|
きょうの社説 2011年9月13日
◎震災支援半年 長期戦に備えた態勢づくりを
東日本大震災の発生から半年を経て、石川、富山など自治体や民間ボランティアの支援
も、これまでの活動を振り返り、態勢を整え直す節目に差し掛かっている。被災地ではなお8万人以上が避難生活を強いられ、がれきの撤去作業も道半ばであるが、今後は復旧から長期の復興事業へ比重が移ることになる。自治体、民間の支援もそれに合わせて長期戦の構えが求められる。震災被害で行政機能が著しく低下した自治体を助けるため、全国の自治体は職員を派遣 している。道路や港湾などインフラの復旧に必要な技術職員は石川、富山県とも当面、来年3月まで比較的長期の派遣態勢を取っているが、これからはインフラ復旧に合わせて本格化する新しいまちづくりと地域コミュニティーの再生に向けた支援も重要になってくる。 そのために例えば、阪神大震災後、住民のまちづくり協議会を通して地域再建を進めた 兵庫県は、その経験を持つ職員OBらを派遣する予定という。石川県も今後、能登半島地震からの復興事業の経験を生かすべき場面、機会がいろいろ出てこよう。 中長期的な課題として、膨大ながれきの「広域処理」がある。現在行われている処理作 業は地域の仮置き場への搬入であり、最終的には焼却ないし埋め立て処分をしなければならない。放射性物質の懸念から受け入れに難色を示す自治体もあるが、がれきの最終処分には県外自治体の協力が不可欠であり、国と自治体でその支援態勢づくりを進める必要がある。 一方、民間ボランティアの救援活動も、がれき、ヘドロの除去から、高齢者や子どもの 精神面を含めた生活支援に重点が移ってきている。慰霊祭や初盆を終え、犠牲者を弔う気持ちに一区切りつけたとしても、被災者の孤独感や生きることへの不安が高まるのはむしろこれからであり、官民で精神面の支援を強めていきたい。 もっとも、復旧作業の進み具合には差があり、がれき処理のボランティアがまだまだ必 要な地域もある。自治体、ボランティア団体間の情報交換、連携を一段と緊密にして対応してほしい。
◎臨時国会開幕 政権担当能力に不安増す
大震災から半年が過ぎて鮮明になってきたのは、被災地復興や原発事故収束の道筋が思
うように描けず、爪痕の深さとスピード感を欠く政府対応から長期化が避けられないことである。どんな強力な内閣であろうと荷の重い難問には違いない。これらの課題を前に進めるに は政権の安定が不可欠だが、肝心の野田佳彦内閣は経済産業相辞任で早くもつまずき、きょうからの臨時国会は政権担当能力の不安が増すなかでの船出となる。緩んだ内閣のたがを締め直さないと、ねじれ国会を乗り切ることはできないだろう。 被災者への配慮に欠ける発言で引責辞任した鉢呂吉雄氏の後任には枝野幸男前官房長官 が決まった。態勢立て直しは急務だが、他の閣僚や党幹部からも適格性を疑わせるような発言が相次ぎ、未知数の手腕が不安視されている。 民主党政権では「(国会)答弁は二つでいい」と発言した柳田稔元法相や、被災地で暴 言を連発した松本龍前復興対策担当相など、およそ閣僚らしからぬ軽口発言で職を追われるケースが目立つ。経験が少なく、大臣としての振る舞い方が身についていないと言ってしまえばそれまでだが、ここまで続けば任命する側に重大な責任があると言わざるを得ない。 野田首相は内閣一元化の政策決定システムを改め、党政調会へ政策決定の軸足を移した 。官僚や財界との関係も見直し、組閣の前には野党党首と会談し、低姿勢で協力を求めた。 足元の統治機構の改革も、野党への協力呼びかけも大事なことだが、それだけでは、ね じれ国会は克服できない。やはり内閣が職務にまい進し、仕事を着実にこなす必要がある。政治を動かすのは「言葉」である。閣僚は自らの発言がどのような重みを持つのか厳しく問い続けてほしい。 自民党など野党もここで政局に走れば政治が再び混乱し、信頼をさらに損ねることにな る。日経平均株価は海外株安や円高進行で2年5カ月ぶりの安値となった。復興や経済安定化に与野党は共同責任を負っている。これ以上政治を停滞させることは許されない。
|