ご好評を頂いている「あみブロ開発者インタビュー」!
今回はバンダイコレクターズ事業部 「聖闘士聖衣神話EX」企画開発ご担当の藤井義貴氏をお迎えして、商品開発にまつわるお話をお聞きしたいと思います。
藤井氏は商品の企画開発に携わると同時に、今年5月にバンダイ本社で開催された「聖闘士聖衣神話 新カテゴリ発表会」では教皇のコスプレで登場して、自ら報道陣や関係者に「聖闘士聖衣神話EX」の解説をされるなど、その「EX」への意気込みと製品の完成度の高さを、取材を通して精力的に発信されています。
(以下、記事文中では聖闘士聖衣神話EX=「EX」従来の聖闘士聖衣神話シリーズ=「聖闘士聖衣神話」と表記してあります)
2010年7月、「新たな聖闘士聖衣神話」プロジェクト発進へ
── こんにちは。本日はよろしくお願い致します。
藤井:こんにちは。よろしくお願いします。
── まず、新シリーズ「聖闘士聖衣神話EX」を立ち上げた経緯をお聞かせ頂けますか。
毎年夏頃は、翌年頭の商品スケジュールがある程度決まる時期なんですね。
昨年2010年の夏頃に、翌2011年3月の「聖闘士聖衣神話 ハーデス」発売へ向けて動き出し、その流れでコレクターズ事業部内で「聖闘士聖衣神話」の次の商品展開プロジェクトを立ち上げる運びになりました。
ハーデス以後の『聖闘士聖衣神話』をどうするのか。ユーザーの皆様に永く愛され続けて、2011年で開始から8年目を迎えようとしている「聖闘士聖衣神話」が、原作のラスボスである「ハーデス」の発売によって一つの区切りを迎えたと云う印象が生まれてしまうだろうと。
バンダイとして、またコレクターズ事業部として今後の「聖闘士聖衣神話」をどうして行くべきなのか、という検討が始まりました。
藤井:その2010年夏から毎月に1回、プロジェクトメンバーを招集して「ハーデス」以降の「『聖闘士聖衣神話』の在り方」というのを試行錯誤していきました。
技術に関しては蓄積があり、素体も「ハーデス」までに第3素体まで改修され今までも細やかなマイナーチェンジは随時行って来ましたが、やはり抜本的に違う「何か」をお客様に見せる必要があるし、求められているだろうという考えに至りました。
議論を進めていく中には、いっそ「聖闘士聖衣神話」の最大の特徴である「クロス状態からオブジェ形態への換装」を一切オミットして、アクションに特化したスタイルにするのはどうか、という案もありました。
さらにそこから進んだ「S.H.フィギュアーツで『聖闘士星矢』を展開してはどうか?」という案もあり、「S.H.フィギュアーツ ペガサス星矢」は実際に試作を作ったんです。
── S.H.フィギュアーツで『星矢』を! ?それは非常に驚きの展開ですが……。
ただ、その月1回の話し合いを続けていたある時、作り手としての考えももちろん大事ですが、やはり「ユーザーの皆様が何を求めているのか」という原点に、全員もう一度立ち返ろうという見解に達しました。
藤井:そこで僕は過去の商品に封入されている、商品アンケートをもう一度見返して「聖闘士聖衣神話」で何が良いとされているか、何が不満とされているかを再度洗い出したところ、やはり「クロス形態からオブジェ形態への換装」という要素は外してはいけないだろう、と改めて思い直しました。
聖衣の換装が無くなるというのは、少なくとも「聖闘士聖衣神話」を今まで買い続けて下さってたお客様に対しては、決して良いことではないだろう、と。
では今「聖闘士聖衣神話」を買って下さっている方々の不満点は何だろう、と再度確認すると、その一つがやはり、素体の関節部分の弱さでした。
