2011(平成23). 9.10(土) 警察の違法捜査を考える
                        その2 新宿警察署のまやかし
1 新宿違法捜査事件とは

(1)現場の確認


 8月21日午前中、原告原田尚美さん(以下、原告原田さんという)とJR新宿駅西口の西口交番前で合流し、現場の説明を受けた。
 原告原田さんの説明では、平成21年12月10日は木曜日だったが、多くの企業のボーナス支給日であったことや忘年会シーズンが始まったこともあって、午後11時前後の新宿駅は乗客でかなり混雑していたという。
 また、事件の現場とされる「第8ホーム北階段」の現在の位置は、平成22年3月23日に新しくなったもので、事件当時の位置とは違うことが分かった。
 また、事件当時は、西口改札口から第8ホームへ至る通路も、この階段工事のため現状とは違うやや幅の狭いクランク状の仮通路であったことも判明した。こうした現状で確認したところ、西口交番から西口改札口まで徒歩で約1分、改札口から現場とされる階段下まで徒歩約1分、西口改札口から第8ホームまでは徒歩約2分であることが分かった。
 被告警視庁の準備書面によると、信助君の痴漢行為の有無について、3台の防犯カメラの映像、すなわち@カメ(西口構内から西口改札口を写す)Aカメ(西口構内から仮通路)Bカメ(第8ホーム上から階段下)で確認したとしているが、当時の現場とは異なることから、どの防犯カメラがそれに当たるのかは確認できなかった。
 原告原田さんは、「JR新宿駅からは『仮通路内を写す防犯カメラは設置していなかった。』と説明を受けた。」と説明した。

(2)事件の経緯

 被告警視庁の準備書面(平成23年8月30日)及び原告原田さんから提供を受けた資料などから、明らかになったことを以下に列挙する。
 @ 12月10日 「午後10時55分に私は新宿駅で暴行を受けました。」(信助録音)
 A 12月10日 「8号ホーム23:05迷惑行為で110番」の記録がある。 (JR新宿駅日誌 原告原田さん確認)
 B 12月10日 午後11時前後、信助君は男性らに現行犯逮捕された疑いがある。
   ・「当事者甲が痴漢したとして、当事者乙が、丙、丁に依頼して甲を取り押さえた」
    (警視庁10番情報メモの[処理てん末状況]の記録)
    (注)当事者甲が信助君、当事者乙が被害女性、丙、丁が乙の友人男性
   ・信助君を取調べた警察官の説明(信助録音)
    「貴方が、その連れの男に取り押さえられた」
    「今触られたよ、とお友達の方が訴え出て、お友達が貴方を捕まえた」
    「だから男性が捕まえて組み伏せたという状況になった」
    「貴方のことを痴漢の犯人だということで取り押さえたんですよ」
 C 12月10日 午後11時過ぎ JR新宿駅総武線ホームに向かう階段下で、男性が2〜3人の男性に
           囲まれ蹴られている。駅員に知らせて午後11時16分発の総武線に乗って帰宅した
           (目撃者の証言)。 
 D 12月10日 8号ホーム階段のBカメ(第8ホーム上から階段下)の映像は、午後11時15分27秒
           から41分35秒までのものだが、この時間帯の同ホームは乗客でかなり混雑している
           状況は確認できるが、痴漢行為やトラブルの有無は確認できない。
 E 警視庁「110番情報メモ」の事件処理状況に、以下の記録がある。
   ・12月10日 午後11時20分、信助君の携帯電話から110番通報(通話なし)
   ・12月10日 午後11時27分、同上(駅員にかこまれている)
   ・12月10日 午後11時37分40秒、警察官現場到着〜所要時間2分
 F 被告警視庁「準備書面」(平成23年8月30日)に事件処理経過の記録がある。
   ・12月10日 午後11時32分、西口交番勤務員2名が新宿駅助役から「駅構内で客同士が喧嘩」との
           届け出、午後11時35分ころ現場階段下に到着
   ・12月10日 午後11時50分ころ、信助君と被害女性ら3人を西口交番へ任意同行
   ・12月11日 午前1時10分ころ、双方を同署に任意同行、事件を生活安全課員に引き継ぎ
 
 こうして、事件は、西口交番から都迷惑防止条例(痴漢行為)の捜査を担当する生活安全課(以下、「生安課」という)に引き継がれた。
 つまり、信助君は痴漢容疑者として取調べを受けることになった。

 こうした推移から、仮に信助君が痴漢行為を行ったとすると、それは12月10日の午後11時前のことで、場所は新宿駅西口改札口からJR新宿駅第8ホームに向かう階段下へ至る仮通路内でなければならない。
 それから約30分以上にわたって現場で何があったのか。
 被害女性の友人男性らよる過剰な実力行使を伴う逮捕行為があった疑いもある。
 しかし、この点に関する被告警視庁の説明はない。
 また、この間、信助君は2回にわたり110番通報をしているが、被害女性ら3人は、いずれも警察官が臨場するまで110番通報した形跡はない。
 この事実を警視庁はどう評価したのかなど、様々な疑問がわく。

(3)新宿署における関係者の供述内容(被告警視庁準備書面から抜粋)

ア 被害女性の供述内容
 ○ 亡信助にお腹のあたりをすれ違い様に触られたこと
 ○ 亡信助を呼び止めて謝罪を求めたところ、知らないなどと言って立ち去ろうとしたので、ネクタイを
    掴んだ状態で口論になったこと
 ○ 先を歩いていた友人の訴外甲及び訴外乙が、私の声を聞いて戻って来て、訴外甲が仲裁に
    入ってくれたこと
 ○ 訴外甲と亡信助が揉み合いになり、本件階段下において亡信助が訴外甲に馬乗り になっている
   ところに、駅員が駆けつけたこと
 ○ 亡信助はスーツの上下を着ており、ワイシャツの袖が出ていたこと
 ○ はっきりとは覚えていないが、ワイシャツの色はたぶん水色だったと思うこと
イ 訴外甲(友人男性)の供述内容
 ○ 後ろを歩いていた被害女性の声を聞いて駆けつけると、被害女性が亡信助と口輪になっていたこと
 ○ 被害女性から痴漢された旨を聞き、立ち去ろうとした亡信助を制止したところ、亡信助と
    揉み合いになり、本件階段下で倒されて馬乗りされたこと
 ○ 亡信助に馬乗りされた際、顔をぶつけて鼻血が出たこと
ウ 訴外乙(友人男性)の供述内容
 ○ 訴外甲が亡信助と被害女性の仲裁に入ったところ、亡信助と訴外甲が揉み合いとなり、本件階段下
    で倒れて、亡信助が訴外甲に馬乗りになったこと
 ○ 訴外甲は、亡信助と操み合いになる前に、鼻血を出してはいなかったこと
 ○ 駅員Aらは、訴外甲の上に馬乗りになっていた亡信助に離れるように注意をしていたが、駅員Aらが
    亡信助に暴行を加えてはいないこと
 ○ 亡信助は、注意されたことに逆上し、駅員Aらの名札を引っ張ったりしていたこと
エ 亡信助の供述内容
 ○ 訴外甲に宙づりにされて後方に倒され、馬乗りで何度か首元を床に叩きつけられたこと
 ○ 被害女性に触ったことはないし、通行途中に歩行者と接触したこともないこと
 ○ 駅員の名前を確認しようとしたら駅員から突き飛ばされたこと
 〇 時間の補償や金銭賠償を求めること

 被害女性らの供述は、完全に一致している。
 これは、最初に任意同行された西口交番では、「亡信助と被害女性らを分けて、・・別々の部屋において・・事情を聴取」(被告警視庁準備書面)とあるように、警察官は被害女性らを同じ場所で取調べている。
 被害女性らは友人同士の関係であれば、相互に不利になる供述をしないのは当然である。
 従って、目撃証言にある集団暴行があったとしてもその事実を明らかにする訳がない。
 グループを分離しないで取調べ、これは明らかに捜査の初歩的なミスである。
 一方、信助君は痴漢行為を完全否定し、一貫して暴行の被害に遭ったと訴えている。
 双方の供述が完全に食い違っているのに拘らず、新宿署は、被害女性らの供述には一貫性があり、信憑性が認められるとして、信助君の痴漢行為を認定した。

(4)新宿署の判断(被告警視庁準備書面から抜粋・要約)

 被害女性の友人の訴外甲による信助君に対する暴行について、腕や肩を掴んだ事実を供述しているが、被告警視庁は「その原因は被害女性に対する痴漢行為の事実を問い質すための制止行為や逃走を防止するための範囲内であると認められた」などとし、「いきなり背後から引き倒された」などという信助君の主張は一切認めず、暴行あるいは傷害事件としての送致は消極と認めたとしている。
 また、駅員らによる信助君に対する暴行についても事件としての送致は消極と認めたとしている。
 ところが、信助君と被害女性との間の都迷惑防止条例違反(痴漢行為)については、被告警視庁は、被害女性に対する痴漢行為について、以下の理由から、信助君以外の通行人による犯行とは認められず、信助君が被害女性に痴漢行為をした疑いが濃厚であると認めたとしている。

 ○ 被害女性らの供述には一貫性があり、信憑性が認められたこと
 ○ 防犯カメラの画像解析から、
   ・亡信助が被害女性及び訴外甲と本件階段の中腹あたりで口論をしている状況が確認できたこと
   ・被害女性が痴漢被害を受けた場所及び時間において、被害女性とすれ違った男性3名のうち、
    被害女性の供述に沿う服装をしていたのは亡信助のみであったこと
   ・亡信助が被害女性の前にすれ違った通行人女性が、亡信助と接触するような距離ですれ違った
    直後に立ち止まり、訝しげに亡信助の方を振り向き、しばらく凝視していたこと
   ・亡信助が、通行人女性の左側からすれ違った直後、右手に所持していたカバンを左手に持ち替える
    などの不自然な行動をしていることなどの事実が認められたこと

 しかし、以下に述べるように、新宿署が信助君を痴漢事件被疑者と認定し、事件を送致した点については様々な問題を指摘できる。
  
2 新宿署のまやかし

(1)恣意的な事件送致

 刑事訴訟法第246条は、司法警察員は原則として、犯罪を捜査したとき事件を検察官に送致しなければならないと規定されている。
 例外として、検察官が指定した軽微な事件については、その処理年月日、被疑者の氏名、年齢、職業及び住居、罪名並びに犯罪事実の要旨を一月ごとに一括して、検察官に報告することになっている(刑事訴訟法246条但し書・犯罪捜査規範198条)。
 「犯罪を捜査したとき」とは、捜査した結果、検察官が事件について、起訴、不起訴の判断が出来る程度に至ったときと解される。
 ついでだが、警察は告訴・告発事件は、送致を義務付けられている。
 殺人等の重要事件では、時効が成立したときにも「被疑者不詳」で送致している。
 
 事件を送致するときには、犯罪の事実及び情状等に関する意見を付した送致書を作成し、関係書類及び証拠物を添付する(犯罪捜査規範第195条)。
  この事件は、関係者の説明を総合すると、女性による痴漢被害の訴えに始まり、その友人らによる現行犯逮捕と推測される実力の行使、そして、それに対する信助君の反撃行為という経過を辿っている。
 新宿署の捜査は一連の事件について行われており、その一部である暴行あるいは傷害容疑事件については送致せず、信助君の痴漢事件のみを送致することは、一貫性と合理性を欠き恣意的である。
 また、事件を送致する際には、「犯罪事実」と「情状等に関する意見」を付すことになっている。
犯罪事実は、被疑者が、何時、どこで、誰に、何をしたかを、迷惑防止条例(痴漢行為)の条文(構成要件)に沿って作成される。
 「犯罪の情状等に関する意見」は、警察としての検察庁の処分(起訴・不起訴)の参考となる意見を記載する。
 警察の捜査の結果からみた、被疑者の性格、年齢、境遇、犯罪の軽重、犯罪後の情況等を書き、最後に「寛大な処分を願いたい」とか「厳重処分を願いたい」と記載する。
 被疑者が死亡の場合には、捜査の結果等から被疑者の犯行と認定した根拠等を述べたうえ、「しかるべく措置願いたい」という記述になる。
 しかし、被告警視庁の準備書面には、信助君に関わる「犯罪事実」も「犯罪の情状等に関する意見」も明らかになっていない。
 被告警視庁は、信助君の痴漢事件を送致したのなら。その「犯罪事実」と「犯罪の情状等に関する意見」を明らかにするべきだ。

(2)不可解な捜査方針の変更
   
 事件の捜査は、警察署長の指揮統制の下に一定の方針で組織として進められる。
 平成21年12月10日、110番情報メモ[処理てん末状況]の結論に「痴漢容疑で本署同行としたが、痴漢の事実がなく相互暴行として後日地域課呼び出しとした」と信助君の痴漢容疑はない旨の記載がある。
 つまり「痴漢の事実がない」、これが新宿署の結論だった。そして事件は生活安全課から、「相互暴行」事件として、軽微な事件を処理する地域課に引き継がれた。
 この相互暴行事件とは何か。道警では「相(あい)被疑(ひぎ)」事件と呼んでいた。
 喧嘩等の際、双方を暴行事件の被疑者として検挙することを意味する。
 いわば喧嘩両成敗だ。

 捜査結果については、基本的には関係者に説明されることはないが、この事件に関しては、信助君が亡くなったこともあったのか、新宿署の副署長が原告原田さんに説明している。
 ア 信助君の痴漢行為は特定できなかった。
   ・平成22年1月11日、原告原田さんの「(信助が痴漢の疑いを)かけられたまま死んでしまったのでは
   浮かばれないですし」という問いに対して、副署長は
   「痴漢をやったという特定する材料がなかった。」
   「そうです、特定に至らなかったっていうことを我々は認定したわけです。」
 イ 信助君の痴漢行為を確認できるビデオ映像はなかった。
   ・同日、原告原田さんの「(信助君と被害女性とが)すれ違ったときに接触があったかどうかを確認
   するビデオはございますか。」との問いに副署長は「そこにはないです。」
   ・同日、原告原田さんの「その階段で(信助が女性に)接触したかどうか確認できるところにビデオ
   カメラは」との問いに、副署長は「物証、物証はないです。」
 ウ トラブルの様子は写っていなかった。
   ・同日、原告原田さんの「トラブルがあった時点のビデオカメラに、映像は写っていなかった?」との
   問いに「そう、そうです。」
 
 JR東日本が原告側に提出したVHSテープには、新宿駅第8ホーム北通路階段のDVDを平成21年12月11日に新宿署に提出した旨のメモ書きがある。
 つまり、この原告原田さんへの説明の段階で、新宿署はビデオ映像を解析していたことになる。
   
 ところが、平成22年1月28日、突如、原告原田さんへ新宿署生活安全課長から「駅員さん、学生さん、ビデオテープとかいろいろ調べたら、息子さんの方を迷惑防止条例の被疑者と認定し、送致するという形なりますので、予めご連絡する。」という趣旨の電話連絡があり、1月29日、新宿署は痴漢事件について、信助君を被疑者として東京地検に送致した。
 原告原田さんは、新宿署からはそれまでの方針を変更する新たな証拠が出てきたなどという納得のできる説明は受けていないという。
 そして、新宿署は送致した事件の内容を明らかにする立場にないとし、以後、原告原田さんには、一切説明していない。
  新宿署は、原告原田さんに説明した1月11日以降、28日までの間に、専助君を痴漢の被疑者と認定できる新しい証拠を発見したというなら、原告原田さんに説明するべきだ。
 痴漢事件の送致を受けて事件を不起訴処分にした東京地検からも不起訴記録は開示できないと連絡してきた。
 こうして、信助君にかけられた痴漢容疑は、一切その内容が明らかにされないまま闇に葬られた。
 何故、新宿署の方針が変更されたのかは、次回「警察相手の国賠訴訟の実態」で詳しく述べる。

(3)不可解な防犯カメラ映像をめぐる動き

 JR東日本が原告原田さんに提出したVHSテープには、「2009.12.10 第8ホーム北通路階段 23:05旅客トラブル 原田様」と記載されている。
 この映像は、被告警視庁の準備書面がいうところのBカメ(第8ホーム上から階段下)の防犯カメラ映像と思われるが、この映像については次のような不可解な動きがある。
   ・ テープのケースに「H21.12.11 新宿警察へ提出したDVD」との記載がある。
   ・ H22.2.25 原告原田さんの12月10日のトラブルの映像についての問い合わせに、JR新宿駅は
    「映像の保存期間は1ヶ月なので、既に上書きされてしまっている」と回答したという。
   ・ H22.8.24 JR東日本から「現在は警察当局へ提出しました防犯カメラ映像が返却され、当社で
    所持しております」との回答がある。
   ・ H22.12.7 JR東日本 証拠保全テープ提出されたのはVHSでH22.8.17 新宿警察署より返却との
    メモ書きがある。

 新宿署が信助君の痴漢行為を認定した防犯カメラの映像は、3箇所のカメラ映像とされるが、原告原田さんに提供されたのは、第8ホーム階段の昇降口付近を写したものだけである。
 しかも、その映像は極めて不鮮明なVHSテープだ。
 駅員や乗客が階段下を見ている様子はあるが、痴漢行為、逮捕行為、信助君の馬乗りの映像も確認できない。  警察署に提出したのはDVDだという。これも不可解だ。
 編集等の疑いがないかどうかを含めて検証が必要だ。
 被告警視庁の準備書面にある防犯カメラの画像解析の説明も、信助君の痴漢行為を直接写した映像によるものではなく、あくまでも前後の状況からの推測に過ぎない。
 なかでも「被害女性の供述に沿う服装をしていたのは亡信助のみであった。」という説明は、被害女性は信助君を トラブルになった場所で見ているのだから、信助君の服装を説明できるのは当然であり、論外だ。
 一方の信助君は、取調官に痴漢の被害に遭ったと称する女性についての認識はないと再三説明している。
 一般論になるが、最近は「防犯カメラ」(監視カメラ)を捜査当局が当然のことのように犯罪捜査に利用しているが、これには重大な問題が内在している。
 まず、防犯カメラの設置に関する法的な根拠も基準もない。
 本来は、犯罪の予防のために設置された防犯カメラの映像を犯罪の捜査、とりわけ犯人の特定の証拠として利用するためには、厳格な押収手続きが必要なはずだが、その手続きに関する法律もない。  
 設置者は、警察から犯罪捜査に利用したいと要求されれば、躊躇なく提供する。
 そして、警察の映像解析により犯人が特定され、それが証拠として使われる。
 しかし、それが編集等の手が加えられていないとする保証は何もない。
 この信助君の事件でも、防犯カメラの位置、撮影の範囲、映像の押収手続き、解析者、解析結果、編集の有無等について、厳格な検証が必要だ。

(4)姑息な「事情聴取」と「取調べ」の使い分け
  
 警察の犯罪捜査の基本を定める「犯罪捜査規範」や「刑事訴訟法」には、「取調べ」に関する定義はない。
 一般的には、捜査機関が、被疑者や参考人の出頭を求めて犯罪に関する事情を聴取すること、あるいは、犯罪捜査上必要があるときに、被疑者および参考人の供述を求めること、とされる。
 信助録音にある新宿署の到着直後の信助君と警察官のやり取り。
   ・信助「ここ取調室ですよね。取調べということはどういうことですか」
   ・警察官「貴方はですね、痴漢の被疑者ということで」
   ・信助「ちょっと待ってください。被疑者とはどういうことですか?」
   ・警察官「疑いです。」
 その後も取調官は、信助君を痴漢事実について繰り返し執拗に追及している。
 これは、明らかに取調べである。
 しかし、「取調べ」となると、刑事訴訟法第189条、犯捜査規範第169条で「供述拒否拒権の告知」が求められる。
 被疑者の取調べを行うに当たっては、あらかじめ、自己の意思に反して供述する必要がない旨を告げなければならない。
 信助録音のどこにも「供述拒否権の告知」の形跡はない。
 供述拒否権が告知しない取調べは違法だ。
 
 新宿署副署長は、そのことを意識して、新宿署における「取調べ」について、原告に対して「取調べじゃなくて事情聴取ですね。」と2つの言葉を使い分けている。
 これは明らかに違法な取調べを意識したまやかしである。
 アメリカには有名なミランダ判決というのがあるが、我が国では未だにこうした違法な捜査が罷り通っている。
こうしたコンプライアンスの無視が罷り通っていることこそが冤罪を生む原因なのだ。
  違法な手続きによる取調べの結果を記載した供述調書に証拠能力はないが、新宿署の取調べでは、作成するべき信助君の「被疑者供述調書」も作成されてはいない。
 信助君を被疑者として断定する証拠はどこにもないのだ。
 
(5)暴行事件の捜査にも消極的だった新宿署

  新宿署は相互暴行事件については、捜査の必要を認め、信助君に被害届を出す際の呼出しに応じる旨の確約書を提出させた。
 暴行を受けた被害者に被害届を提出するための出頭を確約させるということはあり得ないことであり、確約書を書かせる必要はどこにもない。
 確約書なる文書は、犯罪捜査規範にも存在しない。
 これは、新宿署が信助君を「相互暴行」事件の一方の被疑者と見ていたことを物語っている。
 信助君は、単なる被害者ではなかったのだ。
 暴行の被疑者の出頭を確保するために、信助君に「出頭を約束した」という心理的な圧力をかけたのだろう。
 もし、信助君が逃走のおそれがあるなら、こんな姑息なことをしないで逮捕すべきだ。
 これは暴行事件の捜査の基本だが、被害の申告があったときには、必ず、傷害の有無を確認する必要がある。
 出血、打撲傷等の有無を確認して、傷があれば医師の診断書の提出を求めなければならない。
 傷害があれば傷害事件として捜査することになる。
 信助録音等によると、新宿署は信助君の全身写真を撮影しているが、身体の傷害部位等の確認や病院の診断書の提出も求めていない。
 新宿署は、最初から相互暴行事件も捜査するつもりはなかったのだ。
 さらに、平成22年3月、原告原田さんが、信助君に対する暴行事件について、男性大学生(訴外甲)を氏名不詳のまま、暴行容疑で告訴するが新宿署は告訴状を受理しなかった。
 告訴は犯罪の被害者が行うものであるから、原告原田さんは信助君の親ではあっても告訴することはできないという形式論だろう。しかし、原告原田さんは告発ができる。
 その後、暴行事件の告訴は、東京地検が受理(不起訴)しているが、これはそうした趣旨で受理したものだろう。 新宿署の対応は大人げない。
 本来、窃盗事件と違って暴行事件の捜査に被害届なる文書は必要ない。
 告訴も必要ない。被害者の申告で十分である。
 信助君は、被害の申告をしていたわけで、それを基に捜査をして、事件を検察庁に送致すればよいだけのことである。

 「うずくまった男性を学生らしき2、3人が取り囲み、そのうちの一人が男性の胴体を何度も蹴っていた。3、4人が(暴行している)2、3人に向かって『もうやめとけよ』と止めていたが蹴りやむ様子がなかった。」あるいは、「数人の男性が階段を上がって行き、茶髪の男性が一人の男性を羽交い絞めのような形で捕まえ、男性は腹や顔を殴られ転倒、暴行が続いた。」との目撃証言がある。
 この証言は、被告警視庁の「友人の訴外甲による信助君に対する暴行について、腕や肩を掴んだ事実を供述しているが、その原因は被害女性に対する痴漢行為の事実を問い質すための制止行為や逃走を防止するための範囲内であると認められた。」とする説明と著しく異なる。
 目撃証言が事実なら、2、3人の男性グループによる集団暴行事件があったことになる。
 
 JR新宿駅の駅員が現場に駆け付けたとき、信助君がこの一連の暴行に反撃し、男性に馬乗り状態になっていたところから、新宿署は相互暴行という判断をしているが、信助君からすれば、身に覚えのない痴漢行為で言いがかりをつけられ暴行を受けたので反撃したと、正当防衛を主張していたのだ。
 信助君の痴漢行為が事実無根であったら、信助君に対する訴外甲による信助君に対する実力の行使は、根拠のない違法な行為、単なる暴行あるいは傷害に過ぎない。
 しかし、信助君は亡くなった。死人に口なし。多勢に無勢。
 新宿署は、相互暴行事件の立件送致を見送り、信助君だけを強引に痴漢被疑者に仕立て上げた。
 そのためには、被害女性らの供述を全面的に採用する必要があった。
 新宿署には、そうした判断があったに違いない。
次回はその3 警察相手の国賠訴訟の実態



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2011(平成23). 9. 1(木) 警察の違法捜査を考える
                        その1 痴漢冤罪事件と警察捜査
 
 8月21日、東京都内で「原田信助さんの国賠を支援する会」(会長 岡村遼司早稲田大学教授)主催による「警察の違法捜査を考える」シンポジュームが開かれ、「市民の目フォーラム北海道」代表原田宏二(元北海道警察釧路方面本部長)が講演した。
 講演後に行われたパネルディスカッションにおける、パネリストの原告原田尚美さん、ジャーナリストの寺澤有さん、国賠ネット代表の土屋翼さん、司会の大村京佑さんの発言は、既に動画で紹介されているので、そちらをご覧いただきたい。
 原田代表の講演のタイトルは「新宿違法捜査事件 こうして真実は隠ぺいされる」だが、講演時間は約1時間だったことから内容をかなり割愛した。 
 そこで、準備した原稿を以下の3回に分割して紹介する。
  その1 痴漢冤罪事件と警察捜査
  その2 新宿警察署のまやかし
  その3 警察相手の国賠訴訟の実態
 なお、この講演内容は、原田信助さんの国賠訴訟の弁護団の訴訟方針とは全く関係のないことをあらかじめお断りしておく。

1 多くの冤罪事件の陰で痴漢冤罪が

 昭和23年、現行の刑事訴訟法が施行されてから、殺人等の重要事件で無罪判決が確定した冤罪事件は数多い。ざっと数えても88件にも及ぶ。
 最近の事件では、平成14年の氷見事件、平成15年の志布志事件、平成21年の障害者団体向け割引郵便制度悪用事件(村木事件)がある。
 こうしたマスコミで大きく取り上げられた事件の陰には、ひっそりと目立たない冤罪事件もある。いわゆる痴漢冤罪事件もそうだ。
 調べてみると、過去3年間でいわゆる痴漢冤罪事件は、1件は「でっち上げ」事件だが、6件を数えた。6件のうち、2件は「被害女性供述が信用できない」、4件は「客観的証拠がない」というのが無罪判決の理由だった。
 特に、Cの事件では最高裁は「(痴漢事件では)客観証拠が得られにくく、被害者の証言が唯一の証拠である場合も多い。被害者の思い込みなどで犯人とされた場合、有効な防御は容易でない。」として、特に慎重な判断が求められると指摘、初めてこの種事件の審理のあり方を示した。
 それらの事件は、以下の通りだ。

@ 平成23年7月、千葉市中央区内の強姦事件。最高裁が「客観的な証拠がない」と逆転無罪。

 平成18年12月27日、千葉市内で起きた強姦事件について、客観的証拠はなく、起訴内容の基となるのは被害を訴えた女性の供述だけで、特に慎重に信用性を判断する必要があるとしたうえで、被害女性の供述を全面的に信用できるとした1審、2審判決を覆し無罪を言い渡した。

A 平成21年10月22日、東北海道中標津町の強制わいせつ事件。札幌高裁が「被害女性の供述は信用できない」と逆転無罪。  

 平成20年7月、同町内のアパート住む21歳の女性Aさんが、「電気温水器の修理に来たBさんにわいせつな行為をされた」と中標津署に告訴。警察はBさんを逮捕した。
 1審は有罪、2審ではAさんの供述の信用性には疑いを入れる余地があるなどとして無罪を言い渡した。
 Bさんは、告訴したAさんの告訴事実における申告が虚偽であることは明白であるとして、虚偽告訴罪の疑いで中標津署に告訴したが、釧路地方検察庁は不起訴処分とした。
 Bさんは国賠訴訟を提訴していない。
 
B 平成21年6月12日、西武新宿線の電車内の強制わいせつ事件。東京高裁が「被告が犯行を行ったとする証拠がない」と逆転無罪。

 平成19年2月、東京西武新宿線の電車内で女子高生(17歳)の下着内に手を入れるなどしたとして強制わいせつの罪に問われたアルバイト男性(23歳)の控訴審で、1審の東京地裁判決を破棄、「被告が犯行を行ったとする証拠がない」として逆転無罪を言い渡した。男性は、逮捕時から一貫して犯行を否認していた。
 事件直後、被害者は背後にいた男性の手をつかんでいるが、判決では電車が満員で被害者も犯行を直接見てはいないことなどから、「女子高生の供述がすべて本当だとしても、被害者が犯人とは別人の手を偶然につかんだ可能性がある」と指摘。被害者による事件当時の状況説明しか証拠がない現状では、男性を犯人とすることはできないと判断した。

C 平成21年4月、小田急線内の強制わいせつ事件。最高裁が「客観的証拠がない」と逆転無罪。

 平成18年4月18日、東京都世田谷区内の小田急線を走行中の電車内で被害者の下着に手を入れ、下半身を触ったとして防衛大教授が強制わいせつ罪で逮捕・起訴された。被告は一貫して容疑を否認したが、1、2審は有罪判決を下した。判決で、指から下着の繊維が鑑定で検出されていないなど客観証拠がなく、証拠は女性の証言だけで、被害者は痴漢にあってから一度電車を降りたのに再び同じ車両に乗って被告の隣に立ったこと、痴漢が執拗にやられたのに車内で積極的に避けようとしていないなどと痴漢の供述には疑いがあるとした。

D 平成21年3月26日 JR大阪環状線の電車内の痴漢事件。大阪高裁が「故意と認めるには合理的な疑いが残る」と無罪判決。

 平成19年5月、JR大阪環状線の電車内で女子高生2人に痴漢をしたとして大阪府迷惑防止条例違反の罪に問われ、1審・大阪地裁判決で無罪とされた兵庫県芦屋市の男性会社員(32歳)の控訴審判決で、昨年9月の一審判決を支持し、検察側の控訴を棄却した。
 判決は、女子高生(当時15歳)が尻を触られる被害を受け、別の女子高生(同17歳)の胸に被告の会社員の肘が当たったことを一審と同様に認定。そのうえで、車内は通勤客で混雑し、女子高生の視界には限界があったと指摘し、「犯人と会社員を同一と認め、肘が当たったことも故意と認めるには合理的な疑いが残る」と述べた。

E 平成20年2月、大阪の地下鉄・御堂筋線の電車内で、大学生が交際中の女性と共謀し、示談金目当てに痴漢被害をでっち上げた事件。
 
 平成20年2月、大阪の地下鉄・御堂筋線の電車内で、女が男性から尻を触られたとする嘘の被害を申告し、目撃者を装った大学生が「男性が尻を触った」と虚偽の証言をした。
 男性は、大学生らに天王寺駅の駅長室で警察官に引き渡されたうえ、大阪府迷惑防止条例違反の現行犯で逮捕されたが、男性は事実無根と犯行を否認した。
 警察は3人の供述や証言が食い違うなどしたため、約22時間後、男性を釈放した。
 その後、女が同署に『金に困っていた大学性から持ちかけられた。自分の方から男性に体を近付けていった』などと自首してきたことから事件がでっち上げであることがわかった。

F 平成21年5月、三重県熊野市の路上の痴漢事件。名古屋高裁が「犯人とするには立証不十分」と逆転無罪。

 平成19年5月、三重県熊野市の路上で女子高生(16歳)の尻を触ったとして同県迷惑防止条例違反罪に問われ、1審熊野簡裁で罰金30万円の判決を受けた同市の男性(23歳)の控訴審判決で、名古屋高裁は無罪を言い渡した。  
 判決理由は男性の供述調書の信用性に疑いがあると指摘。犯人とするには立証が不十分とした。男性は同年12月に略式起訴されたが起訴事実を否認して正式裁判を請求した。

 ここで、「強制わいせつ」と「痴漢行為」との違いについて説明しておく(以下は、佐藤嘉寅法律事務所ホームページからの引用・要約)。
 強制わいせつは、「13歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をしたとき、あるいは13歳の未満の男女に対し、わいせつな行為をしたときに処罰される(6月以上10年以下の懲役)。痴漢行為は、迷惑行為防止条例違反で、「人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しくしゅう恥させ又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしたときに処罰される(東京都条例では、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金)。
 強制わいせつ罪は、親告罪(被害者の告訴がなければ起訴ができない。)で、判例上、犯人の性欲を刺激興奮させ、または満足させるという性的意図の下に行われることを要する、とされている。これに対して、迷惑行為防止条例違反は、「人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動」とされ、相当広範な行為が規制対象となっている。従って、女性の下腹部や臀部を着衣の上から触ったりしただけでも迷惑行為防止条例違反が成立することがある。
 基本的に、衣服の上から触った場合には、迷惑行為防止条例違反、直接触った場合には、強制わいせつ罪とされている。
 具体的には、スカートの中に手を入れてさわれば、強制わいせつ罪となる。
 ただ、身体に直接さわった場合といっても、足をさわっただけであれば迷惑行為防止条例違反に止まる場合もある。
 また、迷惑行為防止条例違反に止まると思われる場合も、それが執拗に行われた場合には、強制わいせつ罪になり得る。
 結局、身体の場所、衣服の内外、行為の長短といった基準を総合して、強制わいせつ罪と迷惑行為防止条例違反とを峻別していることになる。

2 初動捜査の不徹底と曖昧な捜査指揮

 平成21年6月、警察庁はCの最高裁の判決を受けて、警視庁をはじめ全国の警察に、「電車内における痴漢事犯への対応について」を通達。
 以下の5項目を留意事項として示した。
 各項目をみても、犯罪を捜査する上で、ごく当然のことであり、目新しいもではない。
 問題は、こうした当たり前のことが、現場で実行されているかどうかである。
 信助さんの痴漢容疑事件は、深夜の午後11時過ぎに起きている。通常はこの時間帯の警察署は、昼間の体制とは違う当直体制下にある。この事件は、西口交番から同署の生活安全課に引き継がれている。同課が事件を担当したということは、新宿署が信助君を主として迷惑防止条例違反(痴漢行為)の容疑者とみて捜査していたことを意味している。
 もう一つ重要なことがある。
 捜査はどんな事件でも、警察署長か警察本部長の指揮の下に進められる。
 この事件は、新宿警察署長の指揮事件である。
 捜査の経過は「事件指揮簿」という書類にその事件の事件認知から送致までの経緯と結果が具体的に記載されている。
 信助さんの痴漢容疑事件も「事件指揮簿」が存在するはずだ。
 信助さんの痴漢容疑事件ではどんな捜査が行われたのかは、「事件指揮簿」に記載されているはずだが、これまで明らかになった状況から、この通達の各項目に従って、新宿署の捜査の内容を見てみよう。

@ 目撃者の確保
 信助君が痴漢行為をしたと証言したのは、被害に遭ったとする被害女性だけである。行動を共にしていたとする友人男性2人も目撃していない。しかも、現場に臨場した西口交番の警察官が積極的に痴漢行為の目撃者探しをした形跡は認められない。事後に目撃者捜しをしたのは、原告の原田尚美さんとその支援者だけである。

A 実況見分等証拠保全の徹底
 人的証拠や物的証拠が乏しい事件では、犯行状況を再現する実況見分は重要である。
 この事件では、一方の当事者の信助君が死亡しているために、女性グループの証言のみで実況見分が行われることになる。こうした場合、事件の原因、経過等が一方の当事者に有利に認定される傾向がある。同じようなことは、死亡交通事故の捜査でしばしば問題となっている。この事件でも同様だ。

 B 供述の裏付け捜査の徹底
 信助君が残した録音(以下「信助録音」という)では、信助君は痴漢行為について一貫して否認している。しかも西口交番の警察官は、事件を最初から単なるトラブル、喧嘩と見ていた節が窺え、女性グループの取調べを一括して行うなど、被害女性らの供述に矛盾点がないかどうかの視点で捜査が行われていない可能性がある。
 信助録音の内容と被害女性及び同伴男性の供述は著しく相違しているのに拘らず、新宿署は女性グループの供述をもって事実関係を特定している。
 これは著しく合理性を欠く。

C 客観的証拠の収集
 新宿署が、信助君の手指から微物採取をした形跡はない。信助君が新宿署で取調べを受けていた約3時間半の間に、後に信助君の痴漢行為の認定の拠り所なったとする防犯ビデオの映像について確認は行われていない。
 後に、JR東日本が原告側に提出したビデオ映像は極めて不鮮明で、信助君が痴漢行為を行ったとされる状況は確認できない。さらに、事件当時の通路は工事中で曲がりくねったクランク状になっており、防犯カメラの映像が存在するかどうかも疑わしいなど客観的な証拠はない。

D 留置の要否判断
 痴漢事件では、一般人が犯人を逮捕するケースが多い。刑事訴訟法第213条では、一般人が現行犯人を逮捕すること(常人逮捕)が認められているが、その場合には、逮捕した被疑者を警察官に引き渡すことになる。受け取った警察官が被疑者を留置するかどうかを判断することになる。
 信助録音によると、取調べの警察官が信助君に何度も「男性が貴方を組み伏せた」などと説明、警視庁の「110番情報メモ」には、当事者甲(信助君)が痴漢をしたとして、当事者乙(被害女性)が丙、丁(友人男性)に依頼し甲を取り押さえたが」との記載がある。これらは明らかに常人逮捕があったことを示すものである。これが事実とすると被害女性グループの供述とは明らかに矛盾する。ところが、この経過は一切明らかにされていないのは極めて不自然である。
   
 この警察庁の通達は、痴漢事犯の適正捜査を指示したものだが、既に指摘した通り新宿署の初動捜査が必ずしも徹底していたとはいえず、捜査指揮も、よく言えば慎重、悪く言えば、中途半端で曖昧なまま終わっていることが窺える。
  例えば、さきに掲げた大阪で起きたEの事例のようなケースもある。この事件では常人逮捕に関する適正な指揮が行われなかったのではないか。さらに、供述拒否権を告げない約3時間半にわたる信助君の取調べは任意捜査の限界を超えているのではないか。「110番情報メモ」に「痴漢被疑者の服装と信助君の服装が別であることが判明」、「事件を相互暴行事件として後日、地域課呼び出しとした」とあるように、痴漢事件の捜査を打ち切り、暴行事件については地域課が継続捜査することになっている。
 しかし、信助君に午前3時36分に、暴行事件で呼び出しがあれば出頭する旨の「確約書」を書かせた際、信助君に痴漢容疑が晴れたことを説明した事実はない(信助録音)。
 この事実は重大である。説明がなされていれば、信助君が自らの命を絶つという事態は防げたかも知れないからだ。
 このように、警察庁の通達項目に従って、新宿署の捜査をざっと見ただけでも、様々な疑問がわく。さらなる検証が必要だ。

 次回は、その2 新宿警察署のまやかし


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「原田信助さんの国賠を支援する会」より転載
http://haradakokubai.jimdo.com/
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「原田信助さんの国賠を支援する会」主催 シンポジウムのお知らせ

一人でも多くの方々と共に、

あの日原田信助さんに何が起こったのか?「恒常化している警察の違法捜査の実態」について学び、
考える機会を持ちたいと思い

ゲストに 「市民の目フォーラム北海道」代表 原田宏二氏、(元道警釧路方面本部長)

フリージャーナリスト 寺澤有氏、

国賠ネットワーク代表 土屋翼氏、

を迎えシンポジウムを開催する事となりました。

年々エスカレートする警察の違法捜査・・決して他人事ではありません。一緒に考えましょう、ぜひ
、ご参加ください。


日時:2011/08/21(日)13:30開場 開始14:00〜終了16:30(予定)

場所:JR 水道橋駅下車徒歩約5分 たんぽぽ舎 

〒101-0061 東京都千代田区三崎町2-6-2ダイナミックビル5F

TEL: 03-3238-9035 

参加費:700円(会場費&資料代)
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※原田代表の講演タイトルは、「新宿違法捜査事件 こうして真相は隠ぺいされる」です。


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2011(平成23). 6.23(木) 7・7 原告1000人募集
                        原発はいらない 泊廃炉を求める発足集会

 3月11日の東日本大震災によって福島第一原発は致命的な事故を起こし、いまだに収束の見通しさえたっていない。
 北海道には北海道電力の泊原発があり、隣接する青森県大間町には電源開発(東京)が建設中の大間原発がある。
 大間から函館までは最短で23キロ。北海道民にとって原発問題は他人事ではない。
 今回の福島第一原発の事故は事業者の言う「安全」がまったく信用できないものであることも明らかになった。
 このような事態に直面し、北海道に住む私たちがいまやるべきことは何か。
 そんなことを模索している中、北海道でもようやく具体的な動きが出てきた。
 札幌弁護士会の市川守弘弁護士が中心となり、泊原発の危険性・違法性を司法の場で議論し、裁判を通じて、泊原発の問題を道民だけでなく世界の人々に訴え、廃炉という判決を勝ち取ることが、もっとも近道ではないかとする「泊原発廃炉訴訟の会」を立ち上げた。
 「泊原発廃炉訴訟の会」は設立後、1000人の原告を募る運動を展開するほか、泊原発廃炉を求める運動を幅広く展開する予定だ。
 「泊原発廃炉訴訟の会」は、皆さんの参加を呼びかけている。
 「泊原発廃炉訴訟へのよびかけ」はPDF参照。
 
 日時:平成23年7月7日(木) 午後7時から(開場午後6時)
 場所:札幌市中央区北2条西7丁目  かでる2・7
 主催:「泊原発廃炉訴訟の会」 
 問い合わせ先:市川守弘弁護士 011-281-3343

 なお、この集会については、「市民の目フォーラム北海道」としても賛同し、「泊原発廃炉訴訟の会」にも参加する予定である。


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2011(平成23). 6.17(金) 新宿署違法捜査国賠訴訟 第1回口頭弁論傍聴記
                        母親の原田尚美さんが涙の意見陳述

 痴漢容疑で警視庁新宿警察署の警察官の取調べを受けた後、駅のホームから投身自殺した原田信助さん(当時25歳)の母親・尚美さん(54歳)が、「息子は違法な取調べによって精神的苦痛を受けた」として、2011(平成23)年4月26日、東京都(警視庁)を相手取って提起した国家賠償請求訴訟(以下「新宿署違法捜査訴訟」)の第1回口頭弁論が、平成23年6月14日午前10時30分から、東京地裁第709号法廷で開かれた。
 この訴訟については
  2011(平成23)5.6  前途有望の青年を死に追い込んだ警視庁
                 直ちに、母親の原田尚美さんに謝罪せよ
でこのホームページに掲載した。
 当日は、原告の支援者で傍聴席は満席、一部は廊下で傍聴するという状況だった。
記者席も報道記者で埋まった。
 口頭弁論では、原告の訴状に対する被告警視庁の答弁書が陳述されたほか、原告の原田尚美さんが意見を陳述して終了した。
 被告警視庁の主張は、追って準備書面を提出するとしている。
 (次回は、8月30日 午後2時0分から611号法廷で開かれる。)
 終了後に、弁護士会館で報告集会が開かれ、原告の原田尚美さんが支援に対する感謝の挨拶したほか、代理人を代表して清水勉弁護士が当日の口頭弁論の内容と今後の見通しなどについて説明した。

 
  (右は挨拶する原田尚美さん 左は代理人清水弁護士)

 また、報告集会では傍聴した「市民の目フォーラム北海道」代表原田宏二も国賠訴訟に対する警察の対応などについて説明した。
 その内容の一部は、元北海道警察・原田宏二氏 【原田信助さんの国賠訴訟】を語る( http://ff.im/-FJOqG)として、[you tube]にも掲載されている。
 当フォーラムのホームページからも見られる。

警視庁の答弁書
 以下は、被告警視庁が提出した答弁書からの抜粋である。
第1請求の趣旨に対する答弁
 原告の請求を棄却する
 訴訟費用は、原告の負担とする
との判決を求める。
第2 請求の原因に対する認否
2「2本件の概要」について
 否認ないし争う。
3「3 事件の経過」について
(2)突然のすざましい暴行について
 否認する。
(3)110番通報と警察官らの到着について
 亡信助が、本件当日午後11時27分ころ、110番通報をしていること(なお、同日午後11時20分ころにも同じ携帯電話番号からの架電があるが、応答直後に切断されている。)、警察官2名(3名ではない。)が、本件当日午後11時37分ころ、東京都新宿区新宿三丁目38番1号東日本旅客鉄道株式会社新宿駅第8ホーム北階段下に臨場したことは、認める。亡信助が110番通報をした際に、上記(2)における原告主張の本件暴行を受けていたとの点は、否認する。
 亡信助が110番通報をした理由については、不知。
(4)交番での監禁について
ア 被害者としての任意同行について
 警察官が亡信助に新宿署新宿駅西口交番(以下「西口交番」という。)への任意同行を求め、亡信助がこれに応じたこと、警察官が本件当日午後11時50分ころ(午後11時20分ころではない。)、徒歩で亡信助を西口交番に任意同行したことは、認める。
 亡信助が、上記(2)における原告主張の本件暴行により怪我をしたとの点は、否認する。
 任意同行時の亡信助の内心の事情については、不知。
イ 監禁ないし架電希望を拒絶について
 否認ないし争う。
(5)新宿署への任意同行について
 警察官が亡信助の承諾を得た上で、同人を新宿署へ任意同行したことは、認める。
任意同行時の亡信助の内心の事情については、不知。
(6)痴漢事件の自称被害者の説明について
イ 犯罪構成要件を確認しなかった警察官らについて
 否認する。
ウ 被害届の不提出について
 痴漢の被害を申告した女性(以下「被害女性」という。)の加害者の服装に関する供述について、一部、亡信助の服装と組酷している点があったとの範囲で、認める。
 その余は、否認ないし争う。
(7)痴漢事件の被疑者としての取調べについて
ア 被疑事実が曖昧、黙秘権の不告知等について
 否認ないし争う。
イ 監視カメラによる確認の不存在について
 新宿駅構内に複数台の防犯カメラが設置されていることは、認める。
 その余は、否認ないし争う。
ウ 身体検査について
 警察官が、新宿署において、亡信助の承諾を得た上で、服の上からポケット等を触り、危険物等の携帯の有無を確認したことは、認める。
 その余は、否認ないし争う。
エ 所持品検査について
 認める。
オ 架電希望、黙秘権不告知、帰宅希望を拒絶について
      否認ないし争う。
カ 虚偽事実による自白の誘導について
 警察官が、概ね訴状に記載された内容を亡信助に話したことは、認める。
 警察官が虚偽の説明をして、亡信助に虚偽の自白をさせようとしたとの点は、否認する。
キ 指紋の採取について
 否認する。
ク 全身の写真撮影について
 警察官が亡信助の承諾を得た上で、同人の全身写真を撮影したことは、認める。
 その余は否認する。
ケ 双方暴行を断定について
 亡信助が確約書を自筆して作成したことは、認める。
 その余は、否認ないし争う。
(8)解放について
ア 第1段落(「12月11日」から「幾度も洗った。」まで)について警察官が、平成21年12月11日午前4時ころ、亡信助の事情聴取を終了したこと、警察署で仮眠を取りたいとの亡信助の申し出に警察官が応じたこと、亡信助が新宿署2階に設置された長椅子で仮眠をとったことは、認める。
 警察官が亡信助を痴漢の被疑者として取り調べたとの点、亡信助が樵倖しきっていたとの点、亡信助の顔がアザだらけであったとの点は、否認する。
 亡信助が、同日午前5時40分ころ、目を覚まし、トイレで顔を洗ったとの点は、不知。
イ 第2段落(「午前5時45分」から「新宿署を出た。」まで)については不知。
ウ 第3段落(「新宿駅に」から「降車した。」まで)について
 新宿署を退署した後の亡信助の行動については、認める。
 その余は、亡信助が警察官の取扱いを理由として、精神状態に異常を来たしたという趣旨であれば、否認する。
エ 第4段落(「午前6時40分頃」から「死亡した。」まで)について
 認める。
(9)痴漢事件に関する事件送致について
 新宿署が、平成22年1月29日、亡信助を公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和37年東京都条例第103号)違反(以下「迷惑防止条例違反」という。)の被疑者として、東京地方検察庁検察官に書類送致したこと、同検察官が亡信助を不起訴処分としたこと、亡信助の供述調書が作成されていないことは、認める。
 被害女性の被害届及び供述調書がないとの点は、否認する。
4「4警察官らの不法行為」について
(1)故原田の110番通報について事情聴取をしない警察官らについて
 110番通報が犯罪捜査の端緒となることがあること、亡信助が110番通報したことは、認める。
 その余は、否認ないし争う。
(2)故原田の監禁ないし帰宅や電話連絡の妨害について
 否認ないし争う。
(3)虚偽事実による自白の誘導について
 警察官が、概ね訴状に記載された内容を亡信助に話したことは、認める。
 警察官が虚偽の説明をして、亡信助に虚偽の自白をさせようとしたとの点は、否認ないし争う。
(4)印鑑による押印の拒絶について
 刑事訴訟法198条5項ただし書が、供述調書への署名押印について規定していることは、認める。
 その余は、否認ないし争う。
(5)全身写真の撮影について
 警察官が亡信助の全身写真1枚を撮影したことは、認める。
 その余は、否認ないし争う。
(6)双方暴行としての取り扱いについて
 刑法36条1項が、正当防衛について規定していることは、認める。
 その余は、否認ないし争う。
(7)存在しない痴漢事件の送検)について
 否認ないし争う。
                                  (以下省略)
原告原田尚美さんの意見陳述
 原告の原田尚美と申します。平成21年12月11日早朝、東西線・早稲田駅のホームから線路に身を投げ自殺した原田信助当時25歳の母親です。
 息子は意志の強い努力家で、JAXAに入る時には、一日15時間も勉強していたことを、親友の方から聞きました。
とても優しい息子でした。子供の頃から母の日には必ずカーネーションを買って来てくれました。社会人になり、初めてのお給料日には、私に肩たたき器を買ってくれました。
 お友達も多かったようで、昨年の5月・7月・8月の11日にお別れ会をしたときには、沢山の友人の方にご参列頂きました。
 息子の悲劇は、平成21年12月10日夜、突然、やって来ました。
 その日の午後11時頃、息子は、帰宅するため、新宿駅構内の地下通路からホームへ上がる階段を上りかけていました。その時、見知らぬ男たちによって突然階下に引き落とされ、殴る蹴るの暴行を受けました。駆けつけた駅員からも暴行を受けました。息子は、「今、暴行を受けている」と、必死で携帯電話から110番通報しました。
 新宿駅西口交番から複数の警察官が駆けつけました。息子は当然、警察官はすぐに自分の言い分を聞いてくれるものと思い、交番について行きました。
 ところが、警察官らは、息子の話を聞かないどころか、奥の部屋に閉じ込め、私に連絡しようと電話を貸してくれるよう頼んでも、聞き入れてくれませんでした。
 息子が「終電に間に合わなくなる」と訴えても、「あなたは被害者なんだから、署に行って、刑事さんに話さなければいけない」と言って帰らせてくれませんでした。
 息子は、新宿署に行けば、被害を聞いてもらえ、電話を貸してもらえると信じ、パトカーで新宿警察署に連行されました。
 ところが、午前1時頃から始まった取調べでは、新宿署の刑事は息子に、「痴漢容疑の取調べだ」と言いました。
 息子はそこで初めて自分に痴漢の容疑がかけられていることを知りました。
 息子は、自分が一方的に暴行を受けた被害者であることを説明しましたが、3人の刑事はだれも真面目に聞こうとしませんでした。
 「もう帰っていい」と言われたのは午前4時頃でした。
 実は、この頃すでに痴漢被害者を自称していた女性は、息子が犯人ではないことを警察に説明していましたが、新宿署では誰もそのことを息子話してくれませんでした。
 あまりも理不尽な仕打ちに、息子は冷静な判断力を失い、出身大学である早稲田大学を目指して電車に乗り、地下鉄東西線・早稲田駅に辿り着くと、そこで命を絶ちました。
 これに対する警視庁の酷さは想像を絶していました。
 息子が自殺した49日後の1月29日。
 警視庁は息子を、「東京都迷惑防止条例違反の被疑者」として、東京区検察庁に書類送致しました。
 息子が弁解できないのをいいことに、犯罪者として事件処理したのです。
 検察は「被疑者死亡」で不起訴です。「嫌疑なし」にはしてくれませんでした。
 警察が人の人生、命を弄ぶようなことしてよいのでしょうか。人間として、親として決して許すことはできません。
 息子の人生は、希望に向かって歩み始めたばかりでした。
 事件当日は、念願の新しい職場での息子の転職の歓迎会の帰り道でした。
 息子がいなくなり、初めてむすこの部屋に入りましたら、部屋中本がいっぱいで、資格試験の参考書が積まれていました。
 事件の前月には、情報処理技術者の資格も取得していました。
 他にもまだまだ人生で挑戦したいことが沢山ありましたし、「将来、早稲田大学に奨学金をつくりたい」などの夢もありました。
 この度、国家賠償請求訴訟を提訴したのは、息子の名誉の回復のためと、この国の警察の捜査によって息子のような被害者を二度と出して欲しくないという心からの願いからです。
 裁判官の皆様には、適正なご判断を仰ぎたく宜しくお願い申し上げます。


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2011(平成23). 6. 3(金) 講演会のお知らせ
                        「今どき、こんな裁判が!弁護士が語る国賠訴訟のヤミ」

 講演会のお知らせ

 「今どき、こんな裁判が!弁護士が語る国賠訴訟のヤミ」

 茨城の布川事件でも冤罪判決、無罪まで43年もかかりました。冤罪が確定した鹿児島の志布志事件、富山の氷見事件は、国(検察)、県(警察)の責任を追及する国賠訴訟が行われています。しかし、冤罪なのに、検察、警察は違法捜査を認めていません。
 冤罪国賠だけではなく、最近、全国的にも警察官の職務執行をめぐる国賠訴訟が増えています。 しかし、警察は決して謝りません。被害を受けた市民は訴訟費用もありません。相談する人もいません。泣寝入りするだけです。ようやく奇特な弁護士を探して提訴、長い時間をかけて争っても、残念ながらほとんど勝てません。この10年で勝訴率6%という数字もあります。圧倒的に警察側が勝訴し、結局、市民は再びダメージを受けます。
 一方、警察は税金で弁護士を雇い、組織を挙げて対抗します。原告に有利な証拠は提出されず、警察官の証言は期待できません。万が一、警察が敗訴しても賠償金は税金で払われます。これは究極の税金のムダ遣いです。
 警察官個人の責任も追及されません。だから、冤罪は繰り返され、警察官の不祥事、違法行為はなくならないのです。
 まるで、明治憲法下の国家無答責の法理(公務員は天皇に対してのみ責任を負い、公権力の行使によって市民に損害を加えても、国家は損害賠償責任を負わないとする法理)が今も生きているようです。
 この現実を、わが身に降りかかるまで、ほとんどの市民は知りません。
 そこで「市民の目フォーラム北海道(略称:CEFH)」では、国賠訴訟の現状、ことの重大性など、国賠訴訟を巡る諸問題を広く市民に理解して貰うため、お2人の弁護士による講演会を開くことにしました。
 皆さんのご参加を心からお待ちしております。(入場無料)

                記

 日時:平成23年7月9日(土) 午後2時から午後5時まで (開場午後1時30分)
 場所:札幌市北区北8条西3丁目 エルプラザ3階ホール(男女共同参画センター)
 講演:1 市川守弘弁護士の講演 (1時間30分)
       「謝らない警察、泣き寝入りする市民」
     2 今瞭美弁護士の講演 (1時間)
       「法の不知を許さず!」って何?「裁判官! それは、あんまりです!」

