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イタリアが見た長友佑都、クラブ初の日本人選手がインテルにもたらしたもの【後編】
投稿日時:2011年09月13日 20:04
[写真]=FOTO SINO
選手会のストライキによる開幕節の延期もプラスに作用したと言えるのかもしれない。7月末のセルティックとのプレシーズンマッチで右肩を負傷した長友佑都にとって、けがを癒すためのの時間は長ければ長いほど望ましかったからだ。
3冠王者から一転、スクデットとチャンピオンズリーグというメジャータイトルを失ったインテル。特にセリエAでは、ミランにタイトルを奪われるという形で連覇が途切れた。迎える新シーズン、ここでタイトルを奪還できなければ、インテルは王者としての面目を完全に失うことになる。
イタリアで迎える2年目のシーズン。インテルは「長友佑都」というクラブ初の日本人プレーヤーをどう見ているのか。【前編】に続き、インテルのコミュニケーション・ディレクターとしてチームに帯同するパオロ・ヴィガノ氏の言葉を紹介する。
シンプルかつ偉大なエンターテイナー
長友佑都は、驚くべきスピードでファンの気持ちをつかみ、「俺たちの一員」としてクルヴァに受け入れられた。加入から半年にして、長友はインテリスタのアイドルになっているのだ。いや、モラッティ会長の言葉を借りれば、“インテルのマスコット”だろうか。とにかく彼の人気は絶大である。
夏のキャンプが行われたピンツォーロでも、彼はインテリスタの注目の的だった。新チームのお披露目イベントでは、ピンツォーロの公園に設けられた特設ステージに、選手、スタッフが勢ぞろいした。ファンの要望に応えて、司会者が長友をステージ中央のマイクの前に招く。1万2000人ものファンを前にして、さすがの長友も緊張しているように見えた。緊張で体が動かなかったのか、それとも不慣れなイタリア語で挨拶するのを嫌がったのかは分からないが、司会者に「話せないよ!」とつぶやいたが、ファンはそれを認めなかった。すると、長友は意を決したかのようにマイクを持ち、声を張り上げて歌い始めたのだ。「Chi non saltail rossonero, é!」(飛ばないヤツはロッソネーロだ!)。これはイタリアでは最も一般的なチャントで、インテリスタに限らずどのチームのファンも「ロッソネーロ」の部分を自分たちのライバルに置き換えて使う。長友がぴょんぴょん跳ねながら歌うチャントはステージから客席へと伝わり、すぐに1万2000人が飛び跳ねての大合唱となったのだった。
文章にすれば簡単なことかもしれないが、そんな行動を取れる者が世の中にどれだけいるだろうか? 彼はシンプルかつ自然なエンターテイナーであり、だからこそチームスタッフから息子のように可愛がられるのだ。これも日本人的素養なのかもしれないが、彼はどんな小さなサポートに対しても感謝の言葉を忘れない。スーパースターにありがちな不遜な態度は彼には無縁なのだ。誰に対しても丁寧で親切で、そしてフレンドリーなのである。昨シーズンが終わった時、モラッティ会長は私にこうささやいた。「長友には最もフレンドリーな選手という賞を与えたいね」
「誰かに動いてもらいたい」時に現れる
我々はしばしば「犠牲的精神」という言葉を口にする。チームのために労を惜しまない姿勢、時に自分個人の利益を黙殺できる精神性のことだ。今のインテルを語る時、犠牲的精神は長友の同義語になっている。チーム全体が疲弊して、「誰かに動いてもらいたい」と願う時、どんなに疲れていても長友は動きを止めない。いや、それまで以上に精力的に走り回る。そんな長友の動きにチームがどれだけ救われているか。我々以上に、実際にピッチで助けられているチームメートには分かっていることだろう。
長友のもう一つの長所は積極性だ。重要な局面で大胆なプレーを選択することは、しばしばミスにつながるが、ミスをしない選手など存在しない。逆に言えば、勝利のために大胆な賭けに出る勇気を持たない選手は、インテルのようなビッグクラブでは成功できないのだ。失敗を恐れずプレーするためにも、クラブからの信頼を感じているかどうかは大きなポイントとなる。その点、長友はクラブの全面的支持を受けている。この6月に彼の立場はレンタルからインテルの完全保有へと移行した。半年間の“テスト期間”を経て、インテルの戦力として認められた何よりの証拠と言える。その信頼を感じながらプレーできることは、彼にとって大きなプラスとなるはずだ。
