伊達市の市街地から車で40分。大滝区円山にあるガラス張りの温室内で、高設式で育てる2千株の四季成りイチゴ「夏実」の苗が白い花を咲かせ、実を付け始めた。育てているのは東日本大震災で大きな被害を受け、7月に宮城県亘理町から移住してきたイチゴ農家。大震災から半年、北に育つイチゴ栽培技術の確立に情熱を傾けている。
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「生育は今のところ順調です」。宮城県亘理町から7月11日、姉妹都市の伊達市に移住してきたイチゴ農家、鈴木博之さん(39)は目を細めた。
亘理町を含む宮城、福島両県の4町と開拓の歴史でつながる伊達市は今年5月、被災した亘理町のイチゴ農家を対象に、受け入れ支援策を発表。2年間、日当と住居を提供し、伊達に適した栽培技術の確立を託す、全国的にも例がない試み。8月までに6戸が移住した。
亘理町で観光農園を営んでいた鈴木さんは、海岸から500メートル離れた自宅とハウス16棟を失った。幸い、家族は無事だったが、変わり果てた農地を目に「再開は無理」と判断した。
妻と2人の幼い子供を養うため、アルバイトで生活費を稼いだが、共働きしようにも「保育所に子供を預けることができなかった」。慣れない仕事で疲労もピークに達していたころ、伊達の受け入れ事業を耳にする。「今までの経験が生かせて、子供を預けて働ける」。妻の賛成もあり、4人そろって移住を決意した。
伊達に移り住んで2カ月。品種の特性、栽培法など手探りの状況だが「良くしてもらっている。(受け入れ事業が終わる)2年後までに技術を確立したい」。気持ちはほかの農家も同じ。「場所は分からないが、自分の農園を開けたら」と次の目標に向かい、前へ進む。
(菅原啓)
◆―― 復興着実に進む
東日本大震災からきょう11日で半年。道内の太平洋岸にも津波が押し寄せ、胆振管内では漁港施設や漁具におよそ23億円の被害が発生した。この半年間で被害額の約7割について国や道による支援策が固まり、一部は既に議会採択を受けるなど、復旧対応が進んでいる。一方で、甚大な被害が発生した東北地方への支援活動の輪も広がり、室蘭地域では義援金が1億3千万円余りに上っている。
胆振総合振興局産業振興部水産課によると、漁港荷さばき場などの損壊や、沖合のホタテ養殖施設などの胆振管内の漁業被害額は約23億9800万円。このうち室蘭市内の被害額は5件1億4700万円、伊達市が52件6億1600万円、洞爺湖町が26件4億8300万円、豊浦町が44件9億5400万円、むかわ町が31件1億5500万円だった。
これに対し、共同利用施設の復旧などの支援は33件で1億2400万円、漁港の補修や港内にたまった土砂のしゅんせつなどが26件で5億3200万円が採択済み。さらに国や道による支援を検討中なのが、個人所有の施設など6件で11億200万円ある。今後、個人のホタテ養殖施設の被害査定も行われる見込みだ。
義援金は、室蘭民報社が東日本大震災発生直後から「頑張れ東北―大震災義援金」キャンペーンを行い、室蘭市共同募金会、日本赤十字室蘭市区委員会への受託窓口として活動。3月14日から9月8日までに927件、1億2104万1116円が預託された。
件数の内訳は個人176件、団体398件、町会58件、法人295件。また、室蘭市社会福祉協議会が日赤の受託窓口として受けた集計分(9月8日まで)は145件、1356万4097円。件数の内訳は個人59件、団体57件、町会10件、法人19件となった。
(佐藤重理、成田真梨子)
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