらしたのだ。

3月12日から5月1日までのセシウム137の積算沈着量予測(日本原子力研究開発機構)

 JAEAによると、この雨は3月15日、つまり原発事業者の東京電力にとって最悪だったかもしれない日に降った。福島第1原発の2号機で爆発が起こり、原子炉格納容器の一部である圧力抑制室に大きな穴が開いた日だった。この穴から有毒な物質がそのまま大気中に漏れ出した。

 政府の原子力安全・保安院によると、放射性物質の拡散は15日前後がピークで、その後は減少した。作業員が大きく損傷した3基の原子炉を何とか冷却すことができるようになったからだ。 

 報告を執筆したJAEAの永井晴康氏は「3月15日に雨が降らなければ、土壌汚染がこれほど深刻になることはなかっただろう」と述べた。 

 2号機以前に爆発した1号機と3号機からは、2号機ほどの放射性物質が放出されなかった。爆発が原子炉格納容器の外で起きたからだ。対照的に、2号機の爆発は原子炉が過熱状態になって水蒸気を発散し続け、格納容器内の圧力が上昇したことによって生じた。 

 原発の周辺では3月15日の午後に雨が降り始めた。それと同時に、通常この時期は東向きである風向きが北西に変わった。そのため有毒な物質が原発からはるか内陸の地域にまで運ばれた。 

 雨が止むまでの間に、原発から北西にあたる広範な地域は、20キロの境界線からかなり離れているにもかかわらず、人が住めないほどに汚染された。政府は4月下旬になって、遅ればせながらこれらの広範囲の地域の住民の避難を決めた。

 永井氏は「大部分の放射性物質は最終的に東向きの風に乗って太平洋に運ばれたと推測される」と述べた。3月に放出された放射性物質のおよそ半分が海に降下したと推測している。

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