2011年06月17日発行 1186号

【世界の流れは原発廃止 ドイツ・スイス・台湾が全廃へ】

原発擁護のG8宣言

 5月26〜27日、福島原発事故後初めての先進8か国首脳会議(G8)が開催された。採択された宣言は、原子力発電について「最高水準の安全性」の必要 性を指摘し、以下の3点を掲げた。(1)各国が自国の原発を再点検し、安全性を向上させる(2)国際原子力機関が採択した原子力安全条約などを発展・強化 する(3)原発の地震対策を国際原子力機関が再検討、震災被害が想定される地域の原発に対しては追加基準を設ける。

 だが、この程度の「対策」は、事故のたびに各国政府が繰り返してきたものの焼き直しにすぎない。G8はあくまで原発政策を維持し、莫大な原発利権を抱え るグローバル資本の利害を擁護しようとしている。特に米オバマ大統領、仏サルコジ大統領は、原発を擁護する姿勢をむきだしに示した。米国のGE(ゼネラ ル・エレクトリック)、フランスのアレバ・グループらグローバル企業は原発建設・原発輸出を先頭になって推進してきた。利益のためには、人間の命も健康 も、地球環境の深刻な汚染もなんら省みないグローバル資本の策動を許すことはできない。

世論が亀裂作り出す

 しかし、各国首脳は沸きおこる反原発世論を全く無視することはできず、G8には亀裂も生まれている。

 ドイツのメルケル首相は「フクシマから教訓を学び取れ」と強調し、原子力から再生可能エネルギーに切り換えることを呼びかけた。イタリア・ベルルスコー ニ首相は原発再開論議を凍結してG8に臨まざるを得なかった。

 また、福島事故の当該国として菅首相は5月25日、パリで自然エネルギー割合を早期に20%に拡大する方針を表明し、28日の経済開発協力機構 (OECD)スピーチでは、今後のエネルギー政策として「原子力エネルギーの安全性への挑戦」に加え、「化石エネルギーの環境性」「太陽光などの自然エネ ルギーの実用性」などに言及。原発維持と同時に、原発によらないエネルギー政策の推進を強調してみせた。

 G8の亀裂の背後には、フクシマ後、原発廃止の国際的世論を大きく作り出した世界の反原発運動がある。

ドイツは全廃を決定

 ドイツでは5月30日、メルケル政権が2022年までにすべての原発を廃止する方針を発表した。ドイツの原発は17基、電力供給の約24%を占めてい る。メルケル政権は2002年に決定されていた脱原発法を先送りし、原発への回帰を狙っていた。だが今回の方針で、故障中の1基と旧式の7基を廃炉にし、 その後2021年までに6基を、2022年までに3基を停止して原発を全廃することになる。

 この決定は、原発廃止に向けた世界的にも重大な一歩となる。メルケルに決断を迫ったのは、反原発の市民の運動だ。フクシマ直後の3月26日には、過去最 大規模の25万人デモが行われた。5月28日には、ドイツ国内21都市で合計16万人が原発廃止を訴えた。ベルリンのデモには2万5千人が参加し、中心部 から出発して最後は与党キリスト教民主同盟(CDU)本部の前で集会が行われた。また、5月22日に行われたブレーメン州の選挙では、脱原発を掲げる「緑 の党」がCDUをおさえて第2党に躍進した。

日本からも連なろう

 また、イタリアの最高裁は6月1日、原発復活の是非を問う国民投票を6月12・13日に実施すべきだと決定した。イタリアでは、チェルノブイリ原発事故 の後、1987年の国民投票で脱原発を決定し、90年までに全原発を廃炉にした。しかし、ベルルスコーニ政権が3年前に方針転換し、2013年から4か所 で原発建設に着手する計画を発表。福島原発事故後は世論調査で75%が「原発反対」を示す中、「無期限凍結」を打ち出し、再度の国民投票を求める世論の鎮 静化を図ろうとした。だが、国民投票回避策は失敗。今回の国民投票でも原発が拒否されれば、原発廃止は決定的なものとなる。

 スイスでも、この25年間で最大規模の反原発デモが5月22日に行われた。およそ2万人の市民が参加し、原発停止を訴えた。広がる原発世論を受けて、ス イス政府は5月25日、現在稼働中の原発の廃炉が計画されている2034年以降、新しい原発は建てない方針を明らかにした。

 日本と同様の地震大国である台湾では4月30日、100以上の市民団体が参加し5千人を超える反原発デモが行われた。運動の広がりを受けて、馬政権は、 現在稼働中の6基の原子炉を順次廃炉にし、その後の原発の新設は行わない方針を決定した。

 世界では、原発廃止へと向かう大きな流れが運動の力で作り出されている。日本も同じだ。今、闘いを強めれば原発廃止は実現できる。
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