私の手元に今、全国の子どもたちから寄せられた手紙とはがきの束がある。毎日小学生新聞(毎小)編集部が、野田佳彦首相が就任した直後から募集している「野田総理への手紙」の数々だ。9日付の毎小に一部が紹介されているが、すべてに目を通して改めて驚いたのは「元々、関心の高い子どもたちなのだろうが、何てよく政治を見ているのだろう」ということだった。
例えば千葉市の小3女児のこんな手紙。「いままですぐに総理大臣がかわってしまって、せっかく決まっていたことも、またかわってしまったりしたので、野田総理はがんばって長く総理大臣をつづけてほしいです」
祖父が福島県会津若松市で1人で暮らしているという神奈川県の小5女児は「原発のえいきょうで作物が売れなかったり、観光客の人が減ってみんな困っています。なので野田総理に良い方法を教えてもらいたいです」と。奈良県の小5男児は「農業の人が大変なので、全国に大丈夫だと宣伝してください」と書いていた。
家族の間でも増税話が話題になっているのだろう。「総理おめでとうございます、といいたいところですが、本当に増税するんですか? あまりしてほしくありません」「(税金で)大きなビルなどをつくったりして、さらに借金を増やさないでほしいです」という意見から、「それをひさい地の人々にゆうこうにつかってもらうならいいと思いました」との意見まで。ね、子どもたちも考えているのだ。
重く響いたのは、やはり原発事故の深刻な影響を今も受けている福島の子どもたちからの手紙だった。「マスク、夏は暑いです。一日でも一秒でもはやく原発がおさまるようにしてください」「また、えがおをとりもどせるようにしてほしいです」などなど。
だから閣僚は無神経な発言を慎め、などと声高に叫ぶつもりはない。私たち大人はどうしたら、この子どもたちに明るい未来の姿を描いてあげられるのか、と自問するだけだ。
最後に、折り方を教わったばかりのドングリとキノコの折り紙を添えてくれた福島県郡山市の5歳女児の野田首相への手紙を。「ぜったい、こうりやまにきてね。おそとあそびができるときに、あそびにきてね」
「野田総理への手紙」は〒100-8051(住所不要) 毎日小学生新聞編集部あてで今も募集中。いずれ本人に届ける予定だ。(論説副委員長)
毎日新聞 2011年9月14日 東京夕刊
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