聖衣パーツにダイキャストを多用しているので、重さに負けて関節がどうしてもヘタレてしまうんですね。これは素体の問題だけでなく、ダイキャストを多用している以上致し方無い部分ではありますが、もう少し構造などで解消できないだろうか、と考えプロジェクトの課題のひとつにしました。
藤井:もう一つの課題は、昨今のアクションフィギュアでは既に標準装備とされている「顔の表情パーツ」の少なさです。
従来の「聖闘士聖衣神話」の表情パーツは1~2種で構成されていたので、「EX」では「通常顔」の他に、劇中再現の基本となる「叫び顔」「閉じ目」の表情パーツを、基本スペックとして付属させました。
そしてやはり、開始から長く続くシリーズであるが故に、発売初期の聖闘士には今から見ると体型がスタイリッシュでないものもありました。
そのシリーズ内での造形の差を補完するのが、後に発売された「APPENDIX」シリーズなのですが、諸々のコストの問題があり、現在「APPENDIX」の新商品を出すと、通常の「聖闘士聖衣神話」を出すのとほぼ変わらない価格になってしまうんです。
このような点からも「APPENDIX」で補完を続ける事自体の是非に突き当たり、ならば前述の関節の保持力改善やスタイルの刷新など、今までの課題点を解消すべく、いっそ全てを一から作り直そう、というのが新たな「聖闘士聖衣神話」プロジェクトの最終的な結論になり、「EX」開発の発端となりました。
『EX』は『聖闘士聖衣神話』の2巡目、では無い
藤井:「EX」の方向性も定まり、そして2011年5月に発表会を開催することも決定し、その時点では「サガ」と「アイオリア」の試作製作までは進めていましたが、その発表会で「EXはこれだけすごい」という事と、なおかつ「EXのシリーズ感」を明確に皆様にお伝えするために、「発表会に黄金聖闘士のEX試作を12体揃える」べく事業部が動き出しました。それが実は2011年に入ってからです。
── 半年も時間が無い状況で、新カテゴリの試作を12体、ですか!
藤井:はい。普通に考えれば無理です(笑)
顔の造形も発表会の時点では「サガ」「アイオリア」「ムウ」「ミロ」の4人までは揃ったんですが、それ以外の聖闘士は顔の黒い「謎の聖闘士」状態にしてあります。
車田先生の漫画では「初登場時は顔が黒い」という描写が割と広く認知されている上、さらに「これから登場する」感がより高まり、ある意味ラッキーでした。
発表会の時点での黄金聖闘士12体は、全くの試作ですので「オブジェ形態への換装」機能は一旦オミットしてます。
一部の聖闘士、例えば「シャカ」等のデザイン上可動に制約が生まれてしまう聖闘士はどう可動させるのか、というのは現時点では保留してありますが「最終的にはこんなにも格好良い聖闘士達を作ります」というのを一目で見て頂きたいために12体を揃えました。
まだこの試作では、お伝えしきれていない部分は多々ありますが、それは今後のシリーズの展開でどのように解消、昇華されていくかを見て頂けたらと思います。
藤井:ただ、実際に形として「EX」の黄金聖闘士を12体並べるのは、第一印象で「『EX』は『聖闘士聖衣神話』の2巡目なのか」と捉えられかねない危惧もありました。
しかし何より「EX」開発と黄金12体の展示に踏み切ったのは、ユーザーの皆様に「今までよりもこれだけ格好良くなります」とお伝えしたい一心です。
また「EX」は、黄金聖闘士の為だけにあるブランドとは決して考えていません。
── 発表時から黄金聖闘士が全員揃った光景は、確かに衝撃的でした。では今後青銅聖闘士はもちろん、他陣営なども……?
