『週刊朝日』( 9月8日(木)18時21分配信)が、野田首相の「アキレス腱」とのタイトル記事を掲載。これにはビックリ。
以下、掲載します。
民主党代表選で、野田佳彦首相(54)は自らを「どじょう」に例え、泥臭く愚直な政治の重要性を訴えた。重要課題が山積する「どじょう内閣」には、パフォーマンスよりも実務のできる顔ぶれが期待されたが、新大臣の中には、早くも政権の「アキレス腱」になりかねない御仁がいる。新政権の前途には暗雲が垂れ込めている。
トップの個性を反映してか、なんとも地味な顔ぶれが並んだ野田内閣。それなら、実務能力重視かといえば、大きな疑問符がつく。
永田町関係者の間でまずやり玉に挙がったのは、政権の中軸となる財務相と外相に安住淳、玄葉光一郎の両氏が就いたことだった。
「2人ともまだ40代で、担当分野ではこれといった実績がない。素養があるかどうかもよくわかりません」(民主党の中堅議員)
財務と外交といえば国を支える両輪のはずだ。それゆえ、評論家諸氏の評価も手厳しい。
岸内閣以来の歴代政権を見続けてきた政治評論家の森田実氏が、
「重要ポストに軟弱なリーダーを持ってきた『投げやり内閣』で、政策推進力が非常に低い。藤村修官房長官、前田武志国土交通相、鹿野道彦農林水産相の起用に10点ずつを与えても、100点満点で30点しか付けられません」
と苦々しげに語れば、元共同通信記者で政治ジャーナリストの野上忠興氏は、
「内向きの配慮ばかり目立って、政策面では全く期待できない。甲乙丙でいえば丙の内閣だね」
さんざんなのである。
たしかに、今回の人事で、野田首相がもっとも重視したのは、非主流派だった小沢グループに目配りし、党内融和をアピールすることだった。
党の執行部人事では、小沢一郎元代表の盟友である輿石東参院議員会長を幹事長に起用。内閣には、小沢グループから山岡賢次国家公安委員長と一川保夫防衛相が初入閣した。
小沢グループの議員が、含み笑いをしながら話す。
「山岡は『大臣になりたい病』で、小沢さんにずっと入閣を頼み続けてきた。菅内閣の小幅改造のとき、国民新党の亀井静香代表と組んだ菅直人前首相が、山岡を入閣させて小沢さんを取り込もうとしたけど、小沢さんが最後にドタキャンしてご破算になった。山岡はがっくりとうなだれていた。今回の代表選で、山岡はひそかに前原、野田グループの双方に『小沢さんとの仲を取り持つ』と秋波を送った。執念でつかんだ大臣の椅子なんだよ」
こうした“抜擢”人事以上に小沢氏側への配慮が鮮明になったのは、「脱小沢」路線の牽引役だった仙谷由人元官房長官と枝野幸男前官房長官を入閣させなかったことだった。
これまで小沢氏のインタビューを100回以上してきた政治記者の渡辺乾介氏が指摘する。
「まあ『小沢が無罪になったときの言い訳内閣』なんですよね。仙谷、枝野らは、小沢を党員資格停止処分にした菅政権の中心メンバーです。野田首相は来春、小沢が無罪になったときに、できるだけ内閣に責任が降りかからないように配慮したのでしょう」
もっとも、仙谷氏については別の見方もある。民主党のベテラン議員の解説。
「代表選で仙谷は前原を出馬させ、野田のハシゴを外した。野田には仙谷アレルギーが根強く残っている」
野田首相は岡田克也前幹事長には官房長官ポストを打診したが、断られたとされる。
岡田氏はお盆を過ぎたころから幹事長室をせっせと片づけ始め、「残る2法案を成立させて、早く休みたい」と言っていたと、周辺の議員は証言する。
かつて民主党事務局長を務めた政治アナリストの伊藤惇夫氏は、岡田氏の心情を思いやる。
「来年9月の代表選を狙って入閣を固辞したなんて話も出回っていますが、そんな男ではない。けなげなタチだから、幹事長として菅内閣を支えきれなかった責任があると思っているだろうし、小沢グループとの対立構図を作り出した責任も感じている。菅さんのお守りで、ほとほと疲れたのも事実でしょうしね」
閣僚名簿には、代表選で野田氏を支援した論功行賞の顔ぶれも並んだ。
菅グループからは平岡秀夫法相、前原グループからは小宮山洋子厚生労働相ら3人を起用。岡田氏の側近である中川正春文部科学相も初入閣した。
民主党幹部がしみじみとした口調で語る。
「古きよき自民党時代の人事みたいだよなあ。派閥均衡をきちっと守って、適度な緊張関係もはらませる。みんなが任命権者である首相の顔色をうかがわざるを得なくなる構造だ。いいか悪いかは別にして、『民主党の自民党化』が進んだってことじゃないか」
党内融和と並ぶ「どじょう内閣」のもう一つの特徴は、増税へ向かってレールを敷いたことである。
政権交代から2年間ずっと副大臣、大臣として財務省にいた野田首相。財務省の悲願である消費増税に前向きで、今回の代表選でも、復興増税の必要性を訴えた。
安住財務相を不安視する声が噴出しているのは冒頭でご紹介したとおりだが、「財務省の傀儡」とささやかれる野田首相にとっては、実際は誰でもよかったのかもしれない。前出の野上氏がこう指摘する。
「安住さんは経済・財政分野にうとく、国会対策委員長でも大した成果を上げられなかった。だけど野田首相にとっては、そんなことは問題じゃない。首相と財務省の勝栄二郎事務次官による、増税のための『勝・野田内閣』なんですから。誰が大臣になっても、勝次官が裏で振り付けを考えて、増税シフトを組んでいくのでしょう」
