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9.11の思い出を語る米国人「これまでの世界は幕を閉じ、新しい世界が始まったんだ」

BLOGOS編集部
9.11の思い出を語る米国人「これまでの世界は幕を閉じ、新しい世界が始まったんだ」
2001年9月11日、ホコリだらけになって倒壊した世界貿易センタービルから避難する人々(AP/アフロ)

特集・同時多発テロから10年:その5

今回、インタビューしたジョン・キングさんもイギリス人。アイルランド、フランス、スペイン、モロッコ、チュニジア、イスラエルなど多くの国を旅している。

アメリカには5年ほど住んでおり、2001年9月11日はアメリカ国内にいた。現在は、教育に興味を持ち、異文化理解について学んでおり、文化的な違いで起こる壁を打ち破る為にどのように言語が利用できるかについて研究している。【取材・翻訳:清水泰輔(BLOGOS編集部)】

サイレンが泣き叫ぶように鳴り始めた



私がアメリカでどのようにあの日、つまり2001年9月11日を過ごしたのかについて話したい。

始める前に、このような形で私が経験したことを日本の皆様と共有できる機会を与えてくれたことに感謝したい。

2001年9月11日は普段と同じように始まったんだ。私は中央標準時間の6時に起きて仕事に行く準備をしていた。いつも通りに飼い犬のアヌビスが私がエサを与えるのを階段の下で待っていてね。

アヌビスと私は庭のベンチに腰掛けて、朝日を眺めながら朝食を楽しんだんだ。今でも覚えているけど、朝日が本当に綺麗で、雲一つない青空が広がっていた。本当に完璧な一日の始まりだったよ。

アヌビスとちょっとだけ戯れた後に、身支度をして8時に車に乗って家を出たんだ。車の中で聞いたトム・ジョイナーが本当に面白くて、笑顔で一日をスタートすることができた。

樫の大樹の森の近くを運転していた8時15分にラジオが急に州知事からの発表に変わって、同時に異常なサイレンが泣き叫ぶように鳴り始めた。サイレンのテストは毎月、最初の火曜日にテスト放送していたからおかしいなと思った。だって、その日は9月に入って2度目の火曜日だったし、テスト放送には早すぎたしね。その時、確信したんだ"この国で何か酷く悪いことが起こったんだ"ってね。

誰がこんなことを"私たちに"したんだ?



ニュース局は取り乱したように最新の情報を流そうと取り組んでいたよ。政府機関は情報を与えないような発言をして国民を落ち着けようと躍起になっていたと同時に、次第にもっともらしい情報も発表していた。

でも、ジニー(閉じこめられていたランプや瓶から出してくれた人の願い事をかなえる精霊)は既にランプから出て行ってたんだ。何もかも全て遅すぎた。ここから私たちの時間は非現実的な領域に突入する。例えるなら、車で事故を起こしたときとかトラウマになるような事故にあったときって、一瞬が何秒間に、数秒間が数分に、何分間が何時間、数時間が何日にも感じるのと同じだよ。

ようやく職場に着いた。いつもは陽気に挨拶してくれる受付の人は何を言っていいのか分からない様子だったよ。階段を上ってオフィスに着いた。電話は静かで、同僚は皆デスクには付いて無かったよ。

皆、テレビでやってるニュースに釘付けになっていたんだ。衝撃的で、怖くて、信じられないような、怒りに満ちたような、そんな何千もの感情がオフィスにはあったよ。誰がこんなことを"私たちに"したんだ?

社員全員が広場に集まるように指示された



社長が社員全員に一時間以内に社旗が立っている芝生が広がる広場に1時間以内に集まるようにと支持された。それが10時。

この時までには、全ての飛行機は墜落していたよ。目標を達成するしビルに突っ込んだ飛行機、そして乗客の勇敢な行動によって計画を挫き墜落した飛行機。どちらも世界政治というなのチェスボードの上で遊ばれる人質だったとは思わなかったでしょう。

アメリカとカナダの空港は閉鎖され、ブッシュ大統領は指示通りに飛んでいない飛行機は全て撃ち落せとの指令を出した。この頃には既に日本は寝るか寝る準備をするような時間帯でしょうか。それでもあのツインタワーが崩壊したときに発生した煙は暗い影となり、日本、そして世界中を多い尽くしました。

私たちは社旗とアメリカ国旗である星条旗の近くに立ち、半旗を掲げました。風もなく、両方の旗はポールに巻きついていました。まるで、このとんでもない事件を悲しむ母が子供を抱くように。

社長は祈りを捧げ、数分間の黙祷をし、起こった事を冷静に見つめました。今思えば、冷静に見つめようと努力しただけなのかもしれませんね。社長はこの事件についてどう思うか、私の意見を聞きたいと尋ねてきました。

私はこれは冷酷なテロリズムで、この事件はそれぞれに多大な影響を及ぼし、この事件の責任を負わなければならないでしょうと答えた。その答えを聞いた社長は困惑した様子でしたね。私はイギリスがIRA(アイルランド共和軍)との何年、何世紀に渡る争いで傷ついた歴史とこの事件を重ねていました。

