収穫した葉タバコの貯蔵庫を管理する農家
日本たばこ産業(JT)の需給調整に伴い、原料の葉タバコを来年以降生産しない廃作農家が大分県内で最も多い豊後大野市は12日、対策会議を設置した。離農や耕作放棄地の拡大を防ぐため、市のブランド化推進品目であるピーマンや甘藷(かんしょ)などへの転作を促す方針を説明した。
県内の葉タバコは267戸が550ヘクタールで生産。豊後大野市では99戸、約200ヘクタールを占めて地域の基幹作物となっている。同市によると、葉タバコ農家の4分の3に当たる74戸が廃作に応じている。
対策会議には橋本祐輔市長をはじめ市や県、県農協の関係者ら約30人が出席。今後の取り組みとして▽廃作予定者向けの営農座談会(9月末、三重町と大野町)▽経営基盤や希望する転作品目などに関するアンケート―を実施することを決めた。対策会議事務局は市農業振興課内に設置する。
県内で豊後大野市に次ぐ産地、臼杵市野津町でも67戸のうち32戸が廃作の見通し。21日に対策会議を開く予定。
JTは今回の廃作農家の募集について、少子高齢化の進展や喫煙規制の強化などを理由に挙げている。廃作に応じる農家には栽培面積10アール当たり28万円の協力金を支払う。
県園芸振興室は廃作予定について「県内全体では戸数、作付面積とも半数弱に上る」とみている。
廃作するか、続けるか―。日本たばこ産業(JT)の葉タバコ農家に対する廃作希望者の募集に伴い、約4分の3が今年限りで生産をやめる見込みの豊後大野市。5年ほど前から悪天候や喫煙規制、増税といった“逆風”にさらされ続けてきた農家は、それぞれが苦渋の決断をしていた。
「本当は続けたいが昔ほど収量がなく、単価も下がった。今がやめどきかな」。同市大野町の後藤長喜さん(73)は50年以上、葉タバコ作りを続けてきたベテランの一人。悩んだ末に決心した。
1970年ごろは10アール当たり約50万円の値段がついたが、近年は約30万円。経費を差し引くと赤字になる場合も少なくないという。
近年、農家は悪天候に伴う葉タバコの病気に悩まされてきた。農薬の規制も強くなり、防除は困難に。多くの農家は「ことしは干ばつと大雨で特に不作。加えて、禁煙を促す風潮もあり、将来よくなる要素がない」と先細りを心配する。
「廃作協力金を借金返済に充てたり、転作の元手にする方がいいと、やめる農家が多い」と指摘するのは、市葉たばこ生産協議会の衛藤幸也会長(54)。自らは野菜に転作するという。
一方で、継続を決めた農家もいる。10年ほど前、大分市内で経営していたカーショップをやめて実家を継いだ大野町の衛藤哲久さん(55)は、乾燥機や貯蔵庫などの設備に何千万円も投じた。「ここでやめるのはもったいない」と話すが、「町内に11人いた20~30代の後継者も4人しか残らない」と危機感を隠さない。
同町の羽田野昭三さん(54)=県たばこ耕作組合理事=は「大変なのはこれから。やめた農家も、残った農家も『よかった』と言えるように、行政と組合などが協力してやっていく必要がある」と力を込めた。
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