韓国・ＬＧ電子が京都に近畿で初の研究拠点を設けたことが臆測を呼んでいる。ＬＧ電子は2010年９月、企業向けビル運営の京都リサーチパーク（京都市、ＫＲＰ）に設けた研究拠点の狙いや規模などについて今も沈黙を守ったまま。自治体関係者は「省エネ技術を中心とした関西の産学との連携が狙い」とみる。

　そのＬＧ幹部が訪れたのが分析機器大手の堀場製作所の京都本社。「『おもしろおかしく』という社是をどうやって社員に浸透させているのか」といった話題で、持ち株会社ＬＧの趙俊鎬（チョ・ジュンホ）社長が堀場厚社長を質問攻めにした。約１時間の会談後は、本社工場の見学。ＬＧ幹部の訪問に「ただならぬ熱意を感じた」（堀場幹部）。

■素通りに危機感

　ＬＧが入居するＫＲＰは研究機関などが集まるレンタルオフィス。入居するテナントのうち、外資系が11社を占める。00年比で２倍近くに増えた。「都心部でラボが使える利便性に加え、データセンターを独自に備える安全性が評価されている」（ＫＲＰ）という。

　外資系の研究開発部門が進出することに海外への技術流出を懸念する声もあるが、京都府の山下晃正企画理事は「外国企業と中小企業とのつながりができるチャンス。地域にプラスの効果が見込める」と肯定的に評価する。自治体が外資進出を歓迎する背景には、海外企業による「関西パッシング（素通り）」があり、関西経済の成長にとって大きな問題となっているためだ。

　ヘリコプター世界最大手の仏ユーロコプターは12年４月、神戸空港内に最新鋭の機材開発やパイロット育成のための施設を50億円を投じて設ける。現地では200人以上の雇用が確保される見通しだ。同社は進出の理由を「神戸製鋼所のほか、高い技術力を持つ中小企業が集積しており、連携して研究開発に取り組める」と説明する。

■既進出企業に的

　「研究・生産拠点の新増設をお考えですか」。８月、京都府などは首都圏などに拠点を置く外資系企業約2000社に調査票を送付した。狙いは日本に既に進出している外資系企業の拡充だ。「海外からの直接誘致を狙うより感触がよかった」（担当者）といい、新規開拓より既存の進出企業のニーズを掘り起こすことに注力する。

　従来の外資の呼び込みでは港湾や空港などのインフラ面にばかり目が向きがちだった。関西広域連合で産業ビジョン策定の委員長を務める兵庫県立大の加藤恵正教授は、「大阪ベイエリアのモノ作りの基盤や大学など知的資産を活用するのが復活のカギだ」と説く。

外資系の拠点、首都圏に集中
　外資系企業の日本進出は首都圏に一極集中しており、関西に本社を置く外資は2009年時点で首都圏の１割にも満たない。08年秋のリーマン・ショックを受け、国内に複数拠点を設けていた企業が、関西の拠点を撤廃し首都圏に一本化する動きが加速。09年の関西の企業数は、00年以降で最多だった04年から２割減の223社に減った。
　09年には日用品最大手の米プロクター・アンド・ギャンブル（Ｐ＆Ｇ）が、神戸市の日本法人の事業を縮小して、シンガポールに機能を集約した。