     3 質疑応答 (30分)
       司会 「市民の目フォーラム北海道」代表 原田 宏二

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2011(平成23). 5. 6(金) 前途有望の青年を死に追い込んだ警視庁
                        直ちに、母親の原田直美さんに謝罪せよ

 痴漢容疑で警視庁新宿警察署の警察官の取調べを受けた後、駅のホームから投身自殺した原田信助さん(当時25歳)の母親・尚美さん(54歳)が、「息子は違法な取調べによって精神的苦痛を受けた」として、2011(平成23)年4月26日、東京都(警視庁)を相手取り、1,000万円の支払いを求める国家賠償請求訴訟を東京地裁に起こした。
 
 過去にも警視庁が対応を誤ったために人命が失われた事件がある。
 この事件は、平成16年1月26日、小出亜紀子さん(当時24歳)が、新聞販売店の寮で段ボールの中に入れられ、無惨な遺体で発見された事件だ。
 亜希子さんの両親は、平成18年2月15日、「警視庁多摩警察署は、母親や友人から、亜希子さんがH・Nらに監禁されている可能性があるから捜して欲しいとの訴え聞きながら、事件性がないと判断して捜査を開始しなかった。捜査を開始してくれれば、亜紀子は殺されずに済んだ。」と東京都(警視庁)等を相手取って、東京地裁に慰謝料2,000万円の支払いを求める損害賠償請求訴訟を提起した。
 「市民の目フォーラム北海道」は、この国賠事件を支援、原田宏二代表が裁判所に「意見書」を提出、訴訟は1審・2審とも原告が勝訴、現在、被告警視庁が最高裁に上告中である。
 
 本年2月に、原告の原田直美さんから「市民の目フォーラム北海道」に「国賠訴訟を提起したいが、引き受けてくれる弁護士を紹介してほしい」との相談を受けたことから、事件を「明るい警察を実現する全国ネットワーク」代表の清水勉弁護士(東京)に引き継いだものである。
 この事件には、現場の警察官の急訴事件対応能力の低下、適正手続きの無視等、警視庁だけではなく全国の警察に共通する深刻な問題が内在している。
 今回、原告の原田さんのご了解をいただいて、提訴の経過等を紹介することにした。
 「市民の目フォーラム北海道」では、「明るい警察を実現する全国ネットワーク」と連携し、原告を支援することにしている。
           
原告 母親 原田尚美さんの思い

 息子は、亡くなりましたが、だからといって、息子の受けた暴行被害と理不尽な警察の行いが、社会的に不問に付されてよい筈がありません。息子は今は何も語ることができませんが、確かに当時ははっきりと被害を訴え、加害者に対して処罰を求めていました。
 私が、その夜、息子の身に何が起きたのかを詳しく知ることができたのは、息子が英会話の勉強のために持ち歩いていたボイスレコーダーを、私に残してくれていたからです。
 新宿西口交番と新宿警察署の取調べの一部始終を録音したボイスレコーダーには、突然の暴行によって傷ついた身体の手当てもされず、自分は110番をした被害者だと言っても調書のメモでさえ取ってもらえず、電話も許されず、身に覚えのない男として最低の侮辱である痴漢の被疑者として一方的に追及され、どんどん衰弱していく息子の声が収められています。
 息子の人生は、希望に向かって歩み始めたばかりでした。息子は意思の強い努力家で、JAXAに入る時には一日15時間も勉強していたことを、親友の方から教えて頂きました。
 息子がいなくなり、初めて一人暮らしの息子の部屋に入りましたら、部屋中本がいっぱいで、資格試験の参考書が積まれていました。事件の前月には、情報処理技術者の資格も取っていました。他にもまだまだ人生で挑戦したいことが沢山ありましたし、「将来、早稲田大学に奨学金をつくりたい」という夢もありました。
 この度、国賠を提訴したのは、息子の名誉の回復のためと、この国の警察の捜査によって、息子のような被害者を二度と出してはいけないという思いからです。
 どうぞ、皆様のお力を私にお貸しください。よろしくお願いいたします。

 なお、原告代理人弁護団は、清水勉弁護士ほか8人である。 
 以下、訴状から事件の経過等を明らかにする。

第1 訴状からの抜粋

 3 事件の経過(訴状から抜粋)

 (1) 突然の凄まじい暴行
 2009年12月10日、新しい職場の歓迎会からの帰宅途中の故原田は、午後10時55分頃、新宿駅構内のホームへの階段を3,4段上がりかけたとき、突然、右腕を掴まれ、身体が宙に浮くような状態になり、階段下に仰向けに落とされた。続けて、面識のない男性ら(茶髪の男子学生)(以下「加害男性ら」という。)が故原田に馬乗りになり、「お前だろ、お前だろ」と言いながら、故原田の首元を何度か床に叩きつけた。加害男性らはさらに、うずくまっている故原田の腹部を思いっきり蹴り続け、周囲の通行人が止めるよう言っても、止めなかった。
 駆けつけた駅員二人も、理由は不明であるが、加害男性らの暴行を止めるどころか、加害男性らと一緒になって、故原田の襟首をもみくちゃにしたり、何度も突き飛ばしたり、ネクタイを床に着くほど引っ張るなどの暴行を加えた(以上の暴行全体を、以下「本件暴行」という。)。
 (2) 110番通報と警察官らの到着
 故原田は、本件暴行を受ける中、午後11時頃、警察に助けを求めるために110番通報した。
 そして、午後11時15分前後頃、警察官3人が本件暴行事件の現場に来た。
 (3) 交番での監禁
 @ 被害者として任意同行
 故原田は本件暴行により怪我をした(以下「本件暴行傷害事件」という。)。故原田は、警察官らに任意同行を求められ、自分が受けた被害について聞いてもらえるものと理解して、任意同行に応じることを同意し、午後11時20分頃までに、本件暴行傷害現場を立ち去り、新宿駅西口交番に歩いて行った。
 A 監禁
 しかし、交番内では、警察官は故原田に対しての被害者としての事情聴取を行なわず、午後11時25分頃から翌日午前1時前頃まで交番内の奥の部屋に約1時間半も監禁した。
 B 帰宅希望を拒絶
 故原田は帰宅を強く求めたが、警察官はこれを拒絶した。
 C 架電希望を拒絶
 故原田は自宅に電話をかけることを希望したが、警察官はこれも拒絶した。
 (4) 新宿署への任意同行
 故原田は、痴漢事件の犯人ではなく、本件暴行傷害事件の被害者として、帰宅のための交通手段の確保と、電話を使わせてもらうために、パトカーで新宿署へ行った。
 (5) 痴漢事件の自称被害者の説明
 @ 痴漢事件の自称被害者が説明した被害内容
 故原田の事情聴取に先行して行われていた、痴漢被害を自称する女子学生(以下「自称被害者」という。)の事情聴取では、痴漢行為の内容は、自称被害者が新宿駅構内の階段を降りているとき、上ってくる男性がすれ違いざまに、自称被害者の腹部をつまむような感じで触ったというもの(以下「本件接触行為」という。)であった。
 A 犯罪構成要件を確認しなかった警察官ら
 自称被害者の事情聴取をした警察官らは、本件接触行為が犯罪を構成するか、すなわち、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」(以下「本件条例」という。)第5条第1項が禁止する行為(何人も、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない。)に該当するか否かについて検討しなかった。
 B 行為態様の不自然さを確認しなかった警察官ら
 自称被害者の事情聴取をした警察官らは、午後11時近くの新宿駅構内の階段の雑踏の中で、ホームの階段を降りてくる自称被害者の腹部を、階段を上がって行く男性がすれ違いざまにつまむような感じで触ることができるのかという事実関係について検討しなかった。
 C 被害届の不提出
 自称被害者の説明によっても、本件接触行為が曖昧な上に、犯罪該当性に疑問があるものであり、しかも、加害者の服装が故原田の服装とは異なるということであった。そのため、故原田を加害者とする自称被害者の供述調書は作成されず、自称被害者は被害届も提出しなかった。
 (6) 痴漢事件の被疑者としての取調べ
 @ 被疑事実が曖昧なまま始まった痴漢事件の被疑者取調べ
 自称被害者が説明する被害内容が曖昧であるにもかかわらず、警察官らは、午前1時頃から、故原田を本件条例第5条第1項違反事件の被疑者として取調べ始めた。
 A 黙秘権の不告知
 警察官らは、故原田を被疑者として取調べるに際して、黙秘権の告知をしなかった。
 B 本件暴行傷害事件の被害者としての事情聴取を拒絶
 他方、警察官らは、故原田の外見から明らかな本件暴行傷害事件(刑法第204条・第208条)について、故原田が繰り返し被害者としての事情聴取を求めたにもかかわらず、これを拒絶し、故原田を被害者とする事情聴取を行わなかった。
 C 監視カメラによる確認の不存在
 新宿駅構内には通行人の行動を監視する監視カメラが多数設置されている。上記のとおり、自称被害者が説明する被害内容が曖昧だったことに照らすならば、警察官らは、JR東日本の協力を得て、監視カメラの映像を提供してもらい、これを確認することによって、本件接触行為の有無態様、故原田が痴漢行為を行ったか否かについて、確認することが容易にできた。
 しかし、警察官らは、故原田に対する取調べに先立って、上記監視カメラの映像を確認しなかったばかりか、取調べと並行して(取調べで故原田は本件接触行為及び痴漢行為を明確に否認している)確認することもしなかった。
 D 身体検査
 新宿署に到着すると、すぐに、警察官らは、故原田に対して、ポケットの中身の提示と、故原田の身体を服の上から触ることの了承を求めた。本件暴行傷害事件の被害者として新宿署に来た故原田は、一旦はこの求めを断わったが、警察官らから、警察署に入る全ての者について行うことであり、本件暴行傷害事件の加害者側も同じことをされているという説明を受けて、これに応じた。
 E 所持品検査
 続けて、警察官らは、故原田が所持していた鞄の中身の提示を求め、故原田はこれに応じた。
 F 架電希望を拒絶
 故原田が自宅に電話をかけることを希望したのに、警察官らはこれを拒絶した。
 G 黙秘権の不告知
 警察官は、故原田に対して、故原田を痴漢事件の被疑者として取調べるに先立って、黙秘権の告知をしなかった。
 H 帰宅希望を拒絶
 取調べ中、故原田は直ちに帰宅したい旨を幾度も告げたが、警察官らはこれを認めなかった。
 I 虚偽事実による自白の誘導
 警察官は、「女性があなたと覚えていまして」「顔を見て、あなたとすれ違ったときにお腹を触られたと」「女性が言うには、お腹のところをつまむように触られたということ、あなたのこの服装をずっと覚えていた」などと虚偽の説明をして、故原田に虚偽の自白をさせようとした。
 J 指紋の強要
 故原田の供述調書の作成に際して、警察官は一方的に「左人差し指」の指紋押捺を求め、故原田が印鑑を所持していることを明らかにして、「判こじゃ駄目なんですか」と言っても、これを聞き入れず、「左人差し指」の指紋押捺を強要した。
 K 全身の写真撮影
 警察官は、「今日の服装の写真を撮る」という一方的に言い、故原田が拒んでいるにもかかわらず、何のためかも説明せずに、ボロボロになった服装のまま、顔も髪の毛も暴行されたときのままの故原田の全身の写真を撮影した。
 L 双方暴行を断定
 警察官は、本件暴行傷害事件について、故原田について正当防衛(刑法第36条第1項)が成立するか否かについて全く事実確認をしないまま、「後日、双方暴行として取り扱う」と結論づけて、その旨を故原田に告げ、故原田に対し出頭確認書に署名させた。

 (7) 解放
 12月11日午前4時頃、痴漢事件の取調べが終了した。警察官は憔悴し切った故原田に対し、「署内の長椅子で仮眠をとるよう」言い、「目が覚めたら帰ってけっこうですから」と言った。故原田は署内の長椅子で仮眠をとり、同日午前5時40分頃、目を覚まし、トイレでアザだらけの顔を幾度も洗った。
 午前5時45分頃、故原田は新宿署を出た。
 新宿駅に着いた故原田は、完全に精神状態に異常を来たし、自殺するしかないと思いつめて、駅のコインロッカーに鞄(部屋の鍵も入っていた)を入れ、改札を通過し、中央線ホームに上がり、東京駅方面の電車に乗った。自宅(北区西ヶ原三丁目33番17号)の方向とは全く異なる。勤務先の女子美術大学の方向とも全く異なる。東京駅で降りると、地下通路を大手町駅まで歩き、東西線の電車に乗って、出身大学である早稲田大学の最寄駅である早稲田駅で降車した。
 午前6時40分頃、故原田は、地下鉄東西線の早稲田駅のホームから線路に飛び込み、ホームに入ってくる電車に轢かれ、死亡した。
 (8) 痴漢事件に関する事件送致
 2010年1月29日、新宿署は、被害届もなく、故原田を犯人とする自称被害者の供述調書もなく、故原田の自白調書もないまま、故原田を本件条例第5条第1項違反で、東京地方検察庁に書類送検した。
 その後、同年3月31日までに、東京地検は、上記事件を、被疑者死亡で不起訴とした。

 4 警察官らの不法行為(訴状から抜粋)
 警察官らの下記行為は故意又は過失による違法行為である。
 (1)故原田の110番通報について事情聴取をしない警察官ら
 110番通報は犯罪捜査の端緒である。警察に110番通報したのは故原田であった。通行人と駅員らによる集団暴行という重大な暴行傷害事件であり、故原田が傷害を受けていることは外見から明らかだったのであるから、警察官としては故原田について先行して事情聴取をすべきであった。
 しかるに、警察官らは、故原田に対して、110番通報に関する事情聴取を行わなかった。110番通報の対応として違法である。
 (2)110番通報者である故原田の監禁
 警察官らは、故原田の言い分を聞こうとしないどころか、交番の奥の部屋に故原田を閉じ込め、約1時間半も監禁した。故原田の意思に反して、故原田を交番の奥の部屋に監禁したことは、刑法第194条の特別公務員職権乱用罪に該当するものであり、明らかに違法である。
 (3)故原田を被疑者とする本件条例第5条第1項違反事件の不存在
 @ 自称被害者が説明する本件接触行為(痴漢行為)の内容
 自称被害者が説明する本件接触行為(痴漢行為)の内容は、自称被害者が新宿駅構内の階段を降りているとき、階段を上ってくる男性がすれ違いざまに、自称被害者の腹部をつまむような感じで触ったというものであった。
 前記のとおり、このような接触行為が可能なのかどうかがそもそも疑問である。仮にあったとしても、かかる本件接触行為は、本件条例第5条第1項(「何人も、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない。」)に該当しない。
 A 人違い
 しかも、自称被害者は、警察に対して、加害者の服装と故原田の服装が異なると説明している。仮に、自称被害者が本件接触行為を受けたとしても、それは故原田の行為ではなく、故原田とは別の第三者の行為であったということなのである。したがって、そもそも本件痴漢事件の捜査の初めから、自称被害者は故原田が加害者ではないと警察官らに説明していたのであり、自称被害者からかかる説明を受けた警察官らも故原田が本件痴漢事件を犯していないことを十分に認識していたのである。
 B 小括
 以上のとおり、自称被害者からの説明を聞いて、故原田を被疑者とする本件条例第5条第1項違反事件はおよそ存在しないことが明らかになっていたのであるから、警察官らとしては、上記事件について故原田を被疑者とする捜査を始めるべきではなかった(刑訴法第189条第2項参照)。
 したがって、故原田を被疑者とする上記事件に関する捜査はすべて違法である。
 (4) 自称被害者による本件条例違反事件(痴漢事件)の被害届の不提出
 しかも、これまで繰り返し述べてきたように、自称被害者は、その事情聴取において、本件接触行為の加害者の服装は故原田の服装と異なると説明しており、故原田が本件接触行為(仮にあったとしても)と無関係であることが、警察官らにも明らかになっていた。自称被害者は供述調書も作成せず、被害届も提出していない。
 以上のとおり、故原田が本件接触行為の被疑者ではないことが、警察官らにも明らかになったのであるから、警察官らが、本件接触行為について故原田を被疑者として取調べを続けたことの違法性は明らかである。
 (5)黙秘権の不告知
 警察官らは、故原田を本件条例違反事件(痴漢事件)の被疑者として取調べたのであるから、取調べに先立って、故原田に対して、被疑事実を明確にしたうえで黙秘権の告知をしなければならない(刑訴法第198条第2項)。ところが、警察官らは、本件条例違反事件(痴漢事件)に関する被疑事実も述べず、黙秘権の告知もしなかった。
 このような取調べの違法性は明らかである。
(6)帰宅や電話連絡の妨害
 任意捜査と言えるためには、捜査を拒絶して帰ることが自由にできなければならないし、電話も自由にできなければならない(刑訴法第198条第1項但し書)。ところが、警察官らは故原田が帰宅したいと繰り返し言ってもこれを認めなかった。
 また、突然、被疑者にされた者が逮捕のされていない段階で警察の事情聴取のために帰宅が遅くなることを家族に伝えることができるのは当然のことである。逮捕もされていない故原田は、自宅に電話をかけることを希望したが、警察官らはこれを認めなかった。
 仮に被疑者に対するものであったとしても、逮捕もされていない任意捜査の段階で、帰宅を認めず電話もかけさせないという行為自体違法である。故原田が被疑者ですらないことは、前記のとおり警察官らも熟知していた。かかる警察官らの帰宅を認めず電話もかけさせないという被疑者ですらない故原田に対する行為は、刑法第194条の特別公務員職権乱用罪に該当するものであり、その違法性は重大である。
 (7)監視カメラ映像の無視
 前記のとおり、自称被害者が説明する本件接触行為は曖昧であった。したがって、警察官らは直ちに新宿駅構内に設置されている監視カメラの映像を確認すべきであった。しかるに、警察官らは監視カメラの映像確認を行なわなかったのである。警察官らは、故原田が監視カメラの映像確認を求めてもこれを無視し、新宿駅に協力を求めて監視カメラの映像を確認することなど一切せず、故原田が一貫して本件接触行為を否認することに対し、ひたすら、「やったんだろう。」と繰り返すだけであった。
 監視カメラの映像という容易に確認できる客観的な証拠を無視し、本件接触行為を否認する故原田に対し、自白を迫る捜査の違法性は明らかである。
 (8)虚偽事実による自白の誘導
 取調べ警察官は、「女性があなたと覚えていまして」「顔を見て、あなたとすれ違ったときにお腹を触られたと」「女性が言うには、お腹のところをつまむように触られたということ、あなたのこの服装をずっと覚えていた」などと虚偽の説明をして、故原田に虚偽の自白をさせようとしたことは、違法である。
 (9)印鑑による押印の拒絶
 任意の取調べで作成された供述調書について、被疑者が押印するかどうかは自由である(刑訴法第198条第5項但し書)。任意に押印する場合においても、法が求めているのは「押印」であり(同項本文)、印鑑による押印で差し支えない。
 ところが、警察官らは、故原田がその供述調書について印鑑による押印を求めたにもかかわらず、これを拒絶して「左人差し指」の指紋押捺を強要した。その違法性は明らかである。
 (10)全身写真の撮影
 警察官らが故原田を被害者とする本件暴行傷害事件の証拠として故原田の身体の写真を撮影しようとするのであれば、警察官らは当然、その旨を説明し、故原田が受傷した部分を露出させて、該当箇所を何枚も撮影し、それがどのような状況でできたか、だれのどのような行為によるものかなどを、故原田にわかる範囲内で確認したはずである。
 しかるに、実際に警察官らが行なったのは、服を着て立っているだけの、たった1枚の全身写真の撮影だけであり、そのような写真を撮影する理由も明らかにしなかった。これはおよそ適法な捜査とは言えない、騙し討ち的な違法な肖像権の侵害である。
 (11)本件暴行傷害事件に関する双方暴行としての取扱い
 一方的に暴行を受けた者が自分に対する被害を回避するために抵抗した場合、正当防衛(刑法第36条第1項)として違法性が阻却される。ところが、警察官らは、本件暴行傷害事件について「双方暴行として処理する」と故原田に明言し、故原田の正当防衛の主張を無視し、全く考慮するところがなかった。明らかな決めつけ捜査であり、その違法性は明らかである。
 (12)存在しない本件条例違反事件(痴漢事件)の送検
 自称被害者が説明する本件接触行為の内容が曖昧で、仮にあったとしてもそれが本件条例に違反するものではないことが明らかであり、また、自称被害者自身、故原田が本件接触行為をしていないと明言しており(自称被害者は被害届も出していない)、捜査の端緒の時点で、すでに少なくとも故原田については、犯罪が成立しないことが明らかになっていたのであるから、新宿署警察官らは、自称被害者の事情聴取を始めて間もなく、本件接触行為の行為者が故原田でないことを知っていた。したがって、警察官らは、故原田に対して、同人を被疑者とする本件条例違反事件(痴漢事件)の事情聴取を開始するべきではなかったのである。
 それを、警察官らは正反対の行動に出た。警察官らは、自称被害者の説明していない虚偽内容を故原田に伝え、故原田に錯覚させ、虚偽の自白をさせようとしたのである。このような捜査はおよそ適法性を欠くものであり、およそ地検に事件として送検できる内容ではなかった。
 ところが、新宿署は、故原田の死亡を奇貨として、同人に関する本件条例違反事件(痴漢事件)の被疑事実があたかも存在するかのごとく装って、東京地検に書類送検した。その違法性は明らかである。
 新宿署がかかる違法な事件処理をしたのは、東京地検に書類送検をすれば、「被疑者死亡」を理由として本件条例違反事件(痴漢事件)が不起訴処分となり、本件条例違反事件(痴漢事件)の記録は「不起訴」を理由に公開されず、その真相は闇に葬られることになるからである。そして、故原田に対する本件条例違反事件(痴漢事件)及び本件暴行傷害事件に関する新宿署警察官らの違法行為も、駅員らの暴行も隠蔽し闇に葬ることができるからである。

第2 警視庁は直ちに原告に謝罪せよ

 国賠訴訟を提起する原告は、愛する肉親を失うなど、精神的、肉体的、社会的にも取り返しのつかないダメージを受けている。しかし、我が国では、それを取り返そうとすると、再び、大きな、耐えがたい犠牲を払わなければならない。警察相手に訴訟を起こそうとすると、まず、引き受けてくれる弁護士を探すだけで大変だ。弁護士にとって、警察相手の国賠訴訟は手がけたくない事件の筆頭だ。経営面でプラスにならないだけでなく、いくら成果をあげてもマスコミがほとんど取り上げないために、一般の人々に警察がかかえる問題を知ってもらうことができず、警察の改革に繋がらないからだ。労多くして益なし。それが警察相手の裁判なのだ。被告警察側の代理人となる弁護士は別だが。
 弁護士を見つけても警察の壁は厚い。警察は決し誤りを認めて謝罪することはない。
 被告警察側は、税金を使って顧問弁護士を雇い、組織的な訟務対策を展開する。違法行為は否定する。仮に違法行為を認めたとしても因果関係を否定する。警察官の違法行為を裏付けるような証拠は開示しない。証言台に立つ警察官は真実を語らない。それが、国賠訴訟である。

 従って、何故、警察官の職務執行によって、人命が失われたのか、真相が明らかになることはない。だから、「小出事件」と同じような事件が繰り返される。日本国憲法第17条は、「何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。」と規定している。これを受けて、国家賠償法第1条 がある。戦前の大日本帝国憲法のもとでは、「国家無答責の法理」という考え方があったという。官吏は天皇に対してのみ責任を負い、公権力の行使に当たる行為によって市民に損害を加えても国家は損害賠償責任を負わないとする法理だ。
 しかし、この10年間の警察を被告とする国賠訴訟の一審、二審、三審では、警察勝訴は2,953件、警察敗訴200件で、圧倒的に被告警察側が勝訴している。我が国では、事実上「国家無答責の法理」が生きているのではないかと錯覚するくらいだ。
 本件のように、警視庁の警察官の違法な職務執行が明らかな場合には、警視庁は誤りを認めて原告に謝罪し、その損害を賠償するべきである。
 その方が、原告にとってはもとより、東京都にとっても、時間と税金の無駄使いを避けることができる。そして、何よりも、警視庁は再発防止に資することができる。


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2011(平成23). 4. 2(土) 国賠事件の増加は弁護士の増加のせい?
                          弁護士は北海道警察の弱体化を狙っている   

 北海道警察本部監察官室の訟務事務資料「平成22年中における訟務事案の概要について」に面白いことが書いてある。
 監察官室とは、警察職員の不祥事や懲戒処分の調査、職務執行に関する苦情処理、訴訟対策等を所管するセクションである。警察職員の不祥事があると、「警察職員としてあるまじき行為である。事実関係を調査して厳正に処分したい。」と記者会見で毎回同じような釈明をして、深々と頭を下げているのが監察官室長(警視正)で、その下に大勢の監察官、訟務官、統括官という警視、警部クラスの警察官が勤務している。彼らの最大の仕事は組織防衛である。
 この資料は、その監察官室の訴訟事務に関するものである。その一部を抜粋して紹介する。

 はじめに
 昨年中に取り扱った争訟事件の総件数は、前年に比較して大幅に増加した。
 その主な要因は、行政訴訟事件や行政不服申立事件が増加したためであり、特に行政訴訟事件については、約5割が弁護士に委任することなく被処分者自らが提訴に及ぶというものであって、国民の司法参加への意識の高まりが顕著に認められた。
 また、国家賠償請求事件(以下「国賠事件」という。)では、自動車運転過失致死傷罪等で緊急逮捕され留置施設において死亡した被疑者の遺族が、安全確保義務を怠ったなどとして損害賠償を求める事件や、北海道警察の元警察官が、現職時代の違法な配転、昇任拒否により精神的苦痛を被ったなどとして損害賠償を求める事件等が発生した。特に、元警察官による人事が違法であるとする事件は前例のないものであり、司法制度改革に伴って弁護士数が増加したことに伴い、今後、弁護土が新たな活動分野を模索し又は北海道警察組織の弱体化を図るため、北海道警察の様々な処分等に着目のうえ訴訟を提起してくることも十分予測される。(以下 省略)

 これを読んで笑ってしまった。「市民の目フォーラム北海道」では、有名な鹿児島の志布志冤罪事件、富山の氷見冤罪事件、熊本県警のいじめ自殺事件等、警察を被告とする国賠事件で原告の支援を行っているが、弁護士が増えたからといって「弁護土が新たな活動分野を模索して訴訟を提起する」などと予測するのは的外れである。
「市民の目フォーラム北海道」では、警察官の違法行為により損害を受け、国賠訴訟を提起するため弁護士を探したがなかなか見つからない、との相談をたびたび受ける。弁護士が警察権力に腰を引くということはあり得ないと思うが、弁護士が警察相手の国賠事件に積極的だとも思えない。私が知っている警察相手の国賠訴訟の代理人を引き受けている弁護士の多くは手弁当のことが多い。しかも、警察の徹底した組織防衛の前に勝率も極めて低い。一般の民事訴訟に比べて、警察相手の国賠訴訟は厄介なことが多いようにみえる。
 どんな事情があったのかは分からないが、富山の氷見事件の原告弁護団の多くは東京弁護士会に所属する弁護士で、口頭弁論の度に富山に駆け付け熱心に取り組んでいる。熊本県警のいじめ自殺訴訟の原告代理人は、札幌の市川守弘弁護士が務めた。弁護士にとって、国賠訴訟は美味しい仕事ではないことは確かだ。被告側の弁護士は別として。
 さらに、指摘するならば、国賠訴訟が「北海道警察組織の弱体化を図るため」に提起されるという認識に至っては、警察の本音が出ていて面白い。警察がこうした認識でいるから、警察官の不適切な職務執行や不祥事が無くならないのだ。だから、争訟事件が増えるのではないか。
 その増加したとする争訟事件の概要は以下の通りだったそうだ。
1 争訟事件の概要
 争訟事件の取扱総件数は449件で、前年対比+75件と大幅に増加した。
このうち、新規発生件数は357件で、前年対比+56件となっており、行政訴訟事件、行政不服申立事件、人権侵 犯事件及びぐ訟事件の増加が顕著であった。
【新規発生件数の内訳】
 国賠事件 12件(-1)、行政訴訟要件16件(+10)、民事事件1件(±0)、行政不服申立事件118件(+14)、告訴・告発・ 付審判請求事件1件(-1)、人権侵犯事件8件(+7)、
損害賠償事件92件(+3)、ぐ訟事件109件(+24)
 *(注)「ぐ訟事件」とは、「将来、総称事件に発展することが予想されるもの」を指しており、警察署は「ぐ訟事件」を認知したときには監察官室に報告させているようだ。

 ついでに、警察庁に全国の国賠訴訟の10年間の推移について情報開示請求をしてみた。その結果、平成13年には、年間の国賠事件の一審の発生件数は130件だったのが、年々
 増加し平成22年には 188件で58件、45%も増えている。毎年平均すると224件が継続事件になっている。
(詳しくは「警察庁 訴訟事件の審級別状況調べ」PDF参照)

(ファイルサイズ:7.26MB)
 
 資料は、以下の文章で締めくくっている。
 予想した通り、争訟事件が発生した場合には、素直に誤りを認めて、謝罪しようとは書いていなかった。

おわりに

 警察は、法的な根拠をもって適正な職務執行に努めているところであるが、近年の国民の権利意識が高揚している中、その職務執行は、常に国民の権利、自由と直接的に深い関わりを持っていることから、争訟事件に発展する可能性も高いうことができる。
 しかしながら、警察の活動は、すべて国民の信頼に基づく理解と協力に支えられているものであるから、これに応えるためにも、争訟事件はできる限り未然に防止していかなければならないものであり、一度、争訟事件が発生した場合には、警察に対する国民の信頼や職員の士気の低下、あるいは、警察行政運営上の支障を招くことにもなりかねないことから、これを最小限度にとどめるために、組織を挙げて早期かつ合理的に、その解決を図らなければならない。
 そのためには、警察職員一人一人が、職務執行の原理・原則を十分に認識して、これを確実に実践していくことはもとより、惰性やマンネリ化を排し、常に緊張感を持って仕事に取り組むよう指導を徹底するとともに、業務を部下職員に任せきりにすることなく、節目節目において業務の進捗状況を検証するなど業務管理の徹底を図り、その適正執行を期することが極めて重要である。


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2011(平成23). 3.28(月) 被災地へ見舞金
                        
 連日、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故のニュースが伝えられています。
 「市民の目フォーラム北海道」からも、被災地の1日も早い復興を願い、見舞金を送ることにしました。
 「市民の目フォーラム北海道」の運営に必要な経費は、皆さんのカンパにより賄わせていただいており、見舞金の支出は当フォーラムの事業とは直接の関係はありませんが、会員の総意により、例年開かれていた総会を中止することによりねん出した5万円を、見舞金として、北海道新聞の「東日本大震災義援金」に寄託しました。
 皆さんのご理解と当フォーラムに対するご協力をお願いする次第です。
 東北ガンバレ! 日本ガンバレ!
           「市民の目フォーラム北海道」
                  代表 原田 宏二

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2011(平成23). 3. 4(金) 大相撲八百長メール横流しなどで
                        国家、東京都両公安委員会へ公開質問状を提出

 市民の目フォーラム北海道(札幌市 代表原田宏二)は、3月4日、警察庁を管理する国家公安委員会(委員長 中野寛成)と警視庁を管理する東京都公安委員会(委員長 鴨下 重彦)宛てに、公開質問状を送った。
 質問の対象とした問題は以下のとおりである。

1、平成22年3月30日、国松元警察庁長官狙撃事件の時効が成立した際、警視庁が「警察庁長官狙撃事件の捜査結果概要」を公表した問題
2、平成22年10月28日、インターネット上に国際テロ捜査に関する警視庁公安部外事第3課などの内部資料とみられる文書データが流出した問題
3、本年2月2日、警視庁が捜査中の大相撲の野球賭博事件で押収した携帯電話に残されていた八百長に関与していたとみられる複数の力士のメールの内容、力士名等を、警察庁を通じて文部科学省に提供した問題  

 回答期限は、3月25日である。公開質問状の内容はPDFご覧いただきたい。

  平成23年3月4日 警視庁の権限濫用に関する公開質問状(PDF 4,457KB)


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2011(平成23). 2.25(土) アジアを知ろう映画祭のご案内
           会員からイベントの紹介がありましたので掲載します。
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:アジアを知ろう映画祭のご案内
日時:2月26日(土)
会場:北大歯学部講堂(北12条駅から徒歩8分)
     札幌市北区北13条西7丁目 
       ※北大北13条門から入って、突き当たりの道路右手角の建物の2階です。
◎プログラム◎
10:20 ご挨拶
10:30 「ビルマ、パゴダの影で」上映
13:00 「ピュア〜難民キャンプのこどもたち」上映
           &ココラットさん講演『ビルマ難民と未来』
14:45 「ビルマVJ」上映
16:30 「ビルマ、パゴダの影で」上映
18:00 ココラットさんのお話 『本当のビルマを知ってください』
18:45 「ビルマVJ」上映

入場料:無料(カンパにご協力お願いいたします。)
◎どうして無料?
※ この映画祭は、経済状況にかかわらず、多くの方に見にきていただきたいと願い、経済的基盤
がない実行委員会としては、かなり無理をした選択ですが、料金を無料(カンパ制)として、映画祭
に賛同してくださる方の賛同金で運営することにしました。経費をのぞくカンパ・賛同金はすべて、
ココラットさんが支援するビルマ少数民族の難民キャンプ「メラウーキャンプ、教育支援の会」へ寄
付いたします。ぜひ、この映画祭を応援していただきたく、ご賛同よろしくお願いいたします。
******************************
郵便振替口座
口座番号: 02720 - 0 - 98362
加入者名:アジアを知ろう映画祭さっぽろ実行委員会
連絡先:ajia.eiga.sapporo@gmail.com
アジアを知ろう映画祭さっぽろ実行委員会

後援:札幌市、(財)国際プラザ
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2011(平成23). 1.29(土) テレビ朝日  1/30  サンデー・フロントラインの予告 


 1月30日(日曜日) 午前10時からのテレビ朝日 サンデー・フロントラインに「市民の目フォーラム北海道」代表原田宏二がビデオ出演します。
        (☆放送予定は2月27日(日曜日)に変更されました 2月25日追記)

 おおむね 午前11時15分からのコーナー「情報流出社会の恐怖」、時間は約20分の予定でジャーナリストの大谷明宏さんが解説します。

 内容は、昨年10月に警視庁公安部外事第3課の内部資料とみられる文書がネット上に流出した問題をとりあげたものです。

 なお、当日深夜にサッカーアジア・カップの決勝が行われます。その関係で放映が次週以降になる場合があります。あらかじめご了承ください。

 この問題については、ホームページ
  22. 11.18 流出文書 APECのためなら、何でもアリ  驚くべき公安警察の実態を暴露」
とのタイトルで掲載してありますのでご覧ください。


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2011(平成23). 1.10(月) 警察改革 野党時代の民主党はどこへ
                                 市民の目フォーラム北海道               
                                      
代表 原田 宏二              

  「市民の目フォーラム北海道」の原田です。
 明けましておめでとうございます。
 いつも、私共のホームページをご覧いただきありがとうございます。
 昨年も、全国の多くの警察で「預け」等の手口による裏金づくりが発覚したほか、相変わらず現職の警察官の犯罪等の不祥事が続発しました。
 現在、大阪地検特捜部の捜査の在り方が問題にされていますが、ご存じのように犯罪捜査の主役は警察です。
 その警察の違法な取調べなどによる冤罪事件は、これまでも数えきれないくらい起きています。
 マスコミには大きく報じられない隠れた冤罪事件も、各地で起きています。
 警察の捜査にも、検察と同じような問題があると考えなければなりません。
 私は、裏金、冤罪、不祥事といった警察腐敗の底流には、55年体制下における警察の中央集権化、キャリア官僚による都道府県警察の支配、公安委員会制度の形骸化等があると考えています。
 ですから、2009(平成21)年 8月の衆議院選挙での民主党の歴史的な大勝利、与野党の逆転には、警察改革に展望が開けるものと大きな期待を寄せました。
 国民の多くが、これまでと違う政治を民主党に期待したのではないかと思います。
 ところが、その1年後の2010(平成22)年7月の参議院選挙では民主党が惨敗、その多くの要因が自民党政権と何も変わらない「政治と金」の問題だったのは残念なことです。

           民主党の警察改革に関する公約

 「市民の目フォーラム北海道」は、2009(平成21)年7月、野党時代の民主党に対して、警察の地方分権化をはじめ、公安委員会制度の改革、「警察刷新に関する緊急提言」の検証、冤罪事件の根絶のための刑事訴訟法の改正、捜査費予算の抜本的見直しを骨子とする「警察改革に関する5つの提言」を提出したことがあります。
 その直後の2009(平成21)年8月の衆議院議員選挙において民主党が掲げた警察改革等の政策(INDEX2009)は、以下のとおりでした。
 民主党の政策は、「市民の目フォーラム北海道」の警察改革の主張と完全に一致するものではありませんが、当面の政策としては支持できるものと考えていました。
 その内容を再確認しておきます。
 ○ 警察改革
 捜査用報償費等を裏金化していたとされる不正経理や情報の漏洩、警察官による犯罪等さまざまな不祥事が続発し、警察行政への信頼が低下しています。これら警察不祥事に関して公安委員会の存在感は極めて薄く、その役割が改めて問われています。警察を監督する公安委員会の体制を強化するとともに、その事務を警察自身が行っているという矛盾を解消するため、国家公安委員会・都道府県公安委員会に独立した事務局を設置します。また都道府県知事や都道府県議会による監督の強化や、苦情処理制度を大幅に拡充し、市民の声を反映した警察行政を実現します。
 ○ 治安対策
 検挙率向上のため、日常生活に密着した「地域・刑事・生活安全」にかかる警察機能を拡充します。また、地域社会の防犯活動を支援します。
 治安・防犯の確保のためには、警察の捜査能力の向上が必要ですが、その一方で警察権限の無制約な拡大は、捜査権の乱用やプライバシー侵害などの弊害を招くことが懸念されます。
 こうしたことが市民の警察捜査に対する不信や非協力につながり、結果として治安の向上に悪影響を生じかねません。防犯カメラ・Nシステム(自動車ナンバー自動読取装置)・DNA鑑定等、新たな捜査手法の利用にあたっては、人権に配慮して運用ルールをしっかりと定めるとともに、個人情報保護の観点からの法規制を含めた検討を進めます。
 さらに盗聴・盗撮による被害が深刻化していることから、これらの取り締まりを強化します。
 ○ 総合的な銃器犯罪対策の推進
 長崎県佐世保市の散弾銃乱射事件などをきっかけとして、民主党が主張したことにより合法銃の所持許可の欠格事由厳格化などを主な内容とする改正銃刀法が2008年の170回臨時国会で成立しました。非合法銃についても、暴力団関係者等に対する摘発・検挙、密輸入阻止のための水際対策などを徹底し、総合的な銃器犯罪対策を強力に進めます。
 さらに、民主党政権政策(Manifesto)の政策各論6〜消費者・人権の49〜の中で「取調べの可視化で冤罪を防止する」として、
 【政策目的】
 ○ 自白の任意性をめぐる裁判の長期化を防止する。
 ○ 自白強要による冤罪を防止する。
 【具体策】
 ○ ビデオ録画等により取調べ過程を可視化する。
 【所要額】90億円程度
を掲げています。

            民主党政権の警察改革

 鳩山政権では、国家公安委員長に民主党が野党時代に「警察不正経理疑惑調査・警察改革推進本部」本部長を務めた中井洽(ひろし)氏が就任しました。
 中井氏のこの経歴から、警察改革が飛躍的に前進するのではないかと期待されました。
 そして、鳩山政権は、2009(平成21)年12月には国家公安委員に連合の前会長高木剛氏を任命しました。労働界から国家公安委員に就任するのは、昭和33年の金正米吉・日本労働組合総同盟(総同盟)会長以来、51年ぶりだったそうです。2010(平成22)年6月には、弁護士で元日本弁護士連合会副会長の山本剛嗣氏を国家公安委員に任命しました。
 取調べの全面可視化を求めている日弁連からの国家公安委員会入りは、全面可視化への展望が開ける第一歩かと期待されました。
 民主党政権になって、警察改革の成果と言えるのかどうかも分かりませんが、目に見える結果をあげるとすればこれくらいではないでしょうか。
 逆に、警察改革の期待が寄せられた中井国家公安委員長は、週刊誌に女性スキャンダルが報じられるなど物議を醸す言動の方が目立ちました。
 事実関係がどうなのかは別としても、警察を管理する立場にある国家公安委員長のこうした言動を苦々しい思いで見ていた現場の警察官も多かったのではないでしょうか。
 2010(平成22)年9月17日 に発足した第2次菅内閣で国家公安委員長に就任した岡崎トミ子氏は、産経新聞の取材に「国民目線の警察を目指す」としたうえ、取調べの可視化について、警察庁に設置された研究会の議論を踏まえて方向性を見いだしていきたいとの考えを示しました。
 【国家公安委員長就任の抱負】
 強い使命感を持って働いている現場の警察官を大切にしたい。
いい仕事ができるよう指導し、不祥事が起きない信頼される国民目線の警察を目指す。
機会があれば地方の公安委員とも話をして、現場の警察官を励ますメッセージを残したい。
 【取り調べの可視化】
 冤罪があってはならないということが、可視化を求められる理由。
 実現のために治安の水準が落ちるようなことがあってはならないということで中井洽前委員長が警察庁で研究会を立ち上げ、諸外国が持つ捜査手法の導入などについて検討している。
 今後は私のもとでの研究会となるが、まずはこれまでの議論の内容を把握しないといけない。
 その上で、可視化の方向性の可能性を見いだしていく(2010.10.5 産経新聞)。

 岡崎国家公安委員長の「現場の警察官を大切にしたい」は分かりますが、「不祥事が起きない信頼される国民目線の警察を目指す。」という発言は、あまりにも抽象的で、不祥事が起きるたびに都道府県警察の上層部が再発防止を誓って記者会見で頭を下げるときのセリフを思い出してしまいました。
 おそらく岡崎国家公安委員長は、警察の実態を知らないのだと思います。
 就任直後ですから無理もありません。
 警察の中央集権化、キャリア警察官僚による都道府県警察の支配、公安委員会制度の形骸化等が、警察腐敗の底流にあることを理解していただく必要があると思います。
 キャリア官僚の説明だけを鵜のみにしていると、いくら励ましても現場の警察官は信用しないでしょう。
 岡崎国家公安委員長には、早急に警察の現場の実態を把握して、警察の地方分権化、都道府県公安委員会事務局の独立等、抜本的な改革を進めるよう努力してほしいものです。
 可視化を実現すると"治安の水準が落ちる"という論理も如何にもキャリア官僚の発想のように聞こえます。キャリア官僚に「治安水準が落ちる」というフレーズを使われると、どんな政治家も無条件でビビッてしまう。
 冤罪は、捜査機関による究極の人権侵害です。冤罪を生みだす治安水準などはナンセンスです。
 岡崎国家公安委員長は、無実の罪で長期間拘束されたり、命を奪われた人間の声を聞いたことがありますか。冤罪の被害者やその家族がどんな運命をたどっているのかを知っていますか。
 国や都道府県(警察)に瑕疵があったことが明らかであるのに拘らず、国賠訴訟で被告の国等がどんな対応をしているかを知っていますか。
 そこでは、国等としての反省どころか、組織防衛のための隠ぺいが行われています。
 究極の人権侵害、冤罪に加えて、それこそ究極の税金の無駄遣いが行われているのです。
たとえ治安水準が落ちることがあっても、一人の冤罪被害者を出してはならないというのが、国家公安委員長としての基本的なスタンスと思いますが、いかがでしょうか。
 私には、我が国の「自白偏重の人質司法」という刑事司法全体の仕組みが変わらない限り冤罪は無くなるとは思えません。ただ、その第一歩としての取調べの全過程の可視化は必要だと考えています。取調べの全過程の可視化によって、警察の捜査に対する基本的な姿勢もある程度は変わるでしょう。
 民主党は、野党時代の2009(平成21)年4月には取調べの全過程を録音・録画して可視化する「刑事訴訟法改正案」を参議院に提出、可決させた経緯があります(衆議院で廃案になった)。
 岡崎国家公安委員長が、いまだに「可視化の方向性の可能性を見いだしていく」と発言しているのには驚きました。
 何時になったら「刑事訴訟法改正案」が、国会に提出されるのでしょうか。
 少なくても岡崎国家公安委員長は、なぜ民主党の政策が後退したのかを、国民に分かりやすく説明するべきではないでしょうか。キャリア官僚の言いなりはいただけません。

「市民の目フォーラム北海道」の取り組み

 「市民の目フォーラム北海道」は、鳩山政権成立後の2009(平成21)年10月、中井洽国家公安委員長に面接して、新「警察刷新会議」(仮称)を設けるなど、政治主導により、警察が抱える諸問題を的確に把握し、警察改革の方向性を明確にし、警察の抜本的な改革に取り組むよう要望したことがあります。
 また、菅政権成立後の2010(平成22)年11月8日、「民主党のシンクタンク組織について」と題して、民主党が新たに発足させる地方分権等をテーマとする勉強会で警察問題を取り上げるよう要望するとともに、長く都道府県警察の現場で働いた警察OBの意見を聞く機会を設けるよう要望したところです。しかし、残念ながら、現時点までに民主党からは何の回答もありません。
 新しい年が始まりましたが新年早々から、民主党の「政治と金」をめぐる権力闘争が続いています。こんなことがいつまでも続けば、今年春に予定されている統一地方選挙でも民主党は、再び惨敗するでしょう。「市民の目フォーラム北海道」としても、当面は、政治に期待した警察改革は遠のいたと判断せざるを得なくなりました。そのため、当面は国家公安委員会等への働きかけなどを模索しながらも、警察改革の原点に立ち戻って、警察の実態を国民に正しく知らせる活動の展開、警察への苦情相談受理、情報公開制度の積極的な活用、国賠訴訟へ支援活動等、息の長い活動を展開していかなくてはならないと考えています。
 本年も、皆さんのご支援とご協力をお願いする次第です。


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2010(平成22).12.22(水) 警察ジャーナリストの殉職
                     黒木昭雄さんの功績を称える会

 去る11月2日に亡くなった警察ジャーナリストの黒木昭雄(52歳)さんの功績を称える会が、12月18日、東京都中央区銀座のコートヤード・マリオット銀座東武ホテルで開かれた。この日は、黒木さんの53回目の誕生日だった。
 私(原田 宏二)が黒木さんと初めて会ったのは、平成16年9月のことだった。
平成15年11月の道警の裏金疑惑が発覚後、全国で警察OBらによる警察の裏金疑惑の告発が続いていたことから、東京の清水勉弁護士等が中心となり進めていた警察OB等をサポートする組織の設立準備会でのことだった。
 彼は、平成11年1月に23年間の警視庁勤務に見切りをつけ、ジャーナリズムの世界で活躍をしていた。既に、平成12年「警察腐敗」(講談社)、平成13年「警察はなぜ堕落したのか」(草思社)等が上梓されていた。彼は私よりは20歳も若かったが、警察の腐敗を告発した警察OBとしては、私の大先輩だった。
 その後、時折、各地のシンポジュウム等でパネリストとしてご一緒させてもらったり情報交換をしたりしていたが、彼と最後に会ったのは、昨年5月13日、岩手県盛岡市でのことだった。
 黒木さんと「明るい警察を実現する全国ネットワーク」(略称:警察ネット)の清水勉代表(東京・弁護士)が、岩手県警がAさんを犯人と断定し、公的懸賞金付きで公開手配中の「岩手県川井村地内における女性殺人事件」について、捜査が不十分だとして、真相解明のため再捜査を求める要望書等を岩手県警と岩手県公安委員会に提出した。
 それに、私も「市民の目フォーラム北海道」を代表してオブザーバーとして同行した。
 この日は、黒木さんとこの事件の関係者が岩手県警に赴き、捜査第一課と公安委員会補佐室の担当者に、捜査上重要な事件関係者からほとんど事情聴取をしていないのに、Aさんを犯人と決め付けるのはおかしい、自分たちへの事情聴取をきちんとやってほしい、と真相解明に必要な捜査を尽くすよう連名の情報提供書も提出した。
 この日は、同様趣旨の要望書を警察庁、国家公安委員会へも提出した。

 この事件については清水弁護士等から、今年6月にAさんの父親が、岩手県警察本部長と警察庁長官を相手取って、指名手配差止及び損害賠償請求の訴訟を提起した旨の連絡を受けていた。私としては、黒木さんが執念を持って取り組んでいた事件がようやく訴訟に持ち込まれたことから、黒木さんもホッとしていることだろうと想像していた。
 ところが、11月3日、清水弁護士から黒木さんが自殺したとの連絡を受けた。
 とても信じられなかったが、清水弁護士によると、11月2日昼頃、黒木さんから清水弁護士宛てに書留郵便で遺書が送られてきたそうだ。
 「あとをよろしく」とあったという。息子さんあてにも遺書めいたメールを送っていることがわかり、奥さんと息子さんが黒木さんを探し回ったところ、父親のお寺の駐車場で車の中で死んでいる黒木さんを見つけたとのことだった。
 なかには、黒木さんは殺されたのではないかと言う人もいたそうだが、状況から見るとそれはないようだ。
 周辺の人たちの話では、今年になって警察がAさんの懸賞金を300万円に上げたことから黒木さんは「自分が関わったことで事態が一層悪くなった」と自分を責めていたそうだ。
 
 「黒木昭雄さんの功績を称える会」は、黒木さんが「捜査するジャーナリスト」として、ほかにも多くの取材に関わり、事件解決に尽力するとともに、関係者や遺族の方々を励まし続けましたとして、週刊朝日の山口一臣、五十嵐京治、小宮山明希さんらの呼びかけで開かれたもののだが、会場には、奥さんの正子さん、お母さん、息子さん等の親族の方のほか、100人以上のジャーナリスト等関係者が集まった。
 会場正面には、黒木さんの写真、息子さんが書いた黒木さんの肖像画が掲げられてほか、会場内には黒木さんの著書、警視総監からの賞状、メダル等が並べられていた。
 ステージの後方の大型スクリーンには、平成20年5月に放映されたテレビ朝日ザ・スクープ・スペシャルの「三陸ミステリー 岩手県少女殺害事件の謎」(長野智子キャスター)の映像が流され、往時の黒木さんの活躍ぶりが偲ばれた。

 会は、週刊朝日の山口 一臣編集長の司会で始まった。
(黒木さんとの思いを語る原田代表、後方は黒木さんの写真、大型スクリーン)
 
 最初にレビ朝日の「スーパーモーニング」キャスターの鳥越俊太郎氏、清水勉弁護士等、黒木さんと関係の深かった人たちが、次々と黒木さんとの思い出を語った。
 当フォーラム北海道の原田代表も指名されて黒木さんとの出会いを語った。
 黒木さんのホームページを開くと「たった一人の捜査本部」とあった。
 昨今、警察の裏金追及ブームに乗り弁護団や支援組織に支えられながら訴訟を提起するなど、正義の旗を掲げて警察と闘っていた警察OBらが、周辺の反対を押し切って方向転換したニュースが目につく。
 黒木さんは、足とペンだけを武器に自らの体を張って、最後まで警察権力と対峙した。フリーのジャーナリストは生活していくだけでも大変だ。彼には弁護団も支援組織もなかった。真正面から愚直に闘って刀折れ矢尽きた。会の最後に息子さんの「父の死は殉職だと思っている」との言葉には胸がつまった。しかし、全体的には黒木さんの人柄を偲ばせる明るい雰囲気の会だったのには救われた。黒木さんも天国で納得してくれたのではないかと思った。それにしても、52歳は若すぎる。合掌。

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22.12.14(火) 氷見事件国賠訴訟傍聴記
              被告席は究極の税金の無駄遣い

 富山県警に違法な捜査で誤認逮捕され、富山地検に起訴され、富山裁判所から有罪判決を受けた柳原浩さん(43歳)は、平成19年10月に再審で無罪が確定したが、平成21年5月、国と県(県警)に対して1億440万円の損害賠償を求めて提訴した。
 その富山の冤罪(氷見事件)国賠訴訟の第7回口頭弁論が 平成22年12月8日、富山地裁で開かれた。
 この訴訟は、その訴状でも明らかなように、平成19年、原告(柳原浩)の満期服役後、真犯人の出現によりに発覚した冤罪事件、いわゆる「氷見事件」につき、原告を冤罪に陥れた富山県警察及び富山地方検察庁高岡支部による違法な捜査や公訴提起の全容を解明して、冤罪の原因を究明し、その責任を追及する訴訟である。
 また、責任を負う被告富山県及び同国と併せて違法な捜査や公訴提起を強行した中心人物である警察官の被告 N 及び検察官の被告 M の責任を追及する訴訟である。

「市民の目フォーラム北海道」では、これまでも、富山冤罪国賠を支える会や同弁護団と連携してきたが、第7回口頭弁論では、初めて当フォーラム代表の原田宏二が傍聴した。
 午後1時30分、裁判長などが入廷、口頭弁論が始まった。
 原告席には、原告の柳原さんほか代理人の弁護士8人が着席、被告席には、国、県の代理人18人が着席した。
 記者席には記者が15人ほど、傍聴席はほぼ満席になった。
 冒頭、原告側の第9、第10準備書面、被告側の第2(富山県)と第3(国)準備書面が、それぞれ陳述された。
 原告側は代理人弁護士3人が、第9及び第10準備書面の要約を読み上げ、富山県警が事件現場から採取された毛髪の血液型が柳原さんの血液型が一致しなかったことや柳原さんのアリバイを証明する通話記録があったのにこれを黙殺して、柳原さんを強引に自白に追い込み虚偽の調書を作成したなどと捜査の違法性を指摘したほか、検察官についても、警察官調書をもとに都合のよい内容の調書を作り上げた、と指摘した。
 原告側は、裁判所の要請で被告の県警が提出した「捜査指揮簿」(注:正しくは「事件指揮簿」)が、情報開示請求で開示されたものと同じように大部分がマスキングされていることを指摘し、被告県側にその理由と重ねて原本の開示を求めた。
 「事件指揮簿」については、富山冤罪国賠を支える会が富山県情報公開条例に基づき開示請求をしたが、県警は一部を開示したものの大部分はマスキングされていたため、弁護団が富山地裁に「事件指揮簿」等の送付嘱託を請求、地裁はこれを採用、原告・弁護団に代わって被告側に提出を求めていた。

県警が隠したい「事件指揮簿」とは何か。
 警察の犯罪捜査は「犯罪捜査規範」(国家公安委員会規則)に則って進められる。
 その第15条(捜査の組織的運営)には「捜査を行うに当っては、捜査に従事する者の団結と統制を図り、他の警察諸部門および関係警察と緊密に連絡し、警察の組織的機能を最高度に発揮するように努めなければならない」とある。
 これは犯罪捜査が個人プレーではなく、組織として行われることを明確にしたものだ。
 その組織捜査を進めるためには、常にその責任を明らかにしておく必要がある。
 第19条(捜査指揮)にはそのことが明らかにされている。
 その第2項に「警察本部長または警察署長が直接指揮すべき事件および事項ならびに指揮の方法その他事件指揮簿の様式等は、警察本部長の定めるところによる。」 とある。
 犯罪捜査を指揮するのは、警察本部長か警察署長である。
 つまり、捜査についてはすべて警察本部長か警察署長の命令に従って現場の警察官が進めることになる。
 殺人等の重要事件は警察本部長が指揮するが、窃盗、暴行、傷害事件など日常的な事件は署長指揮事件である。
 「事件指揮簿」には、事件が発生してから事件を検察庁に送致するまでの間の警察の捜査活動の各段階での捜査方針が逐一記載されて、最終指揮者の判断が記録されている。
 従ってその判断の責任は、警察本部長か警察署長にある。
 
 氷見事件は、氷見市内で起きた平成14年1月の強姦事件と3月の強姦未遂事件である。
 いずれも警察本部長指揮事件である。県警では「本部長指揮事件指揮簿」を作成している。
 事件の発生時点で事件の内容が、警察署長から警察本部長に報告され捜査方針が決められている。
 そして、指揮簿には柳原さんが被疑者として浮上した経緯、容疑性、当日のアリバイ、任意同行、取調、自供内容、逮捕・再逮捕時の状況、起訴等について記録されている。
 具体的内容は、マスキングされていて判読はできない。
 
 何故、富山県警は「事件指揮簿」の提出を躊躇したり、マスキングするのだろうか。
 この事件は、既に無罪が確定した事件であり捜査上の秘密もない。
 原告が主張するように、この国賠訴訟の目的は冤罪の原因を究明し、その責任を追及することにあるとすれば、この「事件指揮簿」の開示は必須の条件である。
 しかし、被告県警側からすれば、事件指揮の内容が全て明らかになると、その責任が警察本部長にも及びかねない。
 できれば、誤認逮捕の責任を現場に押し付け幕引きをしたいというのが本音ではないか。
 さらに推測すれば、かなり早い段階で柳原さんが真犯人ではないという事実を県警が把握していた事実、それを隠ぺいした状況等が「事件指揮簿」に記載されている可能性もある。
 仮に、そうした事実があったとしたら、富山県警の行為は犯罪捜査ではない。
 犯罪行為である。柳原さんの逮捕は、捜査に名を借りた逮捕・監禁罪が成立する。
 こうした隠ぺい体質、捜査に対する無責任性、思い上がりこそが、犯罪捜査という重大な人権侵害の恐れがある警察官の権限行使に安易な気持ちを生み出す元凶なのだ。
 警察本部長や署長が指揮を誤ったときには、故意・過失の有無を問わず、その責任を明らかにする。
 そうした厳しい組織捜査を実現しない限り、冤罪は無くならない。
 
 実は富山県警には、この「事件指揮簿」をめぐって苦い思いがある。
 氷見事件が発生する数カ月前、元県警本部長、元刑事部長等幹部多数が関与した覚せい剤事件のもみ消し事実が発覚(もみ消しは平成7年5月当時の事件)、U元警察本部長とT元刑事部長が虚偽の事件指揮簿を作成したとして、平成14年4月11日に有罪判決を受けている。
 富山県警が柳原さんを誤認逮捕したのは、この4日後のことである。
 話は横道にそれるが、このもみ消し事件では筆者とは警察大学の同期で1年間同室だった元富山警察署長O警視正が自ら命を絶っている。
 有罪判決を受けたU警察本部長の後任者で、氷見事件の指揮を執ったのがS本部長である。
 S本部長は、昭和50年4月筆者とともに北海道警察から警察庁に出向、彼は警察庁長官秘書室長を務めたほどの人物で、富山県警本部長のポストはノンキャリアの中では異例の出世だ。
 ただし、富山県警の不祥事の後始末といった点を除けば。

 口頭弁論終了後、弁護士会館で記者会見が行われ、柳原さんをはじめ、弁護団の弁護士と原田代表が参加した。
 最初に、弁護団長の奥村回弁護士(金沢市)から当日の口頭弁論の意味と訴訟の今後の見通しなどについて説明があった。
 原田代表は「多くの国賠訴訟を傍聴しているが弁護団が警察の実態を知らないことが多い。警察OBとしての知識と経験を訴訟に役立てたいと考え活動している。」と語った。
 記者会見終了後には、弁護団と富山冤罪国賠を支える会による勉強会が開かれ原田代表も参加し意見を述べた。
   記者会見(左から奥村弁護士、柳原さん、原田代表)

 本件訴訟を傍聴して感じたことがある。
 この事件は、事件とは全く関係のない柳原さんを似顔絵による容疑者の割出すという最も危険な捜査手法を過信したうえ、強引な取調べで柳原さんを自白に追い込み、服役させるという重大な結果を生んだ。
 国と富山県警に弁解の余地はない。全ての責任は、国と富山県警にある。
 犯罪者の汚名を着せられた柳原さんは失われた過去を取り戻すことはできない。
 無罪になった現在も就職もままならず、孤独な生活を強いられている。
 経済的にも苦しいようだ。弁護団と富山冤罪国賠を支える会のメンバーの支援で、何とか訴訟は進められているというのが現状だ。
 それに引き換え、被告席の代理人18人は多すぎやしないか。彼らの活動に必要な経費はすべて国民の税金だろう。仮に敗訴したとしても損害を支払うのは、国と富山県だ。
 これもまた税金だ。彼らは失うものは一つもないのだ。警察や検察の違法捜査を取り繕うために多額の税金を使う。どうしてそんなことが許されるのか理解に苦しむ。
 被告席では究極の税金の無駄使いが行われている。
 この国賠事件だけではないが、国賠訴訟を傍聴するたびに、国賠訴訟の仕組みを根本的に改める必要があるのではないかと思う。
 このままでは、何時も弱い立場の国民が泣き寝入りするだけだ。
 全国各地の国賠訴訟を、それだけに終わらせない施策が必要だ。

 次回口頭弁論は、平成23年2月23日。

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22.11.13(土) 「三井環vs原田宏二 公開対談」のお知らせ

来週水曜17日に元大阪高検公安部長の三井環氏と原田代表の公開対談が行われます。.

