製紙国内4位の大王製紙は16日、井川意高(もとたか)会長(47)が同日付で辞任したと発表した。井川氏は子会社7社から計80億円超を個人的に借り入れたことが発覚。使途も明らかにしておらず、経営トップとして問題があるとの判断から佐光正義社長が辞任を促したという。井川氏は創業者の孫に当たり、07年6月から今年6月まで社長。同社は社外5人からなる調査委員会を設置し、必要があれば特別背任容疑での刑事告訴も検討する。
子会社7社の側も、取締役会の決議や貸借契約書など必要な手続きを踏まずに多額の資金を貸し出していたケースが多数発覚。オーナー企業特有の甘い企業統治姿勢に批判が集まりそうだ。
大王製紙によると、井川氏は10年度に23・5億円、11年4~9月に約60億円を借り入れ、うち約30億円は9月までに返済済みという。同社が今月7日に関連会社の総務担当からの内部通告を受け、全子会社52社を調査したところ、井川氏が事実を認め、16日朝辞表を提出した。使い道は「今は言えない」と答えているという。
井川氏は大王製紙株1%弱のほか、関連会社株を多数保有している。同社は井川氏や創業家出身の2人の役員らから時価で50億円超の株式の提供を受けたため、「グループの損益に与える影響はない」としている。
また、同社が10年度に提出した有価証券報告書には、井川氏に対し23・5億円の貸し付けをした記載があるが、経営陣は問題視していなかった。16日に東京都内で会見した佐光社長は「オーナー企業だったため、不正を見抜ける人材がいなかった」と責任を認めた。【寺田剛】
毎日新聞 2011年9月17日 東京朝刊