桜咲き誇るこの日。この光景も見慣れたなぁとか今年で最後の一年かぁとか様々な事を考えさせるこの日、僕等には今までに無いものが待っていた。その時まで何も知らなかった訳だけど。
「よしっまだ遅刻じゃない。全然OK。振り分け試験も中々手応えあったしきっと今年こそ卓袱台を見ないで済むはず!!おっはようございまーーす」
張り切って校門をくぐる。この瞬間僕はこれから始まる新しい1年と新しい教室、新しい仲間達と作り上げていく思い出を何ともかぐわしい香りとともにイメージしながら・・・・・・
「うわっ何ていうタイミングに犬のう〇こが!!うわーーーとれない。やばいどうしよう」
何か今年一年もろくな事が起こらなさそうな気がする。その予想は見事にあっていた。僕の最後の1年はここから始まる
「また卓袱台かよーーーー!!」まあそっちの方が見慣れているわけだけど。もっと別のが待っていてもいいんじゃない?とか思いながらとりあえず空いているスペースに座ると
「おう、明久。またFクラスか。何と言うか腐れ縁だな」
2つほど前の卓袱台から耳にタコが出来るほど聞きなれたいや聞き飽きた声が
「雄二もFクラスになったの?Aクラスに勝つために勉強したんじゃ?」
「明久。あの程度の付け焼刃な勉強でAクラスを取れるはずがないだろう。あの時勉強した事も今じゃどっかに飛んでったよ」
「現実は厳しいね。あれ?でも何か見渡す限り去年と同じメンバーが多いというか全く変わってないような雰囲気がするんだけど」
雄二だけでなく去年僕とともに試召戦争を戦い抜いた戦友たちが揃っている。
「明久よ。おはようなのじゃ」
その1人。僕の最高の想い人の秀吉だ。3年生になって背が伸びたのかより美しくなっている気がする。
「あ、おはよう。秀吉もFクラスなの?」
「そうじゃな。ムッツリーニに島田に姫路もおるぞ。なんと言うかやっぱり腐れ縁じゃのぉ」
「ほんとにね。あ、皆もおはよう」
気がつくと僕の卓袱台の周りにいつものメンバーが集まっていた。
「……秀吉、大人の美しさ。相場上昇……」
「おいムッツリーニ、新学年初日から絶好調だなお前は」
「明久君。おはようございます」「あ・・・アキっおはよう!」
「おはよう、2人とも」
いつも通りの光景だ。でも2人ともやけに張り合っているような感じがするのはなぜだろう?
「………みっ見え……見え……ないっ!くそっ」
そしてこれもいつも通り。新学年早々写真をとりそこねたムッツリーニは
「……すまない。明久。期待に応えられなくて……」
「いやいや、期待してなんかしてないし!!」
「アキ!あんたが変態だって事は前々から分かっていたけど今日という今日はそれを叩きなおしてあげるわ!!」
「わーー!!今年の美波の関節技はさらにグレードアップしていて体の節々が同時決壊するような痛みがぁぁぁぁ!!」
「ところで雄二よ。今年もお主がクラス代表かの?」
あと少しで落ちる所で秀吉の質問のおかげで美波の関節技が止まった。助かったぁぁ
「いや違う。今年の代表は……お前の姉貴だな」
「あ、姉上!?姉上は今年もぶっちぎりでAクラスのはずじゃが・・・」
「どうやら真実みたいだよ。秀吉」
きょろきょろ見回している秀吉に僕が指を刺して彼zy・・・彼のお姉さんの居場所を教える。その先には卓袱台に突っ伏して恐ろしいほど暗いオーラを漂わせて「絶望」と言う言葉が今1番あってそうな木下さんがいた。
「詳しく聞かない方が姉上のためじゃの」
「まあ、そうだな。でも代表が誰にしろ今年もシステムデスクを狙っていくとしますかぁ」
「……耳寄り情報がある」
皆それぞれ座ってたところに戻ろうとした時ムッツリーニがそんな事を言った。
「耳寄り情報って何?秀吉が女の子になったとか?」「明久よ。ワシはどこまでも男じゃぞ」
ムッツリーニは2秒ほどためてから
「……ここ、Fクラスに転校生が来る」
『て、転校生ぃぃぃ?』
転校した教室が卓袱台とかなんて可哀相な人なんだ。でもその転校生って男かな、女の子かなぁとか考えていたら……
「うぃーっす、て、どういう風の吹き回しだこりゃ。早速不幸な学園生活の予感がして来たぞ」
入口の障子を開けた見覚えの無い僕くらいの身長のツンツン頭の少年が立っていた。
「まあいいや。で、俺の席はどこだ?なるべく日当たりのいいところがいけど名前とか張ってあんのか?」
机に名札でも張られてるとでも思っているのだろうか、だとしたら速く教えてあげないと
「あの…君」「おお、初めまして。俺、上条当麻。どういうわけか学園都市から転校してきてな。それより俺の席どこかしらねぇか?見つからなくてさぁ」
「その…いきなりこんな事言うのもなんだけどこのFクラスは座席とか関係ないからね。好きな所に座っていいよ」
『上条当麻』と名乗った少年はしばらく「へ?」て顔をしてから
「そうかそうか。大分自由度が高いんだなぁ文月学園は」
「いや、このクラスが1人1つずつ専用の机が支給されてないだけだけど」