主催は「北方ジャーナル」です。
http://hoppojournal.kitaguni.tv/e1742542.html

−−−以下、月刊誌「北方ジャーナル」公式ブログから転載−−−
三井環氏と原田宏二氏。「検察の大罪」を告発し続ける元大阪高検公安部長、そしてかつての道警裏金事件の解明に重要な役目を果たした元道警釧路方面本部長。弊誌は、この両名による「ウラ金のウラ」と題した「公開対談」の収録を下記の要領で主催・実施します。

一般者、メディア問わず観覧は自由です。なお会場の規模の関係上、定員(40人)を超え次第、入場をお断りすることもありますので、あらかじめご了承ください。

※なお当日、録音と写真撮影は自由ですが、弊誌の収録、他の観覧者に支障を来さないよう配慮をお願いいたします。  (く)

【パネラー】
●三井環氏 (元大阪高検公安部長)
●原田宏二氏(元道警釧路方面本部長)
(コーディネーター)
中島岳志氏(北大公共政策大学院准教授)

【日時】
◆11月17日(水)午後1:30 開場
           2:00 対談開始
           4:00 終了

【場所】
◆札幌市中央区南7条西3丁目J-room館(ジャスマックNo.5)2階(203)
            011・513・3300

【問い合わせ】
有限会社リ・スタジオ 北方ジャーナル編集部
            担当 工藤・小笠原
            011・711・5181

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22.10. 4(月) 講座のお知らせ  さっぽろ自由学校「遊」10/29(金)
 「市民の目フォーラム北海道」代表 原田宏二(元道警釧路方面本部長)が、講座を開きます。
 講座内容は、「警察腐敗 その底流にあるもの」です。
 市民には見えにくい警察腐敗の底流にあるものについて、詳しく話していただけます。
 なお、当日、会場で書籍「実録 くにおの警察人生」の販売も行う予定ですが、
 多くの方のご参加をお待ちしています。

 講座名「警察腐敗 その底流にあるもの」
 http://www.sapporoyu.org/modules/sy_course/index.php?id_course=244
 日 時 : 10月29日(金)18:30〜20:30
 場 所 : さっぽろ自由学校「遊」
 〒060-0061 札幌市中央区南1条西5丁目 愛生舘ビル207 011-252-6752 
 参加費 : 1,000円

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22.8.26(木) ジャーナリスト岩上安身氏との対談
             「警察は国民の信頼に応えているか 警察腐敗の底流にあるもの」

 ジャーナリスト岩上安身(いわかみ やすみ)氏と当フォーラム原田宏二代表の対談が実現する。
 対談は、8月30日午後5時ころから札幌市内で「警察は国民の信頼に応えているか 警察腐敗の底流にあるもの」をテーマに約2時間の予定で行われる。
 対談の様子は、近く「You Tube 岩上安身チャンネル」にて放映される予定。
 
 岩上安身氏とそのプロフイル(岩上安身オフィシャルサイトWebIwakami から)
<生年> 1959年(昭和34年)
<出身地> 東京都豊島区
<趣味> 自転車、スポーツ観戦、アウトドア、格闘技、ヨガ、ガーデニング、映画鑑賞、音楽鑑賞、ヤクルトスワローズ のファン、それ以上に母校・早実野球部のファン、現在の愛車はロードバイクの名車DE ROSA 09 IDOL(オレンジ)。
<学歴> 早稲田実業学校高等部普通科卒業 早稲田大学社会学部卒業
<略暦>
大学卒業後、出版社(情報センター出版局)に就職して編集者となる。
退職後、週刊誌記者を経て、1987年フリージャーナリストとなる。
1989年から94年まで6年間かけて、旧ソ連・東欧圏を取材し続け、1996年にソ連の崩壊とロシアの民主化の実装を描いた『あらかじめ裏切られた革命』(講談社)を出版。
同年、第18回講談社ノンフィクション賞を受賞する。
2000年10月からフジテレビ系『とくダネ!』のレギュラーコメンテーター(現在も継続中)。
2006年4月から関西テレビ『スーパーニュースANCHOR』の金曜日レギュラーコメンテーター(〜2007年9月まで)。
取材・執筆してきたフィールドは、政治、国際関係、経済、事件、医療・社会保障問題、思想・宗教問題、家族問題、文化、スポーツなど多岐にわたる。とりわけ、90年代後半からは、人口問題、少子高齢化問題と経済・社会とのかかわりについて、長期的な取材、執筆、発言を続けている。
 

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22.8.15(日) 動画配信のお知らせ
           「実録 くにおの警察官人生」出版記念講演(全7本)

 平成22年8月7日(土)、サン・リフレ函館において「市民の目フォーラム北海道」の主催で開催した。
 同事務局の斉藤邦雄さんの書籍「実録 くにおの警察官人生」の出版を記念して、原田代表が「警察腐敗、その底流にあるもの」と題して講演した。


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22.8.15(日) 動画配信のお知らせ
           「報道で権力と闘うということ〜道警裏金取材の現場から〜」(全6本)


 平成22年8月9日(月)、札幌市民ホールにおいて「さっぽろ自由学校游(ゆう)」の主催で開催した。

 2003年、北海道警察の裏金を暴き、新聞協会賞、菊池寛賞、JCJ大賞の3冠に輝いた大手ブロック紙(北海道新聞)の報道。報道本来の役割は、権力の監視にある。しかし権力との闘いは、国家権力の嫌がらせと闘うことも意味していた。当時のデスクと現場での取材を手がけた記者が取材と報道の役割について語った。


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22.8.15(日) 動画配信のお知らせ「調査報道とは何か」 (全7本)

 平成22年8月7日(土)に北海道自治労会館(札幌)で、JCJ北海道支部ジャーナリスト塾が開催されました。
 講師は、青木美希・高田昌幸の両氏。
 内容は、「調査報道とは何か」1 (全7本)として当ホームページで動画配信をしております。
 No1,2は「道警裏金取材の顛末について」、No3,4,5は「調査報道について」、No6,7は質疑応答です。


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                    「警察腐敗、その底流にあるもの」

                                      市民の目フォーラム北海道
                                      代表 原田 宏二

 これは平成22年8月7日、「サンリフレ函館」において行われた「実録 くにおの警察官人生出版記念」の講演内容を編集したものである。
 なお、(  )内はのちに補正したもので、枠内の記述は当日配布した資料の内容である。

最近の不祥事の特徴
 皆さん今日はありがとうございます。函館には3年前にこの場所にお邪魔し、お話をさせていただいたことがあります。
 今年に入ってから、道警の警察官が4人も逮捕されています。私が道警に38年在職しましたが、自分たちの仲間が仲間に逮捕されたという記憶がありません。これはどうなっているのだろうか。退職後15年も経っていますが、その間に何があったのかを考えています。  
 これは北海道だけではありません。先般、警察庁が今年の上半期の全国で警察官の不祥事がどのくらいあったか発表しています。しかし、この数字は氷山の一角だと考えるべきです。警察は不祥事を隠します。ですから外に出てくるのはごく一部と考えなければなりません。そしてこの数字だけを機械的に見てもあまり意味がありません。警察官の定員というのがあります。定員当たりで換算して多いか少ないかをみます。そうすると、@鹿児島県警(185人に一人)A千葉県警(751人)B福岡県警(845人)C北海道警(1,042人)D警視庁(1,534人)となります。警視庁の警察官は4万人位、北海道は1万人です。鹿児島県警は3,000人くらいですから、やたらに多い。どうして多いのか調べてみましたが良く分かりませんでした。警察にとっては、鹿児島県警というのはゆかりのある県警です。島津藩はNHKの大河ドラマ(篤姫)で有名ですが、あの藩の下級武士であった川路利良という日本警察の基になる警視庁を創設した人が出ています。鹿児島県警の庁舎の前には川路さんの銅像が建ってますし、警視庁の警察学校にもあるそうです。日本警察の中でも優秀な県警のはずの鹿児島県警が何故こうなったのか(鹿児島県警では、平成15年の統一地方選挙の県議会議員選挙違反取り締まりで12人もが無罪となった志布志事件があった。)私にはわかりません。
 警察官の不祥事といえば現場の連中が多かったのに、最近は警視のクラスの署長、警部等幹部クラス、すべての階級で起きている。年齢も50歳代の分別のある年代の不祥事が多い。内容もセクハラから盗撮、恐喝、看守が留置人の預けた金をくすねた窃盗、何だこれは、という感じの不祥事が結構あります。 
 上層部はそのたびに、(職員の)家庭訪問をやるとか、小学生ではあるまいし、先般の再発防止の全道の署長会議でも、そうしたことを話したと新聞に出ている。そうしたことをずっと繰り返している。今日お話しすることは、外部の皆さんには分からないこと、多分こうしたことをやれば不祥事はなくなるはずだと(警察OBとして)考えていることを話します。多分実行はしないと思いますが。 

 警察庁が今年上半期の全国の警察職員の懲戒処分者数を公表。それによると懲戒処分者数は180人。前年同期比で85人増えた。過去5年間で、平成18年の194人に次ぐ高い数字だ。
 懲戒処分の理由は「窃盗、詐欺、横領等の犯罪」が180人中41人(23%)を占めた。次いで「業務不適切」が25人(14%)、「特別法犯」が23人(13%)と続く。
 都道府県別では、警視庁が全国最多の28人で、鹿児島県警(16人)、千葉県警(15人)、福岡県警(12人)、北海道警(10人)となっている。北海道警の10人は、昨年同期の2倍で、北海道警このところ全国上位を占めている。
 その特徴的傾向は、全国的と同じだ。                         
○ 警視、警部、警部補、巡査長、巡査〜各階級に及ぶ
○ 50歳代が多い
○ セクハラから、盗撮、恐喝、泥棒まで
○ 仕事に関連した不祥事が多い
 警察職員の不祥事が、他の職種と比べて、多いのか少ないのかは分からない。警察が正義の味方だとは思わないし、そうした考えはむしろ危険だ。しかし、法律を執行する立場にある警察官が犯罪行為で逮捕されるとなれば、国民は警察を信頼しないだろう。
 こうした不祥事が発覚するたびに、警察の上層部は深々と頭を下げ、再発防止策を口にする。今回も、職員への面談や家庭訪問、研修などを徹底するという。しかし、同じことが繰り返されている。何故なのか。警察OBとしての体験から、一般の皆さんにはよく見えない警察腐敗の底流にあるものについて話してみたい。そこに警察再建の道があると思うからだ。

第1 上層部のウソを現場の警察官は知っている 
○裏金は知らない。知らなかった。私的流用は確認できなかったというウソ。

 会場の後ろに張ってありますが、あれは裏金発覚当時の北海道新聞の道警裏金報道の記事のほんの一部です。

まやかしの内部調査、9億6000万円返還 3億9000万円使途不明
本部長は雲上人 トップの嘘は現場のモラールの低下を招く、私的流用なしは幹部への不信を
生むそもそもの捜査費システムのまやかし(Sに領収書を書かせられるか)
道警の裏金以降、発覚した裏金疑惑12府県警、それ以前にも警視庁、長崎、熊本等でも発覚、
7.27には『預け』等による不正経理で岩手県警 2041万円を返還、総額約12億2000万円、

 道警の内部調査で、道警は9億6千万円を返還しました。しかし、道警の内部調査で明らかになった裏金の実態は、私や斉藤君が知っている裏金の実体とは全く違います。その新聞にも出ていますが、私的流用は確認できなかったとなっていますが、これは威張って言えることではないですが、裏金を使っていた私が私的に使ったと言っているんです。内部調査では3億9千万円の使い道が分からないとなっている。これが私的流用の部分でしょう。
 こうしたまやかしを現場の警察官は知っています。当時の道警本部長は北海道議会で裏金はないと堂々と最初に説明したでしょう。あとで謝りますけど。(後日の道新裁判でも当時の芦刈勝治本部長と佐々木友善総務部長は、裏金は知らなかったと証言している。)ここなんですよ。トップが嘘を言う組織を現場の連中はどう思いますか。皆さんどう思いますか。そうした組織はダメですよね。
 当時、私が告発した道警の裏金の原資は旅費と捜査費でした。最初に旅費について言いますと、私が署長時代に署員を捜査等の仕事で出張させたことはほとんどありません。99%裏金になっていました。捜査費も全額裏金でした。この捜査費には根本的なまやかしがあります。日本人は、警察に協力したからお金が欲しいから協力するという人はほとんどいないでしょう。だから、捜査費がなくても警察は仕事ができるんです。では捜査費はどんな時に使うのか。たとえば、暴力団とか、役人から汚職の情報を取る時に捜査費を使う(必要がある)。組織を裏切らせて情報を取る時に使う金です。そんな相手に領収書を書かせられますか。領収書をとる方も危なくて書かせられない。だって、本来は監査のときに見られるかも知れない。実際は見ていませんでしたが。(内部でもほかの警察官や会計の職員も見る。)オープンになるシステムなんです。この部分が改められない限り捜査費は使えません。あれだけ大騒動したのに何も変わっていないのです。警察も制度自体がおかしいと気がついているはずです。
 道警の裏金問題以来、さすがに、この旅費や捜査費を原資とする裏金作りはできなくなっているようです。これをやるには組織の末端(現場の警察官)を巻きこまなければできません。(内部告発の危険性があり)それは危なくてできない。そこで、いまだに残っているのは「預け」と言われるやり方です。これは昔から行われていましたが、これだと会計担当者だけでできる。だからいまだに続いている。最近では岩手県警で2千万円ほど返還しました。
これが警察上層部の嘘です。もう一つの嘘があります。

○ 治安情勢は厳しい、体感治安は悪化しているというウソ。
 上層部はいろんな場面で治安情勢が厳しいと言う話をずいぶんします。しかし、実はこれが違うんです。新聞には犯罪記事があふれ、テレビでは毎日のように特異な事件、異常な事件を集中的に放映しています。(繁華街、駅、コンビニ等に監視カメラ、国道にはNシステムがある。) 
 函館にはありますか。テロ警戒中とか、特別警戒実施中とか、警察官立ち寄り所といったわけのわからない看板があちこちに立ってませんか。皆さんはもう慢性なって気にならないでしょう。おかしいと思いませんか。何のテロを警戒しているのでしょうか。何か全体的に(治安が悪いんだというな)雰囲気が作られています。
 そこで犯罪状況はどうなっているかをみると、実は犯罪件数は減っています。平成14年に369万件だったのが平成20年には250万件くらいになっています。確かにコンビニ強盗とかオレオレ詐欺とかは増えているようですが、暴力団の銃器発砲は極端に減っています。殺人事件はピークの三分の一になっています。数字ではそうなっています。にも拘らず一方では(治安が悪いという)雰囲気がある。
 日本は諸外国に比べて非常に平和だと言われています。確かに、犯罪被害調査をみると、夜の一人歩きが安全だと思っている人が70%くらいいる。夜一人で留守番をしていても安心と感じている人が80%以上、中にはカギをかけないで寝ている人もいる。我が国は極めて平穏なんです。

(枠内のSは昭和、Hは平成の略)
犯罪件数減少傾向、H14〜369万件→H20〜253万件〜31.4%(H21警察白書)、
コンビニ強盗、振り込め詐欺等の増加
暴力団の銃器発砲事件 H13〜215件→H20〜42件(-80%)
殺人事件戦後最少1097件、ピーク時(S29)の3分の1(H22警察白書)
夜間の一人歩き70%安全、自宅夜間一人86.2%安全、防犯設備なし55.7%(H20犯罪白書)
犯罪被害人口(日本9.9%、アイルランド21.9%、アメリカ17.(H17国際犯罪被害調査)
件数減少傾向、H14〜369万件→H20〜253万件〜31.4%(H21警察白書)、

 私は犯罪というものはいろいろな要素で発生しますので、警察力で減らしたり増やしたりできるものではないと考えています。(治安は悪化などしていないのに)治安が非常に悪いというイメージ作りを誰かがやっているんです。マスコミ、特にテレビの影響がかなりあるのではないかと私は思っています。テレビなんかは、特異な事件があるとどこのチャンネルを回しても、同じ事件を何回も何回も放映しますから、これを毎日ご覧になっていると何か治安がよくないという錯覚に陥るのではないかと思います。(国民が)そういう風になって喜んでいる人がいるはずなんです。それは誰かと言うことですね。
(でも、現場には治安が悪化しているという緊迫感みたいなものがないはずです。いわゆる「気の緩み」みたいなものが、あるのではなないかと思います。)
第2 国民の期待と警察活動との間にはギャップがある。
 国民の皆さん、市民の皆さんはどんなことを警察に期待してるかを考えてみたいと思います。警察の表看板はと言えば、交番であったり、あるいは犯罪を捜査する刑事警察であったりします。裏の仕事しては、あまり知られていない警備・公安警察がありますが、表看板の刑事警察の活動はどうなっているかをデータから説明します。
○ 警察の仕事は悪質犯罪の検挙のはずだが
 意外に凶悪な事件が未解決になっているのが目立ちます。全国で典型的なのは、ついこの間、時効になった警察長官の狙撃事件です。あれは平成7年の事件です。警察庁長官と言えば警察のトップですから、警視庁は何とかして解決したかったのでしょうが解決できませんでした。函館でも平成18年12月のタクシー強盗殺人事件が未解決でしょう。(このほか5件の未解決殺人事件がある。)道内ではタクシー強殺はこのほかに2件ほどが未解決になっている。コンビニ強盗も検挙率が低い。なかなか難しい事件です。警察は長い間、暴力団の壊滅を標榜してきましたが、依然としてその勢力は衰えていません。山口組をはじめ暴力団は全国で指定暴力団が22団体、構成員は約8万人、その最大の資金源は覚醒剤の密売です。その覚醒剤事件の内容をみると、末端の使用者はよく捕まりますが、密売組織はほとんど解明されていない。よく芸能人が薬物の使用で逮捕され、テレビで大きく取り上げられますが、あの報道をみていると、芸能人に薬物を売った暴力団や密売組織が検挙されたと言うことはほとんど聞いたことがありません。覚醒剤を使った人は毎年1万8千人位が検挙されていますが、暴力団は依然としてその勢力を誇っています。
 よく警察の活動をみるとき、警察がどのくらい犯罪を検挙しているかが話題になりますが、その中身みてみると面白いことが分かります。

○ 検挙の内容分析してみると
 検挙した人員をみてみると、(殺人、強盗、窃盗などの)刑法犯、つまり犯罪で毎年36万人前後くらいが検挙されています。泥棒は18万人くらいが検挙されています。このうち、起訴されるのが半分くらいです。起訴、すなわち裁判にかけられる人はこのくらいしかいない。窃盗の検挙人員は17万から18万人ですけど、そのうち58%、10万人以上が万引きなんです。それと非常に多いのが遺失物横領、これがなんだか分かりますか。典型的なのは、少年なんかが放置自転車を勝手に持ち去ったという事件です。こういうのが多い。検挙がいくら多くても、その中身をよく見ると首をかしげる事件が多いんです。
 さっき触れたオレオレ詐欺なんかでも、この5年間の平均で14%くらいしか検挙できていません。コンビニ強盗も半分以下です。本当はちゃんと検挙しなければならない事件が検挙できていないことが分かるんです。
 ほかに特別法犯というのがあります。道交法違反とか、覚醒剤事件、経済事件など、罰則がついた法律が無数にあるんです。その検挙状況を見てみると、1年間に126万人くらいの人が検察庁に事件を送られています。その82%が道交法違反、覚醒剤が1万8千人、そのほかに次に多いのは軽犯罪法違反で1万5千人です。ですから警察の検挙の重点が違う方に行っている。あとで説明しますが、検挙率なんかにもまやかしがあります。

○H19年中、警察が検挙した人員は、刑法犯で約36万6500人、窃盗で約18万人、このうち刑法犯は約34万6,000人(前年比7.5%減)、窃盗17万4000人が検察庁に送致、このうち、起訴された人員は、刑法犯で43.6%(起訴猶予41.3%)、窃盗39.6%(41.8%)、ちなみに殺人52.9%(3.6%)〜(H20犯罪白書)
○検挙率 全国の刑法犯50.9% 窃盗27.5%、侵入盗54%(H20〜犯罪白書) 
窃盗検挙件数のうち26.6%が万引き
窃盗検挙人員約17.4万人のうち10万人(58%)が万引き、遺失物横領6.4万人
オレオレ詐欺等検挙率5年平均14.2%、コンビニ強盗の検挙率50%以下
○特別法犯検察庁送致人員(総数約126万人)の約82%道交法違反、覚醒剤1.8万人、 軽犯罪法違反1.5万人
交通取締件数 約1126万件(うちシートベルト278万件〜24%)、

 それが内部の人間には、自分たちが所属する組織が違う、外部に言っていることと違う、内部にいる人間が感じていることと違う。建前と本音、そこにギャップがある。これが内部にいる人間のいろんな気持の持ちように影響を与えていると思う。これは外部の人にはわからないところです。

第3 警察ではコンプライアンス(法令遵守)無視が常態化している
 コンプライアンス、法令遵守と訳すのだそうですが、実はこれを無視する傾向が警察内部で常態化している。皆さん考えられないでしょう。警察は法律を執行する機関ですよ。その内部で法令を遵守という気持ちが薄らいでいる。むしろ逆に、法令を無視することが当たり前、もしくは、法令を無視するような仕事ができる警察官が優秀な警察官、という評価をしかねないような雰囲気を持っている。
 それは先ほどの裏金にも通じることなんです。(警察内部には)「治安維持のためなら」あるいは「目的が正しいなら」、「公益のためなら」多少のことは許されるといった精神構造が間違いなくあります。これは警察組織の思い上がりです。これは、よくある「警察正義論」にも通じる。警察が正義を口にしたり、あるいは公益という言葉を使ったときはだいたい違うと思った方がいい、と私はようやく思えるようになりました。
 こうした部分について、もう少し細かく言います。
○ ノルマ主義と実績の誤魔化し
 これは間違いなくあります。警察には犯罪統計という制度があって、それで治安情勢を数字で把握するシステムがあります。今は分かりませんが、私が在職中は完璧に誤魔化していました。検挙率くらいあてにならない数字はないと在職中思っていましたし、警察署長をやっているときに、署長会議で出される検挙率の資料などは、ただの一度も見たことはありませんでした。そんなものを見なくたって自分の所の刑事がどのくらい働いているかは分かります。もともとでたらめな数字をみてもマスターベーションみたいなものです。     
 今は分かりません。窃盗の検挙率が27%というのは、ほぼ実態に近いのかなと思いますが、これでも高いと思います。私の体験では10%くらいです。10件泥棒が発生して1件検挙できたら刑事はよく働いていると思いました。私たちの時代はそんなレベルでした。今は27%だそうですから、刑事が優秀になったのかも知れません。さてどうなんでしょうか。
 もう一つ、やりやすい事件に目が向いているということです。先ほどの覚醒剤の問題もそうですが、(数字をみると)やりやすい事件を検挙している傾向が強い。
 私が防犯部長時代に■君と言う刑事が覚醒剤を使用したということで逮捕されたことがありました。警部だったので逮捕されて大騒ぎになりました。彼は私の部下でした。彼はけん銃捜査をやっていたんです。北海道警察の摘発したけん銃は、ほとんどが彼によるものでした。彼は自分で言っていましたが、その6割は首なし銃だったそうです。首なし銃と言っても分からないでしょう。首なし銃というのは、暴力団にけん銃を出させて(駅等の)ロッカー等に入れさせるんです。警察側はどこの誰が入れたかは分かっているけれど、けん銃だけを押収して本人は検挙しない。これでけん銃1丁の押収、実績になるんです。
 そこで何が起きているか、つまり、犯人隠避という犯罪が成立しているんです。犯人を検挙しないでけん銃だけを押収する。これが全国で横行したんです。そのため(暴力団と取引をした)多くの警察官が職場を追われています。当時、平成7年に警察庁長官がけん銃で撃たれます。その前平成4年ころ、私は恥ずかしながら、北海道警察の防犯部長でした。この時、平成の刀狩りが始まりました。最初に(北海道警察でこうした摘発をやるように)号令をかけたのがかく言う私です。■という(優秀な)刑事は、けん銃摘発に従事しますが、覚醒剤に手を染めてしまった。彼は刑期を終えて帰ってきましたが、(責任は私にもあると考えています。)
 首なしけん銃などは、コンプライアンスの無視どころの話ではありません。それが全国で横行したんですよ。皆さん考えられないでしょう。実績のために。この号令をかけた警察庁のトップがのちに警察庁長官になり、国松長官狙撃事件の捜査を指揮します。
 交通取締まりのあり方も問題があるでしょう。ここにもそうした体験をお持ちの方も多いはずです。私の家の近くでよく警察官が取締まりをしています。隠れて。シートベルトの取締まりです。全国の交通取り締まり件数は1年間で約1,126万件くらいだそうですが、このうちシートベルトの検挙件数は278万件、24%くらいという数字があります。
 私が釧路の本部長時代にこんなことがありました。交通課長と大喧嘩、喧嘩ではないんですけど、毎年年末に道警本部から交通取締まりの違反別ノルマ、努力目標が示されるのですが、その中にこのシートベルトの取締まりも入っていたんです。私はこうした違反を努力目標にするのは反対でしたので「やめろよ」と交通課長と喧々諤々と始まったのです。
 私は、日ごろから速度違反でも、最低でも20キロ以上でなければ交通切符を切るな、40キロ規制の場所でも10キロオーバーくらいで交通切符を切るなと指示していました。ところがそんなことをしていたら目標の件数にはならないんです。どのくらい検挙できるかは毎年の平均で分かりますから。交通課長は、道警本部の交通部長や課長あたりと私の間で板挟みになります。最後は私もバカバカしくなって好きなようにしろよと言ったのかも知れません。
 おかしいでしょう。私が言いたかったのは、交通の取締まりは何のためにやるのかということです。(それに、取締まりで交通事故がなくなるという発想がなかったのです。)
 これは暴論ですが、交通事故で死ぬのは自分持ちではないのか、どうしてシートベルトの取締まりで、いちいち車を止めて、労力をかけて、時間をかけて、切符を切るのだ。あの違反は確か1点くらいの違反でしょう。一言注意すれば済むことではないか。それでも(ベルトをしないで)事故で死ぬのは本人の勝手だろう。お前たちはほかにやることはないのかということでした。乱暴な本部長でした。正しいかどうかは分かりませんが、私は当時そう思っていました。
 しかし、組織と言うのはそんなものです。釧路の本部長なんていっても、歯車の一つの過ぎないんですね。裏金の問題でも同じ思いをしました。
 コンプライアンスの問題と関連があることをお話します。

○ 警察は推定無罪の原則を無視している。
 推定無罪の原則無視は、そこに書いてある通りです。「刑事上の罪に問われているすべての者は、法律に基づいて有罪とされるまでは、無罪と推定される権利を有する。」という人権上の当たり前の原則です。ところが我が国ではそうでない。警察に逮捕されたら"逮捕=有罪"と思うでしょう。新聞に"容疑者と載れば犯罪者と皆さんは頭の中で読み変えているでしょう。新聞に逮捕されたと書かれたら即決裁判で有罪となったと同じなんです。でも本当は違うんです。警察は逮捕するとメディアに被疑者を実名で公表するので、それがそのまま記事になります。ぼやぼやすると指名手配され写真入りで載る。最近は警察庁の音頭取りで、懸賞金付きの指名手配が行われています。懸賞金付きで指名手配されれば、誰だってあれは真犯人だと思うでしょう。これはそういう制度です。これが誰も不思議に思わないで、当たり前のように行われている。(警察はこれを巧みに利用している。)
 実は、この問題では、弁護士の人たちと岩手県警と公安委員会に抗議に行ってきました。この事件は17歳の女の子が殺された事件です。知り合いの男が指名手配されます。(未だに逮捕されていません)そのポスターには「この男は17歳の少女を殺害した犯人です」と断定的に書かれ、全身の写真と顔写真、生年月日までが載っていました。その事件が起きた場所は、岩手県の片田舎です。真犯人と断定されると、家族は全員、殺人をしたやつの親兄弟ということになる。弟さんは仕事も辞めました。私たちの抗議に岩手県警は、けんもほろろな対応で追い返されたんですが、今、日弁連に人権侵害の申立てをしています。(6月には、岩手県警などを相手取って国賠訴訟が提起されている)どうなるかは分かりませんけれども。

○ 警察は適正手続きを無視している
 同じような問題ですが、デュー・プロセス・オブ・ロー(due process of law)とは、法に基づく適正手続という意味です。これは主に刑事手続き上の原則なんです。つまり、捜査をするときは法に定められた手続きを厳格に守りましょうということです。当たり前のことなんですが、最近、すごいですよね。冤罪事件が次から次に起きています。 昔の事件もありますが、ごく最近の事件では志布志事件を覚えていますか。あの優秀な鹿児島県警が全国で有名になりました。12人全員が一審で無罪になりました。この中には(当選した)候補者の県会議員もいます。私は志布志に3回くらい行きました。取調べを受けた人から直接話を聞きました。強烈な取調べが行われていました。「踏み字事件」と言うのがありました。12人以外の人で、非常に屈辱的な取り調べを受けた人がいます。彼は身に覚えがありませんから否認しました。取調官はその人の孫や子供たちの名前を書いた紙を持ってきて(靴で)踏むように強制したのです。クリスチャン迫害時代に踏み絵というのがありますが、それ同じようなことをやらせたのです。
 皆さん、全国各地で冤罪事件はたくさんあります。有名な足利事件、布川事件、氷見事件等が昔から延々として続いています。皆さんは、北海道ではないと思っているかも知れませんが違うんですよ。函館でもあったのですよ。皆さん知らないだけです。つい最近では中標津でありました。一審で有罪、二審で無罪になった強制わいせつ事件です。こうした事件が結構あります。目立たない事件は皆さん泣き寝入りしたんです。冤罪の被害にあった人たちが国賠訴訟を起こすのには、ものすごいお金がかかります。お金と支援する組織とメディアの応援、いろいろな要素がないと、検察、警察、裁判所相手に冤罪で戦うことはとてもできません。だからみんな泣き寝入りするのです。しかも、そうした人は一度(犯罪者としての)レッテルを貼られているわけですから、立ちあがって検察や警察と戦うことは並大抵のことではありません。裏金の内部告発どころではないんです。だから、泣き寝入りするんです。私は全国を回って、いろんな人から話を聞いて、本当にそう思います。
 そして、共通の問題、デュー・プロセス・オブ・ロー(を無視する典型である)違法な取調べが行われている。いま、取調べの可視化が問題になっています。この可視化の問題も、民主党が野党時代に参議院で3回くらい法案が通っている。ところが衆議院で逆転して政権が代わりましたが、この前の国会では上程もされなかった。そして、今度は参議院で逆転してしまいましたから、多分、可視化は実現しないでしょう。
 私は、基本的に取調べを可視化したから冤罪がなくなるとは思っていません。何故かと言うと、(取調室の)取調べは捜査の中でのごく一部だからです。そこでもいろんなことが行われています。それをこれから申し上げます。取調べ以外でも警察はおかしなことをやっています。
 たとえば、任意同行というのがあります。あれは任意ではありません。朝6時に刑事が4、5人で、ちょっと聞きたいことがあるから署まで来てくれないかと来ます。それを断れる人はいませんね。皆さん、朝6時といえば、起きて、顔を洗って、さて、今日は会社に行ってあれをしなければ、これをしなければと予定があるでしょう。そこへいきなり警察が来ます。身に覚えのないことだったら、断ればいいのに断れないんです。半強制的に刑事に両脇を抱えられるようにして車に乗せられて署まで連れて行かれ、取調室に入れられる。いったん、取調室に入ったら勝負あったという感じです。
 これもよくあるんです。さっき言った万引き事件などでは、逮捕されない事件が結構あります。その時に警察は、ほぼ強制的に、任意なんですけれど、写真と指紋をとらせろと言います。これは刑事訴訟法に(逮捕されていない)任意の被疑者からは、指紋や写真は強制的に取れないと、はっきり書いてある。でも、法律に疎い皆さんは、警察官に言われると、取らせないとまずいかなとつい応じてしまう。しかし、いったん応じてしまうと警察のデータベースに登録されて、削除されたかどうかは確認のしようがありません。私たちのフォーラムには相談BOXというのがあって、いろんな人から相談を受けています。この話は全国から来ますから、警察はこうしたことを全国的にやっているということです。最近では、DNAの資料を取るんです。これをデータベースに登録しているようです。口の中の粘膜をとるそうです。私はやったことはありませんが、これも法的な根拠は全くありません。ですから逮捕されていても拒否できるんです。でも逮捕された人はほぼ全員が取られているようです。
 任意捜査が非常にあいまいにされて、そうした法手続き上問題のある行為が警察では平気で行われているということです。
 もう一つ、供述調書の虚偽作成です。皆さんは、供述調書というと、皆さんが話した内容を警察官が聞いて一字一句その通り記録してくれると思っているでしょうが違います。それは勘違いです。あれは、警察官の主観が入ったのが供述調書です。最近問題になったケースでは、大阪地検特捜部が捜査した厚生労働省の郵便不正事件があります。キャリアウーマンが逮捕された事件です。裁判になって、調書を取られた人がそんなことを言っていないと言い出し、裁判所も(供述調書を)証拠採用しなかったようです。無罪になるんではないかと言われています。ついこの間、6月28日に東京高裁が精神障害者の方の盗撮事件の自白調書が警察官の作文だと認定されて無罪となった。(警察官の作成する供述調書が作文だと)言っているのは私ではないんです。裁判で出てきているんです。私から言わせると、いまさら何を言っているんだと思います。当たり前のことなんです。これも皆さんが知らないだけです。
 私は、先ほどの取調べの可視化の意味があるとすれば、ここにあると思います。作文でない供述調書を担保するための録音・録画であれば意味があると思います。

○ 事実上の権限拡大が行われている
 これまでいろいろと申し上げてきましたが、さらに言うと事実上の警察の権限の拡大が行われているということです。
 皆さん、銀行に口座をお持ちでしょう。あれは犯罪捜査という名目で刑事訴訟法上の捜査関係事項照会書で刑事訴訟法上の手続きで、照会できることになっている。基本的に照会を受けたら銀行は皆さん方の口座を警察に渡します。もちろん、住民票、戸籍謄本、携帯の契約関係書類等といったものがこの捜査関係事項照会書でどんどん出ていく。つまり、個人情報が犯罪捜査という名目さえ付ければ警察はいくらでも取れる。本当はやっていけないことでも取れる。それで問題になったケースもずいぶんあります。
 それから職務質問です。職務質問は警察官等職務執行法の2条に書いてあります。これを読むと分かりますが、非常に厳格な条件がついてます。この条件に合った職務質問はほぼ行われていません。その通りはできないんです。もし、現場の警察官に法的にきちとして職務質問をやらせるなら警職法を改正しなければなりません。無理です。あれで職務質問をやらせるのは。まず条件が整いません。そう思います。
 もう一つの権限拡大で大きいのは、防犯カメラとか監視カメラとかNシステムの(犯罪捜査への利用の)問題です。あれは法的な根拠は一つもないんです。ところが皆さん方の写真がどんどん撮られています。覚えていますか、三浦和義さん、ロス疑惑で逮捕されて最終的には自殺しました。その前に彼は万引きで逮捕されますが、その時の写真がどこから流れたのかは分かりませんが、テレビでどんどん流れましたね。おかしいと思いませんか。あれはコンビニのカメラですよ、あれは。それが何でテレビに出てくるのだろうか。
 今年に入ってからですが、警視庁が扱った事件でスーパーの防犯カメラの映像で万引きを逮捕した事件が誤認逮捕だったと無罪になった。(このほか、防犯カメラの映像は別人だったという判決が、金沢地裁、名古屋地裁で出されている。)
 防犯カメラ、監視カメラが街の至る所にあるでしょう。いま警察は大きな事件があると、一番最初に集めるのはこうしたカメラの映像です。そのくらい頼りにしているんです。だから増えるんです。と私は思います。防犯カメラや監視カメラで犯罪が減るとは思いませんが、今はその数字を持ち合わせていませんので断言できませんが、いずれにしてもいろんな問題がある。
 これまでいろいろとお話をしましたが、皆さん、こうしたところに警察官の不祥事の根本的な理由があるのではないかというのが私の見方です。
 治安維持のためなら多少の違法行為は許されるとか、多少の権限は拡大しかまわないとか、そこに法律を厳格の守らなければならない法を執行する警察の基本的なスタンスが崩れていっているのではないか。私の在職中を含めて長い間に、そういった体質が出来上がったのではないか。その一つ表れが、あの裏金問題だったのではないか。私は考えています。

第4 警察が抱える諸問題
○ 都道府県警察の中央集権化〜中央志向の都道府県警察

 警察の建前は都道府県警察です。つまり、自治体警察です。ところが実際は警察庁を頂点とする国家警察になっています。どんなことが起きているか。国家公安委員会があります。民主党の中井さんが国家公安委員長で、5人の公安委員で構成されています。実は公安委員会というのは、形骸化しています。ほとんど役に立っていません。北海道もそうですよ。
 国家公安委員会、警察庁という警察のトップの国家機関が都道府県警察を人、物、金で支配している。都道府県警察のトップはキャリア官僚です。私はキャリア制度を全面的に否定しようとは思いません。ただ、言いたいのはキャリアにはキャリアのやることがあるでしょう。警察は、もともと現場官庁です。現場のことはもっと現場に任せてほしいということです。北海道警察の主要なポストはキャリアです。資料をみてください。これらの人事は国家公安委員会(事実上警察庁)が、都道府県公安委員会の同意を得て発令することになっています。(事実上は、こうした手続きは行われていない。)
 
○キャリア等の出向組の上層部のポスト〜本部長(警視監)、警務部長(警視長)、刑事部長(警視正)、警備部長(警視長)、函館方面本部長(警視長)計5ポスト。
 このほか、警察庁からの出向組の警視ポストには、会計課長(警視相当)、情報管理課長(警視相当)、生活安全企画課長、捜査第二課長等のポスト。(平成20年10月の道警の幹部名簿)、
○警察庁が任命する地方警務官(警視正以上)のポスト〜道警本部の総務部長、警務課長、監察官室長等の7ポスト、旭川方面本部長、釧路方面本部長、北見方面本部長、函館、旭川、釧路の各方面本部の参事官等の方6ポスト、札幌中央署等の主要7警察署長のポスト合計20ポスト。

 こうしたポストの人事は国家公安委員会、事実上警察庁が握っている。これをみても、いかに北海道警察の人事が国に掌握されているかが分かりでしょう。このほか予算もそうです。だから、がんじがらめになっている。そうすると幹部連中はどこを向いて仕事をしますか。(北海道警察や道民ではなく)警察庁を向いて仕事をするようになります。それはそうでしょう。警視になって、あぁ、俺は警視正になるなと思えば、皆そっちを向いて仕事をします。それが実情です。
 私の主張は、北海道警察にも結構優秀な人がいます。将来的には、まず本部長以下、幹部を地元で持つ制度になって欲しい。道警本部長をやれる幹部くらいは北海道警察にもいますよ。だいたいキャリアの人たちは、警察の何を知っているんですか。警察は現場官庁ですよ。昔、交番に勤務して、そこで何があって、どんなことが行われるかを知った人が将来道警本部長になれば、警察はもっとよくものが見えてくるはずです。道警本部長は何年いますか。2年もいないでしょう。そんな人が北海道警察の人事を牛耳っているのですよ。そんなことで、現場の士気が上がりますか。幹部がやる気を起こしますか。私は人事が全てだとは思わないけれど、警察庁は少しやりすぎではないかと思います。刑事部長だってキャリアですよ。刑事ほど現場を大事にしなければならない仕事はありません。今は(凶悪事件等の)捜査本部長は刑事部長がなることになっているようです。捜査本部長というのは、捜査本部に100人の刑事がいたら、一人ひとりの捜査員の名前と顔くらい分かっていなかったら、捜査指揮なんかできませんよ。だから未解決事件が増えるんです。

○ 形骸化した公安委員会制度〜国民のチエック機能の喪失
 もう一つは、公安委員会制度というのは、シビリアンコントロール、つまり、警察という権力機関がおかしなことをしないように、国民の皆さんや道民の皆さんがチエックする機関なんです。公安委員を選んでいるのは誰だと思いますか。国家公安委員は5人います。委員長は中井さんという大臣ですが、5人のうちの2人をようやく変えました。一人は元自治労の委員長、もう一人は日弁連の副会長です。中井さんは自分で選んだと言っています。多分本当でしょう。しかし、残り3人は自民党政権下時代の公安委員です。まだ3対2です。来年の春のもう一人変わりますが、国会がねじれてしまったので、私はダメだと思いますけど。
 では北海道はどうかといいますと、私は防犯部長として、あるいは総務課長として、公安委員会にかかわっていました。実は、公安委員を選んでいたのは警察でした。本当は知事が選んで議会の同意を得て任命することになっていますが、知事は選んでいませんよ。そして、警察が選ぶときの基準は、絶対に警察批判をしない人を選びます。私は、議員の皆さんに根回しをしました。同意してもらえるように。今は分かりませんよ。
 もう一つは、公安委員会は、警察職員がやっている事務局が警察本部内に置かれてます。警察をチエックする機関の事務局が警察にある。どうやってチエックするんですか。しかも、公安委員会には手足がありません。手足は警察官です。彼らが警察に都合が悪いことをやりますか。例えば、警察法79条に、警察職員の職務執行に苦情を申し立てることができるという規定があります。警察官の一連の不祥事が続いたときに改正されたものです。実はこの苦情の調査は、警察に丸投げしているだけです。
 私たちの市民の目フォーラムでいろんな警察に対する苦情を相談BOXで受けています。そのときに申し上げるのは、この制度を説明して、利用することを勧めていますが、そのときに付け加えるのは、公安委員会の実情はこういうことなので、あまり大きな期待を持たないで下さいと教えています。
 このほか、警察職員の職執行なんかに問題があったとき、公安委員会が監察、というか非違があったかどうかを調べるように指示ができる権限を与えられています。
 同じような機能を考えると(北海道には)監査委員というのがあります。ここには、まがりなりにも(独立した)事務局があります。監査委員は交代しますが、専任の事務局長(や職員)がいます。それなりの調査をやります。住民監査請求が裏金問題のときもありましたが、かなり骨のある代表監査委員がおられたので、それなりの成果をあげてもらいました。あれも独立した事務局があったからです。
 少なくとも、警察もこれだけ不祥事が続くと、こうした独立した(公安委員会の)事務局が絶対に必要だと思います。これは民主党のマニフェスト(インデックス)の政策としてあります。実行できるかどうかわかりませんが、民主党政権が持ち直して頑張ってくれるとその方向に行くかもしれません。
 本来は、公安委員会の監察の仕事は、たとえば冤罪事件があったとき、いろんな取調べが問題になっているとき、その監督をしていた公安委員会で、たとえば鹿児島でもいいですよ、自分の県警でこんなとんでもない取調べが行われて、12人も13人も無罪が出たら、イの一番にこれを取り上げて、一体何をやっていたんだ、という動きにならなければならないはずです。(少なくても)私は見たことはありません。あの問題では、確かに警察庁や検察がある程度の内部調査結果を発表しましたが、本当はイの一番にはじめなければならなかったのは、鹿児島県の公安委員だったと思います。
 北海道警察の裏金問題でも、一番最初に動かなければならなかったのは、議会でもなければ、監査委員でもなければ、私は公安委員会であったと思います。しかし、公安委員会の議事録を読んでも、あの警察の(問題の多い)内部調査を追認しただけというのが私の感想でした。ですから、私や斉藤君が知っている裏金とは似ても似つかない結果でした。私は最終的には政治決着をしたのだなと思いました。
 最近、色いろんな不祥事が起きていますが、その底流に流れているのは、私と斉藤君が告発した裏金問題と底流は同じなんです。あれから6年も経ちますが、北海道警察は何も変わらなかったのかなと思っています。
 最後に、最初に鹿児島のことをお話しましたが、あの川路さん、大警視が警察官に対して自戒を求めて、こう言っています。最後にこれをお伝えして締めくくりたいと思います。
 「官員は、公衆の膏血(こうけつ)を持って買われたる物品のごとし」
 明治の初めに創られた警視庁ですが、現代の警察官にも噛みしめてもらいたいものだと思います。

 以下は、時間の関係で、「警察が抱える諸問題」の中で話す予定であったが、時間の関係で割愛した部分の原稿である。参考までに付け加える。

○ 警察官の捜査能力が低下している
 私たちが交番勤務をしていた当時は、外勤警察官と呼ばれていたが、現在の地域警察官の仕事、特に、捜査という仕事に関しては、現在は当時と著しく違うように思う。当時は、捜査技術も未熟とは言え、一通りのことはマスターしていたし、必要な捜査書類の作成能力もあった。今のようにコピー等という便利なものがなかったから、先輩が作った書類を密かに写し取ったものだった。
 強いて捜査専門の刑事との違いを言えば、制服か私服の違いだった。ときには、管内で発生した泥棒事件を検挙するため刑事としのぎを削ったこともあった。署長が、交番で検挙の実績をあげた外勤警察官を刑事専務に引き上げても翌日から一通りのことはできた。
 私が、まだ巡査部長だった昭和40年ころに、警察にとって大きな変革があった。警察庁が、全国の警察に対して「外勤警察官の職務範囲の基準」なる通達を示したのだ。その趣旨は、外勤警察官は、パトロールや巡回連絡等の外勤警察本来の仕事に専念するため、犯罪捜査などの仕事は、初動的・初歩的な範囲に止めるといったものだったように記憶している。
 外勤警察官は、当時でも全警察官の6割を占めていた。その外勤警察官がそれまでやっていた事件・事故の処理の一部を刑事等の専務係の警察官に任せることになった。それが長く続くと、外勤警察官の捜査能力は落ちる。その証拠に、平成6年ころになって、外勤警察官は地域警察官と呼び方は変わっていたが、警察は地域警察の運営に関して見直しを行う。その中で、地域警察官の実務能力の向上の観点から、事件事故の処理範囲を拡大した。しかし、いったん緩めたタガは元へは戻らない。
 おそらく、現在の交番に勤務している警察官が扱ったことのある泥棒といえば、スーパー等から届け出のあった万引き事件くらいではないか。統計によると、窃盗の被疑者特定の端緒のうち、約15.2%が職務質問となっているが、この数字が、警察官等職務執行法による職務質問だとしたら、これも怪しいものだ。現在の交番勤務員が職務質問の対象にしているのは「自転車の乗った少年」くらいだという話も聞く。全国で遺失物横領の検挙が多いのもそのことを窺わせる。
 私が交番勤務の時代は、自転車のパトロールは禁止されていた。一当務に1回1時間のパトロールを8回、もっぱら、一人で徒歩でこなしていた。自転車のパトロールは警戒の網が荒くなるということだったのだろう。警視庁の交番の警察官は自転車でパトロールしているようだが、北海道では徒歩でパトロールしている警察官は見かけない。見かけるのはパトカーだけだ。そのパトカーは何故か赤灯を回しながら走っている。これでは悪いことをたくらんでいる輩を追い払っている様なものだ。
 一方、捜査幹部の話を聞くと、現在は交番から優秀な勤務員を刑事に任用しても、ほとんど使いものにならないそうだ。地域警察官の捜査能力の低下は、間違いなく警察全体の捜査能力の低下になって表れている。
 私は、地域警察官の無能ぶりを非難しているのではない。先ほどの窃盗の被疑者特定の端緒の統計をみてみよう。その端緒を得た係別の数字だ。実に、90%が交番、駐在所、警ら用無線自動車(パトカー)勤務の警察官によるものだ。それに対して、刑事専務の警察官のそれは7.6%に過ぎない。ただ、そのうちに万引きが62%もあるのだ。私は地域警察官の捜査能力を向上させて、警察の表看板である刑事の仕事の力を高める必要があるのではないかと思っている。
 では、捜査を専門的にやる刑事の仕事ぶりはどうか。先ほどの「窃盗の被疑者特定の端緒」という統計(平成19年)をみてみると、総数約38万件のうち、取調べによるもの78.8%、聞込みによるもの0.9%となっている。実は、先ほど説明した検挙の中身も取調べによる余罪の割出しが60〜80%を占めている。こうした数字をみると、刑事の犯罪検挙がいかに警察署内での活動に終始しているかが分かる。難しいと言われる聞き込みによるものはわずか0.9%なのもそのことが窺われる。警察内部には「パソコン刑事」という呼び名もあるらしい。今は、捜査関係の書類作成はパソコンでやるからだろうが。
 捜査は組織として行われる。つまり、警察署長等の指揮のもとに進められる。しかし、その署長をはじめ幹部の中には、捜査の経験がない者も多い。現在、問題になっている冤罪事件の多くは、捜査幹部が適正な指揮を執っていれば防ぐことができたものがほとんどだ。もっとも、冤罪事件の中には、幹部自ら違法な取調べ等を指揮した事件もあるから救いようもないが。
 警察の表看板の犯罪捜査の能力は明らかに低下している。これを少しでも、向上させることが不祥事の防止につながると信じている。
 