はい。まず「十二宮の戦い」絡みで、青銅聖闘士の主役5人は作りたいですし「EX」スタート時に素体を一から作り直すにあたり、予め身長差の再現性や、腰回りに聖衣を付けていない聖闘士への応用も考慮した青銅用の素体は着手しております。
あと手足の長短やクロス形状の違いなど、素体の組み合わせバリエーションに向けて色々と金型を起こしているので、今後のラインナップでそれらを活かしていきたいと思っています。
「EX」はここがすごい! 第1弾「ジェミニサガ」に見る改善点
藤井:「EX」の第1弾として「サガ」を選んだ経緯には、従来の「聖闘士聖衣神話」では別売の「APPENDIX」と組み合わせなければ再現出来なかった「ギャラクシアンエクスプロージョン」のポーズがこの「EX」では単体で出来る、という「EX」の完成度の高さを如実に体感して頂くため、というのもあります。
藤井:細かいところでは、実際に「サガ」で遊んで頂ければお解りになりますが、この頭部ひとつとっても基部の作りが「聖闘士聖衣神話」とは全く違うんですね。
今まではボールジョイントのはめ込み式だったのを、「EX」では頭部の基部を新造しまして、ここに後ろ髪、前髪、表情パーツを付けていく換装になります。
長髪キャラの後ろ髪パーツも、「EX」では基部を輪っか状にして首ジョイントに通す仕様になっていますので、ポロリと落ちてしまうことは無いです。
「EX」表情パーツと「聖闘士聖衣神話」「APPENDIX」との互換性は無いのか、というご意見もありましたが、互換性に関してはご容赦頂ければと思います。
その分表情パーツの付け替えが容易になっていたり、首のジョイントの改修でより顎を引くポーズがし易くなっていたり、と従来商品との換装をオミットする事で「EX」としていかに聖闘士を格好良く見せるか、という点を重視し、全体的な完成度はより高くなっています。
僕自身も入社前にユーザーの一人として「聖闘士聖衣神話」で遊んでいて、企画担当になってもお客様から頂く不満点は非常に良く解ります。
このような改善点はそういった体験とご意見から、必然的に見えてきたものです。
「EX」ではそれらがどう改善されたか、是非実際に遊んで感じて頂きたいですね。
── 今までのユーザーの方にこそ、「EX」が「聖闘士聖衣神話」とは 違う点が、いくらでも見えてきそうですね。
まず、「見た目の第一印象が違う」というのは大きいと思います。
もちろん従来の「聖闘士聖衣神話」のいかにも甲冑を着込んでいる、という重厚感は個人的には気に入っていますが「EX」に関しては動かして遊ぶことを前提に、かつ「本当に聖衣を着ているのか?」と思うほどのアニメ的な腰の細さの表現など、原作、映像内での「格好良い聖闘士の姿」も改めて追求しています。
「アルデバラン」まで特異なプロポーションだと、また素体を一から造り直さないといけませんが、「EX」のリリースが続いていく中で、また新たな経験が得られればそれらの技術を生かせるかもしれません。
── 私も5月の発表会で、初めて見たときにはそのスマートさにびっくりしました。
あまりにアニメらしく無駄のないプロポーションなので、プラパーツの比率が
上がったのかと思いきや、相変わらずの金属素材多用に改めて驚かされました。
藤井:そこは「EX」でも、聖衣パーツの殆どがダイキャストなので「重い」です。撮影用など、第一段階の試作の聖衣パーツはキャストやプラパーツで出来ていて、キラキラと綺麗ではありますが質感としては軽く見えてしまうんです。
「聖闘士聖衣神話」の良い所はダイキャストの聖衣であり、そして「EX」にはその良い部分は全て盛り込みたいと思い、ダイキャスト素材は変わらず使用しています。
後ほどお話しする「聖闘士聖衣皇級」は、また別の発想で立体化していますが。
またパーツの「ポロリ」を解消するため、腰や肩周りなど、素体を動かすとパーツの干渉が生まれる部分に、POMパーツを使用する事でパーツの保持力を上げています。
このように「異素材の組み合わせ」は、当社の商品でも今や当たり前になりましたしダイキャスト素材を中心にしつつ、異素材も併用して可動も両立する、というのは今までの技術や歴史の積み重ねでここまで可能になったと考えています。
※POM=熱可塑性樹脂「ポリアセタール(polyacetal) 」の略号。弾性があり対衝撃性に優れ、玩具ではネジ受けなどに使用される。
「EX」はパッケージも一新! 箱を「捨てられない」派にも朗報?
