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出口治明の提言:日本の優先順位
【第21回】 2011年9月13日
著者・コラム紹介バックナンバー
出口治明 [ライフネット生命保険㈱代表取締役社長]

なぜ円高で大騒ぎするのか。
そこに財界の時代遅れの発想が見え隠れする

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空洞化にもプラス面がある

 円高是正論は、輸出製造業の空洞化が生じてもいいのかという一種の強迫論にもその論拠を置いているようだ。輸出製造業を簡単に定義してみよう。「競争力のある機械設備+コストの安い労働力」がそれである。大まかに言って、わが国の勤労者の所得が4万ドル、中国のそれが4000ドルという格差がある中で、企業活動がグローバルに広がっていくことは歴史の必然である。かつての英国や米国もその道を歩んできた。空洞化が心配だと言って、わが国輸出製造業のグローバル化にブレーキをかけることは、成長可能性に天井を設けることとほぼ同義ではないか。

 また、空洞化は雇用の流動化をもたらし、20世紀後半の高度成長期とは異なった21世紀型の産業構造へと転換する、またとないチャンスともなり得る。加えて、円高をもっと積極的に活用し、海外の企業の買収を含めて、もっと国内に呼び込むという発想が取れないものだろうか。必然的に出ていかざるを得ない企業を情に訴えて引き留めるよりも、新しい企業を世界中から連れてくる戦略の方が遥かに理に適っている。

 仮に空洞化で雇用問題が高まれば、政府もそれこそ必死になって、海外の企業を呼び込むべく、税制や証券市場や参入規制等、諸外国との制度間競争を見据えて企業が活動しやすくなるよう、わが国の構造改革に本腰をいれるのではないか。このように考えてみると、空洞化論は20世紀後半の高度成長時代の一つの残滓であって、現状維持を望む以外の何ものでもないのではないか。

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出口治明 [ライフネット生命保険㈱代表取締役社長]

1948年、三重県美杉村生まれ。上野高校、京都大学法学部を卒業。1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当。生命保険協会の初代財務企画専門委員会委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て同社を退職。その後、東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを務める。2006年にネットライフ企画株式会社設立、代表取締役就任。2008年に生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社に社名を変更、同社代表取締役社長に就任。主な著書に『百年たっても後悔しない仕事のやり方』『生命保険はだれのものか』『直球勝負の会社』(以上、ダイヤモンド社)、『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『「思考軸」をつくれ』(英治出版)、『ライフネット生命社長の常識破りの思考法』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。
ライフネット生命HP

 


出口治明の提言:日本の優先順位

東日本大地震による被害は未曾有のものであり、日本はいま戦後最大の試練を迎えている。被災した人の生活、原発事故への対応、電力不足への対応・・・・・・。これら社会全体としてやるべき課題は山積だ。この状況下で、いま何を優先すべきか。ライフネット生命の社長であり、卓越した国際的視野と歴史観をもつ出口治明氏が、いま日本が抱える問題の本質とその解決策を語る。

「出口治明の提言:日本の優先順位」

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