○ 幹部枠の拡大による質の低下と崩れた組織原則
 平成の初め、警察庁は、警察官の処遇の改善を目的に全国的に幹部の階級枠を拡大するように指示した。当時、私は北海道警察の人事を担当する警務課長だったから、当時のことをよく覚えている。
 ここで言う処遇の改善とは何か。
 警察官の給料は「公安職給料表」で階級別に1〜9級までに区分され号級で給料月額が決められている。ところが1つの階級に長くいると号級が頭打ちになってしまう。また、階級枠を拡大することによって昇任も容易になる。巡査部長(主任)から警部補(係長)になりやすくなる。
 普通に勤務していれば定年までには、最低でも係長にはなれるというわけだ。
 警察官の階級別の定員の基準は、警察法施行令(政令)で決められている。
 したがって、都道府県警察が勝手にやれることではない。
 平成19年4月1日現在と当時の都道府県警察の警察官定員の階級比率とを比べてみる。
 警視3%(2%)、警部7%(5%)、警部補28%(14%)、巡査部長30%(34%)、巡査(巡査長を含む)32%(45%)となった。( )内の数字は平成3年当時の比率である。これをみると、巡査、巡査部長が減り、警部補は14%も増加している。警部補1人に対して、部下の巡査部長が2.4人から1.1人、巡査が3.2人から1.1人に、係長・警部補が監督する部下は、平均すると5.6人から2.2人になった。警察庁は、警部補をプレイングマネージャーと位置付けているが、部下のいない警部補も出現する。
 その後、警部、警視の幹部枠も飛躍的に拡大する。平成3年3月現在の道警の警視は291人、警視昇任者は28人、平成20年10月1日の北海道警察幹部名簿によると警視は443人、54%の増加になっている。平成21年の警視昇任者は60人で114%増である。この20年近くの間に、警視が大幅に増えていることが分かる。今年春の異動では、道警の主要警察署の課長ポストを警部から警視に格上した。
 私の巡査の時代は、幹部の価値は高かったように思う。外勤課は課長(警部)が1人で、3交代制の勤務だったから係長・警部補は各部に1人しかいなかった。その係長は1人で3人の巡査部長以下30人以上の部下を持っていた。だから、警部補や巡査部長もいいかにして部下をリードするかを考えた。
 現在は、同じ警察署で地域課には警視2人(課長と派出所所長)、警部3人(統括官)が配置されている。警部補は何人なのかは分からない。おそらく、10人以上はいるだろう。
 ところが、現在は冒頭に説明したように、警視から巡査までが考えられないような不祥事を起こす。処遇の改善を理由にした幹部枠拡大に伴って、それまでの組織原則を際限なく崩した結果、幹部としての自覚と能力を欠く幹部の粗製乱造を招き、幹部の不祥事が多発しているのだ。

○ 変わらない隠ぺい体質
 平成12年7月、相次いだ警察不祥事に際し、民間有識者による警察刷新会議が「警察刷新に関する緊急提言」を発表した。
 その第2には「情報公開で国民に開かれた警察を」と提言している。
 その冒頭には、我が国の警察の持つ問題点として「閉鎖性の危惧」として、犯罪捜査の秘匿性を強調するあまり、警察行政が閉鎖的になるとともに、本来公開すべき情報が公開されないおそれがあると指摘。
 さらに「警察は情報を秘匿しようとする体質を改め」とある。それから10年を経ようとしている。果たして、警察は開かれたのだろうか。残念ながら「否」である。 
 冒頭に説明した裏金問題は、北海道で発覚す前にも、警視庁や多くの県警で発覚したが、そのたびに、警察は否定してきた。マスコミも深く追及しようとしなかった。
 私は、長い間、警察が裏金システムを隠ぺいできたのは、組織防衛のために、徹底した情報管理を続けたからだと思う。
 加えて、階級制度を梃子(てこ)に内部の批判を封殺できたからだ。
 市民の目フォーラム北海道では、再三にわたり警察に対して情報開示請求を試みたが、ほとんどが非開示という結果だった
 警察官の氏名、特に、警部補以下は非公開だった。
 こうした現場の警察官の匿名性は、結局、無責任な職務執行を招く。
 いたずらにノルマを押し付け、厳しく管理・監督しても決して不祥事は無くならない。
 現場の警察官には、自分の名前と顔で仕事をさせ、もっと責任を持たせるべきだ。不祥事の再発防止のための家庭訪問等は、おそらく、実行は不可能だろうが、愚の骨頂である。
 警察は、口では住民の協力が不可欠だと言いながら、警察署の人数も非公開、凶悪事件の捜査本部にどのくらい費用がかかったかも非公開だった。
 警察では、不祥事があってもマスコミに書かれてはじめて不祥事になる。
 運悪く発覚した時には、トカゲのしっぽ切りで個人の資質の問題で片付けてしまう。
 不祥事の背景にある様々な組織上の問題、今回指摘した問題を考えようともしない。
 こうした姿勢を改めない限り、警察官の不祥事は無くならないだろう。
                                                終わり

   

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22.8.1(日) 道警裏金報道をめぐる2つの講演会のお知らせ

 2003年(平成15)から1年以上にわたって道警裏金問題に取り組み、新聞協会賞を二度受賞した高田昌幸デスクの講演会が2つ開かれます。会場では、道警の裏金疑惑を告発した道警OB斉藤邦雄さんの本「実録 くにおの警察官人生」(株式会社共同文化社)の販売もいたしますので、皆さんのご来場をお待ちしています。

「調査報道とは何か」(JCJ北海道支部主催)
 8月7日(土)午後3時 自治労会館(北6西7) 無料

 昨今メディアへの批判が高まっているが、大きな原因は報道する側が市民の期待に応じ切れていないからです。「発表ジャーナリズム」に過剰に依存し、報道する側が自ら問題点をえぐり出す傾向はますます少なくなっています。そうした中、毎日・朝日新聞などは調査報道こそが、これからの新聞の生き残る道だと宣言しています。
 調査報道とは何か、調査報道をするには何が必要か、過去の体験を踏まえて二人の新聞記者が語ります。
 高田昌幸〜道庁官官接待や北海道警察裏金報道を手がけました。
 青木美希〜北海道警察裏金報道などを担当し、調査報道を勉強中です。

「報道で権力と闘うということ〜道警裏金取材の現場から〜」
(さっぽろ自由学校「遊」主催)
8月9日(月)午後6時半 札幌市民ホール(北1条西1)第二会議室
参加費:1,000円

2003年、北海道警察の裏金を暴き、新聞協会賞、菊池寛賞、JCJ大賞の3冠に輝いた大手ブロック紙の報道。
報道の本来の役割は権力の監視にあります。しかし、権力との闘いは、別の事件の取材規制など国家権力の嫌がらせと戦うことも意味していました。当時のデスク高田昌幸と現場での取材を手がけた記者青木美希が取材と報道の役割について語ります。

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22.7.18(日) 斉藤邦雄さんの書籍出版記念イベント

 「市民の目フォーラム北海道」の事務局スタッフ斉藤邦雄さんが、警察の再生を願って「実録くにおの警察官人生」を出版します。その出版を記念して「市民の目フォーラム北海道」では、「おかしいぞ!道警 〜警察腐敗を憂い、道警OBが語る〜」と題して斉藤さんと原田宏二さんに、昨今の警察腐敗について語ってもらいます。
是非、ご来場下さい。詳細は、PDFの通りです。
日時:平成22年8月7日(土)18時30分〜20時(入場:無料)
場所:函館市勤労者総合福祉センター「サンリフレ函館」 函館市大森町2番14号
書籍:当日、「実録くにおの警察官人生」を販売します。[1冊1,680円(税込み)]


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22.7.18(日) 斉藤邦雄さんが書籍を出版
 あれから6年、道警の裏金疑惑を追及した斉藤さんは、道警OB原田宏二さん(元道警釧路方面本部長)と「市民の目フォーラム北海道」を立ち上げて市民のための警察実現を目指して活動を続けています。その斉藤さんが、警察の再生を願って「実録くにおの警察官人生」を出版します。警察官人生で経験した警察裏金の実態や警察官の仕事ぶりについて、涙と笑いを織り交ぜて赤裸々に語っていますが、そこには正義の仮面をつけない警察の姿があります。警察OBとして警察再生へのエールを送る力作で、8月4日、全国の主要書店で発売予定です。
[1冊1,680円(税込み)]


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22.7.12(月) 逆転無罪の谷内さん 相手女性を刑事告訴
          「女性のウソ」を再調査せよ 支援者が「要望書」提出

 中標津町に住む会社役員谷内保男さん(当時44歳)が、平成20年7月12日、同町内に住む女性 店員Aさん(当時21歳)に「電気温水器の修理に訪れた男性にわいせつな行為をされた」と地元中標津警察署(以下、中標津署という)に告訴され、中標津署は7月22日、谷内さんを強制わいせつ未遂の疑いで逮捕・勾留した。
谷内さんは、一貫して犯行を否認したが、一審では有罪判決を受けた。
二審の札幌高等裁判所が、平成21年10月22日、Aさんの供述の信用性には疑いを入れる余地があるなどとして無罪を言い渡した(以下、この事件を「中標津事件」という)。 
谷内さんは冤罪だった。
 この事件については、このホームページで
21.12.18(金)北海道・中標津の強制わいせつ未遂事件 逆転無罪判決
         冤罪事件は、何時でも、何処でも、誰にでも ・中標津
で詳しく報告した。
 
谷内さんがAさんを刑事告訴
 その後、平成22年4月19日、谷内さんは、Aさんを虚偽告訴罪の疑いで北海道警察釧路方面中標津署に告訴した。この告訴は、虚偽告訴罪の捜査を通じて、中標津署に「中標津事件」の再捜査を促すという意味がある。以下、告訴状の内容から抜粋する。

第1 告訴事実
1 被告訴人(Aさん)は、告訴人に刑事上の処分を受けさせる目的で、平成20年7月18日、告訴人が、同月11日午前11時ころ、北海道標津郡中標津町の当時の被告訴人方居室内において、告訴人から、突然右腕を掴まれて無理矢理体を引き寄せられて正面から抱きつかれ、接吻されそうになった旨の虚偽の事実を記載した書面1通を作成したうえ、これを釧路方面中標津警察署長に提出して虚偽の申告をしたものである。
2 これは刑法172条の虚偽告訴罪に該当すると思料いたしますので、捜査の上、厳重に処罰されたく告訴致します。

第2 告訴に至る事情
1 事件の概要〜省略
2 被告訴人の申告が虚偽であること
 札幌高等裁判所の前記判決は、(1)被害があったという時刻について、(2)被告訴人の携帯電話の発信、通話との整合性について、(3)告訴人の電話番号を記載したメモとの整合性について、(4)被告訴人がその供述するところの「被害」にあった後告訴人がいた脱衣場に行ったかどうかに関する供述について、大きく4つの疑問点を指摘している。
 これら4つの疑問のうちの(1)や(2)は、テレビの画面に現れた時刻表示や携帯電話の発信履歴という恣意的に操作できない客観性の高い証拠を詳細に分析したものであり、被告訴人供述が幾つもの客観的事実と矛盾した供述をしたことは明らかとなっている。特に、(2)においては、告訴人からの着信履歴を削除したことを捜査官に告げながら、その通話があったことについて捜査官に話さない、すなわち、捜査官から確認などされていないということも、捜査側の対応としていささか不自然であるとの言及までしている。また、疑問点(3)は、被告訴人が書いたというメモからみて被告訴人供述内容が不自然であること、疑問点(4)は、被告訴人供述そのものに内在する自己矛盾供述に論及したものである。
 これら客観性の高い証拠や被告訴人の供述には多くの疑問点、問題点が残る。これらの多くの疑問点について、第一審判決は、突然生じた出来事であり被告訴人が頭が真っ白になったことや記憶が不鮮明になる可能性などと説示していたが、札幌高等裁判所判決はこれにも逐一言及して、疑問点を解消するものということはできないこと、例えば被害にあったとされたその直後に1回会っただけのIとの間で、携帯電話のメール10通ものやりとりをしており、その内容から被告訴人が混乱していたとは考えにくいことなどを指摘する。また、被害にあったとされる時刻について1時間ほど異なるのではないかといった疑念(前記(1)の疑問)が被告訴人の「供述自体の信用性を大きく揺るがすもの」であること、告訴人が被告訴人に電話をした点における疑念(前記(2)の疑問)についても「記憶違いなどをしていたということで説明することが難しい」とまで説示している。
 さらに、I氏(以下、「I氏」という。)は、被告訴人が一番最初に被害にあったという虚偽の通報を受け、その後捜査に協力して供述調書まで作成した人物であるが、そのI氏は、後日被告訴人がI氏と結婚をするという全くの虚偽の話をしていることを耳にしている(添付書類:I氏陳述書2頁目8行目〜15行目)I氏の警察官調書は、第一審において被告訴人の供述を裏付ける証拠として検察側から証拠請求された経緯があるが、その供述をしたI氏自身が被告訴人によって結婚をするなどと事実無根の話をされた旨語っている。
 以上のように、札幌高等裁判所判決において説示された内容やI氏の陳述書内容から、被告訴人の前記告訴事実における申告が虚偽であることは明白である。
 他方、告訴人は一貫して否認していたのであるが、その供述は携帯電話の発信履歴等客観的な証拠と整合している。整合しないというものがあるとすれば、被告訴人の供述及びその伝聞供述のみである。被告訴人が虚偽の申告しているのであるから、その伝聞供述を供述の信用性判断に用いることはできない。客観的な証拠に照らし合わせて考えると、告訴人の供述が信用できるのであって、被告訴人の申告が虚偽に基づくものであることは明らかである。

3 被害が深刻であること
 被告訴人は、国家の捜査権を侵害し、さらには司法作用の中枢である審判作用をも侵害したものであり、その影響は甚大であり、到底看過することはできない。また、告訴人は、平成20年7月22日に逮捕され、同年10月27日になされた保釈許可決定によって同日釈放されるまで引き続き98日間にわたって未決の抑留・拘禁を受けた。告訴人は、それまで身柄拘束を受けたことはなく、二児の父親として妻とともに平穏な生活を過ごしていたが、被告訴人の虚偽申告に端を発した逮捕勾留によってその生活は一変した。初めて経験する身柄拘束によって告訴人は「地獄」の苦しみを味わったという。告訴人は未だ精神的ストレスから過敏性腸症候群に罹患している状態にある。
 さらに、告訴人は、この身柄拘束によって仕事に支障を来さざるを得ない状況となり、平成20年11月30日、その責任をとって会社を退社(事実上解雇)せざるを得なかった。また、この身柄拘束期間中告訴人長男が就職活動中であったが、その相談にも一切のることができずに過ごすこととなった。本件の虚偽の申告による告訴人個人の利益の侵害は甚大である。
 被告訴人の申告及び証言によって国家の捜査権・審判作用が侵害され、さらには告訴人の経済的・精神的・肉体的・社会的損失を生じさせた。
 このような深刻な事態を受け、中標津署の管轄する住民を中心とする一般人は、被告訴人の申告等を捜査対象とする捜査を要望し、その要望する人員は7,200人以上にのぼる。現在もその人数は増え続けている。

4 まとめ
 平成22年3月26日、北海道警察釧路方面本部長野田敏夫氏は、本部長着任にあたり、「市民目線に立った現場重視の仕事をしていきたい」と抱負を語られている。御庁におかれては、本件においても市民目線に立ち、告訴人の受けた甚大な被害状況を真摯に受け止め、早急に厳正且つ迅速な捜査を遂げられたい。そして、被告訴人に対しては厳重な処罰を望む。

再調査『要望書』提出 決起集会
 7月6日、中標津町内に谷内さんの支援者約50人が集まり、中標津署長に谷内さんの事件の再調査を要望する決起集会を開いた。集会には「市民の目フォーラム北海道」の原田宏二代表も札幌から駆け付けた。
 
(集会で挨拶する谷内さんと妻の初恵さん)
 集会では、支援者の一人で谷内さんの幼なじみの市沢康典さんの司会で進められた。市沢さんは、冒頭に「要望書」が集まった経緯などを説明した。
 最初に、冤罪被害者の谷内さん夫妻が挨拶、続いて、来賓の中司北海道議会議員、鈴木中標津町会議員、佐野中標津町会議員、原田代表、梅本弁護士(中標津)、荒井弁護士(釧路)がそれぞれ、谷内さんを 激励した。
 谷内さんは、「一つ一つの署名の重みを感じている。濡れ衣を着せられて98日間拘束されている時も、皆さんと家族に支えられた。第二の自分を出さないためにも決着がつくまで頑張るので力を貸してほしい。」と訴えた。妻の初恵さんも涙ながらに「皆さんがいてくれたので、今日まで頑張れた。これからも支援をお願いします。」と感謝の言葉を述べた。
 原田代表は「谷内さんの事件は冤罪だ。冤罪の原因は犯罪捜査のプロであるはずの中標津署のずさんな捜査にある。にもかかわらず、警察はいまだに谷内さんに謝罪もしていない。道警のOBとして恥ずかしい。」と警察の捜査を痛烈に批判した。
 梅本弁護士は「こうした冤罪を生まないためには何をなすべきか、それを考えていくべきだ。『要望書』の提出にはそうした意味がある。身柄を拘束して吐かせるといった人質司法が常態化している。谷内さんもこうした司法の流れに巻き込まれた。今後この問題がどのように進展していくのかは分からないが、皆さんの支援がぜひとも必要だ。」と語った。
 荒井弁護士は「一審有罪、二審で無罪という事件は谷内さんの事件で3件目だった。共通しているのは、取調べの方法に問題があったことだ。『要望書』の提出は、冤罪防止を伝えるメッセージになる。この問題は、元をただせば杜撰な捜査に原因がある。感情的な矛先を申告した女性に向けるだけではなく、冷静な行動が必要だろう。弁護士としては、冷静な目で何ができるかを考えていきたい」と語った。

 集会終了後、午後1時から全国から寄せられた7,590人が署名した「正な捜査を求める「要望書」を中標津署長に提出した。
 要望書には「女性供述の疑問点が幾多もある以上、女性が『虚偽の事実』を所轄であります中標津警察署刑事課へ申告した可能性が著しく高いと考えます。私は、一般住民として女性虚偽を調査し、厳正なる捜査を行っていただけるよう、強く望みここに再調査要望書を提出します。」とある。


(中標津署に入る支援者たち)

 「要望書」とはなっているが、これは事実上の「抗議書」である。当日の中標津署は緊張した雰囲気だった。「要望書」を持って訪れたのは、谷内さん夫妻、梅本弁護士と支援者数人である。要望書を直接受け取ったのは、同署の青木刑事課長(警部)と刑事係長の2人。支援者の案内や報道対策などに当たったのは、牧野副署長(警視)と北警務課長(警部)の2人。
 谷内さんの支援者たちは、暴力団でもなく、警察を敵視している団体に加盟しているわけでもない。ごく普通の善良な町民であり、どちらかといえば警察に協力的な町民である。
 こうした警察署の仕事についての要望・抗議は、警察署長自らが町民の声を聞き、要望書を直接受け取って欲しいと思う。今回、中標津署長は支援者の前に姿を現さなかったが、現在の署長は尾埜警視だろう。署長以下署員全員も中標津の町民だ。野田釧路方面本部長ことはよく知っているが、温厚で有能な人物だ。彼は着任に当たり「市民目線に立った現場重視の仕事をしていきたい」と述べたというが、中標津署の対応はこれとは全く逆だ。
しかし、尾埜署長の対応は、ごく当り前なのだ。こうした市民の警察に対する要望、と言っても事実上は警察の杜撰な捜査に対する抗議だが、できるだけ責任のない下の者にやらせるというのが警察の常とう手段である。今回も、支援者の一部と対応した警察官との間で、エキサイトする場面もあったようだ。そんな場面に最高責任者は出るべきではない。というのが警察内部の常識だ。
 日頃は、市民に協力を訴え、市民のための警察を標榜する警察も自らの非を指摘する市民には、木で鼻をくくったような慇懃無礼な扱いをする。これが本当の警察の顔なのだ。
 中標津署の前には、大勢の報道陣が集まったが、同署は報道陣が敷地内に入ることを拒否したのか、谷内さんらに対する取材は、敷地外の路上で行われた。
 谷内さんは報道陣に「一日も早く真相を解明してほしい。自分のように冤罪で苦しむ人を出したくない」と語った。中標津署は「捜査中の中身ついて話すことはできない。特別にコメントすることはない」と語った(北海道新聞)。

繰り返される冤罪 なぜなくならないか
 冤罪の歴史は古い。古くは、免田事件(昭和23年熊本県、強殺事件)、財田川事件(昭和25年香川県、強殺事件)、島田事件(昭和29年静岡県、誘拐殺人事件)松山事件(昭和30年宮城県放火・殺人事件)、布川事件((昭和42年茨城県、強殺事件)、足利事件(平成2年栃木県、わいせつ目的・殺人事件)、飯塚事件(平成4年福岡県幼児殺人事件〜再審請求中)、最近では、氷見事件(平成14年富山県婦女暴行事件)、志布志事件(平成15年公職選挙法違反事件)等、多くの冤罪事件が起きている。このほかにも、メディアが取り上げなかった冤罪事件は無数にある。
 何故、冤罪はなくならないか。
 それにはさまざまな理由があるが、根本的理由は我が国の刑事司法が、自白偏重の人質司法だからだ。警察の捜査はこの刑事司法の入口にあって、いまだに、逮捕すれば何とかなるといった自白に頼った捜査を行っている。
 そして、治安維持のためなら、多少のことは許されるという警察の思い上がりがある。犯罪捜査におけるコンプライアンスを平気で無視する。それが有能な刑事であるとの評価が警察内部で横行している。
 そして、警察も検察も裁判所も誤りを決して認めない。中標津署長は谷内さんに謝罪もしていない。だから、再発防止策を真剣に考えることはない。今回の谷内さんの支援者たちの行動に対する中標津署の対応はそのことを如実に示している。
 平成22年7月9日、布川事件の再審の初公判が開かれた。第一審判決から既に40年が経っている。それでもまだ、犯人とされた桜井さんら2人の無罪は確定していない。谷内さんが、二審で逆転無罪を勝ち取ったのは奇跡に近いことなのだ。
 こうした冤罪に共通しているのは、警察、検察の取調官の自白強要等の違法な取調べだが、その是正を目的とした「取調べの全面可視化法案」(刑事訴訟法改正案)が、民主党が野党時代に何度も参議院では可決されていた。しかし、民主党が政権を獲得したとたん、前回の国会では議案として提出されることもなかった。冤罪を防止するための施策のうちの一つの取調べの可視化の問題だけでも、とてつもない大きな抵抗勢力の前にうやむやになろうとしている。その抵抗勢力の一つは官僚だ。
 「自分のように冤罪で苦しむ人を出したくない」という谷内さんの願いの前には、さらに大きく厚い壁がそびえ立っている。

この問題はどう展開するのか。
 最初に、以下の記述は、筆者(原田宏二)の警察OBとしての経験とこれまで警察相手の国賠訴訟裁判を外からみた体験からの推測であり、谷内さんご本人や支援者の方々、あるいは関係弁護士の方の意見とは全く関係のないことをお断りしておく。
 なお、谷内さんには、Aさんを相手に慰謝料請求の民事訴訟を起こすことも可能だろう。
 それはあくまでも谷内さんの個人的な問題なので、ここではあえて言及しない。
@ 警察も検察庁も谷内さんの告訴に、ある意味では安堵しているかも知れない。責任追及の矛先がAさんに向けられることによって、一般市民が冤罪の責任は、虚偽告訴した疑いのあるAさんにあると受け止めることにもなるからだ。しかし、中標津署がAさんを追及して、虚偽告訴の刑事責任を認めさせることは、自らの捜査の誤りを認めることに通じる。果たして、現在の検察や警察がそんなことができるのか、極めて疑問だ。
A 谷内さんが、Aさんを虚偽告訴の疑いで中標津署に告訴してから、すでに、2か月を経過している。
北海道警察の「告訴及び告発事件取扱い要領」には、「告訴等を受理したときときは、速やかに所要の捜査を行うとともに、当該事件を検察官に送付しなければならない。」とある。谷内さん夫妻からの事情聴取も終わり、相手女性の取調べも終わっているようだ。あとは、中標津署が釧路地検に事件を送付するだけだろう。これから、中標津署がAさんを虚偽告訴の疑いで逮捕することは、まずないだろう。
B Aさんは、谷内さんの告訴について、北海道新聞の取材に対して「こちらは被害者で、とても傷ついている。何も話すことはない。」と話している(平成22年6月29日北海道新聞)。これが事実なら、Aさんは警察の取調べに対して、虚偽告訴の事実を否認しているとみるべきだろう。
 中標津署から事件を送付された釧路地検も、無実の谷内さんを強制わいせつ未遂で起訴したという弱みがある。そうなると釧路地検はAさんを起訴する可能性は低い。検察庁は、起訴しなかった事件についてその内容を明らかにすることはない。事件は闇に葬られる可能性がある。
 検察庁が不起訴処分をしたときには、谷内さんは検察審査会に審査を申立てることができる。ここで2回起訴相当の判断がされ、「起訴すべき議決」がされると強制起訴が行われる。しかし、それまでは、相当の期間を要し、起訴相当の判断がされるかどうかも分からない。
C 現在の刑事訴訟法では、逮捕された被疑者は強制的に写真を撮影され指紋を採られる。最近ではDNA 型情報をデータベースに登録するための資料の提出も求められる。また、谷内さんの犯罪は「性的犯罪」として、「手口記録」も作られる。これらのデータは警察庁のデータベースに永久に保存されることになる。
 谷内さんは、逮捕時に提出したこれらのデータの削除を警察庁に要求するべきだろう。そうでなければ、谷内さんは永久に性犯罪の前歴者として登録されたままになる。最近、警視庁が写真・指紋のデータ削除等に応じる旨の回答した例もある。
D 国賠訴訟等の民事訴訟の提起。
 おそらく、このままで推移するなら、警察も検察も自らの非を認めて、谷内さんに謝罪することはないだろう。そうなると、あとは、国家賠償法による訴訟を提起するかどうかだ。
 この場合には、警察や検察庁の捜査に故意又は過失があったかどうかが問題になる。谷内さんのケースが国賠訴訟の対象になりうるのかどうかは弁護士の方の判断次第だ。
 ただ、はっきりしているのは、国賠訴訟のハードルは極めて高いということだ。訴訟に取組む体制、情報量、資金等、いずれをとっても被告の国等が有利だ。まるで、原告はハンディキャップレースをやるようなものだ。原告の精神的な負担も大きい。決着までは長い時間と経費も必要だ。勝つ保証は一つもない。そのため、多くの人の冤罪被害者は泣き寝入りする。
 谷内さんには、幸いなことに大勢の支援者がいる。優秀な弁護士もついている。今のところはマスコミの理解もできつつある。
 国賠訴訟を提起するかどうかは、弁護士の方の判断や支援者の方の意見を聞いて谷内さんが決断するべきだろう。
 冤罪防止の活動は、訴訟に訴えるだけではない。さまざまな活動もある。現在の支援者の集まりを、事務局と代表者を決め、活動内容を定めるなど、しっかりした組織に作り替え、ホームページで広く主張を訴えていくこともできる。冤罪は、何時でも、何処でも、誰にでも起こり得る問題だが、その根絶には息の長い活動が必要だ。
 谷内さんと支援者の方がどんな方向を選択しても、「市民の目フォーラム北海道」は支援を続けることをお約束する。
 冤罪を根絶するためには、一人でも多くの国民の声を結集するべきだからだ。


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22.7.1(木) 熊本県警剣道部員いじめ自殺訴訟 傍聴記
            異例 現職警察官等13人が証言台に

 平成16年5月24日、熊本県警機動隊の待機宿舎(誠和寮)で、同県警機動隊の剣道部員の山田真徳君(当時22歳)が、「迷惑かけてごめんなさい。僕は死にます。先輩たちのせいではありません。・・・・」と書き残し首つり自殺したのは、熊本県警の警察官らによる「いじめ行為」によるものだとして、父親で元熊本県警「術科・体育指導室」首席師範山田博徳氏と母親の山田真由美さんが、平成19年4月5日、熊本県(県警)を相手取って、それぞれ約3,180万円を支払うよう求めた訴訟((原告代理人 札幌の市川守弘弁護士)については、このホームページで5回にわたって掲載してきた。
 これまで、第7回口頭弁論で7人、第8回口頭弁論で4人、第9回口頭弁論で2人の合計13人の現職警察官等が証言台に立った。
 一件の訴訟で、これだけ多くの現職警察官等が証言する訴訟は異例である。
 ちなみに、警察官等以外の証人は原告のほか3人だけである。
 証人尋問が行われた3回の口頭弁論は、傍聴者の抽選は行われなかったものの、傍聴席はいずれも満席だった。
 多くの原告支援者に交じって「熊本・市民オンブズマン」のメンバーの姿も見られた。
 また、記者席では地元記者が取材する姿がみられたほか、毎回、東京からのフリーの記者が取材に訪れていた。この訴訟に対する関心の高さが窺われた。
 提訴以降、「市民の目フォーラム北海道」ではこの訴訟を支援してきたが、この3回の証人尋問については、代表の原田宏二が熊本地裁ですべての証言を傍聴した。
 今回は、その感想の一部を掲載する。
 なお、6月23日の口頭弁論では、真徳君と交際していた女性警察官Nさんと真徳君をいじめていたと名指しされた元剣道部員の警察官M氏が証言台に立ったが、証言内容の詳細は追ってこのホームページに「熊本県警剣道部員いじめ自殺訴訟(5)」に掲載する。
 この日の口頭弁論終了後、原告代理人の市川守弘弁護士は、集まった支援者に訴訟は9月29日の最終弁論で結審し年内には判決が出される見通しだ、と今後の訴訟の行方について説明した。

 (支援者に説明する市川守弘弁護士)

やましき沈黙を守る現職警察官等
 被告熊本県警は、「いじめの存在は確認できなかった」としていることもあって、証言台の警察官は、肝心な点については、知りません、忘れました、記憶にありませんを繰り返し、傍聴席からは「うそつくな」などの声が飛び、裁判長から注意を受ける場面もあった。
 結局、原告以外で、真徳君の自殺がいじめによるものだと明確に証言したのは、高校時代の恩師等と真徳君と交際していた女性警察官Nさんだけであった。
 生前の真徳君と親しい関係にあった警察官等であっても例外ではなかった。
 現職の警察官等にとって、組織の方針に反する証言をすることは、その将来を失うことになる。
 良心を捨て生活のために、やましき沈黙を守る証言台の姿は哀れでさえあった。

派閥の存在が鮮明に
 証人の機動隊幹部等は、隊内に「術科・体育指導室」首席師範山田博徳氏に対抗する「徹志会」なるグループが存在したことは認めたものの、そのメンバーは原告の山田氏を前に、「独裁的な指導者」と証言するなど、山田氏に対する不信感をあらわにしながらも、グループは単なる親睦団体であり、グループによる真徳君に対するいじめは否定した。
 こうしたグループが存在することを山田氏から知らされた熊本県警の機動隊幹部をはじめ県警警務部の上層部は、このグループを単なる親睦団体であるとして、適切な措置を講じなかったことも鮮明になった。
 こうした対応が、真徳君を自殺に追い込んだ要因の一つとも考えられた。

県警による自殺の真相隠し
 県警は、真徳君の自殺を一か月余りも隠ぺいしていたが、本来行われるべき検視という刑事訴訟法上の手続きが行われていないことや、県警側の記録と医師の死体検案の記録が大きく食い違うことが警察官や医師の証言で明らかにされた。
 県警の内部調査報告書(平成16年7月13日付)では、5月26日から部外者を含む40人から事情聴取したことになっているが、調査に携わった監察課の担当者は、その陳述書で「平成16年7月初めころ、新聞に山田君がいじめられていたという記事が掲載されたので非違事案の存否を確認するため、その記事の内容や風評等についても併せて調査を実施した」と述べている。
 つまり、機動隊内のいじめの調査は、新聞で真徳君の自殺が報じられてから調査したのだ。
 さらに、監察課長等の証言で、調査対象を県警内部の警察官等に限定したことや、同報告書には山田氏からの事情聴取の結果は含まれていないことなど、報告書の内容は極めて杜撰なものであることが明らかになった。
 これは県警が、真徳君の自殺の原因が機動隊内部のいじめによることが明らかになることを恐れたからだろう。
 改めて、組織防衛最優先の警察体質を見る思いだった。

お粗末な熊本県警の訴訟対策
 警察の監察課には、警察に対する訴訟に対応するための訴務係がある。
 県警によっては、警視クラスの訴務官なるポストを設けているところもある。
 口頭弁論の被告席に弁護士の代理人とともに参加している指定代理人の警察官がそれだ。
 彼らの任務は、組織防衛であるから、組織にとって不利な証拠は隠し、原告の弱点を探しそこを追及する。
 原告の主張を分析し、決定した訴訟方針に沿って、警察官等が作成する陳述書の内容のチエック、証言内容の打ち合わせ等を行う。必要によっては、証言のリハーサルも行う。
 今回の訴訟では、証人になった警察官等の陳述書の中に「山田元師範が、部員に旅費を誤魔化して渡していたという話について、さらに疑いを抱くようになった」という記述があった。
 このほかにも、山田氏が剣道部員に渡すべき旅費などを私的に流用している疑いがあったという陳述書もあった。
 こうした記述は、熊本県警で旅費を原資とする組織的な裏金作りが行われているのではないかとの見方もできる。
 原告代理人市川弁護士は、北海道警察の裏金疑惑を追及した弁護士だ。
 当然、厳しく追及されることになる。
 組織防衛を任務とする監察課としては、不用意な陳述書であろう。
 十分な根拠も知識もなく、原告を誹謗中傷するような記述のある陳述書を提出するのは、熊本県警の品性が疑われだけではなく陳述書の信ぴょう性が疑問視される。
 筆者が熊本県警で勤務した時には、間違いなく裏金が存在したが、熊本県警では今でも裏金作りが行われているとでもいうのだろうか。
 証言台に立った県警の訴訟対策の責任者でもある監察課長が、自殺の原因調査の対象を内部の者に限定したことについて、裁判官から「ご家族の話というのは結構重要だと思うが、その必要はないと考えていたということでいいんですね」とダメ押しされ、「内部の者に聞けば、事実が明らかになる」と答えたり、真徳君が自殺未遂をしたとされる事実を調査報告の対象としなかったことについて聞かれて、「「同じ人間が2度と自殺を図るということは、私は考えていませんし」と常識外れの答えをしたのには驚いた。
 熊本県警の訴訟対策は、極めてお粗末だと思った。

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22.3.14(日) 政権交代と警察改革
            原田代表 民主党北海道の勉強会で講演

 「市民の目フォーラム北海道」の原田宏二代表が、3月9日、札幌市内のホテルで行われた民主党北海道の道議会議員有志の勉強会で約1時間にわたって「政権交代と警察改革」と題して講演した。


 原田代表の講演の内容は、以下のとおりだ。
 55年体制下で警察の中央集権化・官僚支配が進められ、公安委員会制度も形骸化した。
 平成12年の「警察刷新に関する緊急提言」にも拘わらず、裏金疑惑、冤罪事件、最近の「物品購入をめぐる裏金疑惑」、警察幹部による不祥事と警察の腐敗は現在も進んでいる。
 民主党のマニフエストにある「取調べの全面可視化」の問題については、冤罪を根絶するためには可視化だけではなく、刑事司法全体の問題を見極める必要がある。
 あまり問題とされていないが、重要なのは取調べの結果を記録した「供述調書」が検事や警察官の主観が入った作文である点だ。
 それが証拠になる。その点の議論がないのはおかしい。
 主観が入る余地のない録音・録画を証拠とすることが、何故問題なのか。
 「供述調書」と「録音・録画」があまりにも違うからだろう。
 警察庁は、取調べの適正化指針で、事実上、警察の現場で違法な取調べが行われていることを認めているが、依然として可視化には反対している。
 その理由は、「叩き割り捜査」などの従来の捜査手法が不可能になることや検挙率の低下、代用監獄廃止論の再燃などをおそれているからだ。
 警察改革については、これまでも民主党に提言してきたが、重要なのは公安委員会制度の改革だ。
 公安委員会事務局を警察から分離独立して、現在の監査委員事務局のような事務局を作る必要がある。
 また、都道府県警察の活性化のために、都道府県本部長をはじめ上層部の幹部を警察庁のキャリアではなく地方幹部から任用するべきだ。
 これは、警察法を改正しなくても可能だ。
 最終的には、警察法を改正し、都道府県警察の人事権も国家公安委員会から都道府県公安委員会へ移管するなど、警察の地方分権化を進める必要がある。
 最後に、政権交代後の東京地検の動きなどについてだが、警察、検察、裁判所などの権力機関は、未だに旧政権の影響下にあることをしっかりと受け止めるべきだ。
 政権交代を市民革命という人もいるが、そうだとすると一連の政治資金規正法違反の集中的な摘発は旧政権の反撃とみなければならない。
 それに対して民主党は、どのくらいの備えがあったのか。
 国家公安委員長に中井さんが、公安委員に高木前連合会長が就任したとしても他の公安委員には、旧政権のときに就任した委員がそのまま残っている。
 しかし、公安委員会にこうした勢力が入り込むことは、長年自民党政権を思うままに牛耳ってきた警察キャリア官僚にとっては、絶対に許せないだろう。
 なりふり構わぬ反撃に出るであろうことは、予想されることだ。
 他府県警の捜査二課長として、1票がいくらという現金が飛び交う買収事件の捜査の指揮をとったことのある私としては、北海道5区の事件の検挙にはいろいろと感じるところがある。
 それは、また、機会を改めてお話しをすることにしたい。

 現時点では、国家公安委員会には副大臣も政務官もいない。
 委員長は裸同然だ。それに対して、警察官僚はそのままだ。
 マスコミも同じだ。民主党の警察改革は容易ではない。
 「市民の目フォーラム北海道」は、警察改革を進めるために、選挙前に「警察改革に関する5つの提言」を民主党に提出しているほか、昨年には中井国家公安委員長に、本年は大畠国家基本政策委員長に対して警察改革に関して申し入れを行っている。
 これからも、民主党政権に対して警察改革について働きかけて行きたいと考えている。
 警察は現場官庁である。
 地方の警察の実態を民主党政権に訴えて行きたいと考えているので、皆さんのご協力をいただきたい。

(原田代表による同趣旨の講演をご希望の方は、「市民の目フォーラム北海道」事務局
  050−7524−8995 へご連絡下さい。)


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22.2.25(木) 「笑う警官」など道警シリーズの佐々木譲さんに直木賞

 第142回の直木賞の贈呈式(主催財団法人 日本文学振興会)が、平成22年2月19日夜、東京都千代田区丸の内の東京會舘で開かれた。
 贈呈式には、作家や出版関係者約1,300人が参加、「市民の目フォーラム北海道」の原田宏二代表も参加した。  
 贈呈式では、短編集「廃墟(はいきょ)に乞(こ)う」の佐々木譲さんと、恋愛小説集「ほかならぬ人へ」の白石一文さんにそれぞれ記念品と賞金の目録が贈られ、選考委員の渡辺淳一さんが両氏の作品について論評とお祝いの言葉に続き、受賞者の佐々木譲氏と白石一文さんが受賞の挨拶をした。
(挨拶する佐々木譲さん)

佐々木譲さんの略歴と受賞のことば
 受賞者略歴/1950年北海道夕張市生まれ。広告代理店、自動車メーカー販売促進部などに勤務。
 79年「鉄騎兵、跳んだ」で第59回オール請物新人賞を受賞し、作家活動に入る。
 90年 エトロフ発緊急電』で日本推理作家協会賞、山本周五郎賞、日本冒険小説協会大賞を受賞、2002年『武揚伝』で新田次郎文学賞を受賞。
 著書に『笑う警官』『警官の血』『暴雪圏』「北帰行』など。
 2002年より東京農業大学客員教授

受賞のことば
 長いこと自分を若手と思い、つねにそのとき取り組んでいるジャンルでの新人とも意識してきた。でも気がつけば中堅と呼ばれ、最近ではとうとうベテランと呼ばれるようになった。
 たしかに30年間書いてきたら、世間的にはそういう存在なのだろう。
 なので今回の受賞は、選考委貝の先生方からの「永年勤続表彰」の意味もあったのではないかと勝手に想像する。
 こうなったら、20年後ぐらいにもう 一度表彰されたいものだ。
 そのときまで、わたしは現役を続けると決意する。

白石一文さんの略歴と受賞のことば
 受賞者略歴/1958年福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
 83年文垂春秋入社。「週刊文春」「諸君!」「文藝春秋」「文學会」各編集部、企画出版部などでの勤務を経て、2003年退社。
 2000年『一瞬の光』でデビュー。09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞を受賞。
 著書に『僕のなかの壊れていない部分』『どれくらいの愛情畑『永遠のとなり』など。

受賞のことば
 受賞の報に接したときは、余りに意外で何の感慨も浮かんでこなかった。
 自分としてはどちらかというと自分らしくない作品でいただいたような気もしている。
 宮城谷さんが「この作家はもうすこし破天荒でもいい」と選考経過の説明でおっしゃったと知り、深く深く肝に銘じようと思う。
 この道に引きずり込んでくれた父・一郎、この作品の担当編集者、そしてこんな僕に身に余る賞を与えてくださった選考委貝の方々に心から御礼を申し上げます。


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22.2.10(水) 書籍紹介 志布志事件「でっち上げ」の真実  違 法 捜 査

 2005年(平成15年)の鹿児島県会議員選挙に絡む公職選挙法違反事件で15人が逮捕され、2007(平成19年)に被告全員が無罪になった志布志事件。
 何故、こんな悲劇が起きたのか。これは犯罪捜査だったのか。
 その真実に迫る作品が角川学芸出版から発売された。
 布志事件「でっち上げ」の真実 違 法 捜 査(写真)(405ページ 定価2000円 税別)である。

 

 著者は、当時の朝日新聞鹿児島総局長だった梶山天氏である。
 鹿児島総局は、「鹿児島県警による03年県議選公職選挙法違反『でっちあげ事件』めぐる
 スクープと一連のキャンペーン」で、2007年11月に石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞、さらに2009年1月には新聞労連ジャーナリスト大賞を受賞している。
 著者が、被告全員が無罪の判決から3年間、捜査当局が隠し続けていた事件の真相を暴いた渾身のノンフィクションである。
 本書では、捜査第二課長として選挙違反事件を捜査した経験を持つ「市民の目フォーラム北海道」代表原田宏二が、志布志事件の問題点を指摘している。


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                     警察のこの10年を顧みて
                     警察改革の道しるべ


                                             平成22年1月8日
                                             「市民の目フォーラム北海道」
                                             代表  原田 宏二

警察不祥事と警察力の低下
 警察庁の大号令で平成4年から展開されたけん銃摘発対策(平成の刀狩り)では、平成6年から平成9年にかけて、分かっているだけでも、兵庫県警、長崎県警、群馬県警、愛媛県警、そして北海道警でけん銃摘発をめぐり、おとり捜査、やらせ捜査等、様々な違法捜査が行われた。
 そして、多くの捜査員がその責任を追及され、職を追われ、なかには自ら命を絶った幹部もいた。
 平成11年には、神奈川県警本部長らによる警察官覚せい剤使用隠蔽事件、新潟県警本部長らによる雪見酒接待事件、埼玉県警のストカー事件の捜査懈怠など多くの警察不祥事が発覚した。
 その際、警察組織の秘密性・閉鎖性、無謬性へのこだわり、キャリアの驕り、第一線現場の規律の緩みや怠慢などが指摘された。
 これを受けて平成12年7月、有識者らによる警察刷新会議が「警察改革に関する緊急提言」(以下、「緊急提言」という)を発表、警察刷新の方向を示した。
 それによると、情報公開の積極的な推進、警察職員の不適切な職務執行に対する苦情申出制度の創設、公安委員会の活性化等が求められた。
 しかしながら、それ以降も、富山県警の覚せい剤捜査の隠蔽事件、多くの道府県警察で組織的裏金づくりが発覚、相次ぐ警察官による殺人事件等の犯罪の発生、次々と露呈する重大冤罪事件など、警察の根幹を揺るがすような不祥事が続いている。
 「緊急提言」から10年、警察の中央集権化が続くなかで、形骸化した公安委員会制度は活性化にはほど遠く、警察の情報公開に対する姿勢も依然として消極的で、創設された苦情申出制度も実効は上がっていない。
 警察改革は、依然として進んではいない。

 一方、警察力のバロメーターのひとつともいえる犯罪検挙率も、平成11年以降10年間の平均をみると刑法犯で27%、国民の最も身近な犯罪である窃盗犯で23%と低迷を続けている。
 凶悪犯罪の検挙率の平均は66.5%になってはいるが、平成19年4月に始まった公的懸賞制度の対象になった未解決の凶悪・重要事件だけでもこれまで全国で15件を数えている。警視庁のホームページによると平成11年以降の殺人等の未解決重要・凶悪事件は65件を数え、平成7年3月に発生した国松警察庁長官狙撃事件はあと1年で時効を迎えようとしている。
 なお、この10年間、全国で控訴時効が完成した凶悪事件は、殺人508件、放火290件、強盗773件、強姦356件(検察統計年報)で、いずれも増加傾向にあり、特に平成16年以降の増加が著しい。
 多くの国民は、長い間、作られた警察神話を信用していた。
 というより、警察の問題には関心が薄いと言った方が良いのかも知れない。
 ある日、不幸にして警察と接してはじめて警察の本当の姿を知る。それでは遅いのだ。

キャリア官僚が牛耳る都道府県警察
 我が国の警察は、昭和29年の警察法改正以来、都道府県警察を建前にしながら、55年体制の下で次第に中央集権化が推し進められ、警察庁を頂点とする事実上の国家警察と化し、警察の民主的運営を保障する公安委員会制度も形骸化するなど、警察法の建前は事実上骨抜きになっている。
 都道府県警察の国家警察化に役割を果たしたのは、55年体制下で警察庁から都道府県警察に出向したキャリア官僚たちである。
 現場を知らないキャリア官僚が、都道府県警察のトップを独占しただけではなく、人事等の管理部門の主要なポストも、キャリアの警察官僚が独占した。
 警察庁が都道府県警察の"ひと""もの""かね"を支配したのだ。
 そのキャリア官僚の任務は、警察庁の方針を都道府県警察の現場に忠実に実行させることである。
 出向先の都道府県に何のゆかりもなく、愛着があるわけでもない。
 彼らにとってそのポストは、腰掛けに過ぎない。
 彼らは、不祥事が発覚すれば、責任を現場に押しつける、いわゆるトカゲのしっぽ切りに終始し、自らの責任は回避し、組織防衛最優先の姿勢を貫いた。
 再発防止策といえば「羮(あつもの)に懲りて・・・」の如く、監督の強化と現場への締め付けだけ、これでは根本的な再発防止策が生まれるはずもない。
 警察官の不祥事が絶えない最大の要因はここにある。

 警察組織の最大の特徴はその現場性にある。
 津々浦々に警察署があり、駐在所・交番があり、そこでは警察官が24時間警察事象に対応している。
 警察に必要なのは、現場第一主義である。
 そして必要なのは、地域の実情を正確に把握し、地域社会が求めている警察の役割を正しく認識できる幹部であり、犯罪捜査等で的確な指揮ができる実務能力に優れた幹部である。
 都道府県警察の現場にキャリア官僚は必要ではない。
 そもそも、一握りの現場を知らないキャリア官僚が、巨大な都道府県警察の現場を管理できるわけがない。
 都道府県警察本部長をはじめ主要なポストをキャリア官僚が独占する現在の制度は不合理であり、都道府県警察の幹部のモチベーションを低下させる要因になっていることは間違いない。

 都道府県公安委員会が形骸化したのは、知事の権限である委員の任命に警察が関与していること、その庶務を都道府県警察本部が処理するとされ、独立した事務局がないことなどがあげられるが、致命的なのは管理すべき都道府県警察の警察本部長はじめ警視正以上の幹部の任免権が、国家公安委員会(事実上は警察庁)にあり、都道府県公安委員会には同意権しかないことである。
 この同意権も、実際には行使されてはいない。
 警察本部長の懲戒又は罷免に関しても国家公安委員会に対する勧告権があるだけだが、この勧告権が行使されたことも聞かない。
 ついでだが、都道府県公安委員会には、都道府県警察に対する監察の指示権はあっても、その結果を点検することができるだけで、警察施設への立入り、書類等の閲覧、警察職員に対する質問等が認められているわけではない。
 監察の指示権といっても極めて中途半端なものだ。
 警視総監をはじめ道府県警察本部長のほとんどは、警察庁から出向するキャリア官僚である。
 都道府県公安委員会には、管理するべき都道府県警察の最高責任者の任免権も、懲戒権も与えられていない。
都道府県公安委員会は、警察の民主的運営を装う飾り物に過ぎず、委員は単なる名誉職に過ぎない。

民主党の警察改革(INDEX2009)の確認
  「市民の目フォーラム北海道」は、平成21年7月、民主党に対して、警察の地方分権化をはじめとする「警察改革に関する5つの提言」を提出したが、平成21年8月の衆議院議員選挙において民主党が示した警察改革等の政策を確認すると以下のとおりだ。

○ 警察改革

 捜査用報償費等を裏金化していたとされる不正経理や情報の漏洩、警察官による犯罪等さまざまな不祥事が続発し、警察行政への信頼が低下しています。これら警察不祥事に関して公安委員会の存在感は極めて薄く、その役割が改めて問われています。
 警察を監督する公安委員会の体制を強化するとともに、その事務を警察自身が行っているという矛盾を解消するため、国家公安委員会・都道府県公安委員会に独立した事務局を設置します。また都道府県知事や都道府県議会による監督の強化や、苦情処理制度を大幅に拡充し、市民の声を反映した警察行政を実現します。

○ 治安対策

 検挙率向上のため、日常生活に密着した「地域・刑事・生活安全」にかかる警察機能を拡充します。また、地域社会の防犯活動を支援します。
 治安・防犯の確保のためには、警察の捜査能力の向上が必要ですが、その一方で警察権限の無制約な拡大は、捜査権の乱用やプライバシー侵害などの弊害を招くことが懸念されます。こうしたことが市民の警察捜査に対する不信や非協力につながり、結果として治安の向上に悪影響を生じかねません。防犯カメラ・Nシステム(自動車ナンバー自動読取装置)・DNA鑑定等、新たな捜査手法の利用にあたっては、人権に配慮して運用ルールをしっかりと定めるとともに、個人情報保護の観点からの法規制を含めた検討を進めます。さらに盗聴・盗撮による被害が深刻化していることから、これらの取り締まりを強化します。

○ 総合的な銃器犯罪対策の推進

 長崎県佐世保市の散弾銃乱射事件などをきっかけとして、民主党が主張したことにより合法銃の所持許可の欠格事由厳格化などを主な内容とする改正銃刀法が2008年の170回臨時国会で成立しました。非合法銃についても、暴力団関係者等に対する摘発・検挙、密輸入阻止のための水際対策などを徹底し、総合的な銃器犯罪対策を強力に進めます。

 さらに、民主党政権政策(Manifesto)の政策各論6〜消費者・人権の49〜の中で「取調の可視化で冤罪を防止する」として、
【政策目的】
○ 自白の任意性をめぐる裁判の長期化を防止する。
○ 自白強要による冤罪を防止する。
【具体策】
○ ビデオ録画等により取り調べ過程を可視化する。
【所要額】90億円程度
を掲げている。

容易ではない民主党の警察改革
 平成21年8月の衆議院選挙では、昭和30年以来、一時期の例外を除いて長期間政権を独占した自民党政権、そして平成11年から10年間続いた自民党・公明党による連立政権が崩壊し、民主党を中心とする連立政権が誕生した。
 国家公安委員長には、野党時代に民主党の「警察不正経理疑惑調査・警察改革推進本部」本部長を務めた中井洽(ひろし)氏が就任した。
 さらに、平成21年12月には、国家公安委員に連合の前会長高木剛氏が就任した。
 労働界から国家公安委員に就任するのは、昭和33年の金正米吉・日本労働組合総同盟(総同盟)会長以来、51年ぶりだという。
 民主党は、野党時代には警察の不正経理疑惑について、警察庁が積極的に関与していたと考えるのが妥当だと指摘している。
 また、民主党、社民党は、平成21年4月には取調べの全過程を録音・録画して可視化する「刑事訴訟法改正案」を参議院に提出、可決成立したものの、衆議院で廃案になった経緯がある。
 民主党が選挙前に示した警察改革に関する政策は、これまで述べてきた公安委員会や警察の現状を考えると概ね妥当なものと言える。
 当然ながら警察改革は、民主党中心の連立内閣の誕生で一歩前進するかと思われた。
 しかしながら、新政権誕生に伴って国家公安委員会が一新したわけではない。
 交替したのは、委員長と5人の委員のうち1人に過ぎない。
 しかも、国家公安委員会の事務局は依然として警察庁のキャリア官僚が牛耳っている。都道府県警察のトップや主要幹部は、旧政権時代に国家公安委員会が任命したキャリア官僚が支配している。
 民主党の警察改革は、決して容易ではない。
 現に、取調べの可視化に関する国家公安委員長の発言は、民主党が可視化の実現に消極的になったのではないか、と危惧する見方もある。

「市民の目フォーラム北海道」の取り組み
 「市民の目フォーラム北海道」は、平成21年10月、中井洽国家公安委員長に面接して、新「警察刷新会議」(仮称)を設けるなど、政治主導により、警察が抱える諸問題を的確に把握し、警察改革の方向性を明確にし、警察の抜本的な改革に取り込むよう要望した。
 「市民の目フォーラム北海道」は、平成22年も以下の方針に従って、警察改革に取り組む方針だ。

○ 国家公安委員会等への働きかけ

 当面、国家公安委員会及び連立政権関係者等に対して、以下の点を重点に働き掛けを進める。
(1) 都道府県警察の地方分権化の実現
 警察本部長をはじめ、警視正以上の幹部ポストには、地元採用の幹部を任用するほか、警察庁に所掌事務(警察法17条)を遵守すること、都道府県警察への過度の介入を是正することを指導し、都道府県警察の独自性を尊重する警察運営を実現するよう求める。
(2)公安委員選任への警察の関与を排除
 知事が任命すべき都道府県公安委員は、都道府県警察が選任しているのが実態である。知事の任命権と議会の同意権を厳格に運用するように、都道府県知事及び都道府県議会に勧告するよう求める。
(3) 犯罪捜査の在り方の抜本的な見直し
 あってはならない冤罪事件が続発している。法的な根拠もなく防犯ビデオ、監視カメラのデータやNシステムが捜査に利用されている。捜査の現場で検挙実績を追求するあまり、「法令等の厳守」の原則がおろそかになってはいないか。
 取調べの全面可視化の早期法制化をはじめ、代用刑事施設の廃止、捜査活動における適正手続きの厳守等、警察の犯罪捜査の在り方を抜本的に見直すとともに、個人のプライバシーを侵害するおそれのある捜査手法の規制に関する法律を整備するよう求める。
(4) 警察予算の透明化
 多くの都道府県警察で、長年にわたり組織的な裏金づくりが行われていたことが露呈した。これは捜査費(捜査用報償費)、旅費等の執行段階の問題である。裏金問題の根本は、こうした警察予算の必要性、積算根拠、必要額などの事業仕分け行われてないことにある。警察予算に対する厳格な事業仕分けを求める。
 また、予算執行をチエックすべき会計検査院、監査委員に対して末端受領者は開示されていない。警察予算の編成から執行までを納税者である国民に開示するよう求める。
(5) 情報開示の促進
 警察の秘密性・閉鎖性は改められてはいない。警察活動に支障があるとの一方的な理由で非開示とされる情報が依然として多い。例えば、捜査費予算の積算根拠は開示されないし、警察署の配置人員や職務執行に当たった警察官の氏名等、も開示しない。公安委員会が情報公開審査会の答申を無視する傾向もある。
 都道府県警察及び公安委員会の情報開示に関する姿勢とその実態を把握して、情報開示を促進するよう求める。