会長は会社を閉鎖することに決めた



何故こんなことが起きたんだって再度尋ねられました。私がイギリス人でこの事件の原因を明確に答える魔法でも持っていると思ったのでしょうか?私は社長や同僚数人に好き嫌い関係なく、どのように私たちが繋がっているのかを説明しました。

私は「このテロ事件を起こした犯人たちを考えてみよう。あなたの隣人が金曜日の夜に庭でビールとマリファナ煙草を楽しんでいたとしよう。そのマリファナ煙草はどこから来てると思う?確かにダウンタウンにいる不良からだ。

でも、その不良たちはどこから手に入れてる?そうだね、もっと大きいギャングみたいな組織だね。じゃあ、その組織はどこから手に入れてる?ヨーロッパ、南米、中東のテロリストやマフィアかな?じゃあ自国の兵士を殺す為の銃弾と爆弾はどのように買われていると思う?あなたの隣人がマリファナ煙草を買ったときに支払ったお金で買われているんだ。このようにして私たちは繋がっているんだよ。

その日、会長は会社を閉鎖することに決めた。私は社内に残って"私たちの繋がり"について会長にも話したんだ。彼は私がした話を好まなかったみたいだけどね。

「合衆国の基礎には触れることさえ出来ない」と大統領



その後、夜になった19時30分にジョージ・ブッシュ大統領が国民に「今日、私たち同郷の市民、私たちの生活、私たちの素晴らしき自由が計画的で破壊的なテロ行為の攻撃の的となった。テロ攻撃は我々の最も大きな建物の基礎を揺らすことは出来たが、私たちアメリカ合衆国の基礎には触れることさえ出来ない。

テロ攻撃はツインタワーの鉄を打ち砕いた、しかし我々アメリカ人の決意は傷をつける事など出来ない。そして、この悪しき行為の裏に隠れている者たちの創作は既に始まっている。我々はこのテロ行為を遂行したもの、そしてテロ犯をかくまう者を区別しない」とブッシュ大統領は語った。

議会の委員たちはCNNに「我々はこの攻撃がオサマ・ビン・ラディンとそのテロ組織であるアル・カイダの犯行だと証明する十分な証拠を持っている。」と語った。

このテロ事件をきっかけにこれまでの世界は幕を閉じ、新しい世界が始まったんだ。

ジョン・キングさんへの一問一答



Q1. 9.11の事件はあなたの人生にどのように影響しましたか?

A:この事件は私たちが大海の中の一滴であるってことを実証したと思う。一滴は大したものじゃないけど、それが集まると力があるものになる。私たちは水溜りの一滴になり、それが川を作り、やがて湖になり海になる。でもそれは一滴、一滴が消えて巨大な空洞になることのように簡単なんだ。

Q2. 今、9.11の事件を振り返ってどのように思いますか

本当にゾッとするような事件だったし、普通の生活を送っている人々にとってはとても大きな影響を与えた。でも、それと同時に"死のビジネス"とこの破壊が利益を生み出し、最愛の人の命を奪うことでお金が生まれていることにもゾっとするよ。

Q3. アメリカの中東に対する反撃についてはどう考えますか?

正直に話すと、私は多くの戦争がつまらない目的によって起こっている。アメリカの中東に対する反撃も同様だよ。アフガニスタンは200年近く欧米と戦争状態にあるし、遠い昔まで遡れば日本でいう弥生時代とかその前ぐらいから争っているんだ。

この地域の国民の考え方は欧米とは違うんだ。部族への忠誠と封建主義で成り立っている国家だからね。それらの国家が抱えている豊富な石油を含むあらゆる天然資源を欲しがっているグループがいるってことも周知の事実だよ。

私は若いベドウィン民(アラビア半島を中心とする中東や北アフリカの遊牧民)がヨルダンとサウジ・アラビアで領土の交換について説明してくれたときの言葉を忘れないよ。

彼はこう言ったんだ「サウジアラビア人は石油を持っている。ヨルダン人はいくつかの海岸線を持っている。私の萎びたプラムのように皺が寄った祖父はヨルダン人ベドウィンで、彼は永久に語り継がれるようなことを言ったんだ。

「石油は近い将来に枯渇するだろう。もしかすると息子の時代までかもしれない。でも海岸線は何世代も超えてそこに存在し続けるだろう」ってね。この言葉について現代を生きる私たちは考えないといけないと思うよ。

Q4. この世から戦争、テロなどの争いごとがなくなる未来があると思いますか?

戦争や争いごとが利益を生み続ける限り、そして国家間や個人間で文化的な特色だったり性格の違いを認め合うことが出来なければ、残念だけど戦争はいつまで経っても無くならないだろうね。個人的な意見だけど、集団を支配する人に欠陥があるんだろうね。

特集・同時多発テロから10年


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