人間関係を劇的に改善する「箱」脱出法
あなたは心の中の「箱」の存在を意識したことがあるだろうか?
僕の中にも、もちろんあなたの中にもある箱だ。
多分誰も自分の中に箱があることなんて考えたこともない。
だって僕自身、この本を読むまで、自分の中に箱があって自分がその中に入ってしまうなんて、考えたこともなかったから。
だけど、僕らの心の中に「箱」があって、この箱がとってもやっかいだということを知っているのと知らないのとでは、僕たちのこれからの生き方は全然違ってくると思う。
傷つける必要のない人を傷つけることもなくなるだろうし、会社や組織の中で無意識に誰かを傷つけたり嫌な思いをさせることもなくなるだろう。
それぐらい、この「箱」というのはやっかいなんだ。
「自分の小さな「箱」から脱出する方法」という本に、その正体が詳しく書いてある。
自分の小さな「箱」から脱出する方法
アービンジャー インスティチュート 大和書房 2006-10-19
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そもそも「箱」ってなんだろう
僕らの中にある「箱」とは何だろうか。
「自己欺瞞」。この本ではそう定義している。
でも、突然「自己欺瞞」なんて言われても、なんのことだか分からない。
多分この本の著者チームも同じことを考えたのだろう。
だから、この本は物語仕立てになっていて、著者と読者が一緒に「自己欺瞞」とは何か、「箱」とは何なのかを勉強する形をとっている。
そして、そのために幾つかの例が挙げられている。
ある会社にヘッドハントされて上級マネジメントとして入社したトム。
彼が会議室で一人戦略を練り、ホワイトボードにビッシリ書き込んだメモ書きを、部下の一人が彼の了解を得ずに消してしまった。
激しく怒るトムは、メモを消した部下ジョイスを呼びつけ激しく叱責した。
トムはジョイスに、「次にこんなことをしたら、次の仕事先を探さないとならなくしてやる」とジョイスを罵った。
上司がメモ書きしたホワイトボードを勝手に消すことは良くないことだ。
トムには300人の部下がいたが、多くの人はその会議室はトムが個人的に戦略立案をするために使い続けていることを知っていた。
ジョイスは誰かに、このメモを消してもいいかと確認すべきだったのかもしれない。
少なくとも、びっしり書かれたメモの内容見れば、簡単に消してしまってはまずいものと気づくべきだったのだろう。
そしてトムに激しく叱責されたことで、ジョイスは恐怖心から、二度と会議室には近づかないだろうし、勝手にメモを消すことも、もうないだろう。
上司として部下が間違ったことをしたことを叱責し、二度と同じ問題が起こらないようにする。
目的は達せられたのか?
これでいいのか?
実はちっとも良くない。
何故か。トムが箱の中に入った状態でジョイスに接していたからだ。
トムはジョイスを叱ったときに、ジョイスの名前すら知らなかった。ジョイスが握手しようと差し出した手を無視して怒鳴りつけた。
トムはジョイスを部下として見守り、ジョイスの成長を促すという意識をまったく持たず、「出来の悪い我慢ならない」「モノ」として扱った。
その時のトム心理には、「こんなダメな部下のせいで自分の仕事がまっとうできないじゃないか」という被害者意識が生まれる。
「自分が正しくて相手が悪い。だから怒鳴ったっていいんだ」という自己正当化がはじまる。
「自分は被害者だ」という想いから自分を守るために、トムは「箱」の中に入り、箱の中からジョイスを攻撃した。
だからトムはひどく冷たく容赦なく、権力を利用してジョイスを叩きのめすことができた。
トムはジョイスを指導するふりをして攻撃していたのだ。
自分は正しい。お前が悪い。お前のせいで俺の大切な仕事が台無しになったじゃないか!どうしてくれるんだ!と。
さあ、ここで問題なのは、果たしてトムのジョイスに対する態度は、会社にとって、組織にとって、良い影響を皆に与えたか、ということ。
トムの仕事の効率は上がっただろうか。ジョイスやその周辺の人たちの仕事に対するモチベーションは上がっただろうか。
部下の皆は、トムを上司として尊敬し、トムのためなら一肌脱ごうと思っただろうか?