○ 最終目標は警察法の抜本改正
 現行警察法は既に制定以来55年が経過している。
 民主党のマニフエストの鳩山政権の政権構想には、「官僚丸投げの政治から、政権党が責任を持つ政治家主導の政治」、「中央主権から地域主権へ」とある。
 自民党政権で進められた警察の官僚による中央集権化を解消し、一日も早く、都道府県警察の独自性を尊重する警察運営を実現すべきだ。
 そのためには警察法の抜本的な改正が必要だ。「市民の目フォーラム北海道」が、警察法の改正が必要と考える点は以下のとおりだ。
(1)公安委員会事務局の独立と体制強化
 独立の事務局を設置し、事務局員は警察職員以外を当て、必要な体制を強化する。(法13条、法44条の改正)
(2)公安委員の選任の透明化
 公安委員の選任の透明化を図るため、議会の同意に当たって公聴会制度を導入する。(法7条、法39条の改正)
(3)公安委員長と議会との関係を明文化
 都道府県公安委員長に、地方自治法第121条(議会出席義務)の履行させるため、委員会を代表して議会に出席すべきことを明文化する。(法43条3項の改正)
(4)公安委員会の権限の強化
 公安委員会の監察の指示等の権限を強化し、警察施設への立入調査権、職員への質問権、書類等の閲覧権等を付与する。(法12条の2、法43条の2の改正)
(5)警視正以上の警察官の人事権を都道府県公安委員会へ移管
 地方警務官制度(法56条)を廃止するほか、国家公安委員会が所掌している警視総監、都道府県本部長をはじめ警視正以上の警察官の人事権を都道府県公安委員会に移管する。(法49条、50条、55条の改正)
(6)公安委員会による苦情処理の明確化
 警察職員の職務執行に対する苦情の処理は、都道府県公安委員会が自ら実施することを明記する。(法79条の改正)
(7)管区警察局、市警察部、北海道警察の方面本部の廃止
 警察庁の地方機関である7管区警察局を廃止(法30条)、空文化している市警察部を廃止(法52条、46条の2の削除)、北海道の方面本部及び方面公安委員会を廃止(法46条、51条の改正)など警察組織の合理化を図る。


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21.12.4(金) 「飯塚事件」学習会のご案内

 平成4年に福岡県飯塚市で小学1年生の女児2人が殺害された「飯塚事件」。
 犯人とされた久間さんは、捜査段階から一貫して容疑を否認し公判でもDNA鑑定の信用性などを争いましたが平成18年9月死刑が確定。
 再審請求準備中の平成20年10月に死刑が執行されてしまいました。
 この事件は、再審が開始された足利事件と同じ手法で行われたDNA鑑定が証拠として採用されており、弁護団は「久間元死刑囚と犯人とは一致せず、無実は明らか」と10月28日、福岡地裁に再審開始を求めました。
 今回、弁護団共同代表の徳田靖之弁護士の来札に併せて緊急学習会を開催します。
 徳田弁護士の報告を聞き、「なぜこのような冤罪事件が繰り返されるのか」「なぜ死刑が執行されてしまったのか」など、みなさんと一緒に考える機会にしたいと思います。
 どうぞ多くのみなさんのご参加をお待ちしております。

<講師>飯塚事件弁護団共同代表 徳田靖之弁策士
<とま>12月12日(土)13〜14時半
<ところ>札幌コンファレンスホールA
札蠣市中央区南2条西2丁目 TOGASHIビル6F

く参加費>無料(どなたでもご参加いただけます)
【主催】自由法曹団北海道支部、日本国民救援会北海道本部、薬害エイズを考える会
【お問い合わせ先】
日本国民救援会北海道本部 011-747-7909
薬害エイズを考える会 090−6875−4926


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21.11.8(日) 警官に正義を語らせない
              佐々木譲さんが語る警察小説の世界

 「市民の目フォーラム北海道」では、平成21年11月6日(金)の夜、札幌市北区の「札幌エルプラザ」3階大ホールで、11月14日から全国一斉に公開される映画「笑う警官」の公開を記念して、「笑う警官」の原作者佐々木譲さんを招いてイベントを開催した。
 佐々木譲さんの警察小説のベストセラー「道警シリーズ」は既に150万部を超えたとされるだけに、イベント会場には開場1時間以上も前に市民が駆けつけ、佐々木ファン約250人ほどが熱心に佐々木氏のトークに聴き入った。
 なかには「市民の目フォーラム北海道」へのカンパでプレゼントされた佐々木さんの書籍にサインを求めるファンの姿も見られ、同氏の人気の高さがうかがわれた。

 平成15年11月、北海道警から始まった平成の警察裏金疑惑は、平成21年9月の千葉県警まで16府県警察で発覚し、北海道警察の約9億6千万円を筆頭に約14億4千万円を国などに返還した。
 警察の裏金疑惑は、北海道警で発覚する以前にも、古くは島根県警、警察庁、警視庁、長崎県警、愛知県警、熊本県警、宮城県警、高知県警など多くの警察で発覚している。
 こうした実態があるのに、警察庁は「裏金づくりは、地方の警察の現場が勝手にやったもので、警察庁や上層部は全く知らなかった」とし、北海道警の内部調査等でも、約3億9千万円の使途不明金があるとされながら、私的流用は認められなかったとされ、上層部も刑事責任を追及されることもなく幕が引がれた。
 警察の腐敗は、東西冷戦の世界情勢のなか始まった55年体制のもとで、公安委員会制度をはじめとする警察の民主的運営を保障するシステムが全て形骸化され、キャリア官僚が人事・予算面で地方警察を支配する中央集権化が進められたことと無関係ではない。
 「市民の目フォーラム北海道」では、映画「笑う警官」の全国公開を前に、北海道から始まった警察改革の動きを風化させないために、このイベントを企画したものである。
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 この映画は、北海道警の裏金疑惑を背景として、殺人事件の容疑者となった1人の警察官をめぐり、北海道警察本部のキャリア幹部と現場の警察官たちが対立するというものだが、イベントでは映画「笑う警官」予告編上映、その冒頭では北海道警のキャリア幹部が「道警には裏金などはない」と断言するシーンから始まる。
 「笑う警官」の著者 佐々木譲さんは「佐々木譲の警察小説の世界」と題して1時間の講演。
 同氏は「警察官をスーパーマンにしない、警察官に正義を語らせない、警察官は道徳を口にしない。」をモットーに警察小説を書いていると語り、警察官が準拠するのは法律であり、法執行のプロであることを求めていると話した。
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 (警察官に正義を語らせないと話す佐々木譲さん)

 休憩をはさんで、「市民の目フォーラム北海道」原田宏二代表が、佐々木さんに質問する形でクエスチョンタイムを設け、「警官の誇り、現場の闘い」と題した雑誌での対談の話題などについて佐々木さんに語ってもらった。

 このイベントの様子は、近く、動画で紹介することにしている。


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21.10.25(日) 「市民の目フォーラム北海道」
               中井国家公安委員長に警察改革の推進を要望

 臨時国会を10月26日に控え、「市民の目フォーラム北海道」代表原田宏二と事務局の斎藤邦雄が、10月22日、総理府大臣室において、約30分間にわたり、中井洽国家公安委員長と面談し、警察改革を推進するよう以下のとおり要望した。
 なお、この面談はこれまで警察の裏金疑惑をはじめ警察問題を追及してきた民主党鉢呂吉雄衆議院議員(北海道第4選挙区選出)の斡旋で実現したもので、面談には同議員にも同席していただいた。
             
                      警察改革に関する要望
 私たちは、平成16年3月、北海道警察の裏金疑惑を告発して以来、平成19年2月、「市民の目フォーラム北海道」を立ち上げ、市民の方々と共に民主的な警察を実現するべく活動を続けています。
 我が国の警察は、昭和29年の警察法改正以来、55年体制の下で次第に腐敗し、自公民政権が誕生した平成11年にはその極に達しました。
 そのため、平成12年7月、警察刷新会議が「警察改革に関する緊急提言」を示しました。
 しかしながら、近年、警察の組織的裏金づくり、警察官による犯罪、冤罪事件等が相次ぎ、情報開示へ消極姿勢は改められていません。
 警察の信頼は、地に堕ちていると言っても過言ではありません。
 私どもは、民主党の中井洽代議士が党の「警察不正経理疑惑・警察改革推進本部」の責任者として、警察改革に取組んでこられたことを承知していますが、民主党政権がスタートし、中井洽代議士が国家公安委員長に就任された現在、ようやく、本格的な警察改革のときがおとずれたと考えています。 
 私どもは、平成21年7月、民主党政策調査会に対して、「警察改革に関する5つの提言」を提出したところです。その骨子は以下のとおりです。
@ 警察の地方分権化の推進
A 公安委員会制度の改革
B 「警察刷新に関する緊急提言」の検証
C 冤罪事件の根絶のための刑事訴訟法の改正
D 捜査費予算の抜本的見直し 
(資料 「警察改革に関する5つの提言」、「現行・警察法の運用実態検証」)
 私どもは、「市民の目フォーラム北海道」の活動を通じて、多くの国民から警察行政に関する苦情や要望も聞いております。
 また、警察の現場で勤務した経験のある者として、その実態をつぶさにみて参りました。
 国民生活の安全確保のため、一刻も早く、警察に対する国民の信頼を回復しなければなりません。
 つきましては、新「警察刷新会議」(仮称)を設けるなど、政治主導により、警察が抱える諸問題を的確に把握し、警察改革の方向性を明確にし、警察の抜本的な改革に取組んでいただくよう要望するとともに、その際、私ども現場の意見もお聞きいただけるようご配慮をお願いいたします。



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21.9.25(金) 氷見事件国賠訴訟始まる
              「市民の目フォーラム北海道」も支援

氷見事件については、このホームページで
19.10.29(月) 富山のえん罪(氷見事件)無罪確定 警察・検察捜査を追認する裁判所
19. 7. 1(日) 富山県のえん罪事件(その2) 取調室はブラックBOX
19. 4.15(日) 富山県のえん罪事件で再審開始
と3回にわたって登載した。

氷見事件とは
 平成14年1月(既遂)と3月(未遂)、富山県氷見市内で発生した侵入強姦事件で、富山県警が同年4月15日タクシー運転手だった柳原浩さんを逮捕、富山地検は同年5月24日起訴、富山地裁は同年11月27日懲役3年の実刑判決を言い渡す。
 平成17年1月、柳原さんは仮釈放されたが、平成19年1月になって、真犯人が判明、富山県警が「誤認」と発表、6月20日再審裁判が始まり、10月10日富山地裁は柳原さんに無罪判決を言い渡した。

氷見事件国賠訴訟
 無罪判決を受けた柳原浩氏が、平成21年5月14日、国と富山地検副検事M、富山県と富山県警捜査第一課警部補Nを相手取って、違法な刑事処分により長期間にわたり身体を拘束され甚大な精神的損害をうけたとして1億440万3,952円の支払を求める訴訟を提起(訴状要約版はPDF参照)、その第1回口頭弁論が平成21年8月19日、富山地裁で行われた。
 第1回口頭弁論では、代理人弁護団を代表して前田裕司弁護士(東京弁護士会)が意見陳述、中西(金沢同)、竹内(東京同)両弁護士が訴状を陳述、柳原浩氏が原告の意見陳述を行った。その後、被告らが陳述を行った。
 前田弁護士は「この国の刑事司法にとってもこの裁判は重要であり、被告らは真相究明のためにも証拠を全面的に開示するべきである」と陳述、原告の柳原さんは「足利事件の菅家さん、志布志事件の中山さんも警察・検察が隠している証拠の開示を願っており、裁判所は私たち冤罪被害者の訴えを却下しないよう強く願います」と訴えた。

「市民の目フォーラム北海道」も支援
 「市民の目フォーラム北海道」は、これまでも氷見事件訴訟を支援してきたが、この度、弁護団から原田代表に対して、今後の訴訟対策の参考としたいので、警察の犯罪捜査の実態等について話して欲しい旨の要請があった。
 これを受けた原田代表が、9月17日、東京都内で氷見事件捜査の問題点、自白偏重の刑事司法と警察捜査、警察の取調の実態、組織捜査とその弊害、目に見えない警察の論理、国賠訴訟にみる問題点等について講義した。

(講義する原田代表)
 当日は、国賠訴訟の原告の柳原浩氏のほか、氷見国賠弁護団の弁護士、富山冤罪国賠を支える会のメンバーなどが集まり、原田代表の説明を熱心に聞いた。
 なお、第2回口頭弁論は、11月20日(金)11:00〜12:00の予定で富山地裁民事部で行われる。


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21.9.6(日) 全国市民オンブズマン岡山大会
            「地域住民の情報主体性こそが警察を更正させる」

 平成21年8月29日(土)・30日(日)の両日、第16回全国市民オンブズマン岡山大会が岡山大学創立五十周年記念館(岡山大学津島キャンパス内)で開かれ、全国の市民オンブズマン等約300人が参加した。
 市民オンブズマンは、情報公開により税金のムダづかいをチェックするなど、行政・議会・外郭団体などの改革を進めているが、今年の大会では「おえりゃあせんのう、地方財政!」というメインテーマのもと「地方財政改革」が取り上げられた。
 第一日目は、「地方財政」の全体報告が行われた後、片山善博氏(前・鳥取県知事、慶応大学教授、岡山県出身)が「末期的な自治体財政から真の地方分権を考える」と題して記念講演、片山氏は「地方財政が悪化した責任は第一に議会にある」と指摘し、議会が執行部の承認機関になっているとして、「議会が本来のチェック機能を果たしていない」などと語った。
 講演終了後、オンブズによる道路予算調査の発表が行われた後、監査委員・地方財政・談合・情報公開・初めての市民オンブズマン・議会制度・住民訴訟セミナーの各分科会が開かれた。
 情報公開分科会(警察の情報公開)では、パネルデイスカッションに先だって、今年3月愛媛県警を退職した仙波敏郎氏が「現場警察官からみた日本警察の実態」と題して講演した。
 パネルデイスカッションは、市民オンブズマン等約50人を前に「明るい警察を実現する全国ネットワーク」代表の清水勉弁護士(東京)の司会で「地域住民の情報主体性こそが警察を更正させる」と題して進められた。

 パネリストは、いずれも警察OBの仙波敏郎氏、黒木昭雄氏、原田宏二の3人で、警察の情報公開は、これまでの日本のマスコミが如何に警察の実情を報道していないか、そのために現場の警察官も、警察の不当捜査に巻き込まれた一般の人々も如何に酷い目に遭わされているか、という実情を3人がそれぞれの体験を通じた考えを述べた。
 当フォーラム代表の原田宏二は、翌日30日の衆議院選挙で民主党の優勢が伝えられるとして、民主党に対する「警察改革に関する5つの提言」について説明した。
 司会で「明るい警察を実現する全国ネットワーク」の清水勉代表は、「警察の現実を多くの人に知ってもらうことが、現場の警察官にとって働きやすい職場になり、地域住民にとっても本当に頼りになる警察になるという観点から、警察の現実に関する情報提供をしてゆきたいと思います。」と締めくくり分科会は終わった。
 二日目は、全体報告「監査委員の評価」・各地の報告などが行われ、最後に第16回全国市民オンブズマン岡山大会の大会宣言として「市民のための地方分権を」を採択し終了した。

大会参加雑感(原田宏二)
 これまでも、各地の市民オンブズマン全国大会には何度か参加してきた。
 最初は、平成16年8月の第11回全国オンブズマン函館大会だった。
 この時のテーマは「行財政の密室に光をー警察ウラ金から巨大ダムまで」という幅広いものだったが、当時は北海道警察の裏金問題が発覚し、静岡県警、宮城県警、福岡県警、高知県警等でも警察の裏金疑惑の追及が進んでいたこともあって、参加者は500人以上、マスコミ関係者やテレビカメラが並び場内は熱気にあふれていた。
 分科会(警察裏金問題)には、150人以上が参加、各地のオンブズマンから取り組み状況の報告が行われ、活発な議論が展開された。
 最後に「捜査報償費に対する全国一斉の情報公開請求と統一弁護団の結成。内部告発する警察官やOBの受け皿として全国的なネットワークをオンブズマンにつくり、オンブズマンと良心ある警察官でよい警察をつくろう。」と今後の活動への提起がなされた。
 この提案が、後に「明るい警察を実現する全国ネットワーク」の結成となった。
 それに比べると、今年のテーマは「地方財政改革」だったこともあって、警察の情報公開分科会への参加者は、僅かに50人程度だった。
 警察の裏金問題は、一部で関係の訴訟が継続しているとはいえ、既に峠を越したこと思えば当然のことだともいえる。
 警察問題は、裏金問題に限らず、警察官による不祥事、違法な取調べと冤罪事件等々と様々な問題がある。
 それぞれの問題は、オンブズマン活動とは必ずしも直接的にはマッチしない面もあることも事実だが、そこに共通しているのは権力の腐敗である。
 今回分科会でテーマとして取り上げられた「警察の情報公開」は、オンブズマン活動との接点を考えるとき妥当なものだったが、現状の指摘はよく理解できたが、警察の隠蔽体質を改めさせるための具体的な活動の在り方に触れられなかったのは残念だった。


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21.8.15(土) 連続シンポ CHENGEは北海道から始まった
             「構造改革」の真実は その真相を検証する

 フォーラム時計台フォーラム神保町の共催による"《連続シンポジウム》日本を変えよう〜北海道から始める第一歩〜の第2夜"政治を変えなきゃ生きていけない!"が8月12日 札幌市中央区北4条西1丁目共済ビル8階 共済サロン 芙蓉の間で開かれ、約250人の市民が各パネラーの主張に耳を傾けた。
 当日のパネラーは、魚住昭(作家)、佐藤優(元外交官・文筆家)郷原信郎(弁護士・元検察官)、原田宏二(元北海道警釧路方面本部長)の各氏。

(右から、原田、郷原、佐藤、魚住、山口の各氏)

 パネルディスカッションは、山口二郎(北海道大学大学院教授)の司会で以下の論点で進められた。
○ 西松建設事件等を巡る検察捜査の在り方
○ 警察・検察の裏金疑惑
○ 警察・検察の政治的中立
○ 政治と官僚
○ 冤罪事件は何故起きるのか
○ 刑事司法の何処を変えるべきか
等のテーマについて、各パネラーが意見を述べた。
なお、シンポジウムの詳細は近く動画で登載する。


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21.8.1(土) 民主党に対する「警察改革に関する5つの提言」

 「市民の目フォーラム北海道」は、民主党に対して、以下の「警察改革に関する5つの提言を行った。

                    
平成21年7月31日

民主党政策調査会 御中
市民の目フォーラム北海道
代表 原田 宏二

「市民の目フォーラム北海道」は、警察改革に取り組んでいる市民団体です。
これまでも、平成19年11月16日 民主党政策調査会に対し「警察法の改正」及び「裏金処罰法(仮称)の制定」について要望しました。
また、平成20年10月には、各政党に対して、刑事司法制度の改革、公安委員会制度の改革、「予算の不適正経理等の処罰に関する法律」の制定の3点について各党の政策を照会し、民主党、社民党、共産党の野党各党からの回答を得て、私どものホームページに「警察改革に関するマニフェスト」として登載したところです。
民主党は、7月23日マニフェストの土台になる「民主党政策集」を発表し、27日には民主政権公約(マニフェスト)を発表しました。
政策の柱としては「無駄遣い根絶」、「子育て支援」、「年金・医療改革」、「地域主権推進」、「雇用・経済対策」の「五つの約束」を掲げ、官僚主導から政治主導に転換させる「5原則・5策」を示しました。
発表されたマニフェストでは、警察改革を直接取り上げていませんが、民主党の「無駄遣い根絶」と「地域主権推進」は警察改革と無縁だとは思いませんし、官僚による警察支配からの脱却も必要です。
私どもは国民が安全な生活を送るためには、警察がその本来の目的に沿って民主的に運営されるべきだと考えています。
今後の具体的な政策樹立に当たっては、以下に掲げる「警察改革に関する5つの提言」を参考にされるようお願いいたします。

警察改革に関する5つの提言

1 警察の地方分権化の推進
民主党は、中央集権制度を抜本的に改め、地域主権国家を樹立するとしている。
現行警察法では、都道府県警察を建前としながら、我が国の警察は警察庁を頂点とする中央集権的な国家警察となっている。
警察法のうえでは、都道府県警察本部長等の任免権は国家公安委員会にあるとされるが、警察庁は、事実上都道府県警察本部長のほか都道府県警察の主要幹部ポストにキャリア官僚を独占的に配置し、都道府県警察の警視正以上の主要幹部(地方警務官)の人事も掌握している。
また、警察庁は国の公安にかかる犯罪等の予算を都道府県警察に配分することにより、警察法第5条第2項の権限を越えて、事件・事故の捜査等、都道府県警察の運営に介入している。
警察庁は、国家公安委員会を事実上支配し、都道府県警察を直接指揮監督することにより、都道府県公安委員会の存在を事実上形骸化すると共に、都道府県警察の硬直化と士気の低下を招いている。
警察は、あまねく全国に警察署があり駐在所・交番があり、現場官庁の最たるものである。地域住民の安全を守るためには、その地域の実情に見合った治安維持対策が必要である。
警察庁と都道府県警察の役割分担を再確認するとともに、国家公安委員会(警察庁)の人事権の運用を見直し、都道府県警察の活性化を図るべきである。

2 公安委員会制度の改革
国家公安委員会及び都道府県公安委員会の機能は、有名無実化している。管理するべき警察庁と都道府県警察の事実上の支配下に置かれ形骸化している。そのために、警察の民主的運営が阻害される結果を招いている。
そこで、次の点に関して警察法を改正し、警察に対するシビリアンコントロールを強化する必要がある。
@ 公安委員の選任に関する警察の関与を排除し、公選制あるいは議会の公聴制度の導入などにより、その選任の透明化を図る(警察法第39条関係)。
A 警察から独立した公安委員会事務局を設ける(警察法44条関係)。
B 監察の指示等(警察法第43条の2)、警察職員の法令違反等の報告(警察法第56条第3項)をさらに強化し、警察施設への立入調査権、書類の閲覧権、職員への質問権等、直接調査権を付与する。

3 「警察刷新に関する緊急提言」の検証
平成12年7月12日、警察刷新会議の「警察刷新に関する緊急提言」により、情報公開の積極的な推進、公安委員会の活性化等の警察改革の方向性が示された。
その結果、警察法の一部が改正され、監察の指示等(警察法第43条の2)、警察職員の法令違反等の報告(警察法第56条第3項)、警察職員の職務執行についての苦情の申し出(警察法第79条)等公安委員会の権限が強化された。
しかし、緊急提言以来、既に9年を経過しているが、警察の情報公開に関する姿勢はむしろ後退している感がある。
監察の指示、苦情申出制度も独立した事務局がない現状では、機能しているとは思えない。
民主党のいう「行政刷新会議」(仮称)において「警察刷新に関する緊急提言」の進捗状況を検証し、その結果に基づいた警察改革の新しい方向性を検討する必要がある。
なお、その際、都道府県警察の現場経験者の意見を聞くよう併せて提言する。

4 冤罪事件の根絶のための刑事訴訟法の改正
民主党が、取調べの可視化について、取調べ全過程の録音・録画を義務付ける刑事訴訟法改正案をすでに累次にわたって国会に提出していることは承知している。
裁判員制度が開始される中、冤罪事件の頻発している現状にかんがみ、早急に取調べの全面可視化を実現すると共に、冤罪の温床になっている「代用刑事施設制度」についても、警察の留置場及びその管理を警察の管理から分離するなど、自白偏重の刑事司法の改善に積極的に取り組むべきである。

5 捜査費予算の抜本的見直し
平成16年2月に北海道警察から始まった警察裏金疑惑は、16道府県警察に及び総額約12億4,765万円を国と道府県に返還した。しかし、これは氷山の一角である。
裏金の原資になった捜査費(捜査用報償費)は、緊急あるいは秘密を要するため現金経理が認められている予算である。
しかし、次のような様々な問題が明らかになっている。
民主党は、予算編成の基本方針を決定し、省庁ごとに政治家が予算を編成するとしているが、警察予算についても聖域とすることなく見直しを行う必要がある。
@ 捜査費の予算額は数十億円であるが、その執行額は平成12年度に比べて平成16年度には、67.6%も減少し、約55億円の予算のうち52.5%が不要額となっている。
そもそも捜査費は数十億円もの予算が必要なのか。その積算根拠も、その運用の実態も明確ではない。
 A 警察は協力者保護のためと称して、「偽名」や「架空名」を使って末端受領者の領収書を作成した。
そもそも、捜査費の性質上、受者に領収書の提出を求めることに問題がある。
現場の実態に見合った捜査費の在り方について、抜本的な検討が必要である。
B 警察は、会計検査院の実地検査に対して、捜査費の末端受領者を「捜査上支障がある」との理由で開示していない。
捜査費が、絶対的非開示とされているのは問題である。
税金の使途の透明化と治安維持の要請とのバランスの上に立った会計検査の実施等、捜査費の情報開示を検討する必要がある。

併せて、都道府県警察のみならず、地方自治体などにおいても、裏金問題が相次いで発覚している現状にかんがみ、不正経理防止のため、会計責任者等を処罰する法制度に関しても検討が必要である。

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21.7.30(木) フォーラム神保町のイベント案内
             「北海道縦断/連続シンポジウム〜CHANGEは北海道から始まった」

東京の「フォーラム神保町」という団体が、
 「北海道縦断/連続シンポジウム〜CHANGEは北海道から始まった」
と題して下記日程でイベントを開催します。
 同ホームページhttp://www.forum-j.com/theme-change-hokkaido.htmlでは、広く参加を呼びかけています。
 同ホームページにアクセスしますと、受講申込み様式のフォーム(一般とメディア)が表示されますので、適宜、各人が書き込んで申込み下さい。
 なお案内では、
 受講希望者は、それぞれ、希望する回毎にお申し込み下さい。
 テーマは毎回変わりますので、全講座をお申し込みいただいても、講座毎にお申し込みいただいても、どちらでも結構です。
となっております。

北海道縦断/連続シンポジウム〜CHANGEは北海道から始まった〜第1弾
「『蟹工船』に何を見るか!?」
■講師 魚住昭/佐藤優/宮崎学/東郷和彦
■主催 フォーラム神保町
■会場 グランドパーク小樽5階「樹海」(北海道小樽市築港11-3)8月10日(月)18:30〜20:30

北海道縦断/連続シンポジウム〜CHANGEは北海道から始まった〜第2弾
「『政権交代』というドラマが始まる。主役はあなただ!」
■講師 魚住昭/佐藤優/東郷和彦/平野貞夫/山口二郎
■主催 フォーラム神保町/フォーラム時計台
■会場 共済サロン 芙蓉の間(札幌市中央区北4条西1丁目 共済ビル8階)8月11日(火)18:30〜20:30

北海道縦断/連続シンポジウム〜CHANGEは北海道から始まった〜第3弾
「生きるために、まず、政治を変える!」
■講師 魚住昭/佐藤優/郷原信郎/原田宏二/山口二郎
■主催 フォーラム神保町/フォーラム時計台
■会場 共済サロン 芙蓉の間(札幌市中央区北4条西1丁目 共済ビル8階)8月12日(水)18:30〜20:30

北海道縦断/連続シンポジウム〜CHANGEは北海道から始まった〜第4弾
「従属と密約外交を超える日。官僚から政治を取り戻す日。」
■講師 魚住昭/佐藤優/香山リカ/山口二郎
■主催 フォーラム神保町/フォーラム時計台
■会場 共済サロン 芙蓉の間(札幌市中央区北4条西1丁目 共済ビル8階)8月13日(木)18:30〜20:30

北海道縦断/連続シンポジウム〜CHANGEは北海道から始まった〜第5弾
「小泉・武部時代の終焉」
■講師 魚住昭/佐藤優/宮崎学/香山リカ/平野貞夫
■主催 フォーラム神保町/現代深層研究会
■会場 北見市市民会館小ホール(北海道北見市常盤町2丁目1番10号)8月14日(金)18:30〜20:30


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21.7.24(金) お知らせ

 

平成21年7月17日札幌弁護士会主催で「足利事件の菅家利和さんを励まし、取調過程の全面可視化を求める緊急集会」が札幌市中央区の北海道厚生年金会館で開かれた状況は、先に当ホームページに掲載したところです。

その集会の詳細な状況の動画は、「CEFH動画・音声配信」コーナーにアップロードしましたのでご覧下さい。


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21.6.21(日) 岩手県川井村女性殺人事件
            家族等が日弁連に人権救済申し立て

 宮城県栗原市の佐藤梢さん(当時17歳)が、平成20年7月1日に岩手県川井村の山中で他殺遺体で発見された事件で、岩手県警が約1ヶ月後に被害者の知人だった小原勝幸さんを殺人の疑いで全国に指名手配した。
 しかし、小原さんはほぼ1年を経過した現在も逮捕されていない。
 この事件については、今年5月13日、事件関係者等が岩手県警等に対して、十分な捜査を尽くさないで小原さんを犯人と断定したのはおかしいと再捜査を求めた。

このことについては
21.5.17(日) 
岩手県川井村女性殺人事件

岩手県警等に真相解明の再捜査を求める
で詳しく説明した。

 以下は、岩手県警のホームページに掲載された小原さん逮捕の情報提供を呼びかけるポスターである。
 このポスターは、岩手県内だけではなく、全国の警察署、交番の掲示板や駅、空港等の交通機関をはじめ至るところに掲示されている。

 このポスターには、「17歳(当時)の少女を殺害した犯人です。」と書いてあり、その下に、小原さんの氏名、生年月日、年令、身体特徴が書かれ、平成20年6月撮影とされる上半身の写真が載っている。
 そして、犯人逮捕の情報提供者には、100万円の範囲内で報奨金を支払う旨が明記されている。

 平成21年6月19日、行方不明になっている小原さんの家族等7人が、日本弁護士連合会に岩手県警及び警察庁による人権侵害があるとして人権救済の申立を行った。
 申立理由の要旨は「小原勝幸は殺人事件の被疑者として一度も取調べを受けていない(弁解の機会を一度も与えられていない)にもかかわらず、殺人犯と決め付けられ、無罪推定原則(憲法31条)に明らかに反している。家族は県警の決め付けによって社会的に殺人犯の家族にされてしまっており、名誉が著しく損なわれた」などとするものだ(詳細はPDF「人権救済申立書」を参照)。
 この申立書には、代理人として「明るい警察を実現する全国ネットワーク」代表の清水勉弁護士(東京)等、全国の弁護士16人が名を連ねている。

 この日、日弁連に対する申立に先だって小原さんの父親は、警察庁に対して小原勝幸を殺人の犯人として指名手配した事件を捜査特別報奨金制度の対象にした経緯等に関する文書を開示するよう求めた。
 日弁連へ人権救済申立書を提出した後、記者会見が開かれた。
 この記者会見には、小原さんの父親、地元で小原さんの「共犯」と噂されている男性が出席したほか、清水勉弁護士、増田利昭弁護士(東京)、ジャーナリストの黒木昭雄氏、「市民の目フォーラム北海道」代表原田宏二(元道警釧路方面本部長)が同席した。


(左から、黒木、原田、清水、増田の各氏)
 小原さんの父親は、息子が岩手県警に犯人だと断定され、地域では住民から殺人犯の家族と見られ辛い思いで生活していると訴え、「県警からは総合的に判断して息子が犯人だと思うと説明されたが納得できなかった。息子は恐喝事件の被害にあって被害届を出しているはずだ。その捜査はどうなったのかと聞いたが、未だに曖昧な回答しかもらっていない」さらに「息子が行方不明になったとき、刑事に警察犬を出して捜して欲しいと依頼したが、警察犬を使うのは有料だと言われ断念した」などと警察の捜査を強く批判した。

 警察の犯罪捜査に関する基本原則は、犯罪捜査規範(国家公安委員会規則)にある。
それによると、
(秘密の保持等)
第9条 捜査を行うに当たつては、秘密を厳守し、捜査の遂行に支障を及ぼさないように注意するとともに、被疑者、被害者(犯罪により害を被った者をいう。以下同じ。)その他事件の関係者の名誉を害することのないように注意しなければならない。
(指名手配)
第31条 逮捕状の発せられている被疑者の逮捕を依頼し、逮捕後身柄の引渡しを要求する手配を、指名手配とする。
 この2つの規定は、捜査はあくまでも秘密裏に行うべきことを明示している。
 事実、警察は捜査に関する情報開示請求に対して「捜査上の秘密」を理由に情報開示を拒否する。
 そして、指名手配はあくまでも警察内部の手配であり非公開が原則である。
 これらの点からも、警察が犯人逮捕のために、その氏名等を明らかにして公開手配すること自体、捜査の基本原則に反している。
 近年は、特にこうした原則を無視して、指名手配被疑者を安易に公開手配する傾向がある。
 警察庁は、平成19年4月1日から捜査特別報奨金制度(公的懸賞金制度)を開始した。これは明らかに捜査の基本原則に反しているのではないか。
 推定無罪とは「何人も有罪と宣告されるまでは無罪と推定される」という近代刑事法の基本原則であるとされる。
 犯人とは犯罪者だ。
 警察は犯罪を捜査することはできても、人を犯罪者だと決めることはできない。
 決めるのは裁判所だ。裁判所の判決が確定するまでは無罪と推定される。
 ましてや、裁判員制度が始まった現在、本件のように犯人と断定して懸賞金付きで公開手配することは、裁判員に予断を与える恐れがある。
 警察庁は、裁判員制度のスタートを機にこうした制度を見直し、全国の警察に捜査の基本原則を守るように指示するべきである。

 5月13日にジャーナリスト黒木昭雄氏と事件関係者が、岩手県警等に対して、捜査上重要な事件関係者にほとんど事情聴取をしていないのに、小原さんを犯人と決め付けるのはおかしい、自分たちへの事情聴取をきちんとやってほしい、と真相解明に必要な捜査を尽くすよう連名の情報提供書も提出したが、事件関係者によると、今日までそれについての捜査が行われた様子はないという。
 確かに、事件関係者の説明が事実だとすれば、岩手県警の捜査には多くの疑問がある。特に、小原さんが被害者である恐喝事件の捜査が行われた形跡がないことは問題だ。
 岩手県警はメンツに拘らないで、こうした関係者の疑問に応え、事件の真相を解明に取り組むべきだろう。

 捜査本部事件では、犯人を指名手配すると事実上捜査は打ち切られるのが通例だ。
 県警宮古警察署の捜査本部は、51人体制で小原容疑者の追跡捜査を続けているという。
 小原さんのこれまでの生活ぶりや性格等をよく知る家族等は、1年近く家族に連絡を取らないで生活しているとは考えられないとしている。
 もし、既に小原さんが生きていなかったとしたら、彼は弁解の機会も与えられず、永久に殺人犯の汚名を着ることになる。
 そして、もし、小原さんが犯人でなかったら、真犯人は別にいることになる。
 そうなるとこの事件は永久に解決されることはない。
 真犯人が名乗り出ない限りは。


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21.6.21(日) さっぽろ自由学校「游(ゆう)」講座の紹介
             札幌地裁判決を受けて 道警裏金訴訟を考える

 平成18年5月、北海道警察裏金疑惑発覚当時、道警の総務部長としてこの問題の対応に当たった道警OBが、道警の裏金問題を追及した2册の本の記述が名誉毀損に当たるとして、北海道新聞社と取材班の記者二人、出版社二社を相手取って慰謝料の支払などを求める訴訟を起こした。
 その判決が今年4月20日札幌地裁で言い渡され、判決は北海道新聞等の被告に計72万円の支払が命じた。
 原告と被告双方が判決を不服として控訴した。
 この訴訟は、単に警察OBの個人的な名誉毀損の問題ではない。
 権力機関とメディアの関係、最近のメデイア訴訟の傾向等、国民の知る権利とも密接に関係している。
 さっぽろ自由学校「游(ゆう)」では、権力の裏側シリーズで緊急講座を開くことになった。

 日時:6月30日(火) 18:30〜
 場所:(札幌市中央区南1条西5丁目愛生舘ビル2階)
 講師 「市民の目フォーラム北海道」代表原田宏二ほか

              講 座 内 容
 道警裏金疑惑の真相、警察批判報道と警察の対応、道警記者クラブの動向、暴露された裏交渉、情報源の秘匿の問題、裁判所の警察官陳述の評価等、様々な問題が示された。この裁判を傍聴してきた原田宏二などが、そうした観点から、道警裏金訴訟とは何だったのかを語る。

受講料:一 般    1,500円
     会員・学生 1,000円

【お申込み・お問合せ】
NPO法人さっぽろ自由学校「游(ゆう)」
TEL.011-252-6752  FAX.011-252-6751
     syu@sapporoyu.org


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21.5.22 「仙波さんを支える会 掲示板」

 「仙波さんを支える会 掲示板」ができました。
 URLは、http://6619.teacup.com/semba/bbsです。



 同掲示板では、こう呼びかけています(以下、引用)。
 全国で警察の不正を追及しているみなさんの交流の場として掲示板を設けました。
 みんなで集まって情報を出し合えば、パワーは10倍にも100倍にもなるはずです。
 ぜひ節度をもってご利用ください。
 シンポジウム・集会などのご連絡も歓迎です。
 仙波さんを支える会の連絡も行います。
 警察の方の投稿、匿名の投稿も歓迎します。
 投稿内容には、各自が責任をお持ちください。


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21.5.20(水) 警察小説「笑う警官」の佐々木譲氏と対談
             「オール讀物」(6月号 5月22日発売予定)
 
 警察小説の代表的な作家佐々木譲氏と「市民の目フォーラム北海道」代表の原田宏二が対談した。
 対談は、文藝春秋「オール讀物」の企画で行われ、同誌の6月号(5月22日発売予定)に「特別対談 警官の誇り、現場の闘い」のタイトルで掲載される。
(対談する佐々木譲氏 文芸春秋提供)

 佐々木譲氏は、現在や過去の社会的な問題をエンターティンメントに書き上げる作家としても知られ、道警シリーズとして「うたう警官」(角川春樹事務所 ハルキ文庫『笑う警官』に改題 平成21年、大森南朋・松雪泰子主演で映画化)、「警察庁から来た男」(角川春樹事務所 ハルキ文庫)「警官の紋章」(角川春樹事務所)が有名だ。
 道警シリーズでは、「稲葉事件」や「道警裏金問題」が背景になっており、「笑う警官」には道警裏金疑惑を告発した元道警釧路方面本部長原田宏二が実名で登場している。
 このほかの警察小説としては、制服捜査、暴雪圏、警官の血(平成21年テレビドラマ化)などがある。


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21.5.17(日) 岩手県川井村女性殺人事件
            岩手県警等に真相解明の再捜査を求める


 平成21年5月13日、ジャーナリスト黒木昭雄氏と事件関係者が、岩手県警がAさんを犯人と断定し、公的懸賞金付きで公開手配中の「岩手県川井村地内における女性殺人事件」について、捜査が不十分だとして、真相解明のため再捜査を求める要望書等を岩手県警と岩手県公安委員会に提出した。
 この日は、黒木昭雄氏と事件関係者が岩手県警に赴き、捜査第1課と公安委員会補佐室の担当者に、捜査上重要な事件関係者にほとんど事情聴取をしていないのに、Aさんを犯人と決め付けるのはおかしい、自分たちへの事情聴取をきちんとやってほしい、と真相解明に必要な捜査を尽くすよう連名の情報提供書も提出した。
 なお、同日、同様趣旨の要望書を警察庁、国家公安委員会へも提出した。

 提出後、黒木氏と事件関係者は、盛岡市内で記者会見を開き、再捜査が必要な理由などを説明した。
 記者会見には、「明るい警察を実現する全国ネットワーク」代表清水勉氏(弁護士:東京)と「市民の目フォーラム北海道」の原田代表も同席し、それぞれ、岩手県警の捜査の問題点などを指摘し、原田代表は「裁判員制度の実施を目前にして、Aさんを犯人と断定して、実名、写真入りで公開することは、裁判員に先入観を与える恐れがある。推定無罪の原則から見てもやり過ぎだ」などと警察の公開捜査の在り方を批判した。
(記者会見の模様:左から、清水、原田、黒木の各氏)

 事件は平成20年7月1日、岩手県川井村地内で少女(当時17歳)が遺体で発見されたことで発覚。
 岩手県警宮古警察署捜査本部は、7月29日にAさん(当時28歳)を殺人の疑いで全国の警察に指名手配した。
 さらに、警察庁は10月31日付の官報で事件を「警察庁指定重要指名手配被疑者」に指定し、Aさん逮捕に100万円の懸賞金をかけ公開手配に踏み切った。
 公開手配のポスターには、Aさんの実名、生年月日、写真が掲載され、「17歳の少女を殺害した犯人です」と書かれている。
 ところが、この事件についてジャーナリストの黒木昭雄氏が、被害者や周辺の関係者に取材してみると、殺害の時間、場所、手段、動機、Aさんのアリバイなど、いくつもの疑問が浮かび上がってきた。
 また、Aさんは事件の1ヶ月ほど前に、恐喝の被害にあったとして岩手県警に被害届を出したが、何故か事件発覚前日に被害届の取り下げを求めていた事実も判明した。
 この恐喝事件には、Aさんの元交際相手だった女性も巻き込まれていたが、この女性と殺害された女性とは同姓同名、同級生であった。
 黒木氏は、この恐喝事件と殺人事件が何らかの関係があるのではないかと見ている。
 Aさんは、7月2日、実家から約10キロ離れた鵜ノ巣断崖にいるところを目撃されたあと行方が分からなくなっている。
 この断崖には、Aさんの財布、サンダルなどが見つかっている。
 そして、岩手県警はAさんの行動は自殺偽装だと見ているようだ(平成20年11月14日号、11月21日号 週間朝日)。

 捜査本部事件では、被疑者を指名手配すると手配被疑者の追跡捜査を除いて、事件の捜査は事実上終わる。
 黒木氏の取材や事件関係者の実際に会って聞いてみると、確かにこの事件には不可解な点が多過ぎる。
 事件関係者もAさんが絶対に犯人ではないと主張している訳ではない。
 納得できる捜査をやって欲しいと要望しているのだ。
 岩手県警は、この声を真摯に受け止め必要な捜査を継続するべきである。
 岩手県警では、平成18年7月「一関滝沢地内における強盗殺人事件」事件が未解決で、この事件にも犯人 逮捕の情報提供者に300万円公的懸賞金がかけられている。
 岩手県警が、Aさんの事件も未解決になるとの考えから十分な捜査をあえて避けているとしたら問題だ。

 この事件では、Aさんが指名手配されてから既に9ヶ月が経過しているが、その足取りは全く分かっていない。
 親兄弟、親しかった友人等との音信は全くない。
 関係者は、Aさんのそれまでの行動から長期間にわたって逃亡生活をすることはできないと話している。
 このまま、逮捕されないままに時効を迎える可能性もある。
 そうなると、Aさんは事実上、永久に殺人犯になる。
 親兄弟は殺人犯の親兄弟になる。世間の目は冷たい。現にAさんの兄弟は職を失った。
 平成18年12月5日 札幌市南区常盤でコンビニエンスストア経営者(58歳)が殺害された強盗殺人事件があった。
 札幌南警察の捜査本部は、ある男性(当時60歳)を容疑者とみて捜査中だったが、この男性は平成19年1月20日、札幌市内の量販店の駐車場で車にひかれて死亡した。
 (この男性は、)自ら車の下に潜り込んだ可能性が高いことが道警の調べでわかった。男性が異常な行動に走った背景に、任意の事情聴取から1週間、行動を監視され、男性がそれに気付いたことが関係しているとみられる(平成19年2月4日北海道新聞)。
 捜査本部は、3月19日この男性を強盗殺人容疑で被疑者死亡として書類送致した。
 一部の新聞は、この男性の住所、氏名、年齢をそのまま報道した。
 おそらく、警察の発表をそのまま記事にしたものだろう。
 しかし、この事件は被疑者が死亡しているところから起訴されて裁判が始まることはない。この男性が、真犯人だったのかは永久にヤミの中だ。
 果たして、この事件は解決されたことになるのかと疑問が湧く。
 「何人も有罪と宣告されるまでは無罪と推定される」の無罪推定の原則は、近代刑事法の
基本原則とされる。
 この男性には、自らの疑いに弁解の機会もない、警察も検察も被疑者と判断した証拠も捜査状況も明らかにしない。
 明らかになったのは、その男性を犯人だと決め付け検察庁に送致したという事実だけであって、事件が解決されたわけではない。
 警察の捜査に不手際があったとしたら、極めてその責任は重い。
 警察庁が、平成19年4月1日から始めた公的懸賞金制度で指定した事件は全国で34件だが、この制度で事件が解決されたとの話しは聞かない。
 裁判員制度を目前にして、警察庁も懸賞金付きの指名手配被疑者の公開手配制度を再検討すべきではないか。
 マスコミも、捜査本部の発表だけを鵜呑みにする事件報道を改めるべきだ。


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21.4.10(金)
道警裏金訴訟とは何だったのか 「道警裏金訴訟を考える会」の開催案内


 平成18年5月31日 道警元総務部長佐々木友善氏が、北海道新聞社等を相手取り、名誉を毀損されたなどとして、600万円の慰謝料の支払いなどを請求した訴訟(以下「道警裏金訴訟」)は、これまで札幌地裁において15回にわたり口頭弁論が開かれましたが、2月23日結審し、4月20日には判決が出る運びとなりました。
 「道警裏金訴訟考える」実行委員会(委員長・原田宏二)では、判決を機に下記により、ミニ集会「道警裏金訴訟を考える会〜4・20札幌地裁判決を受けて」を開催することにしました。
 集会では、道警裏金訴訟とは何だったのか、判決の意味、判決が及ぼす報道機関、警察組織への影響などについて、訴訟の当事者を交え、話し合います。
 集会には、被告の元道新裏金問題取材班の高田昌幸、佐藤一両氏のほか、訴訟に補助参加し原告佐々木友善氏を名誉毀損で逆提訴したジャーナリストの大谷昭宏氏、作家の宮崎学氏も参加する予定です。

           記
●日時:2009年4月20日午後2時〜5時
●場所:札幌弁護士会館
  札幌市中央区北1条西10丁目 電話011・251・7730
●入場無料
 なお、会場が手狭なため、満員になり次第入場をお断りすることもあります。ご了承下さい。
●問い合わせ先
 実行委委員会(原田宏二)050−7524−8995
                メールk-harada@mtd.biglobe.ne.jp


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21.4.10(金) 
映画「ポチの告白」の上映決定 シアター「キノ」で4月25日から

 映画「ポチの告白」については、このホームページ「注目のBook&Movie」でも紹介したが、この映画は、昨今多発する日本の警察犯罪や事件の数々の実例をモデルにしたものだ。
 良識ある巡査が警察の犯罪機構に巻き込まれながら悪徳に染まり、やがて自滅するまでを描いた社会派エンターテインメントである。

 原案協力のジャーナリスト寺澤有氏は、「私が取材した事件や体験した出来事を提供した」(同氏の「報道されない警察とマスコミの腐敗」インシデンツ発行)としているが、主人公組織犯罪対策課長タケハチが、裁判所で「言わなくてはならないことがあります」と叫ぶ姿は、組織に都合よく使われ、最後は切り捨てられた道警銃器対策課の稲葉元警部を彷彿させる。
 また、警察発表に群がる記者クラブの記者たち、警察のやらせ捜査を記事することを拒否するデスクなど、警察とマスコミの癒着ぶりを示す幾つかのシーンもある。
 3時間を超える大作だが、あわせて「報道されない警察とマスコミの腐敗」を読むと分かりやすい。

 上映は、4月25日(土)から5月8日(金)まで、札幌市中央区狸小路6丁目3条グランドビル2F「シアターキノ」、上映時間等はシアターキノ(011−231−9355)に問い合わせのこと。


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21.4.10(金) 
講座のお知らせ 4/24さっぽろ自由学校「游」の講座


 さっぽろ自由学校「游」では、「市民の目フォーラム北海道」代表 原田宏二を講師に招き、今年1月13日の「自白偏重の人質司法について考える」に続いて、「警察権力をチエックするのは誰?(警察の民主的運営の保障?形骸化した公安委員会の実態をみる)」と題して、下記の日程で講座を開く。
 平成12年7月の「警察刷新の関する緊急提言」でその形骸化が指摘された公安委員会制度だが、形骸化の要因は何処にあるのか。
 平成15年に発覚した道警の裏金問題で北海道公安委員会はどんな対応をしたのか。
 道民から寄せられる警察官の職務執行に対する苦情にどう対応しているのか。
 講師の原田宏二が、在職中、道警の公安委員会を所管する総務課長として、また、道警の防犯部長、釧路方面本部長として公安委員会会議に出席していた経験を踏まえ、北海道公安委員会の実態を語る。
 なお、4月17日 午後6時30分からは、札幌学院大学法学部教授清水雅彦氏による「警察研究 そこで見えてきたもの」と題する講座が開かれる。

 日時 平成21年4月24日(金) 午後6時30分〜8時30分
 場所 札幌市中央区南1条西5丁目 愛生館ビル2F207
     さっぽろ自由学校「游」
 受講料 一般1,500円 会員・学生1,000円

        講 座 の あ ら ま し  

1 公安委員会制度の目的
2 公安委員とは
3 公安委員会は何をしているか
4 事例にみる苦情処理の実態
5 議事録にみる裏金疑惑への対応
6 警察の隠蔽体質に手を貸す公安委員会
7 あるべき公安委員会制度


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21.4.5(日) 
「現代と私たち」に掲載された「道警裁判にみる道新の腰砕け」
 

 42年間続いた講談社の月刊「現代」は、本年1月号をもって休刊となった。
 この度、「『月刊現代』の休刊とジャーナリズムの未来考える会」が、「現代と私たち」を発刊した。

(「現代と私たち」 200ページ)

 同誌には、月刊「現代」に過去10年に登場したライター等69人がそれぞれの立場から執筆しているほか、「だれが『現代』を殺したのか」(対談佐野真一×高田文彦)、「『総合誌』なんかいらない」(編集長が語る活字メディァの危機)等が掲載されている。
 「69人の『現代』」には、山口二郎北海道大学教授が「メディアの衰弱にどう対処するか」、市民の目フォーラム北海道の原田宏二が「道警裁判にみる 道新の腰砕け」と題して執筆している。

 同誌の注文は、以下のとおり。
 メール: gendai.symposium@gmail.com ファックス:03‐5281‐7611
 必ず、@氏名A住所、郵便番号Bメールアドレスまたは電話番号C冊数を明記のこと。(1冊1000円、送料は別途)

 「『月刊現代』の休刊とジャーナリズムの未来考える会」は、3月30日、東京内幸町ホールで「いまそこにあるジャーナリズムの危機」(司会田原総一朗、パネリスト鎌田慧、魚住昭、佐藤優)と題するシンポジュームも開いている。その内容は別に動画で掲載する予定。

 市民の目フォーラム北海道の原田宏二の「道警裁判にみる道新の腰砕け」には、平成15年11月に発覚した北海道警(以下道警)の裏金問題を巡る北海道新聞(以下道新)らを被告とする裁判の経過、原告道警元総務部長と道新幹部等との裏交渉、裏金問題で果敢に警察の腐敗に切り込んだ道新がなぜ、ここまで卑屈なまでの交渉を続け、屈服しなければならなかったのかなど、報道とは何かと問いかけている。


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21.3.30(月)  
原田代表 三角山放送局に出演
道警裏金問題などを語る

 「市民の目フォーラム北海道」代表原田宏二が、平成21年3月27日(金)札幌市西区にある三角山放送局(FM76.2MHz)の番組:「フライデー・スピーカーズ」(16:00〜19:00)に出演、同局の杉澤洋輝さんと「道警裏金問題その後と活動」について約1時間にわたって語った。

 同代表は、道警に在職中に西警察署長を務めたほか、三角山放送局の近くにある道警機動捜査隊にも勤務したことがあり、当時の思い出話などを交えながら、平成15年11月末に発覚した道警の裏金疑惑を告発した経緯や当時の心境などについて詳しく語った。
 また、「市民の目フォーラム北海道」の代表として、その発足のきっかけ、役割、活動内容についても説明した。
 放送の内容は近く掲載する予定。


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21.3.13(金) 
書籍紹介「報道されない警察とマスコミの腐敗」


 この度、「報道されない警察とマスコミの腐敗〜映画『ポチの告白』が暴いたもの」(インシデンツ A5判、224ページ 1,200円+税)が出版されました。
 この本は、映画「ポチの告白」の原案に協力したジャーナリストの寺澤有氏が、警察、マスコミ、司法の関係者にインタビユーした内容をまとめたものです。

以下、目次。
はじめに 寺澤 有
『ポチの告白』ストーリー&キャスト
告白1  高橋玄(映画監督)
     人間は組織の歯車なんかじゃない。
告白2  原田宏二(元北海道警釧路方面本部長)
     内部告発者は胸を張って生きていかなければならない。
告白3  仙波敏郎(愛媛県警巡査部長)
     なぜ警察官は自ら立ち上がらないのか。
告白4  落合博実(元朝日新聞編集委員)
     権力の広報機関に安住する新聞が生き残れるわけがない。
告白5  山岡俊介(ジャーナリスト)
     フリーランスがいちばん楽しい。
告白6  寺西和史(裁判官)
     日本の裁判を変えるため裁判官になった。
告白7  大内顕(元警視庁職員)
     不正を公表しないで死ぬのはおもしろくない。
告白8  津田哲也(ジャーナリスト)
     拳銃も薬物も警察が蔓延させた。
告白9  黒木昭雄(元警視庁巡査部長)
     警察官もマスコミ記者も自分の生活を守るだけ。
告白10 清水勉(弁護士)
     ひたすら権力を信じ安心する国民性。

 なお、映画「ポチの告白」は、既に東京等、各地で上映されていますが、札幌でも上映される予定です。

 上映映画館は、以下の通りです。
  さっぽろシアター「キノ」
  札幌市中央区南3条西6丁目(狸小路6丁目)南3条グランドビル2F
  http://theaterkino.net/

 上映期間は、4月25日(土)から5月8日(金)までの2週間です。
 上映時間は、毎日夕方の1回ですが、時間の詳細や料金は判明次第お知らせします。


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21.2.24(火) 「メディア・アンビシャス」設立
           
メディアよ、大志を抱け!

