原発:安全評価、法的根拠乏しく 「強制ではない」

2011年7月15日 21時33分 更新:7月15日 22時22分

 15日に概要が発表されたストレステストだが、法的根拠は乏しい。枝野幸男官房長官も15日の記者会見で「法律に基づくものではなく、国民の皆さんの安全を高める見地から政府として(電力会社に)要請する手続きだ」と認めた。

 背景には、菅直人首相が求める厳しい基準のルールに法的根拠を持たせるには「少なくとも1年かかる」(政府高官)ことがある。それでは再稼働に間に合わない。枝野氏は12日の会見で「強制力を伴わない範囲で、各大臣の行政権限のもとでさまざまなことを行っている。特に原子力への国民の不信、不安が高い状況で、今の法律で実現可能なことを今回行った」と述べ、従来より厳しい基準の導入と、電力供給確保の両立を図った「苦肉の策」だったと認めた。

 首相も12日の衆院復興特別委員会で再稼働の責任者が誰かを問われた際、「今の法体系で言えば経済産業相になるが、政治的には経産相、原発事故担当相、官房長官と私で最終的な判断を行う」と答弁し、政治判断で再稼働や運転継続を決めるとした。【影山哲也】

 ◇再稼働可否判断、期間は依然不明

 「安全評価」の評価手法や実施計画の大枠は固まったものの、原発の再稼働の可否を判断するために実施される1次評価にかかる期間は「電力会社が作成する調査報告書の中身次第」(原子力安全・保安院)とされ、明確には示されなかった。また、1次評価の後、最終的な再稼働の可否は菅直人首相と関係3閣僚が政治判断するため、どの原発がいつ再稼働できるかは依然として見通せない状況だ。

 発電電力量の半分近くを原発が占める関西電力は、原発全11基のうち4基が定期検査で停止中。いずれも起動準備はほぼ整っており、「早々に1次評価を受けられる状態」(保安院)だ。管内の8月以降の需給が綱渡りなだけに「適切かつ迅速に対応したい」と再稼働を急いでいる。地元の了解が得られず、10日に予定していた再稼働を断念した伊方原発3号機を抱える四国電力も「(1次評価の通知があれば)一日も早く報告書を提出したい」と思いは同じだ。

 1次評価に向けて電力会社が提出した報告書は保安院が精査し、原子力安全委員会が確認する。しかし、それだけで自動的に再稼働できるわけではない。最終的に菅首相らが、安全性以外に地元の了解度なども加味して政治判断する再稼働のハードルは高い。今夏以降、電力不足が続く可能性はある。

 停止中の原発が再稼働できない状態が続けば、国内の全原発は12年3月末にはストップする。菅首相は「この夏、冬の必要な電力供給は可能」と言うが、裏付けには乏しく、経済産業省は需給逼迫(ひっぱく)が続くことを想定して、対応策の検討に入っている。【和田憲二】

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