【ソウル西脇真一】韓国で15日夕、全国各地で大規模停電が同時発生し、信号が消えたり、金融機関のATM(現金自動受払機)が使用不能になったりするなど、大混乱に陥った。厳しい残暑で電力使用量が急増したことから、予告なしに急きょ地域別の停電が実施されたのが原因。停電は一時162万世帯に及び、エレベーター内に閉じこめられた人は全国で約3000人に上った。高まる非難に対し、政府は「電力需給の急変を予測できなかった」と陳謝する騒ぎとなった。
ソウルで15日午後4時の気温が平年より5度以上高い31・3度を記録するなど、韓国は猛烈な残暑に。同日午後2時ごろから電力使用量が計画を320万キロワット上回り、予備電力が安全水準の400万キロワットを切った。
電力の需給を担う電力取引所は、午後3時から30分ごとの全国的な地域別の停電を予告なしに実施、午後8時前まで続いた。韓国で同時多発的な大規模停電は初めてだった。
韓国は夏季の電力需給について警戒期間(6月27日~9月9日)が終了。電力取引所は、整備に入る発電所が多く、発電量が減少する時期に気温の高い日が続いたことを理由に挙げている。
しかし、予測の甘さは否めない。また、通常なら予備電力が100万キロワットを下回った場合に停電を実施することになっているが、実際には多少の余裕もあったことから、「(停電は)過剰対応だった」との指摘も出ている。さらに、予告なく停電に突入したことにも批判が集まっている。
停電で影響を受けた企業の間には、損害賠償を求め集団訴訟を起こす動きもある。崔重卿(チェジュンギョン)知識経済相は16日、「電力需給システムと整備計画の点検や、問題の所在を把握するなどして再発防止に努めたい」と述べた。
毎日新聞 2011年9月17日 東京朝刊