「うわぁぁぁさすが文月学園!!さっき間違えて今みたいなノリで入った所はまるでお城かと思わせるほど豪華だったのに!うわぁぁぁ不幸だぁぁぁ!!」
凄いノリノリの人だな。これが僕の『上条当麻』、すぐ後にカミヤン、アキと呼び合う仲になる彼への第1印象であった。
「まあ落ち着けよ。転校生。名は……上条といったか?俺は坂本雄二だ。以後よろしくな。俺の事は苗字でも名前でも構わないがこれも何かの縁だ。お前の事を名前で『当麻』と呼んでもいいか?」
「ああ、いいぞ。よろしくな雄二」
「ワシは木下秀吉、男じゃ。下の名前で呼んでおくれ」
「おお、よろしく秀吉。ていうかあんた男だったの!?だったらゴメン。おろかな上条さんはあなた様をてっきり女性かと思い…!!」
「まあ世間一般からはそう見られているようじゃがの、当麻。これから気を付けてくれればいい」
「……名前、土屋康太。あだ名はムッツリーニ」
「凄いあだ名だなぁよろしくムッツリーニ」
「……こちらこそ。これ」
ムッツリーニが名刺のようなものを渡す
「何々……『ムッツリ商会勧誘文でアドレスが………で様々な写真を取り寄せています』か。試召戦争のシステムを取り入れてる文月学園も凄いけどこんな裏稼業をやっているムッツリーニはもっと凄いな。で、そっちにいる2人は男達の彼女?」
「なっなにを!ウチがこんなバカ達の彼女なんて・・・!!」
「そうですよ、絶対にありえません!!」
「そうか……雄二達はバカなのか」
「まあFクラスだしな。それにクラスを決める基準が今年は何かと厳しくなっていて総合教科の点数が上がってるし全教科の平均点数もクラスを決める要素に含まれてたりもするから一部例外はいる。姫路や島田とかだな」
「じゃあ、姫路に島田は本当は頭がいいのか」
「姫路は飛びぬけるほど頭が良いが自分の意志でFクラスにいるんだ。島田も数学にかけては秀でているがソイツ、ドイツからの帰国子女で古典とかは壊滅的なんだ」
「へぇ何か俺が前居た学校みたいだな」
「君の学校もオバかさんなの?あ、僕は吉井明久ね」
ここで会話を盛り上げると彼といい関係になれるはず…!!決して同姓で、と言う意味で
「バカ中のバカの明久に言う権利はないよな」
「ちょ、雄二!!今僕を花で笑ったでしょ!!」
「アキはもっとバカなんだな……」 「え、ええ!?」 「ん?島田何かおかしいか?」
「いや、別に構わないけど……」
「その名前は美波が僕を呼ぶときのあだ名なんだ。別にその名前で呼んでくれても構わないけど。じゃあ僕は……そうだねぇ君が上条君だから『カミヤン』とか?」
数秒ほど沈黙し
「明久、おまえな」 「え、僕のセンス駄目だった!?」
「いや、別に。それ前の学校の時のあだ名だし、偶然ってあるもんだよな。ああそれと秀吉。さっきから気になってたんだがお前がこのクラスに2人いる気がするんだけど。双子のお兄さんか弟?」
「双子と言う点はあっておるが姉上じゃの。世間からは一卵性かと疑われておるが男女の一卵性はありえるもので無く……」
「そうか、やっぱり秀吉は女なんだな」 「ち…違う!!ワシはどこまでも男なのじゃ!!」
「……必死に否定する秀吉もまた可愛し(パシャパシャ)」
「何か、このクラスは色んな意味で凄いな。でも秀吉のお姉さん、やけに暗いオーラを漂わせている気がするが」
「……姉上は去年まで模範的優等生。じゃが話せぬ事情のせいでFクラスに転がり落ちたというわけじゃの『でもここも結構いいじゃん。声かけてくるよ』待つのじゃ当麻!!姉上を刺激してはならぬ!!」
秀吉が止めたのだが遅かった。
「よう……秀吉の姉さん?俺、上条当麻。転校生」
「……上条……当麻……」木下さんが小さい声でカミヤンの名前を復唱する。
直後カミヤンはにっと笑って
「ま、何があったか知らんがそう落ち込むなって。ここも『住めば都。だぞ』」
「…………」木下さんは顔を真っ赤にしてから
「……死になさい!!!」
「どわぁぁぁぁ!!このクラスは初対面に関節技をかけるようなデンジャラスなメンツがのぉぉぉぉぉ!!そこは、そこはだめぇぇぇぇぇぇぇ!!」
ぎりぎりと関節がしまっていく音がする。ああここから目を覆いたくなるような暴力シーンが展開されていき彼の体はボロ雑巾の様に・・・
「授業を始める!!おお、上条。来ていたか。でも何で木下優子ともつれあっているんだ?」
担任である西村先生こと鉄人が入ってきた
「はは、おはようございます、先生・・・・・・ぬわぁぁぁぁ!!」
鉄人はふぅとため息をついて
「木下。あまり暴力をしてはならんぞ。それより皆好きな席につけ。さっきも言ったとおり授業を始めるからな」
鉄人がパンパンと手を叩くと観戦していた他の仲間達も散り散りに移動し始める
「……ちっ、今日はこの辺にしといてあげるわ」
「ゴホッゴホッ……死ぬかと思ったぜ」
僕等の伝説はこの何気ないやり取りから始まった。