東芝が傘下の米原子力大手ウエスチングハウス社(WH)の株式20%を追加取得することになった。売り手は米エンジニアリング大手のショー・グループで取得金額は約1250億円の見通し。3月の東京電力福島第1原子力発電所の事故以来、世界の原発市場は一変。新規建設計画のキャンセルや見直しの動きが相次いでいる。「WH株追加取得」の報道を受けた9月6日の東京株式市場で東芝の株価は続落し、2年5カ月ぶりに300円を割り込んだ。5年前の専務時代に自らWH買収を手がけた東芝の佐々木則夫社長は強気の姿勢を崩さないが、この期に及んでの原発事業への追加投資に先行きを案じる声は少なくない。
WHの創業は1886年。ニューヨーク生まれの発明家ジョージ・ウエスチングハウス(1846~1914年)が変圧器や交流発電機を手がける会社として設立した。本社はピッツバーグ。1900年に電力会社向け蒸気タービン発電機を初めて製造、21年に世界で初めて家庭用ラジオの量産を開始。33年にニューヨークのロックフェラーセンタービルに世界最高速のエレベーターを設置したほか、57年にペンシルベニア州で米国初の原子力発電所を稼働させたのもWHだった。世界の原発市場で最もポピュラーな加圧水型軽水炉(PWR)の特許を同社は持っている。
ゼネラル・エレクトリック(GE)と並んで、米国では長らく名門重電メーカーとして脚光を浴びてきたWHだったが、経営者の「失政」続きで90年代に深刻な経営危機に直面した。93年に再建請負人としてCEO(最高経営責任者)に迎えられたコンサルティング大手マッキンゼー出身のマイケル・ジョーダン会長は、99年に電力システム部門を独シーメンスに、原子力部門を英国核燃料会社(BNFL)と米エンジニアリング大手モリソン・クヌードセンの合弁会社にそれぞれ売却、「重電の名門」は切り売りで解体された。会社本体は95年に買収した米放送大手CBSに事業を集中(97年には社名もCBSに変更)、WHの歴史はここで一度は途絶えている。
このとき売却された原子力部門はまもなくBNFLの100%子会社となり、この会社が「ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー(WH)」の社名を継承、現在に至っている。英政府が100%出資するBNFLはその後巨額の赤字を背負って事業戦略の見直しを迫られ、2005年7月にWHの売却を表明。半年余りの入札商談を経て、06年10月に東芝が傘下に収めた。買収金額は54億ドル(当時の為替レートで約6600億円、株式の77%を取得)。
WH売却の入札に参加した三菱重工業など日本の業界関係者は「価格は2000億円から、どんなに高くても3000億円」と見ており、「相場の2倍超」という東芝の大盤振る舞いが当時話題になった。
今回の東芝のWH株追加取得について、米メディアは「125年の歴史を持つ同社(WH)から米株主が消える」(9月6日付ウォール・ストリート・ジャーナル日本版)などと報じている。だが厳密にいえば、BNFLの100%子会社となった10年以上前に米資本とは縁が切れている。
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