不況に庶民巨大増税強行どじょう首相の前後不覚
2011年09月18日08時53分
震災復興事業の中核は、大震災、原発放射能放出事故で生じたインフラ資産の復旧、復興である。新たに実行される政府支出は、政府消費ではなく政府投資が中心になる。
政府投資によって作られるインフラ資産は、今後、長期にわたって効用を発揮する。建設国債の原則とは、政府投資によって形成されるインフラ資産の効用発揮期間を平均60年との前提を置き、その資金返済を60年で実施するというものである。
建設国債は財政法4条で認められている正規の資金調達方法である。政府投資は政府消費とは異なり、支出に伴う効用の発揮期間が現在だけでなく将来にもわたるものである。したがって、その費用負担を現在の一時点に集中させず、効用を発揮する長期間にわたって分散させる建設国債は、経済的合理性を持つ資金調達の方法である。
2008年以降のサブプライム危機に伴う日本経済の急激な悪化は、いまも尾を引いている。そこに本年3月11日に大震災が発生した。大震災に伴い、インフラは破壊され、生活は破壊され、サプライチェーンも破壊された。
被災地では、半年の時間がたって、ようやくがれきが撤去されつつあるが、荒れ果てた大地はそのままに放置されている。被災者の多くが仕事を失い、日々の生活も大いなる不安に包まれたままである。
日本経済の実質経済成長率は、昨年の10−12月期以来、
−2.4%(2010年10−12月)
−3.7%(2011年1−3月)
−2.1%(2011年4−6月)
(いずれも季節調整済み前期比年率換算比)
と、3四半期連続の大幅マイナス成長を記録している。
米国の景気後退の定義は、2四半期連続のマイナス成長である。日本の現状は3四半期連続のマイナス成長である。つまり、日本経済はいま、極めて深刻な不況の只中にあるのだ。昨年10−12月期からマイナス成長が続いていることが端的に示すように、不況は震災によって新たに生じたものではない。震災以前に日本経済は不況に突入していたのだ。
日本経済が大不況のなかにあり、そこに大震災・原発放射能放出事故が重なり、日本経済は存亡の危機に瀕している。これは、日本の国民が深刻な不況のなかで苦しみにあえいでいることを示している。
この状況下で、一般庶民に標的を定めて11.2兆円もの巨大増税を実行するなどは、血の通った人間の行うことではない。そもそも、震災復興事業はその支出の性格に鑑みて、建設国債発行で実行するべきものである。
建設国債で政府債務残高が増大することを回避したいのであれば、政府資産を売却すればよい。震災復興政策は、基本的に一回限りの支出である。継続的に今後支出が続くものではない。したがって、政府資産売却による財源調達に合理性がある。
国内経済への中立性を重んじるのであれば、政府の対外資産を取り崩して支出に充てるのが、経済学的にはもっとも適正な資金調達方法になる。この点は、大蔵官僚出身の経済学者である野口悠紀雄氏も強く主張していることだ。
下記チャートを参照いただきたい。1975年度以降の主要税目の税収推移チャートである。1990年度頃のピークから主要税目の税収がどのような推移を辿っているのかが一目瞭然だ。
だ。

所得税はピークの91年度26.7兆円が2010年度当初ベースの12.6兆円に減少した。半減である。
これに対して法人税はピークの89年度19.0兆円が2009年度5.2兆円に減少した。約4分の1に激減している。
他方、消費税は1988年度の2.2兆円が2000年度の当初ベースの9.6兆円へと激増した。4倍以上の増加を示した。
この現状のなかで、野田佳彦政権は、法人税を減税し、所得税・住民税を増税し、さらに、2010年代半ばに消費税率を5%引き上げる方針を示しているのだ。
所得税・住民税の増税規模は11.2兆円を超える。法人税は政府発表の「増税」ではなく、真実は「減税」であるから、増税の総額よりも、所得税・住民税の増税規模は大きいのである。
