白鵬(左)が上手投げで隠岐の海を下す=両国国技館で
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◇秋場所<3日目>
横綱白鵬(26)=宮城野=は隠岐の海を上手投げで仕留めて3連勝。横綱昇進を狙う日馬富士(27)=伊勢ケ浜=は若の里を速攻で寄り切り、2勝目をあげた。大関昇進が懸かる琴奨菊も阿覧を寄り切って白星を重ねたが、鶴竜(26)=井筒=は栃煌山に押し出されて2連敗。大関陣は琴欧洲が3連敗、把瑠都も2敗目を喫した。稀勢の里は力強く3勝目。
絶体絶命のピンチ。白鵬は身長も体重もほぼ同じ隠岐の海に立ち合いで左を差され、右も巻きかえられてもろ差しを許してしまう。
「ヒヤリ? まあその通りですね。いくら横綱でも、ああいう体勢は絶対有利じゃない」
ただ、そう淡々と振り返られるところに横綱の強さがある。もろ差しを許してから、バンザイした右腕で隠岐の海の首を巻き、左から上手投げを放つ。その間、1秒もなかっただろう。「あの一瞬で、ちょん掛けしようか、内掛けしようかサササッと考えた」。常人では考えられない回転の速さで上手投げを選択し逆転に成功した。
「心と体を一つにすること」。横綱が帰り際につぶやいた。「ここ数場所はそういう気はしている」と実感している。
心を支えている一つが被災地への思い。7日目には自身の応援歌の売り上げから用意した「白鵬シート」に、福島県双葉町から埼玉県の旧騎西高校に避難している被災者のうち24人を招待することも決まった。
また、岩手県山田町に来年3月をめどに相撲場を建設するため、力士会がユネスコを通じて寄付しているが、場所前に宮城野部屋を訪れたユネスコ関係者は「なるべく早く造ってあげたいと話していました。足りない部分は懸賞金で拠出されると言われていたので“かなり勝っていただく”のをお待ちしてます」とエールを送る。
「苦しい体勢でも残すと、そこからが横綱相撲だと自分は思ってる」と境地を語った横綱。来場者1000人を対象に敢闘精神を評価するアンケートは「(上位力士は名前が)入らないのが当たり前」としていたが、この日は2位に名前が。うれしい誤算ではなかっただろうか。 (岸本隆)
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