枝野経産相の当面の大きな課題は、定期検査などで停止中の原発再稼働問題。12日夜の就任会見で枝野経産相は「ストレステスト(安全評価)の詳細を正確に説明し、(立地自治体や住民の)理解を求めていきたい」と述べ、電力不足解消に向け、再稼働に前向きな姿勢を示した。資源エネルギー庁幹部は「(官房長官時代に)福島第1原発事故の経緯を熟知するだけに、地元への説明をしっかりしてもらえるはず」と期待する。
ただ、福島第1原発事故処理の長期化や、やらせメール問題に加え、鉢呂前経産相の失言辞任で国への不信は高まっており、再稼働に地元の理解が進むかどうかは予断を許さない。原発の再稼働が停滞すれば「今冬以降に再び電力需給が厳しくなる」(エネ庁幹部)のは必至だ。
一方、中長期的なエネルギー政策で、枝野経産相は「原発をゼロにしても大丈夫な状況を一刻も早く作ることが必要」と、再生可能エネルギー普及などで「脱原発依存」を進める考えを明言した。
また、東電が停止原発を代替する火力発電の燃料費膨張を理由に電気料金の本格値上げを検討していることについて、枝野経産相は「コストをしっかり見直す企業努力が大前提だ」と、徹底したリストラ無しには値上げ申請を認めない考えを表明した。枝野氏は菅前政権の官房長官時代の5月、国による東電の原発事故賠償支援に絡み「取引銀行が(債権放棄などで)責任を果たさない限り、国民の理解は得られない」と言い放つなど、東電への強硬姿勢を示してきた。金融界では「枝野氏の経産相就任で貸手責任論がぶり返すのでは」(メガバンク幹部)と警戒感もある。
関税を原則撤廃する環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉への参加の是非も焦点。米国など9カ国は11月の大筋合意を目指しており、産業界は「日本が乗り遅れる」と懸念する。ただ、農業に打撃を与えるとして与党内の反発は根強く、枝野経産相は「国際交渉や国内施策の状況を総合的に踏まえ、(是非を)判断する」と述べるにとどめた。【野原大輔、和田憲二】
毎日新聞 2011年9月13日 1時19分