 多面的な視点をもち、志あるメディァと、たずさわる人たちを応援しようと「メディア・アンビシャス」の設立の集いが、平成21年2月23日 札幌市中央区南3条西6丁目 シアターキキノで会員約80人が集まって開かれた。
 「市民の目フォーラム北海道」からも会員多数が参加した。
 当日は、「光と影〜光市母子殺害事件 弁護団の300日」が上映され、この映画のプロデユーサー阿武野勝彦氏(東海テレビ)が講演した。
 その後、ゲストパネラー阿武野勝彦氏(東海テレビプロデューサー)、パネラー山口二郎氏(北大大学院教授)、中島岳志氏(北大大学院准教授)によるパネルディスカッションが行われた。

● 設立の趣旨(設立趣意書から)
私たちの思い
 95年のオウム事件以降、マスメディアによる治安権力への監視の停滞、その後の治安の悪化を過剰に煽る事件報道などにより、監視・統制を望み厳罰主義を求める民意が高まり、それを追い風にますます治安権力が暴走し、民意はさらに、右か左か、善か悪か、早く結論がほしいといった単純化を求める思考停止状態が拡がり、メディアリテラシーがほとんどないような状況が生まれています。
 例えば、まもなく始まる裁判員制度は、民意をメディアが煽るような状況で本当に冷静な判断ができるでしょうか。
 新たなメディアファシズムが生まれる可能性がないとはいえません。
 実際に起きていることの事実は一つしかありませんが、それを伝える表現方法は無数にあり、メディアを通じた真実(表現された真実)は、その送り手の数だけ生まれます。
 送り手、受け手、双方の中にそれぞれの考えるべき真実があり、それがメディアリテラシーなのだと思います。
 だからこそ、メディアの視点は一両的ではなく、多面的であること、多様な視点があることが重要であり、そこからこそ、強い権力を監視し、少数でいることを恐れないジャーナリズム、メディア表現が生まれてくるのだと思います。
 私達は、近年ますます強くなっているメディアスクラム(集団的加熱取材)、危機と不安を煽るマスメディア状況の中で、それでもメディアリテラシーの大切さを思い、多面的な視点でとらえようとする番組や報道が決してないわけではないことを知っています。
 少数になることも恐れずに番組を作り、報道している人達が確実にいることも感じています。
 マスメディアを批判することも勿論必要ですが、私達は、メディア状況をよりよく改善していくために、そのような人達を、スタッフを、多面的な視点でとらえた番組や報道や表現を、むしろ、より積極的に応接していこうと考えました。
 クラーク博士の'ボーイズ・ピー・アンビシャス'に倣うわけではありませんが、志を持ち、それぞれの良心に従って伝えていこうとする人達を、私達は、年に数回勝手に表彰して応援しようと思います。
 より良いと感じた番組や報道を応援し、それらが少しずつ増えていくこと、そのことがメディア状況の改善に、少しでも役立つ事を願って、私達の活動を始めたいと思います。
 メディアリテラシーの大切さを思う多くの方々のご参加をお待ちしております。


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21.2.22(日) 自白偏重の人質司法を考える
           
原田代表がおしゃべりサロンで講演

 平成21年2月21日 札幌市中央区の札幌ホールで行われたピース・カフェ主催の「おしゃべりさろん」で「市民の目フォーラム北海道」代表の原田宏二が「裁判員制度を前に自白偏重の人質司法を考える」と題して講演した。


 講演の内容骨子は、以下のとおりである。
◎ 日本警察の現状
○ 警察の責務(警察法2条)
○ 国が支配する都道府県警察
○ 機能しない公安委員会
○ 隠ぺい体質
○ 仮面を被る警察官

◎ 刑事司法の入り口(警察の犯罪捜査)
○ 捜査の原則は任意
○ 警察の留置期間 48時間
○ 代用監獄(留置場)20日間
○ 安易な見込み捜査
○ 密室の取調べ
○ 強制、誘導、長時間取調べ
○ 可視化に反対する警察
○ 警察庁の適正化指針
○ 一部可視化
○ 警察(検察)が可視化に反対する本当の理由

◎ 我が国の刑事裁判の実態(自白偏重 人質裁判)
○ 刑事裁判の基本構造(裁判所・検察官VS被告・弁護人)
○ 有罪率99.9%
○ 一審の自白率90%以上
○ 否認事件無罪率2.9%
○ 官僚化する裁判官(ひらめ裁判官)
○ 調書裁判
○ 長期拘留(人質司法)
○ 否認は保釈認めず
○ 否認は反省していない

◎ 冤罪は他人事ではない
○ 冤罪事件とは
○ 最近の冤罪事件(志布志事件、氷見事件等々)
○ 北海道にもある冤罪事件
○ 隠れた冤罪事件(不起訴事件)
○ 冤罪事件の原因(推定無罪 疑わしきは被告人に有利に)

◎ 裁判員制度で刑事裁判は変わるのか
○ 対象事件2.7%(死刑、無期懲役等)
○ 控訴審は対象外
○ 問題を内包しながらのスタート
○ 自白偏重の刑事司法制度を存続
○ マスコミの過剰報道


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21. 1. 1(木) 講座のお知らせ
            
「自白偏重の人質司法について考える」

 さっぽろ自由学校「游(ゆう)」では、「市民の目フォーラム北海道」代表 原田宏二を講師に招き、昨年12月17日の「冤罪−なぜ起こるのか」〜志布志事件は権力の暴走〜に続いて、その2回目として「自白偏重の人質司法について考える」と題して講座を開きます。
 自白偏重の日本の刑事司法制度。
 刑事司法の入り口である警察の取調べで何が行われているのか、北海道警察等で長く捜査に従事した元道警釧路方面本部長の原田宏二が、その体験の中から、警察捜査の実態を語る。

 日時 平成21年1月13日(火) 午後6時30分〜8時30分
 場所 札幌市中央区南1条西5丁目 愛生館ビル2F207
          さっぽろ自由学校「游(ゆう)」
 受講料 一般1,500円 会員・学生1,000円
 
      
講 座 内 容 の 概 略

冤罪を生む基本構造
◎ 自白偏重の刑事司法 否認は「悪」とする世論
◎ 原則が例外となる犯罪捜査
◎ 形骸化する令状主義
◎ 代用刑事施設(代用監獄)
◎ 長期拘留制度
◎ 調書裁判

いくつかの冤罪事件から そこにある共通点
◎ 氷見事件
◎ 布川事件
◎ 北海道の冤罪事件

警察が可視化に反対する理由
◎ 一部可視化と取調べの内部監視
◎ 犯罪捜査への影響
◎ 検挙実績への影響

最近の警察捜査の動き
◎ 京都府舞鶴女子高生殺人事件
◎ 千葉県東金市女児殺害事件

裁判員制度への懸念
◎ 自白偏重システムは健在
◎ マスコミの過剰報道
◎ その他の問題



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20.12.23(火) 懲戒解雇の理由(セクハラ等)はなかった
            釧路交通安全協会 セクハラ解雇訴訟で認める


 昨年12月15日 北海道警察のOB(元警部)で釧路方面交通安全協会(釧路安協)の講習指導員だった渡部徳夫さん(65歳)が、身に覚えのない事実を理由に懲戒解雇されたのは違法だとして、釧路安協を相手取って、慰謝料等の支払いを求める訴訟を釧路地裁に提起した。
 この訴訟は、原告の渡部さんから相談を受けた「市民の目フォーラム北海道」が支援、代理人を札幌の市川守弘弁護士が担当した。
 その詳細は、
19.12.23(日) 警察OB(元警部)が交通安全協会を訴える
            
警察体質に酷似する交通安全協会
と題して、このホームページの警察関連NEWSのコーナーで紹介した。

 訴訟は、第1回の口頭弁論が平成20何12月18日に開かれ、6回の口頭弁論が開かれた。その間、釧路安協の関係者が出席したのは、1〜2回だけで3回以降は被告釧路安協代理人のみが出席した。第4回口頭弁論で、裁判長から和解の方向で検討するように双方に提案があり、12月18日に釧路地裁で和解が成立した。
 和解条項は、釧路安協が
@ 懲戒解雇の事由は存在しないことを認める。
A 懲戒解雇を撤回し、渡部さんを平成20年3月末の期間満了退職とする。
B 解雇後の賃金などとして計約257万円を支払う。
というものだ。

 釧路安協が渡部さんに示した懲戒解雇の理由は
@  A専務理事の再三の業務指示に従わず講師の資格に欠ける。
A (渡部の)セクハラ発言でC女性職員の病状が悪化し自殺をしかねない。
というものだったが、釧路安協はそうした理由は事実無根だと認めたのだ。原告側の全面勝利の和解だった。
 渡部さんの提訴から早くも1年が経っていた。渡部さんは「早く、解決したかったので、慰謝料は取らなかったが、セクハラなどの事実はなかったことが認められたので和解に応じた」としている。

 組織を相手に個人が名誉回復のため訴訟を起こすことはそう簡単なことではない。費用と時間、そして体力・精神力が必要になる。しかし、解雇されてしまえば経済的にも苦しい。支援してくれる人はそう簡単には見つからない。
 それに対して、被告側の組織は豊富な資金を使って、組織として対抗してくる。原告に勝ち目はないことが多い。それを知って原告の多くは泣き寝入りすることになる。
 渡部さんも、一時は心労から夫婦で体調を崩してしまった。それでも、渡部さんは泣き寝入りをしなかった。自ら行動を起こし、たまたま「市民の目フォーラム北海道」の相談窓口を訪れた。
 渡部氏さんは、北海道公安委員会に調査を申立てたり、帯広労働基準監督署、法務局の人権よう護委員会、北海道紛争調整委員会に救済や調停を求めたが、いずれも、行政としての強制力がなく、埒があかなかったことから訴訟に踏み切ったという。
 また、渡部さんは、自分と同じように苦しんでいる同僚を救いたいとの強い思いもあったという。
 訴訟を提起してからは、渡部さんの人柄を知る道警のOBや知人から多くの激励が寄せられた。そして家族が支援してくれたという。
 しかし、一方では、渡部さんはセクハラ等という事実無根の理由で解雇されたのにかかわらず、インターネットの書き込みサイトで、事実を知らない匿名の無責任な投稿で、「セクハラ親父」とか「いい年をして」などと、面白おかしく取り上げられ誹謗中傷された。渡部さんは、悔しい思いをしたがじっと耐えるしかなかったという。
  
 釧路交通安全協会の問題については、このホームページでも
20.5.28 釧路方面交通安全協会の住民監査請求
        
内部告発で指摘された不正経理疑惑

20.7.11 釧路方面交通安全協会 不正経理疑惑
        
監査請求人が意見陳述 釧路安協は欠席

20.9. 3 釧路方面交通安全協会の住民監査結果
        
道公安委員会に2100万円の賠償請求を勧告

20.10.7 講習指導員は無資格だった
        
釧路安協 これって道交法違反じゃないの?
         心当たりのドライバーは返還請求を!

と4回にわたって取り上げている。
 交通安全協会は、公益法人でありながら道路交通法の運転免許制度等を根拠とした事業を一手に引き受けるいわば交通行政の下請け的独占企業化している。そのうえ、道警幹部OBが役員等のポストを就いていることから、必然的に、上意下達が絶対的であり上に対して物言えぬ職場環境、閉鎖性、隠蔽体質、幹部の無責任体質等々の警察の悪しき体質が持ち込まれている。渡部さんの不当解雇の背景には、こうした問題があるのだ。
 「市民の目フォーラム北海道」では、これまで交通安全協会の抱える様々な問題を指摘したが、なかでも大きな問題は、北海道警察の身内意識による甘い監査等が行われていることだ。
 不祥事が連続して発覚した釧路安協は、今回の和解を真摯に受け止め、内部管理を見直し、人事管理の刷新を図るべきであろう。そして、北海道警察もまた、交通安全協会との馴れ合いを排し、指導監督を厳格に行うべきである。


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20.10.22(水) 「つくられる自白〜志布志の悲劇〜」映画会と鼎談(開催結果)

 10月18日(土)に札幌市教育文化会館で「市民の目フォーラム北海道」の主催による映画会と鼎談(ていだん)が開催され市民約150人が参加した。

 この映画は、鹿児島県志布志(しぶし)市で起きた鹿児島県議選に絡んでのえん罪事件(通称「志布志事件」)のドキュメンタリー映画「つくられる自白−志布志の悲劇−」(日弁連制作)である。
 上映後は、中山信一さん、市川守弘弁護士、「市民の目フォーラム北海道」代表原田宏二らによる公開座談会を開催した。
 途中から中山さんの妻で一緒に逮捕された中山シゲ子さんにも参加して貰った。
 中山さんは、妻と別々に長期拘置された当時を振り返り「刑事に『1回認めたら妻を出してやる』と言われ、妻の体調が心配で1度だけ認めてしまったが、すぐ否認した」などと語ったほか、「買収相手や妻は認めている。認めないと離婚すると言っている」といった虚偽の事実で脅かされたり、暴力団組長と同じ留置室に勾留されて嫌がらせを受けたことなども明らかにした。

 また、「市民の目フォーラム北海道」の原田代表は、次のように語っている。
 今回の鼎談では、中山さんご夫妻に出来るだけ話して頂くようにしました。
 この志布志事件については、12月17日と来年1月13日に、さっぽろ自由学校「遊」で「冤罪〜なぜ起こるのか」と題して話す予定です。誰でも参加出来ますので聞きに来て下さい。
(さっぽろ自由学校「遊」のURLは、http://www.sapporoyu.org/

 鼎談の様子は、本日に動画でアップロードした。

 一方、このイベントに参加した市民から意見が寄せられたので、原文のまま紹介したい。
市民A
 『可視化、可視化』という言葉が出てきたが、何のことかわからなかった。
 でも、内容はとても良かった。
 自分のことのように感じた。
 この事件は13人が逮捕で支援する人が出てきたが、ひっそりと生きていて、交際も少ない人だったらこのようにはならず、きっと、有罪のままだったろうと思うと恐い。

市民B
 大変重大で信じられないようなズサンな事件で、詳しく知ることが出来てとても良かったです。
 一つ気になったのが、任意でない任意同行や代用カンゴクなど、今回の事件を超えて全体の問題である。
 えん罪の温床となるような制度の中で、現場の警察官の本音はどのようなものなのか、元当事者である原田さんは、当時どのように感じて働いておられたのかという点を少しうかがいたかった、と感じました。

市民C
 大変勉強になりました。
 我々としては、最初の原因が知ることが出来れば、なお現実的なものになると思っています。

市民D
 本日の鼎談の内容を文字にまとめられたものが作られたら良いと思う。
 同じくこの様子を映像にまとめたものが出来たら良いと思う。
 「つくられる自白」が、映像として希望する者が入手できたら良いと思う。
 ありがとうございました。


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20.10. 2(木) ブログ開設のお知らせ
 10月1日からスタート、URLは、http://blog.livedoor.jp/cefh/
 内容は、「市民の目フォーラム北海道」のホームページにアップロードした記事をblog版に纏めたものです。
 コメントの書き込みもできます。
 皆さんの参加で、盛り上がるブログに期待しております。


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20. 9.14(日) 映画会と鼎談のご案内

 市民の目フォーラム北海道では、10月18日(土)に札幌市教育文化会館で「つくられる自白〜志布志の悲劇〜」の映画上映と鼎談「鹿児島県議 中山信一さんが語る悪夢の365日」を企画しました。

ご案内1
ご案内2
市民の皆さん、ふるって参加して下さい。


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20.8.25(月) メディアの現在(いま)〜ニュースの深層を読み解くためのレッスン〜

 8月18日、「フォーラムin 札幌時計台」が主催した政治を語る集い「メディアの現在(いま)〜ニュースの深層を読み解くためのレッスン〜」が札幌の「北海道大学百年記念館」であった。
 ゲストは、ジャーナリストの大谷昭宏、同じくジャーナリストの二木啓孝、作家の宮崎学、ノンフィクション作家の魚住昭の4氏、司会は北海道大学教授の山口二郎氏である。


 参加した市民は100人超で、会場は超満員。
 約2時間の集いであったが、メディアの抱える諸問題に鋭く切り込む各講師の解説に、会場は大いに盛り上がった。
 当日は、札幌地裁で道新裁判の口頭弁論が開かれ、補助参加人の大谷昭宏氏、宮崎学氏が札幌地裁から会場に駆けつけ、道新裁判の問題についても語っている。
なお、動画については本日、当ホームページにアップロード済みである。


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20.8.12(火) 短編映画「つくられる自白 志布志の悲劇」の上映会
            講演「権力の暴走を止めるのは誰か」

 平成20年8月8日、鹿児島県志布志市で、「住民の人権を考える会の会」(一木法明会長)と鹿児島県弁護士会の主催で日弁連制作のドキュメタリー短編映画「つくられる自白 志布志の悲劇」の上映会が開かれ、「市民の目フォーラム北海道」の原田宏二代表が「権力の暴走を止めるのは誰か」と題して講演した。
 (講演する原田代表)

 会場には、鹿児島県会議員の中山信一氏をはじめ志布志事件の元被告の人たち、志布志市民等約300人が集まった。
 最初に、日弁連制作のドキュメタリー短編映画「つくられる自白 志布志の悲劇」が上映され、「住民の人権を考える会の会」の一木法明会長が挨拶、続いて、原田代表が約1時間にわたって「志布志事件も警察の裏金疑惑も警察の組織的な犯罪だ。そこには、国民不在の警察の傲慢さがある。真相が解明されない限り真の再発防止策は生まれない。誤りを率直に認めて謝罪できる警察になるべきだ。警察を変えていくためには市民の監視が必要だ」などと講演した。
 公演後、原田代表は「買収会合が行われてとされた懐集落を訪れたが、携帯電話も繋がらないような山奥の静かで小さな集落で悪質な買収事件があったなどとは想像も出来ない。心ならずも被告とされた人たちとも会ったが、いずれも善良な市民であり、どちらかといえば保守的で警察のよき理解者であり協力的な人たちばかりだった。その人たちが、長期間にわたり逮捕勾留され、警察の拷問ともいえる取調べを受けたことを聞き、同じ捜査に携わった者として申し訳なさに心が痛む。まだ、国賠訴訟等も続いており市民の目フォーラム北海道としても協力や支援を惜しまない」と語った。

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20.7.7(月) チャレンジ・ザ・G8サミット 1万人のピースウォーク
            参加者3,000人に1,000人以上の過剰警備?

 7月5日午後、市民団体「ほっかいどうピースネット」等主催の「チャレンジ・ザ・G8サミット1万人のピースウォーク」と銘打った集会とデモが札幌市内中心部で行われた。
 7日から始まった第34回主要国(G8)首脳会議(北海道洞爺湖サミット)を目前にひかえ、北海道警察は5,000人の警察官を動員、全国の都道府県警察から16,000人の警察官の応援を得て、21,000人の警備体制の下で厳重な警戒態勢に入っている。
 既に、主会場のホテルがある洞爺湖町、新千歳空港は厳戒態勢に入っており、会議と各国首脳の宿泊先のホテルへの道路は封鎖された。
 北海道の主要幹線のあちらこちらでは24時間・無差別・一斉検問が行われている。
 札幌市内も赤ランプをつけた全国の都道府県ナンバーの警察の車が行き交い、交差点、札幌駅、地下鉄等には多くの制服警察官が市民に目を光らせている。
 札幌駅等のコインロッカーは閉鎖、ゴミ箱も撤去され、自転車置き場の自転車が凶器に使われるおそれがあるとして、中心部への自転車の乗り入れ自粛も呼びかけられた。
 地下鉄では、制服警察官の警乗も始まった。まるで、戒厳令下のようだ。
 7月5日の集会とデモは、サミットに批判的な国内外の非政府組織(NGO)や市民が参加する大規模なもので、主催者側の発表では8,000人の参加が見込まれていた。
 サミットを間近に控えて、警察による過剰な警備も予想されたことから、「市民の目フォーラム北海道」代表原田宏二が、警察の警備の様子をビデオ撮影した。
 近く、このビデオをホームページに動画登載する予定で現在編集中だ。
 この集会、デモに対する警察の集会・デモの警備が過剰かどうかは、ご覧になった皆さんに判断して頂きたい。

私服警察官の職務質問を受ける
 集会が行われる札幌市中央区大通西8丁目広場に行く前に、札幌市の中心部を流れる豊平川河川敷にある警察車両の駐車場を視察した。
 この河川敷には、自転車道、公園、野球場等があり、普段は市民の憩いの場所である。
 駐車場は、河川敷の南9条橋の近くでざっと数えると約80台の機動隊のバス、ジープ型の指揮官車、乗用車等が駐車していた。
 距離があったため、車のナンバーは確認出来なかったが、他府県警察の応援部隊の車と推定された。
 機動隊と思われる部隊も集結していた。
 その様子をビデオカメラで撮影中に5〜6人の私服警察官に取り囲まれて職務質問を受けることになった。
 そのうちの1人は、警察手帳らしきものをちらっと見せながら「G8で警戒中です。話を聞かせてくれませんか」と話しかけてきた。
 私(原田)が警察車両を撮影していたためだろう。
 「いえ、お断りします」と答えてその場を立ち去ろうとすると3人がその前に立ちふさがった。私は「触らないで下さい」と言いながらその間をすり抜けようとすると背後にいた私服の1人が「お名前をいただけませんか、私も手帳を見せたでしょう」と名前を告げるように何回も要求する。
 そこで私は「道警のOBですが、協力するつもりはありません。法的な根拠は何ですか」と尋ねた。
 私服が「警職法(警察官職務執行法のこと)です」と答えたので、「日本人は身分証明書の携帯は義務づけられていませんし、提示する義務もありません。警察官は要求があれば警察手帳を提示しなければなりません。 私が撮影していたのは公共の場所であり、一般の民家ではありません。私の行動が(警職法)の異常な挙動に当たるのですか」と更に質問した。
 私服は「道警のOBなら協力すべきでしょう」と言うだけで法的な根拠については答えなかったので、その場を立ち去って地下鉄中島公園駅に向かった。
 その後を私服3人が尾行してきたが、駅入り口付近で諦めたのか尾行を止めた。
 一般の市民は、警職法のことなどはほとんど知らない。
 私服警察官に囲まれて威圧されれば、強制だと勘違いし身分証明書を見せざるを得なくなる。この私服警察官も私の身元を確認して、あわよくばビデオテープを取り上げたかったに違いない。
 しかし、逆に質問されて断念したのだろう。

会場周辺の警備体制
 集会の会場は、札幌市の中心部を東西に走る大通公園の西部に位置する西8丁目広場にある。
 集会が行われる広場には、午後1時近くには約3,000人市民が集まってきた。
 団体名やスローガン、旗、プラカード等を持っている人も目につく。
 集まった人たちの中には外国人の姿も多い。
 この日の札幌の気温は30度、日差しも強いのに大きなマスクをつけた参加者もいる。
 顔を隠すためなのか、広場近くには革マルと書かれた宣伝カーも駐車している。
 会場には、腕に腕章を巻いたテレビ局、新聞社の記者等、マスコミ関係者の姿も目につく。
 人が集まるにつれて、会場周辺に警察官の姿が増え始める。
 ブルーのヘルメット、出動服に盾を持った機動隊、白い帯革の交通警察官、紺色の略帽に背中にpoliceと書いた紺色ベストという不思議な出で立ちの私服警察官が、周辺の交差点等に姿を見せ始める。
 この私服警察官は、検挙・採証隊だ。
 カメラやビデオカメラ等を持っている。
 会場近くのビルの屋上にも数人の人、おそらく警察官、の姿がある。
 上から会場を撮影している。上空にはヘリコプターも旋回している。
 会場内には私服警察官らしい姿も見える。
 私服警察官は、服装はまちまちだが、必ずリック等のカバンを持っている、イヤホーンをつけている、メモ帳を持っている、ときおり無線機で交信したり集まって打ち合わせをしている等の特徴がある。
 注意していると直ぐに分かる。
 何よりも、私服警察官は、参加する市民と違い、目が鋭く、表情も硬い。
 会場内に集まった人たちを監視しているのか、行動もほかの一般参加者から浮いている感じがする。
 北海道新聞によると、集まった市民は約3,000人(主催者発表5,000人)、北海道警察は1,000以上の警察官を動員したとしている。
 午後1時から主催者の挨拶があり、市民団体の代表、外国人等が次々と舞台に登場し演説をする。
 トランペットの吹奏など、雰囲気を和らげるための演出も行われた。
 集会は約2時間で終わり、デモに移るが、デモに当たり主催者側から「デモはあくまでも非暴力で行うこと、デモの許可条件は1車線となっているので、これに従って整然と歩いて欲しい」などと参加者に呼びかけが行われた。

デモ行進で逮捕者4人
 デモ参加者のほとんどは、横断幕やプラカード、旗等を持って、シュプレヒコールを上げながら整然と行進したが、デモの中には2つほどのグループが有り、そのうちの1つは出発直後に、道路一杯に広がるなど交通警察官に制止される場面があった。
 これらのグールプは、南1条西3丁目交差点付近、ススキノ交差点付近、南8条西3丁目交差点で機動隊と小競り合いとなる。
 黒旗集団と機動隊がにらみ合う場面があったり、デモ隊が急に走り出すなど、デモ隊の一部が行動をエスカレートさせた。
 これに対しては、待機していたブルーのヘルメット、黒ベスト、すね当てに盾という完全装備の機動隊が規制に当たった。
 そして、その機動隊の直ぐ側には、多くの検挙・採証隊が密着して検挙に備えていた。
 警察部隊の配置や動きを見ると、警察の検挙対象は明らかにこれらの一部の跳ね上がりグループに向けられていた。
 これらのグループの規模に対して警察部隊の数は圧倒的に多く、逮捕現場では多少の混乱はあったものの、警察部隊の規制の中で抵抗らしい抵抗もなく、簡単に公務執行妨害等で4人が逮捕された。
 かつて、昭和30年、40年代の安保闘争で札幌中心部がデモ隊で埋め尽くされ、激しい渦巻きデモに警察部隊は手も足も出なかった警備、投石や鉄パイプで攻撃され多くの警察官が負傷した警備、火炎瓶が飛び交った大学紛争等の警備、そうした経験のある筆者からすると、この2つのグループのデモ等は子供のパフォーマンスにしか見えなかった。

 4人の逮捕について、主催者側は札幌中央警察署長に次のような声明を出した。
 本日開催された「7・5チャレンジ・ザ・G8サミット1万人のピースウォーク」は世界各国からの5千人の参加を得て、平和的に行われました。しかし、そのピースウォークにおいて、機動隊の過剰警備があり、4人の参加者が逮捕拘束されました。私たちは、この逮捕に対して強く抗議し、即時釈放を強く求めます。
 更に、7月6日G8メディアネットワークが、サミット警備と逮捕に関する緊急声明を出した。
 昨日、札幌市内で開催された「チャレンジ・ザ・サミット〜1万人のピースウォーク」において4人が逮捕された。その中には、私たちG8メディアネットワークのメンバーも含まれている。メディア活動中ではなかったとは言え、私たちのメンバーが逮捕されたことは、まことに遺憾である。逮捕時の様子は、G8メディアネットワークの取材班などが多数目撃しているが、どれも、警察による過剰な取締りの結果であり、とても逮捕の要件に値するとは思えない。また、海外の報道関係者も逮捕される事態に至っているが、これも警察が撮影中の取材者を妨害したことが発端と見られる。平和的にデモをする人々や取材する人々を厳しく取り締まる姿勢は、思想・心情の自由や表現・報道の自由を封じる行為であり、表現・報道する立場として断じて許すことはできない。言論・表現の自由は、健全な民主主義社会実現のための最も重要な基盤である。入管の問題を含め、一連の過剰なサミット警備は、日本の民主主義を大きく後退させるものとして、強い懸念を表明する。

 この集会・デモ行進には、背広姿の北海道警察の広報担当者が緑色の腕章を着けて広報対策に動いていた。
 現場に集まったマスコミ対策が主たる任務なのだろう。
 翌日の新聞、テレビは4人の逮捕を伝えたが、いつもの事件報道とは違って、逮捕者全員の氏名や詳しい逮捕事実などはほとんど報道されず、警察の違法逮捕を指摘する報道は無かった。
 北海道警察はデモに絡み、ロイター・ジャパンのカメラマンら男2人を公務執行妨害容疑で、別の男2人を札幌市公安条例違反容疑で、それぞれ現行犯逮捕した。
 調べでは、カメラマンは5日午後4時ごろ、デモの取材中、警備中の警察官の腰をけった疑い。ほかの3人は、車を警察官に接触させたり、北海道公安委員会の許可したデモの条件に違反して列を広げようと扇動したりした疑い。(平成20年7月6日 朝日新聞)

警備・公安警察にとっては起死回生のチャンス
 北海道警察は、近年、サミットに反対する団体などが大規模なデモなどを行い、一部の暴徒化した群衆が悪質な違法行為を敢行している現状にあると分析、主要国首脳などの身辺の安全確保、サミットと関連行事の円滑な進行確保、安全安心な道民生活の確保を目的に国際テログループや極左暴力集団などに関する情報の収集と取締り強化、テロ・ゲリラの未然防止を図ると表明している。
 7月6日には、ブッシュ米大統領をはじめ各国の首脳の来日が始まった。
 北海道警察は、国際テロ等の未然防止を大義名分に厳重な警戒態勢に入っている。
 警戒を強化しているのは警察だけではない。
 入管当局もテロリストの入国を阻止するため、入管法の改正に伴い平成19年11月に導入された外国人個人識別情報認証システム(BICS)を活用し、警察等の関係機関と連携して国際海空港での水際対策を強化している。
 外国人の入国拒否や職務質問をめぐるトラブルも起きている。
 7月5日の英タイムスは、「日本政府が約600億円を費やし、英国の3倍以上の経費をかけている。その半分が警備費用に充てられている」と指摘し(平成20年7月6日 北海道新聞)、経費の面でも過剰だと批判している。
 警察は、国際テログループや極左暴力集団に関する具体的な情報を国民には明らかにしてはいない。
 昨年のドイツ・ハイリゲンダムサミットでは、警察部隊とデモ隊が衝突1,000人以上が逮捕され、警察官400人以上が負傷した、反グローバリズムの高まりの中で、今回も同じことが起きる可能性があると説明する。
 しかし、今のところ、大規模なデモが行われたが暴徒化した群衆などはいない。
目立つのは、街中にあふれる警察官の姿と無差別検問などによる交通渋滞だけである。

何故、警察は異常とも言える警備体制をとったのか。別の見方も可能だ。
 警備・公安警察は、戦前の特高警察の流れをくむ警察の一部門だが、特高警察が終戦とともにGHQの指令により、治安維持法と共に廃止されたように、ときの政治情勢に左右される警察の部門である。
 戦後も日本共産党等の左翼、反日共系の急進的・戦闘的な極左暴力集団、右翼、オウム真理教(現アーレフ)、新興宗教、朝鮮総連、労働運動、反戦運動などを監視し、ときには関連する犯罪を検挙してきた。
 しかし、警備・公安警察が対象にしてきた関係諸団体の活動は、東西冷戦の終焉等によって低迷の一途を辿り、このところ目立った警備事象はほとんど無い。
 長期間にわたって平穏に推移した警備情勢は、警備・公安警察の士気の低下を招き、エリート集団とも言われた警備・公安警察では、考えられないような幹部による不祥事も目立っている。
 警備・公安警察は、目標を失い迷走を始めていた。

 そこへ降って湧いたように起きたのが、平成13年9月に発生した「米国における同時多発テロ事件」である。
警察庁では平成16年4月、警備局に外事情報部を設置するとともに、従前、外事課に置かれていた国際テロ対策室を国際テロリズム対策課に発展的に改組し、外国治安情報機関等との連携を緊密化するなど、「国際テロの未然防止」を警備・公安警察の最重要課題と位置づけた。
 しかし、長期間にわたる平穏な警備情勢と目標の喪失は、必然的に、機動隊の練度の低下をはじめ警備・公安警察官の士気と能力の低下を招く。
 全世界から注目を浴びる北海道洞爺湖サミットの警備は、低迷を続ける警備・公安にとっては起死回生のチャンスである。

 そして、警察にとっては、主要国首脳などの身辺の安全確保し、サミットと関連行事の円滑な進行確保という結果は当たり前のことだ。
 それだけでは十分ではない。それ以外の結果も必要だ。
 つまり、国際テログループや極左暴力集団を検挙するという実績が求められる。
 北海道警察としては、何としても事件を検挙する。
 そんな意気込みがあったに違いない。
 しかし、本格的な国際テログループをおいそれとは検挙出来ない。
 デモの小規模グループの跳ね上がりの検挙なら比較的容易だ。
 そんな思惑があったのではないか。
 逮捕者が4人というのも手頃な数字である。
 事前の広報対策を徹底したので、事後の警備体制に支障が出るような大規模な抗議活動の可能性もほとんど無い。
 そんな読みもあったはずだ。

 もう1つは、今回の警備には、全国警察の機動隊の士気の高揚と訓練の場の提供という意味もあったのではないか。
 過去の全国規模の警備というと、平成12年の九州・沖縄サミットの警備、平成14年のブッシュ米大統領の来日に伴う警備くらいだろう。
 全国の機動隊やその指揮官のほとんどは「荒れる現場」の体験がない、実戦経験が不足している。
 現場の機動隊員とその指揮官の動きを観察しているとその感を強くした。
 採証・検挙隊の警察官も今回の事件処理が初体験の警察官も多かったのではないか。
 逮捕者には申し訳ないが、今回の4人逮捕は手頃な訓練になったはずだ。
 北海道洞爺湖サミットは間もなく終わる。
 果たして、国際テログループや極左暴力集団によるテロ等が起きるのか。
 そして、今回の警備が、警備・公安警察の起死回生に繋がるのだろうか。


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20.6.26(木) つくられる自白〜志布志の悲劇
           
短編ドキュメンタリー映画 完成披露試写会

 「志布志事件」は、平成15年の鹿児島県議選で初当選した中山信一さんの陣営が志布志町で票を買収したとされ、公選法違反で13人もの住民が起訴された事件である。
 この事件を捜査した鹿児島県警志布志警察署の捜査では、任意取調べという名の下に連日12時間以上の長時間の取調べ、「踏み字」の強要などの違法な取調べが行われ虚偽の自白がつくられた。
 平成19年2月、鹿児島地裁は自白の信用性を否定した12人全員(1人は公判中死亡)に無罪判決が言い渡され、現在国家賠償訴訟が闘われている。

 日本弁護士連合会(日弁連)では、この「志布志事件」を中心に、実際に行われた違法な取調べの実態や、警察留置場(代用監獄)での身体拘束を利用した自白の強要などの事実を本人の証言や再現を交えて45分の短編ドキュメンタリー映画(DVD)にまとめた。
 その完成披露試写会が6月23日、東京都千代田区霞ヶ関の弁護士会館で行われた。

 この試写会当日、元被告の1人が死去された。
 この事件では既に元被告の1人、弁護人の弁護士の1人が公判中に亡くなっている。
 無罪判決があったとはいえ、元被告の人たちの人生に取り返しのつかない甚大な損害を与えた。
 元被告の人たちの心の傷は決して癒えることはない。
 この捜査は、犯罪捜査の仮面を被った鹿児島県警の組織的犯罪の疑いさえある。
 しかし、損害を与えた側の刑事責任の追及は、取調べに当たった現場の元警察官1人の刑事責任等が追及されているだけで、この事件に関与した検察官、警察官、特に、事件を指揮した鹿児島県警の幹部の責任は追及されないままに幕が引かれようとしている。



 映画上映後に、「志布志事件」を取材し脚本を書いた毛利甚八氏、監督の池田博穂氏、志布志事件弁護人の野平康博弁護士らをパネリストに日弁連刑事拘禁制度改革実現本部の小池振一郎弁護士をコーディネーターとするシンポジュームが行われた。
(このシンポの様子は、後日このホームページに動画で登載する予定である。)
 「志布志事件」については、このホームページにも何回も登載したが、この映画にも「市民の目フォーラム北海道」の原田宏二が登場、警察の捜査の実態に関してコメントしている。
 この映画を見て、原田宏二は「警察の捜査は何のために行われるのか。それが忘れられている。その背後に警察権力の傲慢さと奢りがある。そして、警察の違法捜査で罪のない多くの人たちの人生を変えてしまった。そのことを考えると警察在職中に犯罪捜査に携わった一人として胸が痛む。志布志事件の悲劇を繰り返してはならない。この映画を一人でも多くの人に見てもらい、警察の犯罪捜査を変えていくきっかけにしないといけない。」と語っている。
 「市民の目フォーラム北海道」では、この映画の上映会を開くことを計画中である。
 なお、日弁連では、この映画を全国で販売する予定だ。
 DVDの注文・問い合わせは「新日本映画 03−3496−4871へ。


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20. 5.18(日) ドキュメント映画「ハダカの城」上映と懇話の場

 5月1日に当ホームページで、5月17日(土)から23日(金)まで、札幌市中央区狸小路6丁目南3条グランドビル2F「シアターキノ」でのドキュメント映画「ハダカの城」の上映案内をしていた。

 上映初日の5月17日(土)午前10時から客席63席の7割ほど埋まった同館で上映に先だって、道警裏金疑惑を告発した原田宏二氏(現「市民の目フォーラム代表」)が、観客を前に自らが受けた嫌がらせの実態や内部告発で不正が発覚した後の権力機関警察と民間企業の著しい格差(倒産、刑事責任の追及)などについて話した。


 また、上映終了後、同館の「キノカフェ」で、原田宏二氏を囲んで映画や告発を題材にした懇談を行った。
 この懇談会には、「ミートホープ社の牛ミンチ偽装事件」を告発した赤羽喜六氏も参加し、自らの体験を詳しく話した。

 参加者は約20人、中にはJRを利用して小樽や室蘭からの参加者もいた。
 道警裏金問題から4年を過ぎた今でも、「偽」に対する市民の強い関心は、消え失せていない。
 「道警裏金問題」、「雪印食品・牛肉偽装詐欺事件」、北海道苫小牧市の「ミートホープ社の牛ミンチ偽装事件」で告発者はどう扱われたのか、メディアの在り方、警察や行政の対応などについて、1時間以上に及ぶ熱心な話し合いが持たれた。


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20. 5.12(月) ミートホープ社の牛ミンチ偽装事件の内部告発者との対談
            
「北方ジャーナル6月号」5月15日発売

 苫小牧のミートホープ社の牛ミンチ偽装事件については、昨年7月にこのホームページで伝えましたが、この事件を追及してきた北海道の月刊誌『北方ジャーナル』が、5月15日発売の6月号で「内部告発は社会を変えられるか」と題した対談を掲載します。対談では、ミートホープ元常務の赤羽喜六氏と「市民の目フォーラム北海道」代表の原田宏二氏が初めて顔を合わせ、社会改革の手段としての内部告発について語り合いました。
(原田宏二氏と対談する赤羽喜六氏)
 元社長の田中稔氏が詐欺と不正競争防止法違反で逮捕・起訴されるに至った"牛ミンチ偽装事件"は、3月19日の判決公判で同氏に懲役4年の実刑判決が言い渡され、氏もこれを受け入れる形で幕を下ろしました。
 しかし、一連の畜肉偽装事件は、同社だけがその責を負うべき不祥事だったのでしょうか。
 元常務の赤羽氏が、内部告発を果たしたのちも監督官庁に当時の対応を質し続けなくてはならかったのは、なぜなのでしょうか。
 一民間企業の暴走の背後には、その暴走を許した構造的な問題が横たわっているように感じられます。
 いかにも、事件はまだ終わっていないのです。 ことは、ミートホープ事件に限った話ではありません。たとえば4年前、元道警釧路本部長の原田氏の証言でその詳細が明るみに出た道警の不正経理問題。
 不祥事の舞台が片や民間企業、片や官公庁という違いこそあれ、両者の背景はよく似ているのではないでしょうか。
 一気に市民の耳目を集めたのち、報道の沈静化とともに「終わった」ことになってしまう側面も――。  対談では、組織ぐるみの不正が抱えるそうした側面と、内部告発という行動が社会にもたらす影響、そして告発によって人生が変わった当事者の思いなどが話題に上りました。
 とりわけ、孤立無援の闘いを余儀なくされた赤羽氏の苦悩が吐露される部分では、事件報道の行間からはなかなか見えて来ない内部告発者の悲哀が浮かび上がり、一人ひとりが不正に直面した際にできることは何なのかを考えさせられます。
 昨年6月の事件発覚からまもなく1年、頻発する食品偽装事件が一時の風のように過ぎ去ろうとしている今こそ、何も「終わっていない」ことを確認する必要があるでしょう。
月刊『北方ジャーナル』6月号は、5月15日から道内の主要書店で発売。定価税込880円。
問い合わせは、編集部(リ・スタジオ)電話011・711・5181、電子メール hj@hoppo-j.com へ。
公式ブログは、こちら→ http://hoppojournal.kitaguni.tv/



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20.5.1(木) 「ハダカの城」 上映のご案内

 5月17日(土)〜23日(金)札幌市中央区狸小路6丁目南3条グランドビル2F「シアターキノ」でドキュメント映画「ハダカの城」が上映されます。


 この映画は、国のBSE(狂牛病)対策による「国産牛肉買い取り制度」を悪用した「雪印食品・牛肉偽装詐欺事件」を内部告発した倉庫会社「西宮冷蔵」社長水谷洋一氏の記録です。
 水谷社長は、平成13年雪印食品の牛肉偽装を告発しました。
 自身も在庫証明書を改竄する等偽装に加担したとして国から営業停止命令を受けます。
 以後取引は激減し平成15年11月に休業に陥ります。
 その後、社長自ら大阪の梅田駅前歩道橋等でカンパを募る等、全国から再開資金を集め平成16年2月営業を再開しました。
 事件を起こした雪印食品は、前年の平成12年に発生した雪印集団食中毒事件による経営不振とのダブルパンチで、経営不振がさらに深刻化し清算(解散)されました。
 事件の主犯格とされる本部長ら5人は詐欺容疑で逮捕されました(その後、平成16年7月に元専務ら2人が無罪判決)。
 映画は、この間の休業から再建までの水谷社長と息子の甲太郎氏の闘いを映像作家柴田誠により追っています。

 北海道では、平成16年2月、元道警釧路方面本部長の原田宏二氏が北海道警察の裏金疑惑を告発しました。
 北海道警察は9億6,000万円を国と道に返還しましたが、幹部の私的流用など肝心な部分は最後まで隠蔽しました。
 北海道警察の上層部は、誰も処罰されることもないまま、裏金疑惑は幕を閉じました。
 また北海道では、このほかに平成19年6月には、苫小牧市の「ミートホープ」による偽装牛ミンチ事件が発覚、これも同社の元常務赤羽喜六氏の内部告発でしたが、同社は倒産し、社長は先ごろ有罪判決を受けました。

 上映初日の5月17日(土)午前10:00〜「ハダカの城」上映前に道警裏金疑惑を告発した原田宏二氏(現「市民の目フォーラム代表」が、内部告発について自らの体験を簡単に話すほか、上映終了後(12:00頃の予定)キノカフェで、原田宏二氏を囲んで映画や告発を題材にして懇談します。
 参加費は、映画の入場料(当日/一般1,800円/学生1,400円/シニア・高校生以下1,000円)とキノカフェでのお茶代のみです。
 なお、「ハダカの城」を見ないでの懇談参加はご遠慮ください。


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20.4.16(水) 日本弁護士連合会主催のシンポ
           
「国連拷問禁止委員会勧告実現のために、今何をすべきか」

 4月11日 午後6時から東京都千代田区霞ヶ関の弁護士会館で日本弁護士連合会主催のシンポジューム「国連拷問禁止委員会勧告実現のために、今何をすべきか」が開かれ、「市民の目フォーラム北海道」の原田宏二代表が参加した。


 最初に、国連拷問禁止委員会日本政府報告書審査主査 フェルナンド・マリーニョ・メネンデス氏が、自白及び取調べ、代用監獄、死刑禁止などの問題について、委員会が勧告によって日本政府に何を求めたのかなどについて基調講演があり、続いてパネルディスカッションが行われた。
 パネリストは今井直氏(宇都宮大学国際学部教授)、海渡雄一氏(日弁連拷問禁止条約に関する協議会事務局長)、コーディネーターは海渡雄一氏が務めた。
 その後、小池振一郎弁護士(東京第二弁護士会)等が代表質問を行った。
 原田代表も司会者から警察OBとして発言を求められ「日弁連や国会も警察の現場の実態を知るべきだ」とコメントした。
 原田代表は、マリーニョ・メネンデス氏の講演を聞いて、「日本政府が、未だに国際機関の勧告を無視していることを知って驚いた。そして、このことについて多くの国民が無関心なのも問題だ。
 『市民の目フォーラム北海道』も当面の活動重点として、この問題に取り組んで行く必要がある」と語った。

 拷問禁止条約は、正式には「拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約」という。
 同条約は、昭和59年に国連総会で採択され、昭和62年に発効した。
 日本政府は、平成11年6月に同条約を批准した。
 批准・発効後1年以内に提出を義務づけられているのもかかわらず、日本政府が条約の実施状況に関する日本政府報告書を提出したのは、平成17年12月であった。

 国連拷問禁止委員会(以下、委員会という)は、条約の批准国の実効的実施状況を監視するために、同条約に基づき設置された国際機関であり、日本国政府は同条約の批准国として、委員会から勧告された点について改善に向けて努力する義務を負う。
 日本政府の報告を受けて委員会は、平成19年5月21日 日本政府に対して次のような勧告をしている。
 その主要な部分を要約して紹介する。
@ 代用監獄の廃止
 代用監獄(勧告では「DAIYO−KANGOKU」と日本語が使われている)が、広くかつ組織的に利用されていることが懸念される。
 未決拘禁が国際的な最低基準に合致するものになるよう、速やかに効果的な措置を取るべきである。とりわけ、未決拘禁期間中の警察の留置場の使用を制限するべく、刑事被収容者処遇法を改正すべきである。
A 全取調べの可視化
 無罪判決に対し有罪判決の数が極端に多く、刑事裁判における自白に基づいた有罪の数の多さ、条約に適合しない取調べの結果なされた任意性のない自白が裁判所において許容されていることが懸念される。
 被拘禁者の取調べが、全取調べの電子的記録及びビデオ録画、取調べ中の弁護人へのアクセス及び弁護人の取調べの立会いといった方法により、体系的に監視され、かつ、記録は刑事裁判において利用可能となることを確実にすべきである。

 委員会は、このほかに死刑制度、入国管理及び難民認定制度などの改善を勧告している。
 そして、この勧告を受けて日本政府がどのように対応したかを、1年後に報告を求めている。

 「代用監獄」とは、平成18年6月に成立した「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律(受刑者処遇法改正法)」で逮捕・勾留者を刑事施設(拘置所)に収容することに代えて警察の留置施設に収容することができるとされている「代用刑事施設」のことを指している。
 これによって、旧監獄法が廃止されるとともに、未決拘禁者の処遇等に関する規定は、刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律に統合され、平成19年6月1日の施行日から法律名も「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」(以下、「刑事被収容者処遇法」という)となったが、悪名高い「代用監獄」も「代用刑事施設」と名称を変えただけで存続されることになった。
 このことについては、当ホームページで19.12.2(日)取調室に「のぞき窓」?警察庁が可視化に反対する本当の理由で詳しく述べている。

 我が国の刑事司法は、「自白は証拠の王」とする考え方が根強い。
 これを支えているのが、刑事訴訟法の長期勾留制度代用刑事施設(留置場)である。
 刑事司法の入り口部分を担当する警察は、自白獲得のためにこの2つの制度を当然のことのように利用している。
 その結果が、鹿児島の志布志事件等に見られる多くの冤罪・無罪事件だ。

 日本政府は、平成5年には、国際人権(自由権)規約委員会から「代用監獄制度が警察と個別の官庁の管理下にないこと」が指摘され、平成10年には「代用監獄が捜査を担当しない警察の部局の管理下にあるものの、分離された当局の管理下にない」と指摘されている。
 このように代用監獄の廃止は、既に15年も前から国際的に指摘されている問題である。
 このシンポで配付された資料には、「自白強要や非人道的処遇を許す、わが国の人権状況につきつけられたもの」とある。
 国際社会も驚く「DAIYO−KANGOKU」が、先進国といわれている我が国にいまだに存在すること自体、恥だと思わなければならない。
 刑事司法後進国日本、日本政府も北朝鮮など他国の人権問題で偉そうなことを言える立場にはないことは間違いない。
 かつては、日本警察は"世界に冠たる"などと言われたこともあったようだが、人権無視の代用監獄と自白偏重の捜査によって治安が維持されているとしたら、国民が期待している警察の在り方とはほど遠いことになる。
 鹿児島の志布志事件をはじめ、全国各地で警察の違法捜査による冤罪・無罪事件が明らかになっている昨今、現場の警察官も警察の捜査が国際的にもこうした評価を受けていることを知るべきであろう。


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20.4.5(土) 「市民の目フォーラム北海道」の総会を開催

 4月4日(金)、札幌で「市民の目フォーラム北海道」の総会が行われた。
 総会においては、まず原田宏二代表から以下の5項目の活動状況報告が行われた。
@ 会員や読者会員の拡大状況
A ホームページ、会報の発出状況
・全国唯一のHPであり、全国的視野で警察の実態を知らせる活動を行ってきた。
・リニュアールの結果、アクセス数が順調に伸びている。
・記事は、CEFHの活動が25本、警察関連NEWSが64本であった。
・くにおの警察日記が終了したので、別途警察OBによる連載記事を準備中である。
・記事に変化を持たせるため、動画NEWSを導入した。
・警察は、「裏金問題」から「可視化問題」へ変わらざるを得ない状況にある。
B相談BOXの状況
 全国から寄せられた相談等、多種多様である。
 事後対応として訴訟、公安委員会への苦情申し立てなどを行っている。
 警察内部からの相談、情報提供等も多い。
C情報開示請求、議会質問等
 変わらい閉鎖性があり、肝心の点は非開示である。
 政府への質問主意書では、誤りを認めない警察庁の姿勢が顕著である。
Dその他(訴訟支援、講演等)
・道新裁判(9回)
・元埼玉県警警察学校長の業務上横領告発事件の支援
・釧路方面交通安全協会訴訟の支援
・鹿児島県志布志事件弁護団との交流会参加
・東京で「警察・検察の横暴を許さない連帯運動」(連帯運動)での講演
・問題事案の実態調査の実施(函館駅のけん銃事件、冤罪少年事件)

 そのほか事務局から、@会員投稿方法の見直し ACEFHの支援活動 B会計報告が行われた。
 その後、意見交換として
@本年中のイベント案 A読者会員の拡大、投稿、裁判の傍聴
Bホームページの記事を書籍として出版 などについて意見交換が行われた。
 中でも「可視化問題」に関しては、会員相互に活発な意見が出され、時間を大幅にオーバーするなど、会員の間でも、この可視化問題への関心の高いことをうかがわせた。


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20.3.9(日) 原田宏二代表が「適正化指針では何も変わらない」と講演
          続く無罪判決、今度は福岡県警の殺人・放火事件捜査でも

 「市民の目フォーラム北海道」の原田宏二代表が、「警察・検察の横暴を許さない連帯運動」(連帯運動)の依頼で、3月6日 東京都千代田区一ツ橋の日本教育会館で「警察庁の適正化指針では何も変わらない」と題して講演を行った。

 今年1月24日 警察庁が「取調べ適正化指針」なるものを発表し、捜査現場の取調べに対する監督を強化するため、全国の警察本部に取調べ状況を監督する部署を設けることを柱に取調べ時間の管理の厳格化等の指針を打ち出した。
 しかし、この適正化指針は、鹿児島県の志布志事件や富山県の氷見事件をきっかけに湧き起こった警察の取調べに対する国民の批判をかわし、日弁連等が主張する取調べの可視化を阻止しようとする意図で警察庁が苦し紛れに打ち出した施策であり、多くのまやかしと問題点が含まれている。
 この講演は、そうした「適正化指針」のまやかしと問題点を明らかにするため連帯運動の主催で企画されたものである。
 (講演する原田宏二代表)


 このホームページには、これまでも志布志事件等の冤罪・無罪事件に関して登載したほか、この講演の内容も詳しく登載しているので参照されたい。
19.10. 1(月) 志布志事件捜査は警察の組織犯罪(その1)買収会合は虚構
19.10. 8(火) 志布志事件捜査は警察の組織犯罪(その2)元警部補だけの犯罪か
19.10.15(月) 志布志事件は警察の組織犯罪(その3)幹部は何故告発されないか
19.10.29(月) 富山の冤罪(永見事件)無罪確定 警察・検察捜査を追認する裁判所
19.12. 2(日) 取調室に「のぞき窓」? 警察庁が可視化に反対する本当の理由
20. 2.23(土) 可視化に反対する警察庁「取調べ適正化指針」で冤罪・無罪事件はなくなるか?(その1)
20. 2.29(金)
可視化に反対する警察庁「取調べ適正化指針」で冤罪・無罪事件はなくなるか?(その2)

 なお、事務局では講演の様子を動画で登載する予定で準備中である。

 この講演の前日、福岡地裁で平成16年3月に北九州市八幡西区で起きた殺人・放火事件で女性の被告(60歳)に無罪判決が言い渡された。
 この事件では、福岡県警が同年5月にこの女性を窃盗容疑で逮捕、7月には威力業務妨害で再逮捕し、そして10月に女性を拘置中の留置場内で同房だった女性に犯行を告白したとして、福岡県警はそれを根拠に殺人、さらに放火で逮捕した。
 被告の女性は告白自体を否定し、一貫して無罪を主張し、30回に及ぶ裁判では同房者の証言の信用性などが争点になっていた。
 判決では、「犯行告白」について「任意性に疑問がある」として証拠能力を認めず「捜査の手法として相当性を欠く」と判断、殺人と放火については無罪とし、ほかの2罪については懲役1年6ヶ月執行猶予3年を言い渡した。

 鹿児島県の志布志事件や富山県氷見事件では、警察の不当な取調べで被疑者を強引に自白に追い込んだことが明らかになったが、この事件では、凶器などの物証もなく、被疑者が終始犯行を否認したことから、警察・検察は留置場の同房者に被告が語ったとされる「犯行告白」を唯一の根拠に事件を立件・起訴した。
 この事件で福岡県警は、見込み捜査の典型であり冤罪のもとになるとして指摘されている別件逮捕を繰り返し、福岡地裁の判決でも「定員2人の房に(被告人と女性)を意図的に長期(約80日)間にわたって収容した。代用監獄による身柄拘束を捜査に利用した。」と代用監獄(代用刑事施設)を捜査に利用したと明確に指摘している。
 警察の不当な取調べによる無罪事件は、こうした世間の耳目を騒がせた事件だけではない。
 平成19年12月3日には、交際していた女性の携帯電話を盗んだとして、窃盗の疑いで道警の函館中央警察署に逮捕された少年(19歳)が、家庭裁判所の審判で刑事処分の無罪に当たる「非行事実なし」の不処分の決定を受けた。
 家庭裁判所の裁判官は「女性の供述には不自然な点が多い」と断じたが、少年は、捜査段階では事実を認めたものの、家庭裁判所の調査段階で否認し審判でも否認した。
 少年は捜査段階で自白したことについて、「警察官からお前の話は通らない。証拠は固まっていると強く責められ自白した」と述べている。
 この事件では、警察が被害にあったとする女性の申立てを鵜呑みにし十分な裏付け捜査を怠り、無理な取調べにより少年を自供に追い込んだものと認められる。

 今年2月28日には、宇都宮市で起きた2件の強盗事件で誤認逮捕され、無罪判決を受けた男性(56歳)が、違法な逮捕と捜査で精神的苦痛を受けたとして国と県を相手取り慰謝料500万円を求めた国家賠償訴訟で、宇都宮地裁は「警察官は男性を誘導し、虚偽の自白調書を作成した」として国と県に計100万円の支払いを命じている。
 男性に知的障害があり、判決では「障害は容易に認識できたのに、裏付け捜査を十分にせず、供述の信用性を確かめる当然の職責を怠った」と指摘し、誘導して供述調書を作り、手を持って無理やり地図を書かせるなどの違法捜査が行われたとした(平成20年2月28日 読売新聞から)。

 今回の講演で原田宏二代表は、警察捜査では未だに「逮捕すれば何とかなる」との安易な逮捕権の運用が横行していると指摘したほか、福岡県警の捜査について警察庁による捜査と留置人の処遇の分離施策は、全くのまやかしであることを改めて浮き彫りになった、と指摘した。
 そのうえで、警察庁による「取調べの適正化指針」なるもので示された警察内部の取調べの監督では、取調べの適正化などは全く期待できない、早急に「代用刑事施設」制度を廃止し、取調べの可視化を実現すべきであると指摘した。


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20.3.5(水) 広がる市民の目 裁判傍聴記

 2月25日から27日まで、「市民の目フォーラム北海道」にとって注目すべき3つの裁判が開かれた。
 @とBの事件は「市民の目フォーラム北海道」が支援している事件であり、Aの事件は釧路の今瞭美弁護士等と札幌の市川守弘弁護士が連携して取組んでいる事件である。
 ここ数年、警察や官公庁の裏金が次々と明るみに出ている。
 地域住民の命を預かっているはずの独立行政法人国立帯広病院でも裏金づくりが発覚した。そして市民の代表であるはずの議員が、お手盛りの政務調査費を無制限に使いまくる。
 こうした税金の使い方をチエックすべき会計検査院、監査委員、公安委員会、そして国会や地方議会もほとんど機能しない。
 税金の不正使用を刑事告発しても、警察や検察が積極的に捜査に乗り出すこともない。
 こうした組織や権力の前に諦めて泣き寝入りしていた人や政治に無関心であった人々が、立ち上がって声を上げて主張しはじめた。
 権力等の不正に厳しい目を向ける市民の輪が、広がっているのを感じる。
 しかし、組織や権力の壁は厚く高い。
 それを突き崩すためには、長い時間と血のにじむような努力が必要とされる。
 そうして、何よりも大切なのは、市民の一人ひとりがこうした問題を自分のこととして関心を持ち、行動することだ。
 この3つの裁判は、いずれも札幌の市川守弘弁護士が代理人を務める裁判である。
 「市民の目フォーラム北海道」代表の原田宏二も傍聴した。