答えは分かると思う。全部Noだ。
ジョイスはひどくショックを受け悲しんだだろう。
メモを消したのには理由があったかもしれない。
急な来客があって部屋を使いたかったのかもしれない。
別の上司から消すよう指示されたのかもしれない。
理由の説明の機会も与えられず、一方的に叱責されたことで、ジョイスは恐怖心とともに怒りを感じたかもしれない。
そして、そんな上司トムのことを、果たしてジョイスは尊敬するだろうか。彼のために必死で働こうとするだろうか。
心が箱の中に入った人間は、自分のことしか考えない。他人の心の痛みや悩みを無視する。
そして、多くの人が、箱の存在にすら気づいていない。
人はなぜ箱に入るのか
箱の中に入った人は自分を守り正当化するために相手のことを考えなくなり、攻撃する。
でも、どうして人は箱の中に入ってしまうのだろうか。
この本では、トムとトムの上司バドが話し合いながら、その理由を突き止めていく。
バドとバドの奥さんナンシーの真夜中の会話が具体例として挙げられている。
バドは真夜中に目を覚ました。産まれたばかりの彼の息子、デイビッドの泣声で目覚めたのだ。時計を見ると午前1時だった。
この時、バドはまず「自分が起きていってデイビットをあやそう。そうすればナンシーは寝ていられるのだから」と考えた。
この時点でバドは箱の中に入っていなかった。彼は自分が奥さんのために行動することで、奥さんを寝かせておいてあげようと思ったのだ。
でも、バドは思った通りには行動しなかった。彼はそのままベッドで寝たふりをした。
つまり、バドは、自分が他の誰かのためにすべきと感じたことに背いた。
この行動を「自分への裏切り」と呼ぶ。
耳が痛い話だけど、僕らにも経験があるのではないだろうか。
一瞬のタイミングのずれで相手に対しての行動を取れないことが。
そして、自分を裏切った僕らの心には変化が起こる。
相手への攻撃と自分への正当化だ。
バドは自分が起きて子供をあやそうという行動を取るのをやめた瞬間から、奥さんのことを悪く考えはじめる。
「どうしてさっさと起きて子供をあやさないんだ」「どうせ昼だってのんびり過ごしているくせに」「ホントは起きてるのに寝たふりをしているんじゃないか?」と。
そして同時に、自分を裏切ったことを正当化しはじめる。
「自分は朝から必死で働いてきた。明日も朝一番から重要な会議があるから眠っておかなくては。自分は家族を養っているんだから眠る権利がある」などなど。
人間誰でも欠点はある。ナンシーにも欠点があるし、バドにもある。
ところが、自分を裏切ったバドは、ナンシーの持つ欠点を、バドが行動しない理由と結びつけはじめる。
ナンシーが「怠け者で思いやりがないひどい人間だ」とバドが感じたとして、それがナンシーの欠点なら、365日24時間いつもナンシーは「怠け者でひどい人間」であるはずだ。
でも、ベッドの中で、バドは「ナンシーが怠け者で思いやりがないひどい人間だから、自分は手を貸す必要はない」と考えはじめてしまう。
そして、それと同時に、自分のことを必要以上に偉くて勤勉な人間に仕立ててしまい、相手を攻撃する準備を整えてしまうのだ。
「勤勉で優秀な自分が疲れて眠りたいのに、怠けもので思いやりがない妻は寝たふりをして全然起きてこないとはどういうことだ!」という具合に。
そして、箱に入ったバドはナンシーを攻撃し始める。「俺を怒らせたお前が悪い」と。
だが、本来腹を立てるべき相手はナンシーなのだろうか?
