来日した国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のフィリポ・グランディ事務局長は30日、東京都内で毎日新聞の取材に応じ、中東の民主化運動「アラブの春」の中東和平への影響について「パレスチナ難民にも開放的な雰囲気が広がったが、和平交渉が停滞すれば不満がたまり、爆発する危険がある」との懸念を示した。
グランディ事務局長は中東の民主化運動について「エジプトやチュニジアでは良い意味でダイナミックな変化が起き、(パレスチナ)難民も声を上げていこうという雰囲気になった」と述べた。
パレスチナ難民は今春、ヨルダン川西岸を治める穏健派組織ファタハと、ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスの統一政府樹立や、和平交渉の進展を求めてデモを起こした。
だが、ファタハとハマスが4月下旬に統一政府の樹立で合意して以降、大きな進展はない。グランディ事務局長は「『アラブの春』とは対照的に中東和平は停滞したまま。60年以上も故郷に戻れない難民の我慢は限界に達しつつあり、暴力的な事態になる危険がある」と指摘した。【秋山信一】
毎日新聞 2011年8月31日 東京夕刊