注目されていたオバマ大統領のアメリカ景気対策の発表が先ほど行われました。事前に概要だけは漏れていたのですが、改めて発表内容をさっと見た感じの印象を述べたいと思います。

今回のオバマ大統領の景気対策のバックグラウンドですが、アメリカの長期にわたる景気の低迷の中、金融対策として行っていたQE2も終わり、対策を求める声は高まっていました。その中でQE3といった金融対策よりも実体経済に即した対策のほうが国民の生活に直結するということでオバマ大統領の今日の発表に一定の期待がもたれていました。

一方で一部からはねじれ状態のアメリカ議会で大型の歳出を伴うプランは野党、共和党がOKしないだろうというコメントも見られます。

事実、今日発表になった景気対策は実に4500億ドル=35兆円にも上り、日本の震災対策が3000億円程度であることを考えればいかに巨額な計画かお分かりいただけると思います。

その中で主たる計画が社会保障税を6.2%から3.1%へカットするなどの税金対策部分と公共事業支出の増大によるケインズ型の財政刺激対策であります。特に公共事業に関しては学校や橋などのインフラ整備、及び、学校の先生や警官の採用増による雇用対策となっています。

今回のプランに関しては事前に野党、共和党とのすり合わせは行われておらず、今日発表になった項目について今後、野党と詰めていくことになります。オバマ大統領は「政党間論争をしている場合ではなく、今、まさに雇用を立て直し、この危機を乗り越えなくてはいけない」と主張しております。

通常はこの手の発表はホワイトハウスで行われるものの今日は議会の両院合同会議での演説となり、いかに野党を意識したものかお分かりいただけると思います。

では、この発表に対して市場の反応ですがまだ、発表から間もないということで読み込みにくい状況です。金相場はニューヨークの場引けが1オンス1857ドルであったものがオバマ演説の直後のアジア市場で1868ドル程度と小動きであり、内容を十分消化していないようです。

個人的な意見としてはまず、このプランがどの程度実行に移されるか、これが一つの大きな疑問です。日本も同じですが財源確保という問題は当然あるわけで野党共和党や特に茶会党が小さい政府を目指している中でこれだけの歳出増をどう評価し、受け入れていくのか、未知数であるといえましょう。

次にインフラなどへの支出ですが、これは目新しさを欠き、教師や警官の採用増という響きは正直、アイオープナーにはなりません。よって、支出額だけは巨額ですが、市場では案外、ネガティブに捉えられる可能性があります。

1930年代の大不況のとき、その対策として例えばフーバーダムを作るというのはその規模と同時に発表そのものにインパクトがあったのです。それに対してオバマ大統領の今回の演説は金額の規模以外、面白みに欠ける点で期待はずれだったと感じるのは僕だけでしょうか?

正直申し上げましてバーナンキ議長が金融政策の限界を感じている中でどのような経済刺激策があるのか、僕なりに考えていたのですが、これといった妙案は浮かばず、ある意味、オバマ大統領の素晴らしいプランに期待しておりました。正直、この内容で共和党を口説くのは難しいのではないでしょうか。

この2年間のアメリカを見ていますと翼をつけた飛行機が何時まで経っても飛ぼうとしているのに離陸できない、そんな風に見えます。たとえば、先日、アメリカの太陽光パネルの大手が三社立て続けに倒産しました。オバマ政権としては自然エネルギーに対して後押しをしていたはずなのになぜ、中国製のパネルメーカーに負けるような状態まで放置したのかわかりません。

僕が先日のブログでアメリカには世界に競争力を持つ会社が少ないと指摘しているのはこの点なのです。資本力を使った支配は素晴らしいものがありますがものを作る、つまり、雇用を創設できる業種は実に弱いのです。先週の雇用統計でもベライゾンのストライキで数字が伸び悩んだ、という理由は僕からすれば「アメリカの雇用は一企業のストライキで数字がぶれるほど軟弱なのかい?」といいたくなりました。

アメリカはグローバル化を叫んだ結果、自国産業が衰退したという自業自得の状態にあります。ならば、アメリカが勇気を持ってグローバル化の一方通行は一長一短です、と非を認め、自国での産業育成をもう一度やり直さなくてはアメリカの復活は遠いものになると思います。オバマさんが学校を増やし、先生を増やすというのがそういう教育をするつもりであるならば実に結構なことだと思いますが。

ということで今日はこのぐらいにしておきましょう。

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ではまた明日。