PJ: 田中 大也
児童ポルノ禁止法改正案民主党案公開、国会提出(3)いくつかの懸念点や課題も存在
2011年08月24日 08:00 JST
【PJニュース 2011年8月24日】前回まで見てきたように、今回の民主党改正案は、現在、国会に提出されている自公案、そして、かつて国会に提出された民主案と比べても、実在児童の保護に重点を置いている。
しかも漫画やアニメ、ゲーム等に規制が波及しない、芸術や報道などへの配慮も怠らないように努める条文の設置により、表現の自由にも配慮し、規制を進めるにも「反復かつ購入」ということで、予期せぬ冤罪やアクシデントを最大限抑えるなど、様々な問題について配慮がなされ、考え尽くされている部分を見て取ることができる。
個人的には「受け手」を処罰する購入罪には賛成ができないが、他の部分に関しては、これまで提示された改正案に比べれば、優れた条文構成になっていると感じる。
● 気になる「3号ポルノ」の定義
ただ、懸念点も見て取ることができる。どこまでを「児童ポルノ」にするかどうかを示す「定義」の部分に、先行きの怪しいところが見受けられるのだ。
民主党改正案の児童ポルノの「定義」は、いわゆる1号、2号ポルノとされる、「児童」が性行為をしている等の部分に関しては、現行法と比べて、ほとんど変化は見られない。変わったのは、いわゆる、「3号ポルノ」とされる部分だ。
現行法では、
「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの 」
となっている部分が、この改正案では、
「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部または胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、殊更に性欲を興奮させ又は刺激するもの」
という条文に切り替わっている。
● 改正案で、「大胆な」十八歳未満のグラビアや水着姿は規制されてしまう懸念が
一見、条件が加わり、絞り込まれたようにも見えるが、現行法でも、人の内心を基準とするもので、恣意的な運用が可能になると批判されてきた「性欲」条項は温存されている。
また、男女ごとに定義を区分けておらず、さらに「胸部の露出または強調」といった条文構成になっているために、男子の水着(海水パンツ姿)やまわし姿などが規制されやすくなっているとも取れる。「以前と変わらない」定義のようにも見えるが、「定義の最大値」が明示された分だけ、規制がかけやすくなったようにも見える。
例えば、裸の状態ではなくても、臀部を露出しているのはダメということになれば、十八歳未満のモデルがTバックかそれに近い水着や衣服等を身に付けていたなら、「児童ポルノ」と認定されてしまい得るだろうし、「性器の周辺」の解釈次第では、ビキニ程度以上に、下半身を覆う布地が少なければ「児童ポルノ」にされかねない。
乳首のみならず、「胸部」という広い範囲設定になっていることを考えると、前述したような、男子の胸をはだけた姿や、女子の胸の一部(谷間など)が見えているだけで、ある程度要件を満たしてしまうということにもなるかも知れない。
さらに、対象の部分を「強調」しているだけで、要件が満たされてしまうことを考えると、場合によっては着衣の状態でも、範囲に含まれるということになり得るという懸念が成り立ってしまう。どこまでを脱げば「衣服の一部」を脱いだことになるのかが明確にならない以上、普段着に近い格好でも、範囲に含まれてしまうかも知れない。
この「3号ポルノ」に関する点に限っては、幅広い形で明示されてしまったために、実質的に、現行法よりも厳しくなる可能性も考えられる。
具体的には、いわゆる「ジュニアアイドル系」と総称されてきた、十八歳未満のグラビアや映像の多くに関しては、「児童ポルノ」に含まれてしまう危険性も少なくない。それも、対象は十八歳未満となっており、いわゆる「U-13」、「U-15」と総称されるジャンルよりも、さらに広い幅で、規制がかかる恐れがあるのだ。
今回の改正案では、「専ら医学その他の学術研究の用に供するもの」は「児童ポルノ」から除外するとの条文を組みこんでもいるが、前述したような懸念を解消するためにはさらに踏み込んで、「芸術性、文化性が認められるもの」や「虐待性の認められないもの」は除外するといった規定が必要になってくるだろう。
しかも今回の改正案では「反復しての有償取得者」までが対象になっていることを考えると、現在、あるいはかつて、合法的に公刊された出版物や映像作品を購入したというだけで、児童ポルノ犯として検挙されてしまう危険性も大きいと言える。
もし実際に、グラビア等の買い手が児童ポルノ犯として逮捕されるという事態に陥ったならば、ユーザーへの過酷な圧力になってしまうのはもちろんのこと、作り手にとっても深刻なリスクとなって働くだろう。自分たちが作ったもので、大勢のユーザーが逮捕されるかもということになれば、必然的に、萎縮の度合いも今までよりもずっと強くなってしまう可能性が高い。
反復購入罪を組みこむ、ということであれば、最低でも、かつて穏当な芸術作品として発売されていたソフトヌードや、裸の映像が含まれた映画、現状でも発売されている水着グラビアなどは、絶対に含まれないような「定義」に改めることは必須だと思われる【了】
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