この政策のどこが震災復興の費用負担を広く国民で分かち合うことになるのか。法人税減税の恩恵を受けるのは、大企業の一部だけである。大企業の減税を広く国民全体に負担させる政策のどこに、「広く国民で負担を分かち合う」という現実があるのか。
そもそも、現在の経済情勢の下で、この巨大増税政策を強行実施すれば何が起こるのかは明白である。増税規模は、今回の復興増税だけで、一般庶民直撃で11兆円を突破する。他方、野田政権が強行決定しようとしている消費税大増税は、1年間だけで増税規模は10兆円を超える。5年間で50兆円を超えるのだ。つまり、今後の10年間で、一般庶民だけを直撃する60兆円巨大増税が計画されているのだ。
メディア各社(マスゴミ)は、今回の政府方針決定について、野田首相の指揮で消費税増税は排除されたとの説明をしているが、野田氏が2010年代半ばに消費税率を10%に引き上げる方針を撤回したのなら、これを説明に加えるべきだろう。
しかし、野田佳彦氏は消費税大増税方針を撤回していないではないか。
1996年に橋本政権が巨大増税を提案したとき、この政策方針が日本経済の崩壊と金融危機を招くことを、もっとも強く警告したのは私である。現実にその後、日本経済は崩壊し、金融危機が表面化した。
2000年の日銀によるゼロ金利政策解除、2001年の小泉政権の超緊縮財政政策を、もっとも強く警告したのも私である。経済崩壊と金融危機を招くと警告した。実際、その後、経済崩壊と金融危機が現実のものになった。
今回、野田政権が超大増税を強行実施してゆけば、三度目の崩壊になることは確実である。今回は、超緊縮財政による経済縮小に世界が足並みを揃えているから、その影響は、さらに深刻なものになる可能性が高い。
震災復興事業に限って、日銀資金で事業を実施すべきだ。日本の外貨準備を50兆円減額し、この資金を震災復興に充当するのが、もっとも適正な措置である。
財務省路線にそのまま乗る野田佳彦氏は、経済政策についての勉強が圧倒的に不足している。歴史に学ばぬ者は歴史を繰り返すのだ。過去二度の大失敗が、わずか15年の時間内にあるのに、まったく同じ過ちを繰り返すなら、野田佳彦氏は前後不覚に陥っているのか、さもなければ「大うつけもの」と言わざるを得ない。
政府投資によって作られるインフラ資産は、今後、長期にわたって効用を発揮する。建設国債の原則とは、政府投資によって形成されるインフラ資産の効用発揮期間を平均60年との前提を置き、その資金返済を60年で実施するというものである。
建設国債は財政法4条で認められている正規の資金調達方法である。政府投資は政府消費とは異なり、支出に伴う効用の発揮期間が現在だけでなく将来にもわたるものである。したがって、その費用負担を現在の一時点に集中させず、効用を発揮する長期間にわたって分散させる建設国債は、経済的合理性を持つ資金調達の方法である。
2008年以降のサブプライム危機に伴う日本経済の急激な悪化は、いまも尾を引いている。そこに本年3月11日に大震災が発生した。大震災に伴い、インフラは破壊され、生活は破壊され、サプライチェーンも破壊された。
被災地では、半年の時間がたって、ようやくがれきが撤去されつつあるが、荒れ果てた大地はそのままに放置されている。被災者の多くが仕事を失い、日々の生活も大いなる不安に包まれたままである。
日本経済の実質経済成長率は、昨年の10−12月期以来、
−2.4%(2010年10−12月)
−3.7%(2011年1−3月)
−2.1%(2011年4−6月)
(いずれも季節調整済み前期比年率換算比)
と、3四半期連続の大幅マイナス成長を記録している。
米国の景気後退の定義は、2四半期連続のマイナス成長である。日本の現状は3四半期連続のマイナス成長である。つまり、日本経済はいま、極めて深刻な不況の只中にあるのだ。昨年10−12月期からマイナス成長が続いていることが端的に示すように、不況は震災によって新たに生じたものではない。震災以前に日本経済は不況に突入していたのだ。
日本経済が大不況のなかにあり、そこに大震災・原発放射能放出事故が重なり、日本経済は存亡の危機に瀕している。これは、日本の国民が深刻な不況のなかで苦しみにあえいでいることを示している。
