破綻必至の“マルチ”でも…詐欺にならないワケ

★金、株、FX…巧妙化する“投資詐欺”の手口

2011.09.10


昨年10月7日、突如、投資家にのみ公開された林云氏の謝罪文。「みんなさま(ママ)の運用資金を事業に流用しました」と綴られている【拡大】

 被害弁護団の一人、あおい法律事務所の太田賢志弁護士が話す。

 「121関連ファンドは、投資家から集めた資金を運用せずに最初のうちだけ配当として出し、さも儲かるように見せかけてお金を集める典型的な“タコ足配当”のファンドです。林云は謝罪文で返済の意思を示していますが、中国に身を潜めたままで、どれだけの資金が残っているのかも明らかにしていません。形だけ取り繕って、うやむやにされる可能性はあります。ただ、足取りが掴めない以上、訴状の送達等に障害がありすぎる…。そこでまず、分別管理さえ行われていなかった運用実体や元本欠損が生じる恐れなどの説明義務を怠った代理店に対して訴訟を提起したわけです」

 この121関連ファンド事件の特徴は複雑に入り組んだ代理店組織にあるという。

 「マルチ商法のように階層化されています。把握している限りでは、多いところで5層にも代理店が連なっており、下位代理店が獲得した客の預かり資産の数%が毎月コミッション料として上位に吸い上げられていました。その上、代理店によって販売方法はバラバラ。価格も違えば、商品名も違う。『自動売買ソフト』として売っていたところもあります」(太田弁護士)

 仮に代理店に毎月3%のコミッション報酬が発生するとすれば、投資家に3%配当を謳っている以上、ファンドは毎月6%以上の運用実績を上げなければならない。となると…複利で年間利回りはほぼ100%! 最初から破綻した運用モデルだったとしか考えられないのだ。だが、代理店がその実体を知りつつ勧誘行為を行っていたかどうかは定かでない。自動売買ソフトとして、同ファンドを販売していた代理店の代表が話す。

 「少なくとも私はコミッションフィーなどもらっていない。30万円でソフトの“再販権”を買い、お客さんに販売しましたが、私自身も121INTに口座をつくって、10万円程度ですが投資したんです。その資金は返ってきていません。お客さんにはソフトの購入代金は返金させてもらいました」

 前出の太田弁護士によれば、「非を認めて返金に応じれば、詐欺とは断定しづらい」という。そのため、いまだ121関連ファンド事件が刑事事件に発展していない。明らかになっている投資詐欺は被害のほんの一部にすぎないのだ。【続きを読む】

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