進化を遂げる緊急地震速報システムの最前線を取材しました。
大きな揺れを事前に教えてくれる緊急地震速報。東日本大震災以降、ますます注目される中、学校での防災教育の姿も変えています。
進化を遂げる速報システムの最前線を取材しました。
東京・墨田区の中和小学校では、従来とは違った地震訓練が行われていた。
佐々木 綾子先生は「墨田区(立)の(小中)学校には、全校に(緊急地震速報が)設置してあって、震度3以上だと、皆さんにお知らせが流れます。ぱっと聞いたら、すぐ(机の下に)もぐったりとか、避難したりとか、落ち着いた行動が一番大事です」と話した。
「揺れたら隠れる」から、「鳴ったら隠れる」へ。
これが、震災を機に注目されている「防災教育」。
突然の緊急地震速報で始まった訓練で、子どもたちは、先生の指示がなくても、急いで机の下に隠れた。
児童は「(緊急)地震速報があった方がわかりやすくて、下にもぐれるから。安心!」と話した。
中和小学校の伊藤校長は「小学校時代に、こういう訓練を行って、将来にわたって活用できるような力を身につけさせたい」と話した。
より早く、安全に避難するために有効な緊急地震速報。
速報システム自体のスピードを上げるための研究も進められている。
三重・尾鷲市では、地震の発生率が高いということで、「地震・津波 高台に避難」という注意を喚起するボードや、「第二ひなん場所」と、ひらがなで子どもにもわかりやすいように、避難場所の指示がされているものもある。
今後30年以内の東南海地震の発生確率が70%と想定されている、三重県の紀伊半島沖。
その海底に、地震の揺れを感知する地震計が設置された。
海底に、直接地震計を設置することで、揺れを感知するスピードを上げることができるという。
地震が発生すると、揺れが小さく早く伝わる「P波」、そして、揺れが大きく遅く伝わる「S波」という、2つの波が発生する。
従来の緊急地震速報は、陸上にある地震計が、早く伝わるP波を感知して、大きな揺れを引き起こすS波が来る前に、速報する仕組みとなっている。
一方、今回のシステムは、震源に近い海底に地震計を設置することで、P波が陸上に伝わるのを待たず、速報できることになる。
海底の地震計で観測したデータは、神奈川・横浜市の海洋研究開発機構にも、リアルタイムで送られている。
海洋研究開発機構の高橋成実氏は「データはリアルタイムで、気象庁と防災科学技術研究所に送られていまして、緊急地震速報に反映されていれば、その分だけ避難する時間を多く確保できる」と話した。
このシステムが確立されれば、地震の発生場所によって、これまでより最大16秒も早く、速報できるようになるという。
さらに、このシステムが感知するのは、地震だけではない。
気象庁の中辻 剛課長補佐は「水圧計が、地震計と同じように装備されています。これについては、沖合の津波の状況を、やはりリアルタイムに把握できる。津波警報などの精度の向上のために、今後活用していきたい」と話した。
水圧計の設置により、東日本大震災で大きな被害をもたらした津波も、発生と同時に観測しようという新しい試み。
気象庁は、緊急地震速報への実用化は2012年度までに、津波警報は数年以内を目指している。
(09/13 13:08)