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旧広島市民球場:住民投票却下訴訟 「裁量権逸脱はない」 原告の請求棄却 /広島

 旧広島市民球場(中区)の解体の賛否を問う住民投票の実施請求を広島市が却下したのは不当として、市民グループのメンバーが市長を相手取り、却下処分の取り消しを求めた訴訟の判決が14日、広島地裁であった。植屋伸一裁判長は「住民投票に付そうとする事項が重要事項に該当するか否かの判断について、市側に裁量権があることは否定できない」として原告の請求を棄却した。

 判決などによると、同市議会は昨年6月、旧市民球場の廃止を可決した。市民グループは同年9月、「球場は広島の戦後復興の象徴」などと訴え、住民投票の実施を請求。しかし、市は「市政運営上の重要事項に該当しない」として却下した。市民グループ側はこれに反論し、却下処分は違法と主張していた。

 植屋裁判長は、制度上の重要事項とは、市民の福祉に重大な影響を及ぼすか、その恐れがあるものに限定されていると指摘。その上で「市民グループの球場への愛着を十分考慮しても、解体が市民の生活などに容易ならざる影響を及ぼすとまで言うのは困難」と述べ、市側の判断に裁量権の逸脱や乱用はなかったと結論付けた。【中里顕、寺岡俊】

 ◇理念に反する現行制度 条例改正や批判の声も

 広島地裁判決は今回の却下処分について、「制度上の裁量権逸脱はない」と判断した。しかし、地方自治の専門家からは、行政サイドによる「事前審査」を設けている現行の制度に対して、「住民投票の理念に反する」と批判がある。

 広島市の住民投票制度は03年に施行され、案件ごとに議会が住民投票条例を制定する必要がない「常設型」。住民からの請求を市が認めれば、有権者(18歳以上市民と永住外国人)の10分の1以上の署名約9万5000人を1カ月以内に集めることを条件に、住民投票が実施される。

 今回の請求でハードルになったのは、住民投票になじむか判断する裁量権が市側にあることだ。判決後に記者会見した原告の土屋時子さんは「市長や市に都合の悪いことは、住民投票の対象にしなくてもよいと解釈されてしまう」と憤った。控訴を検討するとともに、松井一実市長に住民投票条例改正の申し入れも考えるという。

 元千葉大教授の新藤宗幸・東京市政調査会常務理事(行政学)も「重要事項かどうかは有権者が判断すること。その前段階で却下するのは行政庁の裁量権を逸脱し、地方自治法に反するのではないか」と言う。上田道明・佛教大准教授(行政学)は、広島市の制度に「有権者の10分の1以上の署名」という厳しい条件があることを指摘し、「行政が門前払いにするのであれば、『住民投票規制条例』では」と指摘した。

 しかし、市議会には制度改正の動きは見られない。03年の制度成立前、仕組みを巡って当時の秋葉忠利市長と市議会は対立した。当初案は発議権を市長、市議会、市民としていたが、市議会側は「乱用により市長の権力強化につながる」と反発。発議権者から市長と市議会を除外するなど紆余(うよ)曲折した経緯がある。ある市議は「理念は二の次だった」と振り返る。住民投票制度のあり方が改めて問われる。【寺岡俊】

毎日新聞 2011年9月15日 地方版

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