違う。本当はバドはナンシーのために行動しようと思った自分を裏切った自分に腹を立てているんだ。
でも、箱に入ってしまったバドは、自分の欠点は全部隠してナンシーのことを攻める。裏切りものの自分を傷つけないために。
そして、この「自分への裏切り」行為は、だんだんとクセになってしまうのだ。恐ろしいことに。
バドは自己正当化のルートを心に作り、常に「自分は正しく相手が悪い」という意識を持つようになる。つまり、箱をいつも持って歩くようになってしまった。
そしてもう一つ重要な変化が起きる。
バドに攻撃されたナンシーは腹を立て、バドに反撃する。どちらが先だったかは関係なくなっていく。
そう、バドは箱の中から、ナンシーのことを箱に入るよう仕向けてしまうのだ。
箱の中にいる人間は周囲の人間のことも箱に入れてしまう。
そして、箱に入った相手も自己正当化をはじめて、相手を攻撃し始める。
家族が皆自分のことばかりを考えてケンカばかり。そういう状況を思い浮かべて欲しい。
全員が箱の中から、自分を守り相手を攻撃しているのだ。
そして、とても恐ろしいことだけれども、箱の中にいる人同士は、無意識に共謀したかのように、お互いが箱の中に留まるようにお互いを仕向けてしまう。
誰か一人が積極的に箱の中から外に出れば状況が変わると分かっていても、常に相手を責めることで、自分が責められる下地を作ってしまう。
箱から脱出しよう!
大事な家族や仲間に対してひどいことをしてしまう自分。
多くの職場で起こりがちな停滞、家庭で起こる暴力や対立。
僕たちはどうしたら箱に入らずに生きていけるのだろう。
どうしたら、箱から脱出して、二度と入らずにいられるようになるんだろう。
答えはシンプルだ。
箱の中にいる自分は常に自分を正当化している。自分が正しい。相手が悪い。
だからこそ、「自分は本当に正しいのか?」と自分に疑問を持って欲しい。
そして、相手を攻撃することをやめ、相手の言葉に耳を傾けて欲しい。
相手を変えようとしてはいけない。変わるのはまずは自分だ。
自分を取り繕ってはいけない。表面的に態度を変えても心か変わらなければダメだ。
最初はそれはとても苦痛を伴うことかもしれない。だってあなたは箱の中にいるのだから。
そんなあなたは、まずは「箱」が存在していることを認識して、自分が箱の中にいることを自分に認めさせよう。
そうすると、あなたは相手が「物」ではなく「人間」に見えはじめるだろう。
自分の主張が本当に正しいのかと冷静に考えるようになるだろう。
会社の部下との対話でもそう。家族の問題でもそう。
相手を、尊重すべき人格をもった「人間」であると捉えた時、僕らは箱から出ることができる。
そして、もう一つ重要なこと。
それは、今まで自分が攻撃してしまった人たちに対して、心から謝ることだ。
常に箱から外に出続けているためにも、箱が存在して自分を招き入れようと狙っていることを意識しよう。
そして、自分を正当化しそうになった時には、「箱」が自分を飲み込もうとしていることを思い出して、相手のことを考え、箱から脱出しよう。
まとめ
「箱」というのはとても抽象的な存在で、目にも見えないし、触ることもできない。
でも、僕はこの本を読んで、手に取るように自分が今まで嵌り込んできた箱のことが分かった。
あの時会社の部下に対してこんな言い方をしてしまった、とか。
奥さんに対してひどく自己正当化をして、つらくあたってしまった、とか。
あなたがもしちょっとでも、自分にも「箱」がありそうだと感じたなら、是非この本を読んでみて欲しい。
とても怖いことかもしれないけれど、自分に「箱」」があることを認識するのは素敵なことだ。
「何故自分はこんなにいらいらするんだろう」
「どうして僕と奥さんはこんなに仲が悪くなってしまったんだろう」
「どうして部下は愛想笑いを浮かべるばかりでチームに一体感がないんだろう」
そういった悩みは、実はあなた自身の「箱」に問題があるのかもしれない。
あなたが箱から出たとき、きっと相手も箱から出てくれる。
そう信じて。
自分の小さな「箱」から脱出する方法
アービンジャー インスティチュート 大和書房 2006-10-19
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