この状況下で、一般庶民に標的を定めて11.2兆円もの巨大増税を実行するなどは、血の通った人間の行うことではない。そもそも、震災復興事業はその支出の性格に鑑みて、建設国債発行で実行するべきものである。
建設国債で政府債務残高が増大することを回避したいのであれば、政府資産を売却すればよい。震災復興政策は、基本的に一回限りの支出である。継続的に今後支出が続くものではない。したがって、政府資産売却による財源調達に合理性がある。
国内経済への中立性を重んじるのであれば、政府の対外資産を取り崩して支出に充てるのが、経済学的にはもっとも適正な資金調達方法になる。この点は、大蔵官僚出身の経済学者である野口悠紀雄氏も強く主張していることだ。
下記チャートを参照いただきたい。1975年度以降の主要税目の税収推移チャートである。1990年度頃のピークから主要税目の税収がどのような推移を辿っているのかが一目瞭然だ。
だ。
所得税はピークの91年度26.7兆円が2010年度当初ベースの12.6兆円に減少した。半減である。
これに対して法人税はピークの89年度19.0兆円が2009年度5.2兆円に減少した。約4分の1に激減している。
他方、消費税は1988年度の2.2兆円が2000年度の当初ベースの9.6兆円へと激増した。4倍以上の増加を示した。
この現状のなかで、野田佳彦政権は、法人税を減税し、所得税・住民税を増税し、さらに、2010年代半ばに消費税率を5%引き上げる方針を示しているのだ。
所得税・住民税の増税規模は11.2兆円を超える。法人税は政府発表の「増税」ではなく、真実は「減税」であるから、増税の総額よりも、所得税・住民税の増税規模は大きいのである。
この政策のどこが震災復興の費用負担を広く国民で分かち合うことになるのか。法人税減税の恩恵を受けるのは、大企業の一部だけである。大企業の減税を広く国民全体に負担させる政策のどこに、「広く国民で負担を分かち合う」という現実があるのか。
そもそも、現在の経済情勢の下で、この巨大増税政策を強行実施すれば何が起こるのかは明白である。増税規模は、今回の復興増税だけで、一般庶民直撃で11兆円を突破する。他方、野田政権が強行決定しようとしている消費税大増税は、1年間だけで増税規模は10兆円を超える。5年間で50兆円を超えるのだ。つまり、今後の10年間で、一般庶民だけを直撃する60兆円巨大増税が計画されているのだ。
メディア各社(マスゴミ)は、今回の政府方針決定について、野田首相の指揮で消費税増税は排除されたとの説明をしているが、野田氏が2010年代半ばに消費税率を10%に引き上げる方針を撤回したのなら、これを説明に加えるべきだろう。
しかし、野田佳彦氏は消費税大増税方針を撤回していないではないか。
1996年に橋本政権が巨大増税を提案したとき、この政策方針が日本経済の崩壊と金融危機を招くことを、もっとも強く警告したのは私である。現実にその後、日本経済は崩壊し、金融危機が表面化した。
2000年の日銀によるゼロ金利政策解除、2001年の小泉政権の超緊縮財政政策を、もっとも強く警告したのも私である。経済崩壊と金融危機を招くと警告した。実際、その後、経済崩壊と金融危機が現実のものになった。
今回、野田政権が超大増税を強行実施してゆけば、三度目の崩壊になることは確実である。今回は、超緊縮財政による経済縮小に世界が足並みを揃えているから、その影響は、さらに深刻なものになる可能性が高い。
震災復興事業に限って、日銀資金で事業を実施すべきだ。日本の外貨準備を50兆円減額し、この資金を震災復興に充当するのが、もっとも適正な措置である。
財務省路線にそのまま乗る野田佳彦氏は、経済政策についての勉強が圧倒的に不足している。歴史に学ばぬ者は歴史を繰り返すのだ。過去二度の大失敗が、わずか15年の時間内にあるのに、まったく同じ過ちを繰り返すなら、野田佳彦氏は前後不覚に陥っているのか、さもなければ「大うつけもの」と言わざるを得ない。
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