@社団法人釧路方面交通安全協会慰謝料等請求事件

 平成19年12月15日、北海道警察のOB(元警部)で釧路方面交通安全協会の講習指導員だった渡部徳夫氏(64歳)が、身に覚えのない事実を理由に懲戒解雇したのは違法だとして、社団法人釧路方面交通安全協会(代表者理事 山崎幹雄)を相手取って、慰謝料等の支払いを求める訴訟を釧路地裁に提起した。
 この事件については、このホームページ(19.12.23(日) 警察OB(元警部)が交通安全協会を訴える 警察の体質に酷似する交通安全協会)で詳しく述べた。
 その第1回口頭弁論が、2月25日午後2時5分から釧路地裁民事部で開かれた。
 原告席には、原告の渡部徳夫氏、代理人の市川弁護士が、被告席には被告代理人の伊藤孝博弁護士外1名が着席。
 被告側の社団法人釧路方面交通安全協会専務理事西村博氏ほか2名の職員は傍聴席に着席。記者席では、報道関係者6人も取材、この問題の関心の高さを窺わせた。
 最初に、訴状と被告側の答弁書の陳述手続きが行われた。
 被告側は、原告の請求を棄却するように求め、原告を懲戒解雇したことは認めたが、原告の「懲戒事由は不存在」とする主張に対しては「事実に反する主張だ」として否認した。
 裁判長から被告代理人に対して、解雇事由を法的観点から精査して明らかにするように指示があり、市川弁護士も解雇事由を聞きたいと主張した。
 次回は、3月26日午後2時から

A釧路市政務調査費返還代位請求事件

 平成19年12月に釧路市民の有田誠氏らの住民監査請求に対して、釧路市監査委員は平成18年度に市議会各会派に支給された政務調査費のうち76万9,101円を市に返還するように勧告していた。
 有田氏らはこれでは不十分だとして、平成20年1月22日 釧路市議会の共産党などを除く市議会6会派に計721万円を返還させるよう伊東良孝釧路市長に求める行政訴訟を起こしていたが、その第1回口頭弁論が、2月26日午後1時30分から釧路地裁1号法廷で開かれた。
 なお、6会派のうち4会派は、昨年12月監査委員から返還を勧告され、その分は返還している。
 この訴訟では、地元釧路市の今瞭美、今重一、小西憲臣弁護士のほか札幌市の市川守弘弁護士が原告代理人に名を連ねている。
 当日の法廷には、原告席には原告の有田誠氏、原告代理人の市川弁護士ほか3人、被告席には、原告代理人の伊藤孝博弁護士ほか1人が着席。
 傍聴席は、報道記者を含めて満席となり、釧路市民の政務調査費問題への関心の高さが窺われた。
 冒頭、原告の有田誠氏が意見陳述をおこなった。その要旨は次のとおりだ。
 「政務調査費は市民の血税から支出されているものです。最近の報道によると議会改革等検討委員会の座長が『明らかに犯罪だ』と厳しく批判しているように、旅費規定を含めて公的なお金の使い道を厳格にチエックすべき議員が、水増し請求を自ら甘い感覚で処理していることは、不適切を超えて不正行為と言わざるをえません。
 私たちの調査で分かったことですが、18年度中に8会派のうち3会派が沖縄へ旅行しています。沖縄の視察が釧路市の市政とどのような関連を持つのかまったく理解しかねます。
 釧路市の困難な財政状況が指摘されるなか、補助金のカット、町内会の街灯電気料、会館利用料の削減、職員給与の減額などが行われています。このような財政難のなかで政務調査費が杜撰に使われているのは、見過ごすことはできません。監査請求と住民訴訟を起こしたのは、市民の誰もが理解と納得のできる透明で適切な使途を求めたものです。」

 続いて、原告代理人の市川守弘弁護士が意見陳述を行った。その要旨は次のとおりだ。
 「ここ10年ばかり、全国で地方自治体議会議員の政務調査費の使い方が問題になっています。議員としての諸活動のためには議員歳費が認められ、本来この歳費で議員としての全ての活動が賄われるべきである。政務調査費は、極めて稀な特殊な調査に要した費用に支出されるべきであり、あいまいな支出を認めると結局は、お手盛り歳費となり小遣いとなってしまいます。
 全国の市民団体は、政務調査費の杜撰な使い方にメスをいれてきました。昨年12月19日の仙台高裁判決は、政務調査費の支出は、@透明性、A明確性、B適合性がなければならないとしました。適合性では、調査目的と市政の関連性、調査方法、内容の具体的説明、調査活動と支出の相当性、等々の審査が必要としました。透明性では、昨年3月22日の名古屋地裁が収支報告書に領収書の添付が義務づけられていなくても、そのことが政務調査費の適正な支出、透明性の担保を失わせるものではないとしています。
 では釧路の場合はどうなのか。業者に頼んで虚偽内容の領収書を作らせるなど論外であります。一体、釧路の市政にとって沖縄の調査がどのように必要不可欠であったのか。明らかにずさんな観光旅行であります。政務調査費が第二の歳費になった典型例であります。
 裁判所におかれては、釧路の政務調査費のこのような問題に法の光をあて、不況に苦しむ釧路市民の願いと怒りに答えていただきたい」

 この日の弁論で、被告側は請求の棄却を求めたが、事実関係の認否は「各会派の主張を確認してから判断する」として保留した。
 次回は、4月17日午後1時30分から

「政務調査費を考える市民の会」の発足
 第1回口頭弁論が開かれた前日の25日、釧路市内で「市民のつどい」が開かれた。
 会場には原告や市民約70人が集まった。
 最初に、今瞭美弁護士から訴訟提起に至るまでの経過が説明され、続いて札幌から駆けつけた市川守弘弁護士が、政務調査費問題をめぐる情勢について講演した。
(講演する市川弁護士)
 その後、原告の有田誠さんから「市民の会」発足について提案があり満場一致で賛同された。同会は「政務調査費の透明で的確使途を求め、その情報が速やかに市民に速やかに公開されることを求めて活動する」ことになった。
 最後に質疑応答に移り、参加の市民からは活発な意見が出され盛会のうちに終了した。

全国で問題となっている政務調査費問題
 全国市民オンブズマン連絡会議の調査(平成20年2月現在)によると、政務調査費に関して住民監査請求で返還勧告が出た事例は、平成15年以降、全国で27自治体、政務調査費に関する住民訴訟で返還を命じた勝訴判決事例は15件に及んでいる。
 北海道では、道議会の政務調査費収支報告書で、平成18年度は議員108人のうち半数近い49人分に、支出内容を示す領収書が一枚も添付されていないことが明らかになった。
 札幌の市民団体「市民フォーラム北海道」が、道議会議員の期末手当、政務調査費、交通費・宿泊代の費用弁償を削減するように求める要望書を提出している。
 平成18年9月には、最高裁が札幌市議会自民党議員会の平成13年度政務調査費の返還を求めていた住民訴訟で、自民党市議会側の上告を棄却し、1,542万円の返還が確定した。
 平成15年1月には、函館市監査委員が平成13年度政務調査費67,920円を返還するよう勧告、平成19年2月に札幌高裁は函館市議会の平成13年度の政務調査費の一部に違法な支出があったとして、約116万円を返還請求するよう命じた。
 平成19年11月には、旭川市監査委員が旭川市議各会派に支給された平成18年度政務調査費 の旅費と自宅通信費合計約828万円の返還を求めて行った住民監査請求に対して、自家用車のガソリン代など約300万円の返還を勧告した。

B国立帯広病院損害賠償請求控訴事件
 埼玉県越谷市在住の心臓血管外科の専門医であるT・H氏が、平成17年4月6日、独立行政法人国立病院機構(代表者 理事長・矢崎義雄)と元勤務先である同帯広病院(病院長 草島勝之)を被告として、平成15年4月から同16年12月までの未払いの残業手当8,747,797円の支払いを求める訴訟(未払い残業代請求事件)と被告の2重旅費取得と赴任旅費の未払いによって損害をうけたとして521,046円の支払いを求める訴訟(損害賠償請求事件)を起こした。
 このうち、損害賠償請求事件についての判決が、平成19年2月23日 札幌地裁で言い渡された。
 判決は、T・H氏の訴えを全面的に認めたもので、「旅費運用資金」を間接的な表現で裏金と認定した。
 その判決文の中で札幌地裁は、原告の札幌から帯広への赴任旅費は、国からは支出され病院側が受領したが、原告には支払われていないと認定している。

 この事件の経緯については、このホームページの公安委員会のコーナーで4回にわたって登載しているので参照されたい。
第5回 苦情の処理の実態(その1 T・H氏の抗議書)
第6回 苦情処理の実態(その2 的はずれの回答とまやかし)
第7回 苦情処理の実態(その3 帯広警察署が捜査しなかった本当の理由)
第9回 やっぱりあった国立帯広病院の裏金 会計検査院「平成18年度決算検査報告書」から

 札幌地裁判決に対して、被告側は判決を不服として控訴、その控訴審の証人尋問が2月27日午前10時30分から札幌高裁で行われた。
 当日の法廷には、控訴人側席(独立行政法人国立病院機構)には、代理人の藤田美津夫外1名の弁護士、被控訴人側席(T・H氏)には、T・H氏本人と代理人の市川守弘弁護士が着席した。
 この日は、主として赴任旅費の支払いをめぐって控訴人側の証人2人、被控訴人側の証人2人が証人台に立った。

 原判決では、T・H氏の平成14年9月30日の午後5時過ぎころには、心不全の患者の緊急手術のスタッフとして手術室に入室していたため、医局にはいなかったとの供述は、その際の患者の症状や重篤さ、手術開始予定時間等の手術のスケジュールに照らして合理的で、疑いを挟むべき点は見出せないと認定、病院事務担当者H(庶務課庶務班長)がT・H氏に赴任旅費を手渡したとする供述は、不自然で信用できず、赴任旅費を支払った事実はないとした。
 この日の裁判では、この点をめぐる4人の証言が行われたが、その要旨は次のとおりである。

@被控訴人(T・H氏)側証人、当時の帯広病院でT・H氏の上司で医師のS氏の証言
 当日の手術にスタッフとして参加、この手術は人工心肺を使っての手術であり、患者の容態は不安定で重篤な状態であった。
 執刀医のK医師(当時の副院長)の陳述は、虚偽で事実を曲げようとしている。
(T・H氏は、重篤な患者の手術のため、赴任旅費を受け取れる状況にはなかったとする趣旨)

A控訴人(独立行政法人国立病院機構)側証人、当時の帯広病院副院長で執刀医のK医師(現帯広病院 院長)の証言
 当日の手術の執刀医として参加、この患者が重篤だったとの記憶はない。
 容態は安定していた。
 当日のT・H医師の所在についての記憶はない。
(S医師とは見解が違うが)自分は心臓外科医としてのライセンスもあり、認定医の資格もあり経験も豊富で、S医師の見解は判断要素がちぐはぐで根拠はない。
 S医師の陳述には、驚きと怒りを感じる。
(患者の容態は重篤ではなく、T・H氏が赴任旅費を受け取れる状況にあったとの趣旨)

B控訴人(独立行政法人国立病院機構)側証人、当時の帯広病院給与・旅費支給担当事務官だったT氏(庶務課庶務係長)の証言
 T・H医師は、既に帯広に住んでいたので赴任旅費の支給には問題があった。
 9月30日、銀行から3人分の赴任旅費を現金化して、T・H氏分の旅費を銀行の封筒に入れ渡そうとしたが、T・H医師が見つからず渡せなかった。
 上司のH(庶務課庶務班長)にその旨報告したら、Hが自分で渡すと言って出ていった。
 封筒のなかには現金だけで明細書は入っていなかった。
 赴任旅費の領収書はない。
(T証人は反対尋問に対して、曖昧な証言を繰り返し、追及されると「記憶にありません」を連発していた。)

C被控訴人(T・H氏)側証人、T・H氏の妻K・Hさんの証言
 8月末に、当時の病院長から「帯広に住んでいるので、赴任旅費は支給されない」と言われ、自分としてはそうかな、と思っていた。
(病院側が勝手に作った預金通帳の返還を求めた問題等があってから)自宅に不法侵入されたり、S事務部長がポケットマネーと称して現金を持ってきたり、ビールのギフトセットが届けられたがいずれも返還した。
 その後も、インターホーンが鳴らされたり、郵便受けが荒らされたりの奇怪な出来事があった。
 夫の給与は振り込みで、家計は全て自分が管理しており、給与のなかから夫には小遣いを渡していた。
 不足したときには、その都度渡していた。

驚くべき帯広検察審査会の議決
 T・H氏は、帯広警察署が捜査に消極的なことを知り、再三にわたり抗議を繰り返すが埒があかないことを知り、平成17年10月、国立帯広病院院長等を虚偽公文書作成で告発状を、国立帯広病院の事務長等を業務上横領、有印私文書偽造・同行使で告訴状を釧路地裁帯広支部に提出した。
 更に、平成19年3月には、帯広警察署が告訴を受理しなかった有印私文書偽造・同行使事件について国立帯広病院の事務担当者を被告訴人として、釧路地検帯広支部に告訴状を提出した。
 釧路地検帯広支部は、告訴等を受理はしたものの、平成19年3月29日、被疑者7人すべてを嫌疑不十分で不起訴処分にした。

 これに対して、T・H氏は帯広検察審査会に審査を申し立てたが、本年1月23日、同審査会は「不起訴処分は相当」の議決を行った。
 T・H氏は、2月2日「釧路地検の不起訴裁定書内容と全く異なる帯広検察審査会の議決内容への抗議書」と題する文書を以て帯広検察審査会に対して抗議した。
 現在の刑事手続きにおいては、検察審査会に申し立てる以外に、検察官の不起訴処分を覆す手段はない。
 その検察審査会が「不起訴相当」の議決をしたことで、国立帯広病院院長等の刑事責任の追及の道は閉ざされたことになる。

 帯広検察審査会の「議決の要旨」とT・H氏の「抗議書」の全てを紹介することはできないが、国立帯広病院損害賠償請求控訴事件のこの日の証人尋問でもとりあげられた「赴任旅費がT・H医師に支払われたかどうか」に関する検察審査会の判断をみてみよう。

 「赴任旅費の支給は、庶務係長(証人T氏のこと)から現金を預かった被疑者H(庶務課庶務班長で庶務係長の上司)によって午後5時過ぎころ医局で申立人(T・H氏)に手渡され、庶務で預かっている印鑑を用いて領収書を作成することの了承を得て事務室に戻り、庶務係長に領収書の作成を指示していたことが伺われる。そこで、申立人の検察官に対する当日の供述を検討してみると、申立人の記憶は曖昧で、当日2件の手術があったことも記録から確認できた状態であって、忙しくて医局にいる暇がなかったと思われるとの供述も、手術が行われる際の一般的な場合のことを述べているだけで、被疑者Hが赴任旅費を手渡したという5時過ぎころに、申立人が医局にいなかったと認められる証拠は無いと言わざるを得ない。〜中略〜被疑者Hの供述は具体的かつ自然であると考えられ、庶務係長の供述とも符合しているところから、当該日に申立人に赴任旅費が支払われたと考えるのが相当であり、〜以下略」

 民事訴訟の札幌地裁判決では、T・H氏は平成14年9月30日の午後5時過ぎころには、心不全の患者の緊急手術のスタッフとして手術室に入室していたため、医局にはいなかったと認定、病院事務担当者HがT・H氏に赴任旅費を支払った事実はないとしている。
 しかし、帯広検察審査会は、T・H氏の記憶は曖昧で、被疑者側の供述は具体的かつ自然であると一方的に決めつけ、札幌地裁判決とは真反対の判断をしている。
 その他の部分についても、ことごとく帯広病院側にとって有利な判断に終始していることは明らかで、T・H氏が、抗議書のなかで「(帯広検察審査会は)あまりにも事件のことを把握しておらず、ずさんかつ独断的な議決内容でした。また、釧路地検の不起訴処分の判定内容と全く異なっておりましたので審査会の判定内容がとてもいい加減で偏った審査であったことも事実です。そして、審査会の議決内容に名誉毀損的な表現が含まれており、この審査会の在り方に問題があったと強く感じています。」としているのも肯ける。


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20. 1.19(土) 志布志事件無罪国賠弁護団との交流  泣いていた川路大警視

 平成20年1月10日、鹿児島市の弁護士会館で志布志事件無罪国賠弁護団(団長井上順夫弁護士、事務局長野平康博弁護士)と「明るい警察を実現する全国ネットワーク」代表清水勉弁護士、「市民の目フォーラム北海道」の市川守弘弁護士、原田宏二代表が参加して、意見交流会が開かれた。
 交流会には、同弁護団の弁護士をはじめ原告の中山信一県議会議員ご夫妻、会社社長の川畑幸夫さんも参加した。
(志布志事件については、このホームページに「志布志事件は警察の組織犯罪」と題して、昨年10月1日、10月8日、10月15日の3回にわたり掲載したので参照されたい。)
 意見交流会では、原田宏二代表が警察在職中に捜査二課長として体験した警察の選挙違反事件捜査について説明し、志布志事件は自白偏重の人質司法という現行刑事司法の下で起きるべくして起きた事件であり、警察による組織的な犯罪であると断じた。
 それに対して、参加者の皆さんが質問するという形で、活発な意見交換が行われた。
 原田代表は、「いろいろな方から事件のことだけではなく、鹿児島県における警察の位置づけ、選挙事情などを聞くことが出来た。志布志事件にはメディアが報道しない根深い背景があるように思う。今後の訴訟に必要であれば、これからも弁護団に協力したい」と語っている。

(写真は、川路利良大警視の銅像と鹿児島県警察本部庁舎)

 川路大警視(以下、敬称略)は、明治7年に警視庁を創設した人物。
 川路は、薩摩藩(鹿児島藩、島津藩ともいう)の武士とは名ばかりの貧しい家に生まれた。
 文武に励み、明治維新後は、文官となり警察行政を担う。
 江戸時代の警察は町奉行の与力、同心が当たったが、この職は不浄役人とされ、正規の幕臣は就こうとせず、一代限りの臨時雇いの身分の者にやらせた。
 川路は、警察は単なる不浄機関ではないと、フランスなど欧州の警察制度を視察、帰国すると政府にフランスの警察制度を手本にして「警察制度改革の建議書」を提出した。
 川路は「良民を保護し、内国の気力を養う」のが警察の役割で「国家平常の治療」であると位置づけた。
 そして、警察官に「官員は公衆の膏血をもって買われたる物品のごとし」と厳しい自戒を求めた。
 その川路の銅像は、警視庁警察学校の「川路広場」にもあるという。
(「大警視・川路利良」 神川武利著から)

 1月11日の朝、志布志事件無罪国賠弁護団との交流会終了後に、筆者が川路の銅像を訪れた時は雨だった。
 雨に濡れた川路の顔は、鹿児島県警による志布志事件の捜査や警視庁の現職警察官によるストカー殺人等、不浄役人以下に成り下がった最近の警察官を思ってか涙していた。
 「良民を保護」するどころか、良民を苦しめた鹿児島県警に対して、警察本来の役割を果たすように強く求めているように見えた。


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19.12.22(土) ドキュメント仙波敏郎−告発警官1000日の記録−

 ドキュメント仙波敏郎−告発警官1000日の記録−(仙波さんを支える会代表 東 玲治著)が、「創風社」から出版された。
 「このまま行けば若い警察官が理想を失う」との思いから全国で唯一の現職警官による警察の組織的裏金づくりを告発。それによる不当な配置転換を違法として争った国賠訴訟一審判決は、劇的な勝利となった。本書は警察という強大な組織と対峙した一巡査部長の1000日の記録である。なお、この書籍の中では、「市民の目フォーラム北海道」代表の原田宏二や事務局スタッフの齋藤邦雄が松山地方裁判所で行った証人出廷など、臨場感溢れる場面が随所に記述・展開されており、警察裏金問題に関心のある方々には、是非、一読を勧めたい本である。


  書籍の詳細


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19.12.19(水) 原田宏二代表 全国ネットでの活動

 「市民の目フォーラム北海道」の原田宏二代表は、12月6日の埼玉県警の元さいたま市警察部長(警視正)の告発記者会見に同席したほか、週刊誌の対談やテレビのバラエティー番組に出演するなど、このところ全国ネットでの活動が続いています。
 その内容を紹介します。興味のある方は是非ご覧ください。
1 「悪果」の著者黒川博行氏との対談
 黒川氏の著書「悪果」については、先にこのホームページに紹介しましたが、去る11月、週刊プレーボーイの企画で、黒川氏(写真右)と原田代表(写真左)の対談が行われました。
 対談では、"警察の裏金と警察官によるシノギの実態"や"警察改革は可能なのか"等々が語られています。対談は、「週刊プレーボーイ」12月22日(土)発売号に掲載される予定です。


2 「太田光の私が総理大臣になったら」に出演
 この番組は、爆笑問題の太田光が総理大臣になり小さな国会を開会、日本をよくするために大胆なマニフェストを発表し、タレント、政治家、文化人、がそのマニフェストに賛成・反対に分かれ議論を戦わせ、最後に出演者全員による裁決を行うというバラエティー番組です。
 今回は、タレントの伊集院光が「不祥事を隠している政治家・官僚は100名様まで白状したら許します」というテーマで討論が行われました。
 原田代表は、北海道警察の裏金疑惑を告発した警察OBとしての体験を話すよう、「明るい警察を実現する全国ネットワーク」(清水勉代表)を通じて、日本テレビから出演の依頼があり参加しました。
 放映は、12月21日(金)午後8時から8時54分までの予定です。


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19.12.5(水) 書籍紹介
 警察関係の書籍を2冊紹介します。是非、ご購読ください。

1「警察の闇 愛知県警の罪」宮崎学著 アスコム(1600円+税)
 愛知県警の問題については、このホームページの警察関連ニュース(11月1日)でも指摘したところですが、この度、ご存知の宮崎学さんが、愛知県警を見れば警察のダメ加減がわかる!と「日本メンテナス事件」を中心に現在の警察の実態に鋭く切り込んでいます。宮崎学さんは、道新裁判でもジャーナリストの大谷昭宏さんとともに補助参加を申し出て闘っています。
 なお、この本の末尾には当フォーラム代表原田宏二が「愛知県警と日本メンテナンス事件」と題して投稿しています。
   クリックで拡大

2「悪果」黒川博行著 角川書店(1800円+税)
 著者の黒川博行さんはミステリー作家ですが、「キャッツアイはころがった」等で第4回サントリーミステリー大賞を受賞、「疫病神」等の著書が多数あります。
 「悪果」は、暴力団摘発を担当する大阪府警の2人の刑事の暴力団捜査の様子をリアルに描きながら、警察と暴力団等との癒着、上層部の裏金づくり、現場の刑事たちの利権とシノギ、監察官による隠蔽と組織防衛等々、驚くべき警察の腐敗が鋭く描かれています。
   クリックで拡大

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19.11.26(月) 「立川署ストーカー殺人事件にみる日本警察のいま」

 11月17日 東京四谷で「明るい警察を実現する全国ネットワーク」主催による「立川署ストーカー殺人にみる日本警察のいま」と題するシンポジュームが開かれました。

 パネリストは、ジャーナリストで警視庁OBの黒木昭雄氏、フリーライターの伊藤博一氏、それに「市民の目フォーラム北海道」代表の原田宏二、司会は「全国明るい警察を実現する全国ネットワーク」代表の清水勉弁護士(東京)が務めました。

 各パネリストからは、警察官の不祥事が頻発する背景、来年から警視庁が実施予定の交番の警察官をGPSで管理することへの批判等々、日本警察が抱える様々な問題について活発な意見が交わされました。

 その内容について、11月23日の東京新聞の「こちら特報部」で特別報道部 市川隆太記者が詳しく伝えました。新聞記事をクリックし拡大してご覧ください。





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19.11.24(土) 民主党政策調査会へ要望
 
 平成19年11月16日 「市民の目フォーラム北海道」代表原田宏二が参議院本館の民主党政策調査会において、民主党政策調査会 副部長田鹿文隆、同主査三浦隆伸の両氏に対し「警察法の改正」及び「裏金処罰法(仮称)の制定」について要望した。
 その趣旨は次のとおりである。

1 「警察法の改正」に関する要望の趣旨
 平成11年からの一連の警察不祥事の際に、警察法の一部が改正され、監察の指示等(警察法第43条の2)、警察職員の法令違反等の報告(警察法第56条第3項)、警察職員の職務執行についての苦情の申し出(警察法第79条)等、公安委員会の権限が強化された。
 しかるに、警察官による不祥事は依然として後を絶たず、警察庁のまとめによると昨年1年間で懲戒処分を受けた警察官等は、前年より20人増の361人だった。
 しかし、実態はこの数字をかなり上回ると考えなければならない。
 特に、昨年11月には群馬県内で3件の郵便局強盗を働いた埼玉県警加須警察署の巡査長(44歳)が逮捕され、今年8月には警視庁立川警察署の巡査長(40歳)がけん銃で飲食店従業員を射殺して自殺するなど現職警察官による凶悪事件が目立っている。
 一方、佐賀県の北方事件、鹿児島県の志布志事件、富山県の女性暴行事件などの冤罪事件や長崎市長射殺事件、愛知県長久手町のけん銃乱射事件等々警察の不手際が目立って多い。
 こうした現状は、都道府県警察による警察官等の指導管理が徹底していないことが挙げられるが、各都道府県警察を管理する公安委員会が機能していないこともその要因の1つである。
 特に、平成12年の警察法改正で強化された公安委員会の権限が全く生かされてはいない。
 例えば、警視庁の巡査長によるけん銃を使用したストーカー殺人事件についても東京都公安委員会が警視庁に対してどんな指示をしたのか。どんな報告を求めたのか。
 ただ単に警視庁の内部調査を見守っているだけのように見える。
 また、警察官等の職務執行に対する国民からの苦情の処理にしても、事実関係の調査を都道府県警察に事実上丸投げしているのが実態である。
 このように都道府県公安委員会が機能していない最大の要因は、都道府県公安委員会が管理するべき都道府県警察から独立していない点にある。
 そこで、次の点に関して警察法を改正し、警察に対するシビリアンコントロールを強化する必要がある。
@公安委員の選任に関する警察の関与を排除し、公選制の導入などにより、その選任の透明化を図る(警察法第39条関係)。
A警察から独立した公安委員会事務局を設ける(警察法第44条関係)。
B公安委員会事務局の体制を強化するほか、事務局員に警察職員の就任を禁止する(新設)。

2 「裏金処罰法(仮称)制定」に関する要望の趣旨
 平成7年に北海道をはじめ全国20都道府県で県庁の不正経理、いわゆる裏金疑惑が発覚した。
 その後、当時発覚しなかった鳥取、岐阜、佐賀、長崎の各県でも裏金が発覚し、今年5月には宮崎県でも発覚した。
 警察でもこれまで、警視庁をはじめ北海道等18都道府県警察で裏金づくりが発覚している。
 中央官庁でも、外務省、厚生労働省、経済産業省、防衛庁等で発覚している。
 官公庁による裏金づくりは、まさに常態化していると言っても過言ではない。
 しかしながら、裏金づくりで刑事責任を追及された公務員はほとんどいない。
 ときには、告発の対象になることはあっても、ほとんど起訴されることもない。
 仮に、起訴された職員がいたとしても、ほとんどが組織の末端の職員だけである。
 会計上責任のある幹部が、刑事責任を追及された事例は聞いたことがない。
 その理由は、裏金づくりが長年の慣行として組織的に行われているため、個人犯罪を対象としている現行の刑法の詐欺、横領といった規定の適用が難しい点にある。
 捜査技術的な面でも、膨大な予算執行事実を会計書類に基づき、犯意を裏付けし、幹部との共犯性を立証し、個別に立件していくことは極めて困難を伴う。
 しかも、裏金の性質上、その使途は裏帳簿が存在してはじめて明らかになるが、これまで発覚した裏金疑惑では裏帳簿の存在が明らかになったことは稀である。
 そのため、私的な流用がなかったと結論づけられ、単なる予算の流用に過ぎないといった弁解がまかり通っている。
 一方、裏金づくりに関する官庁の内部処分は極めて軽い。
 これも懲戒免職になるのは末端の職員であり、裏金を使う側の幹部はごく軽い処分で済まされているのが実情である。
 最近、政治家と金の問題が国会などで取りざたされている。
 政治家については、不十分とはいいながら、政治資金規正法や公職選挙法である程度の規制がある。
 ところが、これだけ官公庁の裏金づくりが繰り返し明るみに出ているのに関わらず、公務員と金の問題についての法規制は皆無である。
 ここに、公務員の裏金づくりが根絶できない要因がある。
 もはや、官公庁の自浄作用と公務員の倫理観に期待することはできない。
 国、地方とも財政が厳しい折から、これ以上国民の税金である予算の不正使用を看過することはできない。
 「会計担当官」「支出負担行為担当官」「捜査費取扱責任者」「旅行命令権者」「捜査費取扱者」「資金前渡官吏」等を処罰対象とし、予算執行に不正があったことが明らかになったとき処罰する「予算の不正執行の処罰に関する法律」(仮称)の制定する必要がある。


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19.11.17(土) 道警が推薦再開 道警OBの皆さんおめでとうございます

 政府が10月12日、「危険業務従事者叙勲」の対象者を発表しました。
 今回の叙勲の道内受章者378人のなかに道警OBの方87人が含まれていました。
 受賞された皆さんに、長年にわたって警察の現場で汗を流されたことに敬意を表するとともに心からお祝いを申し上げます。
 危険業務従事者叙勲は、春秋の叙勲とは別に、現場で危険な業務に従事した受賞者を増やすために、平成15年の栄典制度改正で創設されたものですが、道警では、裏金問題の発覚を受けて平成16年から叙勲の推薦を中止していました。

 外から見ると一体と見える警察組織も、内部では警部以上の幹部と警部補以下の現場の警察官とに二分化された実態があります。
 在職中には、幹部に命じられるままに裏金づくりに関与せざるを得ない立場に置かれ、裏金疑惑が発覚するや幹部と一蓮托生で叙勲の途も閉ざされているのは不条理です。
 北海道監査委員の監査は、その監査結果の中で次のように指摘しています。
 裏金づくりが全ての部局で長年にわたり組織的に、管理、監督の立場にある者の指示、命令により虚偽の会計書類を作成させ、不正な方法で執行されていた。幹部は、その途をたどってきた立場からして、十分認識していたことであり、是正、改善のための責務を果たしてこなかったことに対して、その責任を重く受け止めるべきである。


 「市民の目フォーラム北海道」の相談BOXには、道警OBから「現場で苦労した我々の仲間のうちには叙勲を今か今かと待っているOBが大勢いる。何とか早く叙勲の申請を再開するよう、道警に働きかけて欲しい」との要望が寄せられたことはこのホームページでも紹介したところです。 
 監査委員に指摘されるまでもなく、道警の裏金システムは主として警部以上の幹部、特に警視以上の幹部が主導して行われていたものであり、裏金は幹部が自由に使っていたものです。 
 長年、警察の現場で苦労したOBたちからこうした声が出ても無理はありません。 
 しかし、道警上層部はこうした声を無視したのです。
 そのため、「市民の目フォーラム北海道」では、平成19年3月5日 北海道警察本部長と警察OB団体の北海道警友会会長に対して、在職中に下積みで苦労をした警察職員については、早急に叙勲の推薦を再開するように文書で要望しました。
 念のため文書を再度紹介します。
 
北海道警察本部長宛
警察退職者からの叙勲に関する要望について

 私ども「市民の目フォーラム北海道」は、警察の刷新を求めて活動している団体です。
 その活動の一環として、広く市民から警察業務に関する苦情・要望等を受け付けています。
 最近、別紙の通り北海道警察退職者(以下警察OB)から叙勲の推薦の再開を求める声が寄せられています。
 そのため下記の点について北海道警察のお考えをおたずね致します。
ご回答は、文書により平成19年3月12日までに同封の返信用封筒でお送りいただくようお願い申し上げます。
 なお、この文書の内容及び北海道警察からのご回答は、要望をいただいた警察OBの方にお知らせするとともに、当フォーラムのホームページで公開することをあらかじめ申し添えます。

                             記
1 北海道警察では、平成16年以降現在まで、警察OBを対象とする春秋叙勲(危険業務従事者叙勲
 を含む。以下同じ)の警察庁への推薦をとりやめているとのことですが
 (1) 事実か
 (2) その理由は何か
2 平成16年12月の北海道警察の不正経理問題に関する北海道監査委員による監査結果では「道
 警の不正経理が、長年にわたり慣行として組織的に、管理、監督の立場にある者の指示、命令により
 行われていた」と指摘されました。 
  さらに、北海道警察本部長が一連の予算の不適正執行による道及び国に与えた損害の返還につい
 て「返還金は、管理、監督の立場にあった警部及び同相当職以上の幹部が拠出する」と関係者に文
 書で通知し返還金の拠出を求めました。
(1)これらの事実から、長年わたる不正経理問題の責任の大半は、警部及び同相当職以上の上級幹
  部にあると判断してよいか
(2)不正経理問題に責任のない警部補及び同相当職以下の職にあった警察OBは、叙勲を受けられな 
  い理由はないと判断しても差し支えないか
(3)警部補及び同相当職以下の職にあった警察OBに限って叙勲の推薦を再開する考えはないか。
  ないとすればその理由は何か
(4)再開するとすれば、いつからか。また、その対象はどの範囲となるのか
(5)再開に当たっては、その事実を公開し道民の理解を求めるべきと考えるか、このことについてどう
  考えるか

 「市民の目フォーラム北海道」の要望は当然のことながら道警本部長には無視されました。もちろん回答もありませんでした。
 しかし、今回の叙勲申請再開の報道に接し、北海道警察本部長の大英断?と北海道警友会の側面からのご支援?に心から感謝しなければなりません。
 道警本部長さんと北海道警友会の役員の方々には、多くの道警OBから「市民の目フォーラム北海道」に感謝の声が届けられていることをお知らせ致します。
 ただ、今回の叙勲受賞者をみると、自衛官は61歳、消防士、海上保安官は60〜70歳代、刑務官は60歳代なのに対して、警察官だけは80歳代で最高齢者は87歳であったのは何故なのでしょうか。
 3年間叙勲の申請をしなかったことのしわ寄せがあるのでしょうか。
 そうだとすると道警の裏金問題の影響が、結局は長年にわたり現場で苦労した警察OBにまで及んでいたことになります。

 道警では、今回から推薦を再開した理由について「関係者の処分や再発防止策などを講じたことから、叙勲の推薦をおこなった」としています。
 しかし、叙勲を受ける資格があるのは裏金疑惑が発覚した平成16年当時に警部補以下の立場にあった警察職員であり、それ以前に警部以上の立場にあった警察職員にはその資格はないことを再確認しなくてはなりません。
 その理由は、警部以上の幹部が裏金システム是正、改善のための責務を果たしてこなかった責任を重く受け止めるべきで、その責任は永久に消えないからです。
 その一部を返還したとしても、不正に得た金を返すのは当たり前のことではありませんか。
 しかも、返還額は懐にした裏金の十分の一、いや、何百分の一に過ぎないことは幹部であれば分かるはずです。
 平成19年11月3日には、秋の叙勲受賞者が発表されました。
 その北海道関係者名簿のなかには、道警の幹部OBの名前はありませんでした。
 該当者がいなかったのかどうか等その事情は分かりませんが、当然といえば当然でしょう。

 道民は、道警上層部が裏金づくりの全貌を隠蔽し、責任を回避したことを決して忘れたわけではありません。


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19.10.31(水) 「市民の目フォーラム北海道」例会

 10月27日(土)に札幌で「市民の目フォーラム北海道」の例会を開催しました。
 例会では、原田宏二代表から
@ 情報公開請求と開示内容
A 政府に対する質問主意書
・愛媛県警巡査部長国家賠償請求訴訟に関する質問主意書
・警察職員の不祥事に関する質問主意書
・最近のけん銃発砲事件等の警察捜査に関する質問主意書
B 警察法改正と裏金処罰法制定構想
C 市川守弘弁護士の扱っている訴訟
 (北海道警察VS北海道新聞社訴訟、道警裏金情報公開訴訟、ねぶた師訴訟)
D 「市民の目フォーラム北海道」への相談状況
E 「G8サミット市民フォーラム」への参加
等が報告されました。

 また、講演として「北海道交通事故被害者の会」代表前田敏章氏と同会員白倉博幸・裕美子氏を招き、悲惨な交通事故の実態について拝聴しました。
 前田代表は、「交通事犯被害者の、主に捜査等における現状と課題」と題して
@ 交通事犯被害の実相
A 被害者運動と犯罪被害者等基本法と交通事犯被害者
B 事例から見た交通事犯捜査の問題点と交通事件の遺族・被害者のアンケート調査結果
C 背景要因
D 市民のための警察を取り戻すための改革の糸口
についてCEFH会員に訴えました。
 また白倉ご夫妻は、平成15年9月、交通事故で最愛の長女を14歳の若さで失った悲しみの中で体験した警察の杜撰な交通事故捜査と警察官の心ない仕打ちについて切々と訴えました。
 CEFH会員も事故状況を質問する等、悲惨な交通事故実態と交通事故被害者が受ける捜査機関による二次被害についての認識を新たにしました。
 なお関連ホームページとしては、以下のホームページを開設していますので、是非訪問して下さい。
   「北海道交通事故被害者の会」       http://homepage2.nifty.com/hk-higaisha/
   前田氏個人(交通死−遺された親の叫び)http://www.ne.jp/asahi/remember/chihiro/
   交通事故調書の開示を求める会      http://www.chousho-kaiji.com/

 白倉ご夫妻の講演内容は、PDFで全文を掲載しておりますが、後日、CEFHの会員から事務局に感想メールが届きました。以下はその内容です。

会員A
 白倉夫妻のお話を聞いて、考えさせられたことがたくさんありました。警察が基本に忠実に、公正に捜査をしないことは、被害者にも加害者にも影響を与え、また、それを裁く裁判にも大きく影響を与えます。そのことを多くの市民が知り、様々な場面で指摘していかなければいけないと、改めて感じました。
 くにおの警察日記などを読ませていただくと、末端で働く警察官の方々の苦労が良く分かります。警察官の頑張らなければというやる気を維持するのは、やはり「自分が役に立っている」「この仕事に誇りと自信を持っている」という気持ちが重要なのではないかと感じます。ですが、今は「信頼されない」→「決まった事だけこなす」→「信頼が低下する」のように悪循環になっているように感じます。組織というのは、長い歴史を持つほど変える事が難しいと思います。(これは自分の体験として)上だけの意識が変わっても、また下だけの意識が変わっても、大きな変化にはならないと感じています。まず、「自分一人が動いても何も変わらない」と感じている警察官の人に、支える市民がいる事を知ってもらうこと、そして、様々な場面で、組織の不正を訴え、上層部(組織)の意識を変える事、こういう活動が必要となってくると感じました。その意味でも、市民の目フォーラムの活動は重要ですね。私ももっと発信するお手伝いをしなければと感じています。それにしても、誰も傷つけず、誰にも損害を与えていない人がある事件で懲役10ヶ月執行猶予3年の刑を受け、人の命を奪った人が禁固3年執行猶予5年というのを聞くと、刑というのは何を基準に考えられているのだろうかと改めて考えさせられました。

会員B
 例会の講演は、たいへん考えさせられるお話で、警察の実態がよくわかりましたが、今の現状では勇気をもってひとつひとつ、問題を明らかにして、世間に実態を知らせていくほかないでしょうか・・。
 交通事故の処理が、こんな風になっていることを私たち普通の市民は知りません。もう少し問題点を整理して、事例をいくつか紹介しながら問題点を掘り下げるシンポを来年にでも企画されてはいかがでしょうか。世間への問題提起です。




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19. 9.23(日) 「G8サミット市民フォーラム北海道」に参加

 9月21日、札幌市北区の札幌エルプラザで、来年7月の北海道洞爺湖サミットに向け、サミットを市民に開かれたものにするために、道内のNPO法人など35団体が結成した「G8サミット市民フォーラム北海道」の設立ミーティングが開催された。
 会場には約200人が参加し、同フォーラム準備会の呼びかけ人の1人、秋山孝二さん(秋山記念生命科学振興財団)の挨拶に始まり、参加団体の代表者が「地球環境」「貧困・開発」「平和・人権」の問題について提言を発表した。
 また、「2008年G8サミットNGOフォーラム」(東京)の大林ミカさんが、今年6月に開かれたドイツ・ハイリゲンダムサミットでの活動を報告した。
 同フォーラムでは今後、先住民族の権利など北海道と関係の深いテーマでセミナーを開くほか、国や道に対して、サミットで取り上げてもらいたい事項や警備体制のあり方などについて提言していくことが決まった。
 同ミーティングについては、あらかじめ呼びかけ人から、「市民の目フォーラム北海道」にも参加の呼びかけがあったため、当フォーラムの原田宏二代表ほか数人の会員が参加した。
 当フォーラムでは、「G8サミット市民フォーラム北海道」の構成団体として参加することとし、総理大臣、北海道知事、警察庁長官、北海道警察本部長などに対して、税金の無駄遣い、「テロ対策」に名を借りた過剰警備などについて、提言を行っていく予定だ。



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19. 8. 6(月) 警察予算はヤミのなか 
            北海道と道警本部に開示文書の説明依頼

 
 北海道警察は、長年にわたりその予算を裏金に回していた事実を認め、約9億6,000万円を国と北海道に返還した。
 裏金の原資になった捜査用報償費予算は必要なのか、その額は適切なのか。
 北海道では、今年中に6件の殺人事件が時効を迎える。
 こうした事件は、いずれも捜査本部事件である。
 捜査本部事件の捜査には、どのくらいの予算が必要なのか。

 「市民の目フォーラム北海道」の相談BOXには、多くの現職警察官から時間外勤務手当に関する苦情が寄せられた。
 市民の安全を守る現場の警察官の待遇は、どうなっているのか。
 警察官の人件費をはじめ、警察活動に必要な予算は国民の税金である。
 にもかかわらず、国民は警察の予算がどのようにして編成されるのか、予算額を決める根拠は何か、効率的に使われているか、などについてはほとんど関心がない。

 そこで、「市民の目フォーラム北海道」では、北海道と北海道警察本部に北海道警察の予算に関して情報開示請求を行ってきた。
 しかし、開示された公文書は、私たち市民が読んでも理解できない部分も多く、必ずしも私たちの疑問に応えるものではなかった。
 そこで、あらかじめ北海道と北海道警察本部に次の「開示公文書に関する説明依頼事項」を示したうえ、平成19年7月25日、「市民の目フォーラム北海道」の原田宏二代表と市川守弘弁護士が各項目について説明を求めた。
 当初は、説明を拒否するのかと思われたが説明には応じた。
 しかし、それぞれの説明は、紋切り型で必ずしも納得できるものではなかった。
 以下に説明を求めた項目に対する説明要旨と当方からの指摘事項の要旨を記載した。
 (  )内の記述は、説明に対する感想等である。

【知事部局】
 説明者は、総務部財政局主幹 谷文雄氏である。
 関係する公文書を教示しただけの項目については省略した。
1 財政第19号 平成19年4月9日(平成19年3月26日 開示請求)
@事案移送通知書(財政第10号 平成19年4月5日)によると、「平成15年度及び平成16年度に係わる要求額の積算根拠が分かる文書」を北海道警察本部に移送したとなっているが、その理由は何か。 
 [説明要旨]

  平成15年度と16年度の「捜査用報償費」要求額の積算根拠の分かる文書は北海道警察本部が作
 成した資料であり、開示するかどうかの判断は警察本部が行うのが適当であるため。
  なお、平成16年度からは、前年度の執行実績を考慮して査定することになった。

A捜査用報償費の積算根拠はどの文書をみると分かるのか。

B知事に対する捜査用報償費の積算要求内訳には、件数、単価等が記載されているのか。その内容はどのようなものか。

C捜査用報償費の目的からして、事件・事故の情報提供者、協力者の数が積算根拠となるべきと考えるが、その数はどの文書をみると分かるのか。

D開示請求した「平成16年度、平成17年度、平成18年度の捜査用報償費の増減理由」はどの文書をみると分かるのか。
 [説明要旨]

  警察に限らず、各部局の予算要求に対しては、厳しく査定している。
  捜査用報償費の予算額が減少した年度は、前年度の執行で不要額が生じたためで、増加した年度
 は執行実績が増えたためである。
 [指摘事項]
  開示された平成17年度の毎月の執行実績をみると、前年度比で2倍以上の増加となっている。「捜
 査用報償費」の執行額が急激に増減するような状況にあったとは理解できない。
 (これにより平成18年度予算が、前年度比32%増と査定されている。)
  捜査用報償費については、99%が裏金化されていた事実がある。
  警察にとっては、必要のない予算であることが明らかになった。
  しかも、執行した内容のほとんどが監査委員にも明らかにされなかった。
  捜査用報償費の執行実績が信用できるのか。
  道財政が厳しい折から警察予算の査定に当たっては、そうした点を考慮し厳格にやっていただきた
 い。
 (捜査用報償費は、国費の捜査費とともに裏金の原資になっていた。それは、知事部局の査定におい
 ても、議会の予算・決算の審議においても、執行後の監査委員の監査においても聖域とされ、アンタッ
 チャブル予算とされていたからである。その状況は、現在も何も変わっていない。)

[北海道警察本部】
 説明者は、警察情報センター統括官 松橋一生氏である。
 松橋氏の説明は、「公開した文書のとおり」という説明に終始したため、そうした説明については説明要旨の記述は省略した。
 今回の説明では、警察予算に関して市民の理解を得ようとする姿勢はみられず、北海道警察の情報開示に対する消極的姿勢を改めて感じた。
 こうした姿勢では、市民から北海道警察では未だに裏金づくりが続いているのではないか、との疑念を持たれかねない。
 また、捜査本部の運営に必要な経費が捜査本部として把握されていない実態も伺われ、警察内部では、警察業務の遂行に必要な経費がすべて国民の税金であるという感覚が極めて薄く、運営に必要な経費のほとんどが明らかにされなかった。


1 道本会(監)第69号 平成19年4月23日 公文書一部開示決定通知書
  (平成19年3月26日 開示請求)

@開示しない理由にある「件数、単価等が記載されている部分が明らかになると、犯罪を企図する者において警察の捜査手法等の分析が可能になり、捜査活動に支障が生ずるおそれがあるため」となっているが、具体的にはどんなことか。
 [指摘事項]

  「捜査活動に支障が生ずるおそれがある」という理由は大網を被せている。
  そうしたことでは、市民の理解を得られない。

A知事部局の説明によると捜査用報償費は「事件事故等の発生件数、事件形態等により執行が増減する経費である」としているが、平成14年度予算額と、同15年度要求額が、交通警察及び地域警察を除いて、同額になっているのは何故か。
 [指摘事項]

  捜査用報償費は、道の説明によると「事件・事故等の発生状況、事件形態により執行が増減する経
 費である」としている。
  前年度と同額になるのは理解できない。

B一般情報と重要情報の定義及びその差違は何か。



2 道本捜1第109号 平成19年5月8日 公文書一部開示決定通知書、
  道本捜1第110号 平成19年5月8日 公文書不存在通知書
  (平成19年4月10日開示請求)

@新聞などによると、この事件は被疑者死亡で送致したとされるが、捜査本部は解散したのか、その年月日。
 [指摘事項]

  捜査本部の解散年月日は、公文書不存在通知書にも記載されていないが、当方の開示請求に対し
 て行政処分が行われていないことになる。おかしくはないか。

A140人体制としながら、延べ捜査員数を開示しないのは、把握していないと理解していいか。
 [指摘事項]

  捜査本部には、「捜査員配置簿」なる文書が存在するはずで、捜査員個人の名前は必要ないが、延
 べ捜査員数は開示できるのではないか。

B開示された「自動車燃料給油記録票」は借り上げ車両に関するもので、給油チケットは車両1台に1冊、と理解していいか。
 [説明要旨]

  そのとおり。

C公用車の台数及び燃料費を開示しないのは、把握していないと理解していいのか。
 [指摘事項]

  捜査本部には所轄警察署の公用車のほか、捜査一課など本部各課の公用車も集まるので、把握で
 きないという意味なのか。140人体制の捜査本部となれば、5〜60台の車が必要と思われるが、捜
 査本部全体の車の台数を把握していなければ、捜査員の配置ができないのではないか。

D公用車には、車両運転日誌が存在するか。
 [説明要旨]

 存在する。

E捜査員に支給した時間外勤務手当総額等を特定する文書は存在しない、としているが、各捜査員等が時間外勤務等の内容を「給与の支給に関する規則 別記第3号及び第4号様式」に、その実績などを記載した公文書は存在するのか。
 存在しないとすると、各捜査員の時間外勤務手当の総額等を把握していないと、理解していいか。
 [指摘事項]

  捜査本部員は、それぞれの所属から派遣されるため、各捜査員の時間外勤務手当はそれぞれの
 所属で把握しているため、捜査本部としては把握していないと理解していいか。


3 道本務(給)第72号 平成19年6月4日 公文書一部開示決定通知書、道本(給)第73号 平成19年6月4日 公文書不存在通知書(平成19年5月7日開示請求)
@平成15年度当初予算(時間外)の額は、年々減少し、平成19年度で7億3,641万円(平成15年度比で12%)の減となっているが、その理由はなにか。

A各年度4定の文書の計上額は、補正要求の額と理解してよいか。
 [説明要旨]

  そのとおり。

B各年度とも補正要求の理由は、警察官の増員、機動隊時間外、特別昇給等となっているが、事件・事故による補正要求はなかったと理解していいか。

C「時間外勤務手当算定調書」に計上率「公安13.0%」「一般7.0%」とあるのがその意味は何か。

 [説明要旨]
  警務課給与担当者を通じて、知事部局に確認した結果について説明があった。
  それによると「計上率とは、予算の要求額を算定するための率で、13%と7%になっている。ホーム
 ページでも公表されていない。」
 [指摘事項]
  つまりは、説明はできないと理解していいのか。
  中味を知りたかったのだが、知事部局としては、これ以上は言えないということか。
  (時間外勤務手当は人件費である。捜査上の秘密でも何でもない。説明できない理由は全く理解で
 きなかった。)

D平成16年3月16日の道議会総務委員会において、会計課長が「平成15年度の一人平均の実働時間が42時間で、支給率は38.4%。5年前は33時間で50.5%だったが、近年、犯罪や交通事故が増加し業務量が増えており、実働時間が増えている反面、予算の制約上から支給率は低下している」と答弁している。平均支給率などに関する公文書は不存在なのか。
 [指摘事項]

  議会では答えているのに、市民からの開示請求には公文書は存在しないとするのはおかしくはない
 か。「市民の目フォーラム北海道」の相談BOXには、現場の警察官から時間外勤務手当の支給に関
 する苦情が多数寄せられている。
 (現場の警察官のサービス残業が常態化していることが窺える。労働組合もなく労働条件に関して物
 言えぬ警察官のうえにあぐらをかく警察上層部、そして、そうした現場の警察官に本当に市民の安全
 を守ってくれることを期待できるのか、といった疑問が湧く。)

Eこの会計課長答弁の「予算上の制約」の意味はなにか、全額支給できない理由と理解していいか。

F開示された「給与の支給に関する規則」別記第3号様式及び第4号様式は、すべての所属で、警察職員か記入するなど、実際に使用されていると理解していいか。

(現場の警察官の苦情の多くは、額の多寡よりもむしろ支給の方法が公平でない、あるいは、支給額が仕事の実績によって左右される、といった支給に関する基準がはっきりしないという指摘であった。)

G全額支給が不可能な場合における職員に対する説明等の措置、その理由及び対策に関する公文書は、不存在との通知をうけたが、職員に対してこうした措置などは取られていないと理解していいか。

H警察職員は、「勤務1時間当たりの給与額(深夜加算を含む)」を承知していると理解していいか。
 [説明事項]

  現在は、内部で計算方法を公開しているので自分で計算すると知ることができる。
 [指摘事項]
  現場の警察官に聞いてみたが、ほとんどの警察官は「1時間当たりの給与額」は知らないと答えて
 いる。



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19. 5.21(月) 「市民の目フォーラム北海道」の例会
 
 「市民の目フォーラム北海道」発足後初めての例会が札幌で行われ、会員多数が参加しました。
 例会では、原田宏二代表の活動状況報告に始まり会員間の意見交換などが行われ
 @ ホームページのアクセス・閲覧層を拡大する工夫
 A 会報の計画的な発行 (創刊号は、本ホームページにPDFでアップ済み)
 B 市民の知りたい情報ニーズの把握と提供方策
 C 市民の関心を呼ぶ講演会等の開催
など、今後の方向性について熱心な討議が行われました。




 また、著名な翻訳家の山崎淳氏をお招きし、記念講演がありました。(山崎淳氏の主要訳書〜「9.11」「金儲けがすべてでいいのか」「戦争請負会社」「ソニー ドリーム・キッズの伝説」など多数)
 演題は、「民主主義 ノーム・チョムスキーの思想」です。
 めったに拝聴できない講演の機会に恵まれ、参加者一同、熱心に聞き入っておりました。
 講演終了後は山崎氏への質問が続出、例会は成功裡に終えました。



 なお、山崎淳氏の講演内容は、近日中に当ホームページにアップ予定です。
 「市民の目フォーラム北海道」のホームページを訪問されている皆さん、講演内容アップを楽しみにお待ち下さい。

           報告者  「市民の目フォーラム北海道」事務局スタッフ
                                  齋 藤 邦 雄




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19. 5.21(月) 「警察・検察の不法・横暴を許さない連帯運動」への参加
 
 「警察・検察の不法・横暴を許さない連帯を」運動・呼びかけ人会では、その活動の手始めとして、5月17日午後6時30分から東京都千代田区駿河台の総評会館で完全無罪判決のあった「鹿児島県議選えん罪事件(志布志事件)」を取り上げ、講演・討論集会を開いた。当日は、約100人の参加者が熱心に討論した。
 「市民の目フォーラム北海道」でも、去る3月19日のシンポジューム「広がる警察の腐敗 裏金から警官犯罪まで」において、鹿児島県の志布志事件を取り上げたが、この講演・討論集会に当フォーラムの原田宏二代表が招かれて参加した。
 冒頭に、運動の呼びかけ人から、運動の趣旨やこれまでの経過などについて説明があり、講演が始まった。      

 第1部では、辻恵弁護士が「鹿児島県議選弾圧冤罪事件(志布志事件)をとおして、日本の司法・国家を考える」と題して講演した。

 (講演する辻弁護士) 

 辻弁護士は、志布志事件に表れた現代司法の赤裸々な実態について、事実経過を説明し、具体例を示しながら、警察と検察の違法捜査を指摘した。さらに、弁護人の接見直後に、検察官が接見内容を調書化するように警察に指示し、あるいは検察官が、被告人を励ますためガラス越しに親族の手紙を見せた弁護人の行為を証拠隠滅を図ったとデッチあげ、裁判所もこれに応じて国選弁護人を解任するなど、警察、検察、裁判所が一体となって弁護権を侵害した実態を明らかにした。そのうえで、検察、警察の自白偏重体質や地検と警察本部の結託による隠蔽工作の状況を明らかにした。最後に、今日の司法をめぐる根本的な問題として、行政権の肥大と立法府の形骸化、司法消極主義などの実態を指摘し、そうした中にあって志布志事件は何故勝利出来たか、その要因を詳しく分析し、この勝利をどう生かしていくかが問題で、志布志事件の勝利を武器に司法・国家の改革に取り組もう、と訴えた。


