敦賀原発、高速増殖原型炉「もんじゅ」、廃炉中の旧新型転換炉「ふげん」が立地する敦賀半島。海を挟んで向き合う南越前町は福島第1原発事故以後、危機感を高めている。川野順万町長は、使用年数が30年以上の敦賀原発1号機ともんじゅの安全性を問題視し、廃炉を求めた。
◆福島事故をどう受け止めましたか。
もともと南越前町に合併した旧河野村の村長をしておりました。村から対岸の敦賀原発に最も近い場所は、わずか8キロです。しかも、敦賀1号機と福島第1原発1号機は同時期に作られた、同じ型やった。安全を大前提に原発との共存共栄を図ってきたわけやから……。
◆岐阜県羽島市との災害時相互援助協定締結や独自の原子力防災訓練実施と他市町に先駆けて安全対策を進めていますね。
県内では鯖江市でも30キロ圏に入る。いざという時、県内では限られた町に避難が集中する。友好協定の羽島市さんがぱっと浮かんだんや。これまでは敦賀市を中心に行う県の訓練に参加していただけやった。それでは、いかんので。
◆原発立地自治体に隣接する市町で作る、県原子力発電所準立地市町連絡協議会に加盟していますね。協議会は福島事故後、原発事業者との安全協定締結を立地自治体並みにするよう求めています。
被害想定は地続きの面ではなく、単純な距離で考えた方がいいことがわかった。立地自治体の安全協定には、稼動や新増設の承諾権限、補償の取り決めがある。安全に責任を持つため、これを結ばなくては、町民に顔向けができん。現状では、結果報告を受けるだけやから。
◆福島事故で、原発に対する見方は変わりましたか?
原発の電気で日本の産業が発展したという功績はあると思う。しかし、安全が大前提や。いっぺんに全部やめるということでなく、順序を踏んで自然になくしていくのが一番いいだろう。
◆各原発について具体的にはどう考えていますか。
30年以上が立ち、高経年(老朽)化したものは危ないから廃炉にすべきだ。それに代わる新しい技術を入れた原発が必要なら、それは否定しない。ただし、すべて福島事故の検証なしではあかん。電源車の配置など部分的な対策だけで、大丈夫というのはおかしい。福井ではテロ対策の問題もある。そういうものを全部検証して、大丈夫ということでないと。
◆もんじゅについては?
あれだけの事故(95年のナトリウム漏れ)を起こし、ずっとトラブルが続いている。誰が考えても危険やから、廃炉にすべきだ。
◆福島事故で、そう考えるようになったのでしょうか。
もんじゅは以前から。高経年化の方は、不意打ちをくらった感じの福島事故の後からです。【聞き手・戸田栄】
毎日新聞 2011年9月10日 地方版