日本や欧米の景気が低迷する中で韓国企業は強い。サムスン、LGの携帯電話、液晶テレビは日本製品を追い越し、現代自動車は米国市場で急伸している。
 
 成功の裏には、国民が持つ教育熱と競争意識がある。親は収入のかなりをつぎ込んで子どもを塾に通わせ、大学に進学させる。留学率も高い。子どもが安定した職業に就けば、やがては親の面倒をみてくれるから、教育への投資は必要だという考えだ。
 
 だが、大きなひずみが生じている。大企業と中小企業の給与格差は拡大し、学歴差別も深刻だ。一流企業に就職できるのはソウルにある数校の有名大学だけ。韓国ブランドが世界を席巻する一方で、貧困率、労災事故発生率、自殺率が経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で最悪になってしまった。
 
 韓国紙「朝鮮日報」は格差の実態をテーマにした記事を連載し、「韓国は一位だけを記憶する社会だ」といい、「これが勝ち組と負け組という二極化の最大の原因であり、社会の発展を妨げている」と指摘した。
 
 韓国人の上昇志向はまだ強いが、夢がかなうのはひと握りという現実に気づき始めた。李明博大統領は大企業が国をけん引する「成長論」を提唱したが、国民は疲れ、支持率も低下している。来年の大統領選では富と機会の均等拡大を図る「分配論」に比重が移ることになろう。
 
 
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