油田開発:夢と消えた19億バレルの原油(下)

クルド地区での油田開発に失敗

 しかし覚書を取り交わした直後から「原油の埋蔵量も確認されていない地域だ」との批判が相次いだ。クルド地区の原油埋蔵量は、イラク全体で確認されている埋蔵量全体のわずか3%との主張もあった。2007年末に韓国石油公社とSKエナジーは同じクルド自治区内のバジアン鉱区などで、クルド側と共同で油田開発に乗り出したが、この時はイラク政府が「中央政府を排除した契約は無効」と主張し、SKエナジーに対して原油の輸出を差し止めるなどの摩擦が発生した。このような状況で李明博政権がクルド地区の油田開発に力を入れた理由は、この地域は世界の石油メジャーの関心が小さく、また社会基盤整備を通じてクルド地区再建事業にも関与できるという計算があったものとみられる。

■クルド自治政府は12億ドルの現金を要求

 韓国石油公社はクルド地域の社会基盤整備に向け、現代建設や双竜建設など7社のゼネコンと共同でコンソーシアムを立ち上げた。しかし2008年10月、ゼネコン7社は2兆ウォン(約1400億円)の資金を調達する方法がないという理由でコンソーシアムから脱退した。その結果、石油公社は社会基盤整備を単独で行うことになったが、事業を進めるノウハウも建設を行う技術もないため、資金調達計画も取りまとめられることなく、事業は一向に進んでいないという。

 韓国石油公社は2008年の契約当時、五つの鉱区全てで原油が発見されなかった場合、6500万バレルの原油を見返りとして受け取るという条項を入れた。しかし石油公社が国会知識経済委員会の李鶴宰(イ・ハクチ】ェ)議員=与党ハンナラ党=に提出した国政監査用の資料によると、クルド自治政府は社会基盤整備事業が進展していないことを口実に、石油公社側に譲渡することになっていた6500万バレルの原油を2000万バレル(約20億ドル=約1534億円)にまで減らし、さらに社会基盤整備に関しても事業規模を7億ドル(約537億円)にまで縮小する代わりに、12億ドル(約920億円)の現金を支払うという内容へと契約の変更を求めてきた。これまで投じた資金や今後必要と予想される額を考えると、クルド側の要求を飲めば韓国側に大きな損害が出るとの指摘も相次いでいるが、石油公社はクルド側の要求を受け入れ、契約内容を変更する方向で検討を進めているという。

 国政監査資料によると、石油公社は今年7月末から8月初めに行われたイラク政府による油田開発事業入札資格の事前審査で脱落していたことが分かった。李鶴宰議員は「原油探査の失敗、社会基盤整備事業の縮小、イラク政府とのギクシャクした関係など、石油公社は数千億ウォン(1000億ウォン=約70億円)もの巨額を投じながら何一つ手にしていない」「今回の原油開発で政府と石油公社は、事業の妥当性を確認する前から、資源外交の成果を誇示することばかりに力を入れた。今回の失敗は、このような性急さがもたらした、まさに典型的なケースだ」などと非難した。

チョン・ヒョンソク記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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