昨シーズンの長友の活躍をイタリアメディアは好意的に報じていた。だが、私としては評価はまだ不十分と言わざるを得ない。
戦術的柔軟性も彼の大きな武器である。左サイドでプレーすることが多かったが、右サイドに回っても彼のパフォーマンスが落ちることはなかった。基本的にはサイドバックだが、サイドMFとしてプレーすることも可能だ。複数のポジションを高いレベルでこなせる選手は決して多くない。
他にも長友の特徴としては、戦術理解力の高さ、しっかりした基礎技術、スピード、運動量と、数え上げたらキリがない。その点でも長友はイタリアサッカーでもトップレベルにランクされると見ていいだろう。相手陣内の奥深くまでボールを運ぶ彼のオーバーラップによって、インテルの攻撃は厚みを増すのだ。
常に考えながら全力疾走できる選手
ここまで長友の素晴らしさばかりを論じてきたが、まだセリエA最高レベルのカンピオーネであると周囲に認められたわけではない。これは長友という素材の問題ではなく、インテルが彼の特長を100パーセント生かせていない、という点に問題があるだろう。昨シーズンは順応の問題があった。キャンプを通じて連係を高めた今シーズン、長友の能力を最大限に生かすことで、インテルというチームは更に成長できるはずだ。
「長友は守備に不安がある」という言葉を耳にすることは少なくない。しかし、私はそれが大きな問題だとは思わない。彼の持ち味が攻撃であることは確かなのだ。守備に向上の余地があることは無論だが、それよりもオーバーラップのタイミングを更に良く見極め、ポジショニングの意識を高めることこそ、彼に求められる部分だと私は見ている。もともと、彼はプレーの面においても非常に注意深く、几帳面な選手だ。サイドプレーヤーにとってすごく大切な資質を既に有している。
ガスペリーニのサッカーにおいて、サイドプレーヤーの攻守に渡る動きがカギになることは周知の事実だ。サイドの選手に求められるのは運動量と戦術理解力で、これはつまり「常に考えながら全力疾走を続けろ」ということになる。この一点からでも、指揮官にとって長友が理想的な選手であることが分かる。
ガスペリーニは、手持ちの選手の個性と相手チームのサッカースタイルに応じてシステムを組むタイプの監督だ。3-4-3が基本システムだが、相手によっては4バックでプレーすることもあるだろう。もしかすると、状況に応じて試合中にシステムを変更するケースが頻繁に出てくるかもしれない。そんな時、どんなシステムにも順応できる長友は、非常に貴重な存在になる。
私は彼が昨シーズン以上のパフォーマンスを見せてくれると確信している。長友は昨シーズン以上にサッカーファンの話題となるだろう。長友のおかげで、我々は日本人の心に近づくことができた。今シーズンは更に多くの日本人ファンが長友に、そしてインテルに、熱い声援を送ってくれることを期待している。
■パオロ・ヴィガノ
1965年ミラノ生まれ。91年から『トゥットスポルト』紙の記者を務め、著書に『インテルの世紀』がある。2004年にマッシモ・モラッティの要請によりインテルの広報となり、広報部長を経て昨年にフロント入り。コミュニケーション・ディレクターとしてチームに帯同する。ページタイトルのピネティーナは、インテルの練習施設の名称。
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【浅野祐介@asasukeno】1976年生まれ。『STREET JACK』、『Men's JOKER』でファッション誌の編集を5年。その後、『WORLD SOCCER KING』の副編集長を経て、『SOCCER KING(@SoccerKingJP)』の編集長に就任。『SOCCER GAME KING』ではCover&Cover Interviewページを担当。
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