四日市市の大型スーパーで平成十六年二月、一般客や四日市南署員に取り押さえられ、翌日死亡した男性=当時(68)=の妻が県を相手取り、約五千七百万円の損害賠償を求めた訴訟で、県は約三千六百四十万円の支払いを命じた名古屋高裁判決について、最高裁への上告を断念すると発表した。
県警監察課は、上告しない理由について「上告理由を見いだすことができなかった」と説明。高裁判決の中に、民事訴訟法で定められている上告理由に当たるものがなかったという法律上の制限から、上告しないと説明した。
一方で、制圧行為の違法性や制圧行為と死亡との因果関係を認めた高裁判決については、「主張が認められなかったのは残念」とし、「制圧行為は必要かつ相当な範囲を超えていなかった」と従来からの姿勢を変えなかった。同課は再発防止について、ロールプレーイング方式の訓練をしたり、来年度からは逮捕術の指導者養成をしたりするとしている。
男性は同年二月十七日午後一時十分ごろ、スーパーのATM(現金自動預払機)コーナーで、後ろにいた女性に「泥棒」と叫ばれ、周囲の一般客六人に取り押さえられた。その後、駆け付けた四日市南署員から後ろ手錠など約二十分間の制圧を受け、心不全により翌日死亡した。
一審判決は、制圧行為の違法性は認めたが、制圧と死亡との因果関係を認定しなかった。一方、高裁判決では初めて死亡との因果関係を認め、一審の八百八十万円から賠償額を大幅に増額した。
男性の妻が出したコメントは次の通り。
同事件の遺族である一審原告としては、事件発生から七年七カ月余り、訴訟提起から四年七カ月と長くつらい道のりでしたが、ここに解決をみたことに安堵(あんど)しています。あとは、三重県警に誠意があるならば、再発防止に向けての真摯(しんし)な取り組みと心からの陳謝をお願いしたいと思います。
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