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きょうのコラム「時鐘」 2011年9月13日
吉永小百合さんの本格的デビュー作品になったこと以外は評価されない1960(昭和35)年作の映画「不敵に笑う男」は、北陸にとっては貴重なフィルムだ
赤木圭一郎演ずるヤクザな兄と、吉永さん扮するけなげな妹は富山大空襲で両親を亡くして金沢に住んでいるとの設定。画面には今は懐かしい50年前の金沢や七尾の景色がたっぷり登場する、典型的なB級作品である だが、注目すべきは香林坊の景観だ。半世紀前の日本銀行金沢支店が写っている。いつの世も商店街の変貌は激しいが、銀行建築は変わりにくい。日銀はその代表で今とまったく同じ。周辺の変貌が逆にくっきりと見えてくる いま、その香林坊が生まれ変わっている。昭和30年代の活気あふれた時代の街並みを、精緻な模型を配したジオラマでよみがえらせる企画もある。人も道路も建物もすっかり変わったが、変わらない中心商店街の空気を再現できれば楽しい スター赤木圭一郎は若くして亡くなり、吉永さんの美貌は今も健在、不思議なものだ。短い青春と長い人生。街も人も年相応のシワを刻むが、その味わいがまたいい。 |