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若者優遇はもう終わりにしよう

非国民通信

そこでアメリカの場合を考えてみましょう。アメリカでは、日本とは反対に若い人から解雇されると言われます。どこまで徹底しているかは微妙なところかも知れませんが、JALの場合でも顕著だったように一定の年齢「以上」をリストラ対象にするなど年齢が高い方から切ろうとする日本の慣習とは逆の傾向もまた見られるわけです。

これはなぜかというと、アメリカでは差別的な理由による解雇が厳しく制限されているからです。解雇自由の国であるかのごとく伝えられるアメリカですが、実は差別に関しては日本より格段に厳しく、解雇事由が差別的な要因によるものと認められた場合は解雇もまた不当なものとの判決が下され、巨額の賠償金支払いが待ち受けています。

アメリカは言うまでもなく訴訟大国であり、なんだかんだ言って差別には敏感なお国柄です。このような社会で「差別と疑われそうな」行為は必然的に高いリスクを伴います。ですから、差別を受けやすい人は解雇しづらいのです。一定の年齢以上の人ばかりを狙って解雇しようものなら、当然のように年齢差別との疑いが向けられ、訴訟が待ち受けることになります。

ゆえにアメリカ社会では「差別を受けにくい人」ほど「解雇しやすい人」になるわけです。そして「差別を受けにくい人」というのは若かったり白人であったり男性であったり健常者であったり、要するに就職強者でもあります。「差別を受けにくい人」とは採用に当たっても差別を受ける恐れがない就職強者であり、だからこそ日本の中高年と違って再就職へのハードルも相対的に低く、流動化とやらが成り立つ余地も産まれてくるのです。

もし日本でも本気で流動化云々を推し進めたいのであれば、差別的理由による解雇を厳しく禁じる必要があります。ましてや訴訟への敷居が高い日本である分だけ、公的機関が主体的に取り締まりに当たることも求められるところで、それが嫌なら流動化など最初から期待すべきではありません(まぁ、流動化云々は後付けで解雇規制緩和の方が目的なのかも知れません、雇用側優位の関係を強化することこそが、この十数年来の日本経済における「改革」ですから)。

そもそも日本では労働力が大きく余っているわけで、この状態から無理に「若者へ」仕事を回そうとするとどうしたって無理が出ます。その若者のために「若い内だけ」の仕事を増やしたところで、若者は将来への希望を失うだけです。

ならば発想を転換しましょう。だいたい「将来」に絶望している若者が少なくないとしても、「今」に困窮している若者は必ずしも多くないはずです(参考、若者は遊ばせておくべきだ)。ならば若い人ではなく、若い人を養う親世代の雇用を安定させ、親世代が定年を迎えるくらいの時期まで若者を遊ばせるなり勉強させるなりしておいて、もっと就業開始年齢を遅らせるよう対策を採っても良いのではないでしょうか。就職先は足りていないのですから、20かそこらの子供を就職戦線に駆り立てて競争を激化させる必要はありません。

親世代の仕事を安定させつつ、親が定年を迎える頃合いの元・若者が就職できる環境を整えることも選択肢に含めてみましょう。高卒でも仕事に困らなかったバブル期まで、日本の大学進学率は実に低いものでした。今だって進学率はせいぜい5割で卒業する人となると4割程度ですけれど、ともあれバブル崩壊後の不況が深刻化するに伴って日本の大学進学率は急増したわけです。当然、「社会人」として仕事に就き始める年齢も上がってきました。それでもなお就職難が続くのですから、この雇用情勢に適応すべく、もっと就業開始年齢を高く考えた方が整合性のある社会の未来図が描けるように思います。
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