米国の繁栄を象徴する超高層ビルが崩壊する映像は世界中に衝撃と戦慄(せんりつ)を与え、人々の記憶に刻まれた。2001年9月11日の米中枢同時テロから10年を迎えたが、テロとの戦いに終わりは見えない。
報復が報復を呼ぶ勝者不在の暴力の連鎖に終止符を打つには、民族や歴史文化、宗教を超え「世界市民」の自覚の下にわれわれが相互理解と連携を深める以外に道はない。国際社会は対立克服へ共に歩むべきだ。
約3千人の命を奪った無差別テロは決して許されない。米国は同時テロ以降、「テロとの戦い」を掲げ、アフガニスタンとイラクを攻撃。死者数は米兵6千人超を含め民間人や武装勢力など計25万人余に上る。この間、アブグレイブ刑務所やグアンタナモ基地での囚人虐待などもあり、米国に対するイスラム社会の憎悪も増した。
オバマ大統領が「苦難の10年間」と呼ぶように、テロとの戦いの代償はあまりにも大きい。米国自身も疲弊し、大きく傷ついた。総額1兆3千億ドル(約100兆円)に上る戦費は財政を圧迫。同時テロに伴う安全対策など米政府の支出総額は約4兆ドル(約307兆円)に達するとの試算もある。
米国の財政赤字は約15兆ドル(約1156兆円)に膨らみ、米国債の格下げや基軸通貨ドルへの信認も揺らぐ。テロとの戦いは財政面からも脅かされている。
テロは重大な犯罪だ。同時に、テロ行為を戦争と位置付け、軍事力行使で他国を戦地にし、罪のない多数の市民を死に至らしめた米国の責任も重大だ。米軍はイラクから年内に完全撤退し、アフガンからも14年末までに撤退するが、治安維持や復興の責務を放棄することがあってはならない。
沖縄に目を転じれば、在沖米軍基地の役割と意義付けは変容した。対テロ戦争では、基地が標的となっても、抑止力には到底なり得ないということだ。テロ警戒を強めた米軍は基地内から、あろうことか県民側に銃口を向けた。風評被害による観光客激減で県経済にも悪影響を与えた。中国や北朝鮮を脅威とみなし、抑止力をふりかざす日米両政府の姿はとても冷静とは思えない。
仮想敵国をつくり一方的な正義を押し付けるだけでは戦争もテロもなくならず、世界の対立と混乱は深まるばかりだ。9・11とその後の10年に人類は深く学び、平和創造への飽くなき挑戦を続けたい。
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