2011年9月15日 11時52分 更新:9月15日 13時27分
台風12号による豪雨で奈良・和歌山両県に土砂ダム17カ所が相次いででき、うち5カ所に決壊の恐れがある問題で、国土交通省近畿地方整備局は15日までに、奈良県の3カ所のダムでヘリコプターの着陸地になる場所を確認した。今後専門家の意見を聞き、ポンプ車や重機を分解して運び現地で組み立てることができるか検討する。それでも難工事になるのは確実な状況。大阪管区気象台によると、奈良・和歌山両県南部では、15日午後以降、雨の警戒が必要で、16日昼~17日には雷を伴った激しい雨になる可能性があるという。気象台は土砂災害への警戒を呼びかけている。
◆科学の目で
整備局はこれまで、奈良県五條市大塔町赤谷地区のダムに8日、十津川村長殿、栗平(くりだいら)、和歌山県田辺市熊野(いや)3地区のダムには9日に、岩手・宮城内陸地震(08年)で初めて活用した投下型水位観測ブイを設置した。このうち栗平のダムは水位が少しずつ上昇する一方、3ダムでは低下の傾向にあるという。それでも熊野ダムは10ミリ、赤谷は30ミリ、長殿は350ミリ、栗平は660ミリの雨であふれる恐れがあり、警戒している。あふれることで、ダムが決壊して土石流が起きる可能性が高まる。整備局は監視カメラや土石流を感知するワイヤセンサーを導入、警戒を強めている。
ダム周辺では斜面に亀裂ができている所もあり、工事や調査のために近付くと危険な場所もある。このため遠隔操作できる無人化(ロボット)工法を用いた重機の投入も検討する。
◆難敵
一度に多数の土砂ダムができた例としては、近年では新潟県中越地震(04年、55カ所)や岩手・宮城内陸地震(15カ所)がある。国交省東北地方整備局によると、最大級の土砂ダムの対策工事では現場が谷が深いためヘリも使えず、1年かけて工事用の道路を造った上で、排水路を整備した。今回も決壊の恐れがある5地区のダムは山中にあり規模も大きく、関係者は「難敵」と指摘する。
土砂ダム対策としてはポンプで水をくみ出したり、堤に排水路を開けて少しずつ水を出すなどの方法が考えられる。国は近く、両県などと工法や工期などを検討し、早期の対策を目指す。
ヘリコプターが着陸できる場所が見つかったのは赤谷、長殿、栗平の3ダム。いずれも地上から近付くのが難しい。
◆新しいダムも
整備局は15日、5カ所のうち最後に見つかった奈良県野迫川(のせがわ)村北股のダムについて、「今後50ミリの夕立程度の降雨量があればあふれ出す恐れがある」と発表した。堤の高さは25メートル、満水時の水量は4万立方メートルで、現在2万立方メートルの水がたまっている。住民は避難しているという。【堀江拓哉、酒井祥宏】