藤井:製品パッケージに関しても「聖闘士聖衣神話」との違いを出すために試行錯誤を重ね、ここにたどり着きました。
今までの「聖闘士聖衣神話」の二つ折りパッケージは、既にデザインとして非常に完成されているんですね。とはいえ「EX」も同じだと、新しいカテゴリとしてのインパクトが失われてしまうので、差別化をしつつ完成度の高さで負けないよう、このスリーブ型を採用しました。
表面のスリーブを取るとこのように、劇中の「パンドラボックス」をイメージしたデザインの箱が現れる仕組みになっています。
── おお! これは12個並べたい! いっそ背中に背負いたい! 原作ファンとしてはこれは非常にテンションが上がります。
「EX」はマント等、今までよりパーツにボリュームがあるので、従来のような二つ折りパッケージに収めるのは少し厳しかったんです。
中が見えないというデメリットは生まれてしまいましたが、この仕様でのメリットも沢山あります。
まず商品説明が従来の2面から4面へと増え、より多くの情報が載せられるようになったのと、あと商品の箱って「取っておく人」と「おかない人」が居ますよね。
── ああ解ります……私も家が狭いので泣く泣く「おかない」派です……。 毎回涙を飲んで処分していますが、胸が痛みますよね。
僕も昔は保存していたんですが、やはりかさばるのでとっておけなくなってしまったんです。
でもこのスリーブなら、畳んで平面的に保存しておく事も出来るんです。
そんな「とっておけない」派の方にもメリットであると個人的に考えています。
── 印刷がとても綺麗ですね。これだけで特別仕様のようです。 ポスターやグラビアのように眺めているだけでも楽しいですね。
藤井:このスリーブも、最初は紙素材にする案もありましたが、紙だと「角が折れる」など、2~3ヶ月で1〜2体という頻繁なリリースが続く間に劣化してしまうのを考えて、紙よりは丈夫なPET材にしたいと僕から関係各所に提案をしました。
中の黄色いボックスが透けないよう、PET材の厚さを調整したり、裏に白を引いたり、と、ここに到るまでに何回もやり直しをしました。
技術、可動、出来栄え、これが最上級の『聖闘士聖衣神話』
── 「聖闘士聖衣神話」の伝統を踏襲しつつも、何から何まで全く新しい 「聖闘士聖衣神話EX」なのですね。
今まで「聖闘士聖衣神話」を触ったことのない方はもちろん、従来シリーズを持って下さっている皆様にも、実物を触って頂ければその完成度の高さを納得して頂ける製品に仕上がっていると自信を持っています。
お陰様で「ジェミニ サガ」「レオ アイオリア」「アリエス ムウ」まで製品化が決定していますが、以降のキャラも現在開発を進めています。
もちろん従来の「聖闘士聖衣神話」でも、先日ご予約を開始した「シャイナ」を始めとする女性聖闘士や冥闘士など、まだ「聖闘士聖衣神話」化していないキャラも、クオリティを高めつつ、並行して商品化を継続していく予定です。
まあ「EX」で「アイオリア」と「ムウ」が来たら次に来るのは『彼』ですよね(笑)
「あのポーズ」を再現したいですよね?と言えば皆様も大体想像が付くと思います。
── ああ! 某「アテナが定めた禁断の闘法」の彼ですね。 既に展示されていた「あのポーズ」も、完成に向けて開発が進んでいるようです。
藤井:2010年代に入ってからの最新の技術を用いた最高の可動と出来栄え。
これが最上級の「聖闘士聖衣神話」です、というのを打ち出すのが「EX」の在り方です。
これからの「魂ネイション」などのイベントでも、「EX」参考出品をしてその反応を見させて頂きつつ、第1弾である「サガ」でも「『EX』として出して欲しい聖闘士」の アンケートを募りますので、今後も皆様の意見を頂戴していきたいと思っています。
まずは8月27日発売の「サガ」から「EX」をよろしくお願いします。
「聖闘士聖衣神話EX」あみブロ開発者インタビューはまだまだ続きます!
第2回では「EX」第2弾となる「レオアイオリア」の試作試遊を交えつつ、同じく一新された「EX専用ディスプレイステージ」の驚異のプレイバリューをご紹介します!
また「聖闘士聖衣神話」ブランドとは何か、今後の「聖闘士聖衣神話」「EX」はどうなるのか、といったあみブロでしか読めない深いお話も……?お楽しみに!
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(C) 車田正美/集英社・東映アニメーション
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