 第2部は、宮崎学氏(作家)の司会で、原田宏二代表と黒木昭雄氏(警察ジャーナリスト)が発言し、自由討論が行われた。

 (司会をする宮崎氏)


 (発言する原田代表)

 最初に原田宏二(市民の目フォーラム北海道代表)が、自らの警察に在職中の選挙違反取締まりの実態について体験を交えて説明し、現在の司法制度に潜んでいるのは、依然として「自白は証拠の王」とする考え方であり、自白の強要などの違法捜査は警察だけの問題ではなく司法全体の問題だ、と指摘した。警察の捜査の背景に潜む代用刑事施設(警察の留置場)への勾留、それを利用した自白による余罪事件の追及・検挙、すなわち警察の検挙率へのこだわりなどがある、ことを明らかにした。こうした現状がある限り、警察は取調べの可視化にあくまでも反対し、検察は取調べの一部可視化でごまかそうとしている、と指摘した。最後に、こうした集会が東京で開かれた意義を強調し、全国の関係する団体などの連携を訴えた。


 (発言する黒木氏)

 続いて、警察ジャーナリストの黒木昭雄氏が、最近、全国各地で発生している長崎市長射殺事件などの特異な凶悪事件に触れ、警察とはいったい何なのか、我々の日常生活の安全を守ってくれるのが警察のはずなのだが、ところがそうではないと指摘した。
 今回のテーマになっている志布志事件を考えると、自分の体験からしてもこれは捜査ではない、多くの高齢者を無実の罪で長い間勾留している、酷いやり方だと強く批判し、これは、最初に結論を求めた犯罪のねつ造だと断定した。そのうえで、メディアの書き方もおかしい、杜撰な捜査とか、冤罪だとかと書いているがとんでもない、これは権力を使った犯罪なのだ、とメディアの姿勢も厳しく批判した。 そして、違法な逮捕・勾留は、警察や検察の権力を使った逮捕・監禁という犯罪であると指摘、こうした行為を処罰する法律が必要ではないかと提案した。最後に、こうした問題を風化させてはならない、ここで聞いたことを持ち帰り自分のこととして考えて欲しいと訴えた。




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19. 4. 7(土) シンポ「広がる警察の腐敗 裏金から警官犯罪まで」 

アルバムは
こちらから

 「市民の目フォーラム北海道」「フォーラム神保町」「道民の会」共催のシンポジュウム「広がる警察の腐敗 裏金から警官犯罪まで」は、3月19日午後6時から札幌市中央区北1条西13丁目札幌市教育文化会館で開催されました。
 パネリストは、大谷昭宏(ジャーナリスト)宮崎学(作家)魚住昭(ジャーナリスト)石坂啓(漫画家)原田宏二(市民の目フォーラム北海道代表)の各氏、司会は市川守弘(弁護士)です。大谷、宮崎、魚住の各氏はこれまでも札幌のシンポジュウムでお馴染みですが、石坂氏は初めての登場です。
 聴衆は約250人で、資料として「新しい北海道を作るための政策提言」、「『市民の目フォーラム北海道』から警察刷新に関する質問書」、「北海道知事立候補予定者からの回答」、「北海道議会各会派からの回答」などが配布されました。
 なお、北海道を愛するみんなの会(高橋はるみ後援団体)及び北海道議会の自民党・道民会議からは回答はありませんでした。
 冒頭に市川弁護士から、主催3団体の概要と配布資料の内容について説明があり、そのあと市川弁護士の司会でパネリストが順次発言しました。その要旨は次のとおりです。(以下敬称略)

多発するえん罪事件について
司会 市川 
 はじめに、つい最近鹿児島県の志布志というところで、選挙違反事件で全員無罪の判決があった。「踏み字」という言葉が新聞をにぎわせたが、この事件はどんな事件で、その背景、問題点、何故こんなことが起きたのか。ずっと取材を続けていた大谷さんから説明をしてもらう。
(注 志布志事件とは、03年4月の鹿児島県曽於志布志町(現志布志市)の集落で、県会議員選挙で当選者の陣営が住民11人に現金を配ったとして元県議やその家族、現金を受け取ったとされた集落の住民が、公職選挙法違反(買収)の疑いで逮捕された事件。今年2月23日、鹿児島地裁は、自白の成立過程で脅迫的な取り調べがあったとして被告12人全員に無罪を言い渡した。鹿児島地検は控訴を断念、無罪が確定した。)

大谷 
 私が、この事件に気がついたのは判決の1年前ほどで、遅ればせながら取材を始めた。もっと早く気がついていればと恥じ入るばかりだ。その間、公判の途中で山口さんという方が無罪判決を聞かずに亡くなった。被告の方は、辛酸をなめ尽くすという大変な事件だった。
 新聞はえん罪事件と書いている。えん罪といわれる事件は袴田事件など数多くあるが、この事件はえん罪事件ではない。えん罪事件は事件があって、無実の人を犯人にしてしまうというものだ。志布志の事件は最初から事件がなかったのだ。警察が、こんな事件があると良いな、作ってやってみたいな、と始めた事件なのだ。こんなことをされたら、何時犯罪者に仕立てあげられ刑務所にぶち込まれるか分からない。事件はないがあの一家を犯罪者に仕立てたい、こういう事件を作ろうとやられると、私たちの市民生活は警察に目をつけられたら終わりということになる。
 この事件は、志布志警察署の署長と捜査二課の警部、この二人は同期で捜査二課出身だから何とか選挙違反事件を挙げたいと意気込んでいるところに、酒造会社の人が選挙の挨拶に行って焼酎と1万円を配ったというタレ込みがあった。これを端緒に事件が作られたが、そのほかにビール5ダース、これが後で「踏み字」をやられる饗応に使われたとされた。事件に着手したがこれはとんでもないガセ情報だった。事件はつぶれた。事件は既に警察庁にも報告されていた。これは困った。県警捜査2課のメンツにかけても何とかしないといけない。誰を犯人役に仕立てるか。志布志から車で50分以上走ったところに6戸20人の集落があった。ついこの間までは狩猟で生計を立てていた人たちの集落だ。弁護士を雇うことも知らない。選挙違反がなんたるかも知らない。この人たちだったら犯人に仕立て上げられるだろう。たまたま、その中の1人の親戚が酒造会社に勤めていたことがあるから関係がないわけではない。そもそも、有権者の0.06%しかいないところに、県会議員が4回も集会を開いて191万円の金をぶち込んだことになる。そんなことがあるはずがない。にもかかわらず、片っ端から任意で呼んで締め上げ、中には自殺をはかる人まで出た。女性たちを締め上げて、言葉にできないような陵辱的な調べをした。わざとその隣の調べ室で男性を調べて悲鳴を上げて泣いているのを聞かせて、お前が自供しないからこういうことになると責め立てた。みんな自供している、認めないのはお前一人だ、選挙違反は交通違反みたいなもんだ、さっさとサインしろと責め立てた。
 この事件の捜査では、10人のうち6人が自供している。何もやってもいないのに自供するのかと思うかも知れないが、取材してみてこの状況では仕方がなかっただろうと思うほどのひどい取り調べが行われた。女性を陵辱的な言葉で調べたり、手錠、腰縄の姿を子供に見せたくないと思う親の心理を巧みに利用したり、「踏み字」(家族の名前や伝言を書いた紙を踏ませる)をやらせたり、「この人でなし、孫を踏みつけ、親を踏みつけ」などと締め上げ、自供をさせた。この事件では、警察、検察庁、裁判所がグルだったことが分かる。検察の調書は、ろくに取り調べもできない検察官が丸写しで書く。警察官の調書がそのまま検事の調書になる。その調書が裁判所にいく。裁判所は、信じられないことに検事の抗議で国選弁護人を解任することもやった。それに代わって県警に勧められて選任した弁護士、被告を守る立場の弁護人は「あんたたちやっているんだろう、認めなさい」などと自供を勧めた。こうしたひどい捜査で平穏な暮らしをしていた人たちが4年近くも苦しんだ。拷問に近い調べが行われたこの事件は、日本警察史でも特筆すべき事件だ。この捜査を指揮した署長や警部、「踏み字」をさせた警部補はいまも県警の中をそっくりかえって歩いている。この警察の体質には取材をしていて身体が震えた。

原田
 
 かって、捜査2課長として選挙事件の捜査を山梨県警と熊本県警で指揮した経験がある。北海道の選挙とこうした古い土地柄の選挙は全く違う。多くは、1票いくらの選挙になる。こうしたところでは、違反情報に事欠くことはなかった。
 選挙事件は、すべて警察庁に報告しその指揮を受けて着手する。だから、志布志の事件も逐一警察庁の捜査二課に報告されていたはずだ。
 選挙の取り締まりは、全国の警察が組織をあげて取り組む。署長は、実績がないと肩身の狭い思いをするし、筋のよい大きな事件をやれば表彰もされる。ヨーイドンで取り締まりが始まる。たいした内偵もせずに、投票日明けに一斉に呼び出して、たたき割りで自供を取り、次々に逮捕して行く。私も誤認逮捕した経験もある。相手は、選挙事件の被疑者は善良な普通の人なのだから、否認しているのはおかしいと思わなければならない。どうしてこうした馬鹿げた捜査をするのかと言うと純粋に事件が成り立つかどうかの判断以外の要素が働くからだ。警察のメンツとか、実績とか。警察は、最初から選挙の組織図というデータを持っている。違反情報があるとそれに見合った捜査をしていく。そしてどんどん事件のチャートができあがっていく。捜査というものは、ある程度見込みを立てないと進められないが、志布志の事件は捜査とは呼べないほどにひどい。
 それと捜査2課長というのは、キャリアの若い課長が多く経験も浅いからベテラン捜査員に相手にされないことも多い。ましてや危ない捜査は知らせないこともある。選挙事件と汚職事件は全部警察庁に報告していた。志布志事件も当然着手前に報告していたし、問題が起きた都度報告されていたはずだ。

魚住
 
 志布志の事件も富山の事件も基本的には同じなんだけれども、私は構造の問題を話したい。
(注 富山事件 02年1月と3月に発生した女性暴行と同未遂事件で逮捕された運転手だった男性が、最初は容疑を否認していたが自供、公判でも起訴事実を認めて実刑判決を受け2年1ヶ月間服役した。その後、真犯人が判明しためえん罪であることが明らかになった。富山県警もこの男性の無実を認めた。)
 警察が捜査する。警察のミスをチエックするのは検察庁の役目、検察庁のミスをチエックするのは裁判所ということになっている。その全体を批判するのはメディアだ。それができていない。たまたま、志布志や富山では無罪と分かっただけだ。こんなことは全国でゴマンとある。やっていないのにやりましたと自白すると、裁判所へ言ってもまともに聞いてくれない、弁護士も聞いてくれない。結局認めて、孤立する。服役して人生を無にして行く。たまたまの特殊な例ではない。運がよかったのだ。日本の裁判一審では、99.9%が有罪になる。これは旧ソビエトのスターリンもナチス統治下でも達成できなかった数字だ。日本の裁判制度はすばらしい制度だ。「それでもボクはやっていない」(痴漢事件のえん罪を通じて日本裁判の実態を描いた映画、周防正行監督)という映画をみると良く分かる。周防さんの言う人は天才だと思う。私は30年かかったがあの人はたった2,3年で日本の裁判の本質を見事に描いている。あれを見ると日本の裁判がどれほどひどいかが分かる。映画では、最初に接見した弁護士は、やってもいない人間に「認めなさい」と勧める。それは、罪を認めないと長期間出られないからだ。日本の司法は「人質司法」といわれる。保釈も認められない。大きな事件になると1年も2年も出てこれない。司法制度の基本構造は三角形の構造にある。裁判所、検察庁、被告(弁護士)がそれぞれ独立していることになっている。弁護士は、被告の利益を弁護し、検察官が国を代表して厳しく断罪しようとする。それを裁判官が聞いてどっちが正しいかを判断する。これが基本構造だ。
 それが、裁判所・検察官vs被告・弁護士という構造になっている。検事が反対すれば裁判所は保釈を認めない。結果として、裁判所、検察庁、弁護士が結託して有罪にするシステムになっている。信じられないかも知れないが本当のことだ。何故そんな裁判官ばかりになってしまったのか、分かりますか。最高裁判所事務総局の人事がそうなっているからだ。憲法や刑事訴訟法の精神に忠実な人たち、あるいは「疑わしくは被告人に有利に」という原則を守った判決を出した裁判官は一生地方の裁判所で終わることになる。上ばかりを見る裁判官は東京高裁に集められる。高裁では、地裁で出した1000件に1件の無罪事件の7割がひっくり返され有罪になる。最高裁はこれを追認するだけだ。これが日本の裁判の実態だ。最高裁判所がそうした人事をやっているから、裁判官は上を見た判決をする。それに加えて司法記者たちがボンクラだからだ。この2つを変えない限り日本の裁判はよくならない。あの映画を見てください。

多発する警官犯罪について
司会 市川 
 無罪判決が出るような捜査の実態はあるが、それ以外にも、最近、警官の犯罪が目立っている、警察官の郵便局強盗や山形ではひったくりをやって金を警察署の敷地の雪の中に隠した事件などがあった。

宮崎
 
 今から3年前に、1999年から2003年までの間に警察官の不祥事がどのくらいあるのかを調べたことがある。99年の秋は神奈川県警での不祥事が発覚して、これが全国に広がった。この約5年間に4,000件を超える不祥事があった。最近では、北海道警や福岡県警の裏金問題が話題になった。個別の事件はいろいろとあるだろうが、警察、検察、裁判所、本来これに対抗する弁護士というものがいるが、これらの問題が何故重要なのかを考える必要がある。日本の官僚には沢山あるが、こうした官僚組織は人の身体を拘束するなど強い特権があるからだ。ときには、裁判官であれば死刑の判決を出すこともできる。特別な権限を与えられている役所からだ、我々はこうした問題に注意しなければならないのだ。
 最近は、いろいろと報道されて、警察官の不祥事を聞いても驚かなくなった。驚いても仕方がないと思っていることもあるが、ここで何故そんなことになったのかをもう一度考えてみる必要がある。
 確かに、北海道警の裏金問題は、北海道新聞が1,000回を超える記事を書いて、いろいろと問題を指摘した。それはそれで良い仕事だと思うし意味があった。裏金が動いていた、確かにけしからん、国民の税金を私に使っている、飲み食いした、それがいけないんだ、そうした程度の理屈で終わらせていたのではないか。そうではないのではないか。現実の捜査、国民の生命、財産を守るという警察が、裏金作りをやることによって、付随的にというか、どうしても本来の捜査といったものが甘くなる。そうした観点でみていく必要がある。さらにもっと進んでいるのではないか。
 警察機構の中で、捜査、これには殺人といった強行犯捜査といった捜査、これ自体も今は検挙率が落ちているが、特に本格的な内偵捜査を必要とする捜査で、何か別の計算をしているのではないか。例えば、ポストが上がること、警察には階級があり上がっていく昇任といった制度があるが、この階級が上がる問題と捜査の問題が密接に関係している。つまり、自分たちの利益、個人的欲望あるいは組織的な欲望とに基づくことが多い。これが捜査と密接に結びつき、そうした昇任と捜査との間に密接な関係があるのではないか。国民の生命財産を守るという捜査を一義的にはこなしながら、このことが、国民の生命財産を守るという捜査本来の目的をそれと同等以上に歪めているのではないか。もう一つは、権力の恣意性、自由裁量が認められている権力行使の判断基準がどこにあるのか。そのことが不明確な時代に入っている。堀江問題でもライブドアファイナンスがごまかした金額は数十億くらい、一方で日興コーディアルのごまかしはその10倍くらいの規模だ。社会的な影響もこちらが大きかった。日興に対しては刑事訴追もされず、疑わしきは罰せず。堀江には,上場廃止、2年6ヶ月の実刑だ。堀江はやるが、日興はやらない。その判断基準が不明確になっている。権力の恣意的というか、自由裁量権、これはやるんだ、これはやらないという判断の基準が明確ではない時代になっている。
警察の問題もそうした観点でみていく必要がある。北海道の稲葉事件もそうだ。けん銃の押収ということが警察庁で大きなテーマになってくる。そうすると、末端の現場ではけん銃を押収するためにいろんな取り組みをする。覚せい剤を見逃してやりピストルを出させる。そうした形の捜査になる。ピストルを持ってくれば見逃す。その基準はどこにあるのか。覚せい剤を見逃してピストルを1丁あげる方が国民の生命、身体を守るためには良いと判断したのか。おそらく基準はない。それは、ピストルを押収するという本人の成績という問題と関係がある。このように警察には、昇任の問題、勤務評定の問題が存在する。こうなると客観的な基準ではなく、上司にゴマをすっている人間や上司が求めている捜査をやる人間が出世する。内部の構造と意識の問題か関係している。こうしたことを我々が見なくてはいけないかな、と思っている。

石坂 
 普通に生活している人間からみて、何でこんなに警察官の不祥事があるのか、国民に良く分からない動きがあるのか、そして、何故このところ警察が何でこんなに力をつけてこんなに威張るのか、疑問に思っている。今回、東京からこちらに来るとき、行きも帰りもホテルも皆さんとバラバラだ。どうしてなのか不思議に思ったが、そうか、みんな一緒にいれば一網打尽になってしまう、皆さん工夫しているんだ、と半分冗談だけど納得した。
 鹿児島の志布志の事件を聞いたとき、書いてみようかと思ったが、家族の名前を踏ませたりするのは漫画以上に漫画で、逆にリアリティがないとボツになってしまいそうだ、これでは漫画にもならない。私は、漫画家だから想像力はある。どうして無実の人が何故揃って自供せざるを得ない状況にするのか、考えている。普通だと警察の言っていることが一理あるんではないか、真っさらな人が疑われること等はないんじゃないかと思いがちだが、悪意が介在すれば、どういうことでも起こりうるんだろう、用心してかかる必要があると思う。漫画では、登場人物が全部がいい人では漫画にならない、いやな人物が必ず登場する。いい人は、自分の中に悪意がないから人の悪意に気がつかない。だから負ける。
安部さんもそう悪い人じゃないんでないか、そう考えている。この国がまた戦争することはいくら何でもないだろうとか、憲法を変えて良くなるなら別に変えても良いんじゃないか、と言っている。私は、漫画家的発想をお勧めしている。少し疑ってかかる、鵜呑みにしない、権力側の発言をそれはどういうことなのか自分に引き寄せて考える。これはお金も時間もかからない。しかも実益がある。 
 魚住さんが紹介した「それでもボクはやっていない」は、非常に評価が高い。監督の周防さんは、最初から警察を疑ってかかるとか、警鐘を鳴らすつもりで作ったのではなく、市民の側から淡々と撮って行ったら、ああした背景が象徴的に浮かび上がってきたのではないか。見終わった人に警察への警戒感を抱かせ、警鐘を鳴らする形になるといわれている。
 一方で、警察官が主人公で格好良く、市民の正義の味方で、犯罪を撲滅するといった図式ばかりのドラマや映画が横行している。警官の側に立って、警官を持ち上げる表現に終始しているか、この映画はそれが比較できて良いと思う。

警察と暴力団について
司会 市川 
 前半は警察官の不祥事の話をしてもらったが、もう一つ不祥事として少し気になっていることがある。東京で山口組と住吉会の抗争事件があった。市民に対してはえん罪とかがあったかも知れないが、こと暴力団に対しては、警察なりにちゃんとやってくれているだろうと思うのだが、どうもそうでもないらしい。その点を暴力団の問題に詳しい宮崎さんに、山口組・住吉会の抗争と警視庁はどうなっているのかを聞きたい。

宮崎 
 山口組と一和会の抗争事件(1984年から5年にわたって続いた、主とし兵庫と大阪で起きた大小317件の抗争が発生して多くの死傷者が出た)のときも双方の暴力団の主たる情報源は実は警察だった可能性が強い。
 警察は、暴力団の抗争事件があるとその沈静化に努力しているように見せながら、実際には機能はしていない。今回の抗争事件でも2月7日の昼過ぎに両者で手打ちが行われた。その後に警視庁は一斉に家宅捜索をやっている。暴力団同士が手打ちをやってから警察がガサをやる。手打ちの情報は暴力団から貰ってからガサをやる。抗争の最中にはやらない。ガサの場所は一次団体で、末端の組事務所にはガサはしない。特に抗争の最中には絶対にやらない。やるとそこにはけん銃などがある可能性が高いからだ。自分が撃たれる危険性が高いからだ。とはいえ、市民の安全を守る立場というものを見せなければならない。それで、安全に抗争が終結してから後にガサをやる。
ヤクザの抗争事件も変わった。1987年の大阪戦争と言われる抗争以来、小競り合い程度のものはあったが、組対組の存亡をかけた抗争はなくなった。
 警察とヤクザの関係は、存在としてお互いに持ちつ持たれつでやっているのが実態だ。今回も山口の本家のガサのあと4個の段ボール箱を持ち出している。中身が何だったかは報道もされない。運び出した段ボール箱には多分紙1枚が入っているだけだ。
 警察はヤクザを撲滅するために一生懸命にやっているんだ、というパフォーマンスは上手になったが、例えば板橋の踏切事故で亡くなった交番のお巡りさんのように身を挺して市民を守るという警察官はほとんど見受けることはできない、というのが本当の姿だと私は思う。

警察の捜査能力は低下しているのではないか
司会 市川 
 最近、時効にかかって解決されないという事件が多い。北海道でも西区OL殺人事件が時効になったし、東京の清瀬の警察官刺殺事件も時効になったと伝えられた。迷宮入りの事件も多い。城丸くん事件は起訴されたが無罪になった。静内の牧場主殺人事件もどうなってしまったのか。どんどん凶悪事件が発生しているのだが、解決されていない事件が多いように思う。何故、警察の捜査能力がかなり低下したのか。暴力団になめられているのか。裏金問題の影響はないのか。そのあたりを大谷さんに聞きたい。

大谷
 
 東京の世田谷一家四人殺人事件、八王子スーパーで女子高生がけん銃で惨殺された事件、清瀬の交番の警察官殺人事件、これは警視庁の懸案三大事件だ。警察の捜査能力が低下した要因はさまざまある。それを一つ一つあげているときりがない。警察庁は数字を出したがらないが、ここ10年間で公務執行妨害による市民の逮捕の件数がざっと倍くらいに増えている。我々の時代のようにデモ行進をやったり派手な学生運動で公務執行妨害が増えたのではない。今は、一般市民対警察官の公務執行妨害だ。市民が警察官に不信感をもっている。例えば、沖縄で免許証の提示を求められると、おまえのとこは、インチキ免許証作ってるんだろう、おまえが先に見せろ、とやられている。神奈川県警で覚せい剤事件を隠したときにも公務執行妨害事件が突出して多かった。気の弱い警察官は逃げる。気の強い警察官は取っ組み合いのけんかになる。応援が来て公務執行妨害で逮捕する。
 現場の警察官はもううんざりしている。自分たちは金を貰っていないのに、お前も裏金もらっているだろうと、おちょくられたり、バカにされている。何とかしないといけないのに、霞が関の連中は何も思いつかない。警察官の郵便局強盗が発生したとき、漆間警察庁長官は昨年暮れの定例の記者会見で、不祥事防止のために警察官の自宅を上司に家庭訪問させると言った。これを聞くと現場の警察官がどんなにキャリアに小馬鹿にされているかが分かる。幼稚園や小学校の子供ではあるまいし、幹部が自宅に来て奥さんに、ご主人はサラ金から借金してないか、時間どおり帰って来ているかなど聞くというのだから。大阪あたりでは、職務質問や交通切符を切るときに言われる。こんなことをしていて良いのか、おまえの家に家庭訪問に来る日でないか、とっとと帰った方がいいのではないかなど、と現場の警察官が市民にからかわれている。馬鹿にされれば喧嘩になる。
 基本的なところで警察組織がすでに瓦解し始めている。そういうことが、公務執行妨害の増加や未解決事件の多さに顕著に表れているのではないかと思っている。

何故警察官の自殺が多いのか
司会 市川 
 最近、若い警察官の自殺も多い。これは、同じ土壌なのではないかと思うんですが、このことについて原田さん、この問題にはかなり深い根があるように思いますが。どう思いますか。

原田 
 北海道でも一昨年警察官の自殺がずいぶんあった。全国で10年間で三百数十人が自殺したという数字もある。ただ、多いのか少ないのかは、他の職業の自殺者のデータがないので単純に比較はできない。ところで自衛隊も多いようだ。警察と自衛隊。この二つには共通点がある。階級制度があり、 外部からはよく見えない閉鎖的な体質がある。となるとこのあたりに何か問題がありそうに思う。
もう一つ、若い警察官の話を聞いてみると、私たちの若いころと比べて現場の仕事が面白くなくなっているようだ。私たちの時代は、泥棒を捕まえないやつは「ネズミを捕らない猫」と言われたものだ。24時間勤務中に何とか「いい泥棒」を捕まえたいと考えていた。それと当時は上から件数のことなどあまり言われなかった。交通違反の検挙などはほとんどしなかった。最近連中の話を聞いていると、どうも数字に追われている。いわゆるノルマだ。組織を管理するときに数字は必要だが、それが現場におりて行くと比較的やりやすい仕事をやるようになってしまう。例えば、専らシートベルトを着装していない違反の切符を切る仕事が中心になる。飲酒運転を摘発するのには、検問で100台の車をチエックしても1件検挙できれば良い方だろう。そんなレベルだろう。ところが、シートべルトをしていないという違反は、見ればすぐ分かる。交番から飛び出して行ってすぐ切符が切れる。それでも1件だ。シートベルトをするかどうかは、基本的に運転者自身の問題だ。それで命を落とすのは本人の勝手だ、くらいに私は内心では考えていた。こんな違反は口で注意すればいいのであって、わざわざ交番のお巡りさんが時間をかけて切符を切ることはない。そんな仕事に交番のお巡りさんが力を入れている。それはやり易いからだ。 何か、現場の目線が違うところに行っている。それに加えて、閉鎖性、自分たちの仕事について上に言えないという職場環境がある。自分たちに仕事について上にものが言えない。そこに閉塞感、重くるしい職場環境があって自殺者が多いのではないかと思う。それに、若い人たちにも弱いところがあり、すぐヘナヘナとなってしまう。自分の意見を主張できない。そうしたことも重なっているのではないだろうか。

メディアは権力を監視できるか
司会 市川 
 腐敗してやがて壊れゆく警察官という感じだが、ここで宮崎さんが仕事の関係で中座する。最後になにか。

宮崎 
 仕事の関係でこれで失礼する。この後パネラーの皆さんから問題提案があると思うが、結局僕らに何ができるかになってくるであろう。警察の問題にしても、検察の問題にしても、裁判所の問題にしても、私であれば自分の表現するものでそうした問題に立ち向かって行くしかない。これを専らやっているのがメディアであるはずだが、それが暗澹たる状態になっている。警察が腐敗しているより腐敗している可能性がある。原田さんが立ち上げた「市民の目フォーラム北海道」は必ず大きなネットワークになる。警察の内部にも、どんなに押さえ込んだとしてもこのままで良いのかと気がついている人がいるはずだ。メディアは私たちが尻をたたき、原田さんには警察内部の尻をたたいて欲しい。さしあたりそんなことから始めざるを得ない。(宮崎氏退席)

魚住 
 もう少しメディアの話をしたい。某テレビ局、日曜日のある討論番組、私はこの司会者を尊敬している。ただし、テレビ局は非常に腐敗している。この番組にホリエモンと一緒に出る予定だった。2日前にテレビ局の人が自宅に打ち合わせに来たので「検察庁は、この目で見て知っているが、年間5億円の裏金を作っていながら身内の犯罪を見逃している。それなのにホリエモンの形式犯を摘発するのはおかしい、これを一番言いたい。」と言った。そのうえ生出演ではなく事前録画だという。担当者は「不規則発言以外は削除しません」と言ったが、不規則発言は削除すると言うことだから私は怒鳴りつけた。彼は怖いんですとか、私も会社員ですから、と言っていた。そういう状態なんだ、テレビは。新聞も同じだ。新聞はどうひどいか。裁判員制度の問題でタウンミーティングで「さくら」問題があった。裁判員制度では3年間で40億円の税金が最高裁判所に与えられた。そのうち3年分10億円を電通が請け負った。47都道府県に地方紙連合というのがある。これには道新も入っている。電通はここに依頼して全国各地でタウンミーティングを開いた。この2つは仲間だ。地方紙連合は、任意団体だから事業活性化研究室という受け皿会社にそのうち2割がここに流れる。最高裁は何故こんなシステムでやったのか。  地方紙は、裁判員制度の内容や趣旨を説明するような記事を載せ、その下に5段で最高裁の広告が入る。地方紙はその広告を目当てに上の記事を載せる。しかも、これは広告と断っていない。読者には一般記事と受けとれるような掲載をした。広告と分かったのでは40億円の予算の宣伝効果が少なくなる。だから2つの団体はこれを条件にしている。新聞は儲かるからそれに従っている。これは裁判員制度だけで行われているのではない。他の省庁からも年間100億円くらいの政府広告予算が出ている。それが新聞、雑誌、テレビに流れる。そうして国民を騙している。政府、最高裁、電通、新聞、雑誌、テレビもみんな仲間なんだ。そして、そのうちにどうしてか世論の傾向が変わる。それはこうしたシステムになっているからだ。これだから今の日本はダメなんだ。

司会 市川 
 今日、実はこの場に大谷さんと宮崎さんがいらっしゃるには理由がある。この会場後ろでも販売しているが「警察幹部を逮捕せよ!」という旬報社発行の本がある。この本の中で、道新の裏金問題取材班の2人の記者と大谷さんと宮崎さんが座談会でした発言が書いてある。取材班が、北海道の旭川中央署の裏金問題が発覚した後、議会でどういう道警の工作が行われたのか、その工作が失敗したんだ、と言うことがこの本に書かれている。それに対して道警の元総務部長が、道新と道新記者、出版した旬報社、それに別の本で講談社を相手に、損害賠償、慰謝料を払えと裁判を起こした。それに対して、大谷さんと宮崎さんが、自分たちも書いているのだから俺たちも入ると言って訴訟に参加した。あれは事実無根の捏造だと言われたので大谷さんと宮崎さんは自分たちも関係があると言ってこの裁判の参加することを申し出た。その裁判が今日あった。この裁判に大谷さんと宮崎さんが出した主張書面の中に、北海道新聞に対して北海道警察が、これははっきりと事実なんだが、北海道新聞の「泳がせ捜査失敗記事」、これは、道警の銃器対策課が130キロの覚せい剤を密輸を2回まで見逃し、3回目に銃器を輸入させて逮捕する予定だったが、失敗して130キロの覚せい剤等を道内に目こぼして流入させてしまったのではないか、このことを道新が書いた。この記事に対して、道警は取材源になっている複数の警察官は誰なのか、道警の当時捜査に従事していた捜査員なのか答えろと質問して来た。これは取材源の秘匿というのは最高裁でも認めている記者の権利の侵害だ。それを露骨に要求した。
 警察による平気な人権侵害、マスメディアに対する侵害だ。大谷さんと宮崎さんは、そのことを裁判で明らかにした。この問題について話して欲しい。

大谷 
 取材源は秘匿させない方が良いというひっくり返るような決定を出した裁判官もいたが、結局は最高裁で取材源の秘匿の権利が認められた。我々は、今危ないところに来ている。私も宮崎さんも北海道は幸せだと思っている。北海道新聞という すばらしいメディアがある。だからこそ日本警察が始まって以来という金額を返還させた。ここまで踏み込んだのは初めてのことだ。北の大地にこんなすばらしいメディアがあったことを我々は羨望していた。にもかかわらず今の北海道新聞は何なんだ。私は、私たちの本が「嘘を書いたろう、金を貰ったろう」と二言われたら、相手を殺す権利さえあると思っている。私はそう堅く信じている。私を訴えた人は私に対してそう言っていることと等しいのだ。それを言われれば自分の仕事はすべて消滅する。それを黙っているわけにはいかない。それにもう一つは、北海道新聞を潰してはいけない。道新の姿勢をなんとか元に戻したい。そうでなければあれほど北海道が誇ったメディアは一体どうなるんだ。皆さん「道新よ、元に戻れ」と声を上げて下さい。
司会 市川  北海道新聞は、道警からこうした圧力を受けたということを表に出していない。本来であれば、こんな問題があるんだと先頭を切るのが当然なのだが、逆に「泳がせ捜査失敗記事」では訳のわからない「お詫び記事」を出した。すべて記者が悪いと言う形で、道新自身は責任を取ろうとはしない。ここに新聞倫理綱領がある。読んでみる。
 国民の「知る権利」は民主主義社会を支える普遍の原理である。この権利は言論・表現の自由のもと、高い倫理意識を備え、あらゆる権力から独立したメディアが存在してはじめて保証される。新聞は、そのもっともふさわしい担い手であり続けたい。
 ところが、大谷さんのお話のように、北海道新聞は記者たちがあれだけ頑張ったのに、その記者たちは今はいずこへと言う状態で、かつ、訳の分からない「お詫び記事」を出した。今日の裁判で大谷さんと宮崎さんは、ジャーナリストはこうあってはならない、片や道警、片や道新を相手に裁判をやっているような事件だ。是非、皆さんも裁判を傍聴にも来ていただきたい。「市民の目フォーラム北海道」のホームページにも「道警vs道新」で書いてある。皆さんにも是非読んでいただきたい。
 警察は腐敗し、他方容赦なく牙を向けてくるのが警察の現状ではないか。選挙が終わるとまた共謀罪の成立を目指す動きが出て来るだろう。報道の問題でも、犯罪被害者の名前を実名で発表するかどうかの判断を警察に任せようとする動きもある。最後にパネリストの方にひと言。最初に石坂さんには、こうした世の中の動きについてどう見ているのかをお話いただきたい。

石坂 
 どうせ警察はこれだけ腐敗していたり弱ってるなら、もっと軟弱になっていてくれれば良いのに、こういうことになると何故かむちゃくちゃな権力を持っている。私は戦争体験がありませんが、漫画を書くのでいろんな戦時中の資料を持っている。昔の「治安維持法」これは怖かったろうと思う。ここにいるパネリストなんかしょっ引かれてしまう。しかし、10年前になかった法律ばかりが、この10年間で治安維持法を10とか20とかに解体して細かくしてせっせと作ってきたと考えるとわかり易い。昔なかった有事法、通信傍受法、住基ネット、国旗国歌法、国民保護法、個人情報保護法で全部に縛りをかけている。昔の法律の威力どころではないだろうと思う。これは私の解釈だが、今や戦後でも戦前でもない。今や戦時だと思っている。イラクに兵隊を送った時点でこの国は戦争元年だと思っている。前の戦争も始まりはこのくらいだったと思う。治安維持法だって、国会を通るときにすんなりと通っている。そんなに恐ろしい威力の法律だとは議員の人たちも反対勢力の人たちも自覚がなかったと聞いている。確かに治安維持、響きは良い。法律は独り歩きする。この国はもう新しい戦争を始めた。戦争元年、今や戦時である。角を曲がりきったと考えるといろんなことが符合する。憲法を変える、次に正規軍を持つ国になり、正規軍を国是とする。それに見合った国民を作る必要がある。それに逆らう国民をしょっ引く必要がある。それをやろうとする人は法律を解釈によってどうにでもできる。権力に逆らうとどんなに怖いか。私と辻元清美は友人だが、間近に見ていて可哀想なことになったなあと思った。彼女があのまま議員に残っていたら、まともに反旗を翻していたと思う。有事法は骨抜きにされたはずだ。
 こう考えて来るとここに来て警察がどこにターゲットを絞って張り切ってやろうとしているかがわかりやすい。共謀罪もそうだが、お互いに監視し合う。戦争を始めるとき、どこかの国をやっつけに行くぞ、ではない。危機感を煽り、攻められたらどうする。怖いぞ。お互いに監視する社会を作り、何かあったら通報する社会が作られようとしている。テロ対策と言えば何でもできるのか。小泉総理がイラクに自衛隊を送ってからだ。空港での身体検査が厳しくなり、コインロッカーが使えなくなり、ゴミ箱がなくなり、新幹線のなかをピストルを持った警官がチエックしている。これは異常なことだ。
 我々は、これがどういうことかを自覚していない。こうした監視、管理がこんなに染まっていることに無自覚で、従順でむしろ歓迎しているようなところがある。警察が強くて守ってくれることを感謝している。これは危険なことだ。自分たちはこうした時代の空気を私たち自身が作っていることを自覚すべきだ。そこにも気をつけないといけないことがいっぱいある。

司会 市川 
 タウンミーティングの結果、裁判員制度は平成22年から始まる。既に制度に合わせて法廷もでき上がっている。これは警察、検察だけの問題、司法制度全体に及ぼす影響、魚住さん何か補足することはありますか

魚住 
 裁判制度は、最初は裁判官・検察チームvs被告・弁護士の図式から、今は裁判官・検事・弁護士のグループで被告が孤立する形になっている。その枠に6人の市民を入れる形になることだ。死刑事件の裁判に市民が参加してどんな裁判になるのか。この枠組、人質司法が変わらない限り6人の市民が入っても何の意味がない。日本の裁判員制度は、アメリカの陪審員制度とは全く違う。陪審員制度では裁判官は入らない。12人の市民が有罪か無罪かを決める。無罪が出たら検察側は控訴できない。それで決まりだ。日本では一審で無罪になっても高裁でその7割が逆転される。その高裁には裁判員制度がない。意味がないんだ、要するに裁判に6人のサクラを入れるということだ。裁判官・検察官・弁護士がつるんでやっていたのではまずいから、6人のサクラを入れましょうよ、ということなんだ。陪審員制度とは全く違う。裁判員制度を二審の高裁や最高裁にも設けなさいよ、何故陪審員制度にしないのか、と最高裁に聞いても答えない。裁判の既得権益、権限を失いたくないからだ。だからみんなもいやがっている。裁判官自身もいやがっている。最高裁は導入が決まった以上なんとしてもやらなければならない。そのためには、市民の協力が必要だしマスコミの協力も必要だ。それでプロジェクトをつくり、電通と地方紙とつるんで国民を騙して裁判員制度に国民を参加させようとしている。裁判員制度は、赤紙1枚で国民を戦争に狩り出した徴兵制度と同じだ。だからみんないやなんだ。最高裁が広報すればするほどいやがっている。 人質司法もそうだが、もう一つの問題は、国選弁護人の報酬が7〜8万円では否認事件などは、供述調書を取るだけで消えてしまう。何回も裁判に通う否認事件では足がでる。これでは弁護できない。国選弁護人の報酬の引き上げが必要だ。

大谷 
 志布志事件も富山の事件でもそうだったが、私たちメディアも警察、検察も批判されなければならないが、弁護士は何をしているのか。志布志事件では、逮捕された女性に小学生の子供がいた。集会があったとされる自宅に、わざわざ子供が帰ってくる時間帯に手錠、腰縄姿で連行され現場検証に立ち会わされている。ありもしなかった会合の様子を指さしながら説明させられている。そこにいたるまで、いったい弁護士は何をしていたか。
 しかも、弁護士が、被告と接見するとその内容がすべて刑事に筒抜けになっている。法律を知らない被告たちは、弁護士と接見したら警察にすべて話さなければならないと思い込んでいる。これでは弁護士制度にも問題があるのではないかと疑問が湧いてくる。
 裁判員制度に本当に国民を参加させるなら、高裁や最高裁にも参加させるべきなのだが、
国民の一番の不満は、例えば、公害の問題、行政や国を訴えたときに、今のような裁判をするのはおかしいではないか、という点にある。何故、そういうところに国民を入れないのか。それなのに国民にいきなり凶悪事件の裁判に参加させて、国民のそうした不満へのガス抜きをする。志布志事件でも供述調書に信用性がないと判断したが、去年の7月その調書が証拠採用されたときはどうなるかと心配した。ところが、これは無罪にするための証拠採用だった。裁判官はあまりにも真実性、迫真性に富んでいるので信用性がない、嘘だと判断して無罪判決になった。真実性、迫真性に富んだ供述に疑問を持ったのだ。インチキであることに気がついた。プロの裁判官でも危なく騙されるような調書を6人の市民に見せたら見事に騙されることは間違いない。一番、裁判員制度を喜んでいるのは警察だ。真実性、迫真性に富んだ供述調書を作れば死刑にもできる。
(魚住 被害者を法廷に連れてこいという話にもなっている。)
 警察の取り調べに可視化が必要だ。腰縄、手錠姿で自宅で指さしているところをビデオに撮っておけば嘘をついてもすぐ分かる。少なくとも、裁判員制度は、この取り調べの可視化が担保されるまで待つべきだ。調べ状況を白日の下にさらさせないのは、何か後ろめたいことがあるんだろう。これが認められない限り裁判員制度は認められない、という声を是非上げていただきたい。

司会 市川  
 日本では、警察官の取り調べの可視化の問題は議論されていない。現在議論されているのは、唯一検察庁の調べがその対象になるだけだ。先ほどの大谷さんのお話のように、検事調書は、警察調書の丸写しだから、警察の取り調べが可視化されない限り意味がないことになる。
 警察の問題から司法の問題まで行ってしまいました。時間が来たのでこれで終わらせて貰う。




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19. 3.13(火) 「警察刷新に関する質問書」集約結果の記者会見

 3月13日午前、「市民の目フォーラム北海道」代表の原田宏二と市川守弘弁護士が、北海道庁で『警察刷新に関する質問書』の集約結果を記者会見して報道発表しました。
 今年4月の北海道知事選立候補予定者や道議会各会派へ「道警不正経理問題」等11項目について質問書を送付して回答を求めたものです。
 質問内容や回答結果については、このホームページでも詳細を掲出しています。
 
 記者会見場には、多くのマスメディアが取材に訪れました。
原田代表は、記者会見の席上で統一地方選挙を前に、「3年も経つと(問題は)風化してしまうが、知事、議会がどういう対応をしたか思い出して欲しい」と訴えたほか3月19日、札幌教育文化会館で開催されるシンポジューム「広がる警察の腐敗 裏金から警官犯罪まで」(パネラー大谷昭宏氏ほか)の内容についても説明しました。

 3月14日の朝刊では、「道警不正経理再調査は?」と4段抜きの大見出しで大きく報道した新聞もあり、道警裏金問題への関心の高さを肌で感じた次第です。

                  「市民の目フォーラム北海道」事務局スタッフ 齋藤邦雄




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19. 3.11(日) 講演「市民の目フォーラム北海道」inはこだての開催

アルバムはこちらから

 
3月10日(土)午後6時から函館市大森町の「サンリフレ函館」での開催。
 講師は、市民の目フォーラム北海道の原田宏二代表が「道警の裏金問題から見えてくるもの」と題して1時間30分の講演でした。
 驚いたのは、警察官時代の刑事の大先輩が来場してくれたことです。
 20数年振りのOB同士の再会でしたが、『原田さんや私の姿に共感して、OBとしても警察問題に強い関心を持っている』とのことで、このようなOBとの出会い・声援には、事務局の私も目がウルウルしてしまいました。
 会場には、約50名に市民が集まり、原田代表の講演に熱心に聞き入ってくれ、マスメディアもテレビ局2社、新聞社3社の取材と盛況でした。 

原田代表は、
1 警察の裏金問題とは   
2 警察の裏金システムが生き残ったにはなぜか
3 警察神話は崩壊したか  
4 「市民の目フォーラム北海道」の目指すところ
の4テーマについて、ソフトな語り口で分かり易く話されたほか、締めくくりに事務局からは、
@「市民の目フォーラム北海道」は、平成19年2月10日(原田宏二氏の告発3年目の記念すべき日)に 札幌で設立したものであること。
Aこの会は警察の様々な問題に関心のある幅広い市民が集まり、警察に関する情報や意見を交換し、真に市民のための開かれた警察の実現に取り組んで行こうとする目的を持っていること。
BHPを作り、精力的に情報発信をしていくこと。
などをアッピールしました。

                  「市民の目フォーラム北海道」事務局スタッフ  齋藤邦雄 




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19. 3. 5(月) 
「市民の目フォーラム北海道」が叙勲の推薦再開を要望

 外部から見ると一体と見える警察組織も、内部では警部以上の幹部と警部補以下の現場の警察官とに二分化された実態がある。在職中には、幹部に命じられるままに裏金づくりに従事し、退職後は幹部と一蓮托生で叙勲の途も閉ざされる。在職中も退職後も自由に物言えぬ現場の警察官の悲鳴にも似た声が「市民の目フォーラム北海道」の相談BOXに寄せられた。 平成19年3月5日 北海道警察本部長と警察OBの団体北海道警友会会長に対して在職中に下積みで苦労をした警察職員については、早急に叙勲の推薦を再開するように文書で要望した。 その内容は次の通り。
 
北海道警察本部長宛
警察退職者からの叙勲に関する要望について
 
 私ども「市民の目フォーラム北海道」は、警察の刷新を求めて活動している団体です。
 その活動の一環として、広く市民から警察業務に関する苦情・要望等を受け付けています。
 最近、別紙の通り北海道警察退職者(以下警察OB)から叙勲の推薦の再開を求める声が寄せられています。
 そのため下記の点について北海道警察のお考えをおたずね致します。ご回答は、文書により平成19年3月12日までに同封の返信用封筒でお送りいただくようお願い申し上げます。
 なお、この文書の内容及び北海道警察からのご回答は、要望をいただいた警察OBの方にお知らせするとともに、当フォーラムのホームページで公開することをあらかじめ申し添えます。

                記
1 北海道警察では、平成16年以降現在まで、警察OBを対象とする春秋叙勲(危険業務従事者叙勲を含む。以下同じ)の警察庁への推薦をとりやめているとのことですが
 (1) 事実か
 (2) その理由は何か

2 平成16年12月の北海道警察の不正経理問題に関する北海道監査委員による監査結果では「道警の不正経理が、長年にわたり慣行として組織的に、管理、監督の立場にある者の指示、命令によ り行われていた」と指摘されました。 
 さらに、北海道警察本部長が一連の予算の不適正執行による道及び国に与えた損害の返還について「返還金は、管理、監督の立場にあった警部及び同相当職以上の幹部が拠出する」と関係者に 文書で通知し返還金の拠出を求めました。
(1)これらの事実から、長年わたる不正経理問題の責任の大半は、警部及び同相当職以上の上級幹部にあると判断してよいか
(2)不正経理問題に責任のない警部補及び同相当職以下の職にあった警察OBは、叙勲を受けられない理由はないと判断しても差し支えないか
(3)警部補及び同相当職以下の職にあった警察OBに限って叙勲の推薦を再開する考えはないか。ないとすればその理由は何か
(4)再開するとすれば、いつからか。また、その対象はどの範囲となるのか
(5)再開に当たっては、その事実を公開し道民の理解を求めるべきと考えるか、このことについてどう考えるか

別紙 道警OBからの苦情・要望の内容(要旨)

その1(70歳代の男性)
 私は、退職してから20年になる道警OBです。
 「市民の目フォーラム」で警察に関する苦情を聞いてくれることを知り叙勲のことで電話をしました。
 道警は、一連の裏金問題で職員を大量に処分した直後に表彰制度の内規を改正し、それまでの「退職1年以内に懲戒処分を受けた者は表彰対象から除外する」という項目を削除しました。
 これにより裏金問題で処分された警視正などの階級にあった上級幹部が退職時の表彰を受けました。
 そのとき監察官室は「長年頑張ってきた退職者が表彰されないのはおかしいので内規を改正した」と新聞で述べています。
 私も方面本部の某課の庶務係長を務めました。庶務係長の仕事は、裏金つくりでした。
 その裏金で課長や次席は、麻雀、ゴルフ、飲み食いと好き勝手たなことをやっていました。
ある大きな署の署長は単身赴任でしたが給料は全額奥さんのところへ送金し、自分は裏金で生活していました。
 会計課は、捜査費、旅費などの予算の1割ほどをピンハネして、それを総務課の本部長の裏金に回していました。
 上級幹部は、裏金を自由に使いながら軽い処分で終わり、退職時に表彰まで受けたのです。
 私は、命じられるままに仕方なく裏金つくりをやりましたが、在職中は、そのほとんどを現場で過ごし、仕事も一生懸命にやり道警本部長や警察庁長官からも優秀警察官として表彰もされました。
 叙勲は私にとっては人生最後の表彰です。
 元気なうちに何とか叙勲を受けたいと思っていましたが道警は未だに叙勲の推薦をしてくれません。
 私と同じように叙勲を今か今かと待ち望んでいる道警OBが大勢います。
 警友会の支部長にもこのことを訴えましたが、取り合ってもらえませんでした。
 上級幹部だったOBは永久に叙勲の対象とすべきでないことは当然ですが、私たちのように現場で苦労した警察OBについては、もうそろそろ叙勲の推薦をして欲しいのです。
 どうか助けてください。お願いします。

その2(80歳代の男性)
 私は、退職後70歳代で叙勲を受けました。
警察OBに中には危険業務に携わった同僚が、たくさんいるのに叙勲が未だに復活していないのは可哀想です。
 以前は、71歳か2歳になると叙勲の対象になっていました。
 それが裏金問題が明るみに出てから3年以上になるのに未だに叙勲が復活しないのは問題です。
 道庁の職員は、(平成7年の裏金問題から)3年ほどで復活して叙勲を受けています。
 警察官については、危険業務従事者として叙勲の枠が広がりましたがその途も閉ざされたままです。
 これでは折角の新たな叙勲制度の趣旨が生かされません。このままでは、叙勲の対象者だけが年々増え、順番がどんどん先送りされます。
 叙勲は生きている間にいただくことに意味があります。
 このままでは、現職警察官の士気にも影響します。早く、復活して欲しいものです。
 裏金問題の責任の大半は上級幹部にあり、そうした者たちを叙勲の対象にすることは道民が許さないでしょうが、長年にわたり現場で苦労したし下積みの警察官については、道民にその理由をよく説明すれば納得も得られることでしょう。
 道警OBの中には多くのそうした声がありますが、公式に警友会で話題になったことはありません。
 警察と同じで、警友会の役員の大半が現職時代の方面本部長経験者等の上級幹部が占めている現状では、末端の会員の声は届きません。
 どうか、原田さんの力で叙勲の復活を実現してください。よろしくお願いします。

 北海道警友会会長宛て      
北海道警友会会員からの要望の受付けについて

 最近、貴会会員から叙勲の再開に関する要望が当フォーラムの相談窓口に寄せられています。
 当フォーラムでは、北海道警察本部長に対して、事実関係を確認するとともに善処するよう文書で申し入れを行いました。要望の内容には貴会の運営に関することも含まれていますので、参考まで文書の写しを添付して送ります。




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19. 3. 2(金) 札幌でシンポジウムを開催 3月19日(月) 参加料無料

 「市民の目フォーラム北海道」は、3月19日(月)午後6時から札幌市教育文化会館で東京の「神保町フォーラム」及び「道警不正問題を徹底解明し、信頼回復を求める道民の会」と共催してシンポジウムを開催します。 参加料は無料です。
 シンポジウムのテーマは「広がる警察の腐敗 裏金から警官犯罪まで」パネリストは大谷昭宏、宮崎学、魚住昭、石坂啓の4氏ほか原田宏二です。またコーディネ-ターは市川守弘弁護士が担当します。

★シンポジウムの案内リーフはこちら




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19. 2.25(日) 「市民の目フォーラム北海道」原田代表の函館講演
     
 「市民の目フォーラム北海道」inはこだての開催について

 講演テーマは「道警の裏金問題から見えてくるもの」と題しての開催ですが、参加料は無料です。お知り合いをお誘いの上、是非ご来場下さい。

 日 時:3月10日(土)午後6時から午後8時まで
 場 所:函館市大森町2番14号 「サンリフレ函館」
 講 師:市民の目フォーラム北海道 代表 原田宏二


※ 「市民の目フォーラム北海道」は、平成19年2月10日(原田宏二氏の告発3年目の記念すべき日)に札幌で設立したものです。
 この会は警察の様々な問題に関心のある幅広い市民が集まり、警察に関する情報や意見を交換し、真に市民のための開かれた警察の実現に取り組んで行こうとする目的を持っています。
 HPのURLはhttp://shimin-me.netです。

 また「市民の目フォーラム北海道」では、早速2月20日には北海道知事選候補予定者や道議会各会派に公開質問状を発出したほか、北海道に平成18年度予算の執行状況、平成19年度の予算算出の根拠などについて情報公開請求をしたところです。 
 併せて公安委員長が議会にどの位、出席しているのかも道議会議長に情報公開を求めました。回答内容は、逐一ホームページで公開して行く予定です。
 
 「市民の目フォーラム北海道」事務局スタッフ 齋藤邦雄




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19. 2.10(土)
記念すべき日に記念すべき場所から「市民の目フォーラム北海道」スタート
 
 道警OBの原田宏二氏が、道警の裏金疑惑を記者会見で告発した平成16年2月10日、それから3年目後の同じ日、場所も同じ札幌弁護士会館で「市民の目フォーラム北海道」の設立総会が開かれ、道内外からその趣旨に賛同する十数人が集まった。

 集まったのは、20歳代から60歳代までの男女で、企業などの経営者、ビルのオーナー、作家、ジャーナリスト、労働運動や各種の市民運動のリーダー、警察OB、OL、主婦など幅広い市民。設立総会では、規約が承認され代表には警察OBの原田宏二氏が互選された。その後、約2時間にわたり今後の運動の進め方などについて熱心な情報や意見の交換が行われ、市民が力を合わせて、明るく民主的な警察の実現することを誓った。

 当面は、3月19日午後6時から札幌教育文化会館で東京の「神保町フォーラム」などと共催で、大谷昭宏、宮崎學、魚住昭、石坂啓氏らを招いて「広がる警察の腐敗 裏金から警官犯罪まで」と銘打ったシンポジュームを開催することとしたほか、統一地方選挙前に政党などに対して「警察刷新に関する公開質問」を行うことを決めた。

 設立総会には、ジャーナリストの大谷昭宏氏から「市民の目から見るというすばらしい会の発足、遠く大阪の地からお祝いを申し上げます。今後、この『市民の目フォーラム』が広く、警察監視の網を広げ、市民のための警察実現に実りある活動を展開されることを期待しております。私も今、腐り切った北海道警、日本警察と闘っている立場です。」との祝電が寄せられた。
 このほか、愛媛の「仙波さんを支える会」と神奈川の「警察見張番」からも激励のメッセージが届けられた。






原田代表、記者会見でアピール

 2月10日 原田宏二代表と市川守弘弁護士が、道政記者クラブで記者会見をして「市民の目フォーラム北海道」の発足を発表しました。

 記者会見には、道政クラブ加入各社の記者10人ほどが集まり、TVカメラも2台の取材でした。TV放映の確認はできませんでしたが、札幌で読める新聞4紙で報道されたことが確認しました。朝日新聞は代表の原田宏二の写真入り4段56行で扱いがもっとも大きく、読売、毎日1段のほぼ同じ扱い、地元北海道新聞は見出しを入れて1段27行の扱いでした。

 道民の皆さんからは、午前中だけで早速数件の電話による相談が寄せられました。
 扱いは小さくてもメディアの報道の力はすごいですね。
 道政記者クラブの記者の皆さん、ご協力ありがとうございます。今後もよろしくお願いします。






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