経済産業省原子力安全・保安院の深野弘行院長(54)が16日、毎日新聞の単独インタビューに応じ、東京電力が福島第1原発の「事故時運転操作手順書」などの大半を黒塗りで公開したことについて「なぜ開示しないのか疑問だ。東電の情報公開の姿勢に問題がある」と批判した。
深野氏は「保安院としては手順書(の原本)は入手していない」と述べたうえで、「(1号機を冷却する)非常用復水器がなぜうまく作動しなかったかなど原因を調べるのが我々の仕事だが、手順書はその基になる」と指摘。今後、東電に黒塗り前の手順書の提出を求める意向を示した。
事故発生から半年が経過した原発の現状について「安定できたものの、大量の汚染水が存在し、収束とは言えない。課題は山積している」と語った。原発が全電源喪失に至った事態については「現実感を持っていなかった。『頻度は低く、深刻な事態になる前に防げる』という気持ちがあった」。津波対策についても「地震の『随伴事象』と捉え、取り組みが甘かった」と、規制組織としての能力不足を認めた。
また、原発事故の国際評価尺度(INES)を事故直後「レベル4」と判断し、過小評価だと批判されたことについても「もっと早く(正確に)評価すべきだった。批判は受けなければいけない」と話した。
一方、全国にある原発の安全性については「絶対に(安全だと)言えないし、言わない。人間である以上100%はない。しかし、今後実施するストレステスト(安全評価)で、どんなリスクがありどこまで備えができているかを示していく」と述べた。
深野氏は、震災発生時は経産省商務流通審議官で、3月下旬に保安院原子力災害特別対策監との兼務となった。前任の寺坂信昭院長の退職に伴い、8月に着任した。【中西拓司、関東晋慈】
毎日新聞 2011年9月16日 21時24分(最終更新 9月16日 21時52分)