約2500kmの鉄道路線を持つJR北海道。道内交通の大動脈としての役割を担っている。鉄道だけでなく、JRタワーに代表される商業施設やホテルなどさまざまな事業を展開。道民の“旅”と“暮らし”をサポートしている。
JR北海道(北海道旅客鉄道)
中島尚俊社長
1947年旭川市生まれ。69年東京大学経済学部卒業後、日本国有鉄道に入社。87年国鉄分割民営化に伴い、JR北海道に入社。98年常務取締役旅行本部長、03年専務取締役営業本部長を経て、07年6月から現職。
――社長ご自身の就職活動はどうでしたか
中島 わたしの父も鉄道マンだったので、子供のころから鉄道の仕事を目にしていて身近な存在でした。そのころは道内の場合、貨物の輸送が多かった。当時は線路も十分ではなく雪害もあり苦労していました。そういう意味で、物資の輸送は国民生活にとって大切なんだと感じてました。1964年に東海道新幹線がスタートして次の世代の鉄道が出てきた。消費者の生活に密着していてやりがいがあるし、将来も明るいと思い入社しました。
――仕事の魅力について教えてください。
中島 年間1億3000万人にご利用いただいています。この人数は日本の人口に匹敵します。その方々の、大事な命をお運びしているんだという使命があります。人が動くというのは、仕事だったり、恋人と会ったり、旅行だとか何かの理由があります。そういうドラマを運んでいる仕事なんです。昔は、駅での出会いや別れのシーンが映画などでありました。非常に無機質のようですが、お客さまにとっては、大切な人生のステージなんです。
また、わたしどもの鉄路のステージは、北の大地北海道です。ステージを東京に持って行くわけにはいきません。わたしも北海道生まれだし、故郷に恩返しをしたい。北海道の発展に貢献できるという側面でもやりがいがあります。
――どのような人材を求めていますか。
中島 わたしどもは安全第一です。安全を確保するためには、日々地道に努力しなければならない。毎日きちんと決められたことをコツコツ努力できることが第一です。
2点目は、お客さまを大事にするという気持ちがある人です。それは直接お客さんと接する職員だけではなく、車両補修する人などもそうです。ミスをすれば迷惑をかける。自分たちの仕事は常にお客さまと結びついていることを考えながら、「お客さまのために」と思える人がいいですね。
仕事の中で、「これは守るべきもの」、「これは変えていかなくちゃいけない」ということを判断できる。変えるべき部分に果敢にチャレンジできる人が望ましいです。
――就職活動中の学生に社会人としての心得を。
中島 伊藤忠商事の丹羽宇一郎会長が「アリになれるか、トンボになれるか、人間になれるか」とおっしゃっています。アリのようには、コツコツと地道に仕事ができる人になりなさいという意味です。 例えば、あて名書きの仕事はある意味、単調な仕事に見えます。しかし、ずっとやっていると何回も名前を書く人は大事なお客さまだということに気づきます。単なるあて名書きでもそういう大切さが分かるんです。おそらく、そういった地道な仕事の上に、大きな仕事が舞い込んでくる。逆に小さな仕事ができなければ、大きな仕事なんてできないんですよね。
最近、仕事がつまらないから辞めたという若い人が多い気がするんです。よく会社を辞める理由で、「この仕事はわたしに合っていない」とか言いますよね。合う合わないなんて短時間では分からない。どんな会社にも自分の能力を発揮できる場所があるし、努力しないと見つかりません。きちんと耐えることが大切ですね。
トンボになれというのは複眼ですね。ある観点からだけ物事を見て判断してはいけないということです。物事にはいろいろな局面がありますから、こっちの目から見て正しいことも、こっちの目から見たら正しくないこともあります。いろいろな知識を持って勉強して、さまざまな角度から物事を見ることができる訓練をする必要があります。
最後に人間になれるかですが、他人を思いやる気持ちを持つことです。常日ごろから他人はどう思っているのかと考える。そうすれば、いい社会人になれると思います。
――08年の事業展開と抱負は。
中島 札幌に人口が集中してきていて、札幌での輸送量はだんだん増えてきています。08年は札幌圏を重視したいとのことで、3月にダイヤ改正を実施して、快速エアポート(札幌駅―千歳空港間)を増発します。
秋には「Kitaka(キタカ)」というIC乗車券を導入します。すると、時刻表で料金を確認しなくても。カードをかざせば乗ることができます。お年寄りの方々には、手軽にJRを利用できるようになりますね。来年の春には首都圏の「Suica(スイカ)」との共通利用を可能にして、電子マネーの機能も取り入れる予定です。
関連事業では、札幌駅のJRタワーは開業から5年間経過しますが、おかげさまで順調にきています。駅前に「JRイン」というビジネスホテルを秋にオープンさせ、さらに駅周辺の魅力を高めていきたいですね。
――今年の7月には、北海道洞爺湖サミットが開催されますね。
中島 わたしどもとしては、平穏に行われることが大切なので、その期間の輸送の安定、施設警備をきちんとやる。前後には、プレスやお付きの人が外国からお見えになる。北海道をアピールするいいチャンスで、どうやって観光に結びつけていくかがカギになります。駅を花で飾りきれいにするなど、「おもてなしの心」を示したいと考えています。
担当者に聞く
総務部採用グループ グループリーダー|吉江昌彦さん
採用方法には総合職と一般職の2種類があり、併願も可能です。書類選考を経て、合格者に選考会を実施します。
内容は集団面接、筆記試験(一般職のみ)、適性検査です。それ以降、個人面接を3回程度実施します。最終選考は総合職が4月下旬、一般職は5月に入ってからを予定しています。
道内出身者やUターンの学生が多いですが、ご出身が北海道以外の方もいらっしゃいます。
面接の質問内容は、極めてオーソドックスなものです。人物を重視しますが、何かモデルがあるわけではありません。いろいろな個性を持った人がそろってこそ、困難な状況があっても乗り越えられると思っています。
また、わたしたちはサービス業なので、お客さまの気持ちを理解できるかがとても大切です。ほかには、目の前にある課題に、じっくりと取り組める人を求めています。
(ききて・前田)