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書店員のオススメ読書日記

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Photo_3  毎日店頭に立っていると、新刊の棚出しやら仕入れやら棚入れやらご注文品の整理やらお客様のご案内やらいろいろな問題やらで、頭の中がぐちゃぐちゃになってしまうことがあります。

 そんなとき、僕はこの『クレーの跡』を読みたくなります。クラシック音楽の評論家として著名な吉田秀和さんはここではパウル・クレーの絵を解読しています。

 はじめてクレーの絵を見たとき、僕はびっくりしてしまいました。シンプルな点と線と色だけの絵(まるでこどもの落書きみたい!)は、しかしどうやら有名で素晴らしい絵だ、ということになっているようなのです。二度びっくりです。

 ふつうの批評家は「音楽的である」とか「記号の意味作用のしくみを示している」とかいいます。しかし吉田さんはそんなことはいわないで、クレーがどんなふうに絵を描いたか、まずやってみせます。そして、そこで感じられたことを積み上げて、クレーがどんな気持ちであったか推理していくのです。

 それによればクレーにとって絵は、まず(線の)運動です。それが集まったとき(彼が「これ天使に見えるなぁ・・・」と思ったかどうかは分かりませんが)、彼のユーモアが例えば「忘れっぽい天使」というような題をその線の集合体につけるのです。

 絵の解釈に、もちろん答えはありません。僕には吉田さんの一つずつ積み上げる方法と説明が、他の人のやりかたよりも分かりやすく、本当らしく聞こえるということだけなのです。それでもそんな分かりやすい、シンプルなやりかたは、僕のぐちゃぐちゃな頭をほぐしてくれるように思います。

 こんなに複雑な社会にあって、世の中の人がみんな吉田さんみたいに考えることができたら、世の中はずいぶんすっきりするのになぁ、とぐちゃぐちゃな頭で考えながら、いろいろな問題と格闘する毎日です。

出版社:講談社
書名:ソロモンの歌・一本の木
著者:吉田秀和
定価:1,470円(税込み)

(ジュンク堂書店池袋本店 実用担当 勝又直己)

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