財務省の超強力バックアップがあってこその安住財務相、なのである。
以下、掲載します。
民主党代表選で、野田佳彦首相(54)は自らを「どじょう」に例え、泥臭く愚直な政治の重要性を訴えた。重要課題が山積する「どじょう内閣」には、パフォーマンスよりも実務のできる顔ぶれが期待されたが、新大臣の中には、早くも政権の「アキレス腱」になりかねない御仁がいる。新政権の前途には暗雲が垂れ込めている。
トップの個性を反映してか、なんとも地味な顔ぶれが並んだ野田内閣。それなら、実務能力重視かといえば、大きな疑問符がつく。
永田町関係者の間でまずやり玉に挙がったのは、政権の中軸となる財務相と外相に安住淳、玄葉光一郎の両氏が就いたことだった。
「2人ともまだ40代で、担当分野ではこれといった実績がない。素養があるかどうかもよくわかりません」(民主党の中堅議員)
財務と外交といえば国を支える両輪のはずだ。それゆえ、評論家諸氏の評価も手厳しい。
岸内閣以来の歴代政権を見続けてきた政治評論家の森田実氏が、
「重要ポストに軟弱なリーダーを持ってきた『投げやり内閣』で、政策推進力が非常に低い。藤村修官房長官、前田武志国土交通相、鹿野道彦農林水産相の起用に10点ずつを与えても、100点満点で30点しか付けられません」
と苦々しげに語れば、元共同通信記者で政治ジャーナリストの野上忠興氏は、
「内向きの配慮ばかり目立って、政策面では全く期待できない。甲乙丙でいえば丙の内閣だね」
さんざんなのである。
たしかに、今回の人事で、野田首相がもっとも重視したのは、非主流派だった小沢グループに目配りし、党内融和をアピールすることだった。
党の執行部人事では、小沢一郎元代表の盟友である輿石東参院議員会長を幹事長に起用。内閣には、小沢グループから山岡賢次国家公安委員長と一川保夫防衛相が初入閣した。
小沢グループの議員が、含み笑いをしながら話す。
「山岡は『大臣になりたい病』で、小沢さんにずっと入閣を頼み続けてきた。菅内閣の小幅改造のとき、国民新党の亀井静香代表と組んだ菅直人前首相が、山岡を入閣させて小沢さんを取り込もうとしたけど、小沢さんが最後にドタキャンしてご破算になった。山岡はがっくりとうなだれていた。今回の代表選で、山岡はひそかに前原、野田グループの双方に『小沢さんとの仲を取り持つ』と秋波を送った。執念でつかんだ大臣の椅子なんだよ」
こうした“抜擢”人事以上に小沢氏側への配慮が鮮明になったのは、「脱小沢」路線の牽引役だった仙谷由人元官房長官と枝野幸男前官房長官を入閣させなかったことだった。
これまで小沢氏のインタビューを100回以上してきた政治記者の渡辺乾介氏が指摘する。
「まあ『小沢が無罪になったときの言い訳内閣』なんですよね。仙谷、枝野らは、小沢を党員資格停止処分にした菅政権の中心メンバーです。野田首相は来春、小沢が無罪になったときに、できるだけ内閣に責任が降りかからないように配慮したのでしょう」
もっとも、仙谷氏については別の見方もある。民主党のベテラン議員の解説。
「代表選で仙谷は前原を出馬させ、野田のハシゴを外した。野田には仙谷アレルギーが根強く残っている」
野田首相は岡田克也前幹事長には官房長官ポストを打診したが、断られたとされる。
岡田氏はお盆を過ぎたころから幹事長室をせっせと片づけ始め、「残る2法案を成立させて、早く休みたい」と言っていたと、周辺の議員は証言する。
かつて民主党事務局長を務めた政治アナリストの伊藤惇夫氏は、岡田氏の心情を思いやる。
「来年9月の代表選を狙って入閣を固辞したなんて話も出回っていますが、そんな男ではない。けなげなタチだから、幹事長として菅内閣を支えきれなかった責任があると思っているだろうし、小沢グループとの対立構図を作り出した責任も感じている。菅さんのお守りで、ほとほと疲れたのも事実でしょうしね」
閣僚名簿には、代表選で野田氏を支援した論功行賞の顔ぶれも並んだ。
菅グループからは平岡秀夫法相、前原グループからは小宮山洋子厚生労働相ら3人を起用。岡田氏の側近である中川正春文部科学相も初入閣した。
民主党幹部がしみじみとした口調で語る。
「古きよき自民党時代の人事みたいだよなあ。派閥均衡をきちっと守って、適度な緊張関係もはらませる。みんなが任命権者である首相の顔色をうかがわざるを得なくなる構造だ。いいか悪いかは別にして、『民主党の自民党化』が進んだってことじゃないか」
党内融和と並ぶ「どじょう内閣」のもう一つの特徴は、増税へ向かってレールを敷いたことである。
政権交代から2年間ずっと副大臣、大臣として財務省にいた野田首相。財務省の悲願である消費増税に前向きで、今回の代表選でも、復興増税の必要性を訴えた。
安住財務相を不安視する声が噴出しているのは冒頭でご紹介したとおりだが、「財務省の傀儡」とささやかれる野田首相にとっては、実際は誰でもよかったのかもしれない。前出の野上氏がこう指摘する。
「安住さんは経済・財政分野にうとく、国会対策委員長でも大した成果を上げられなかった。だけど野田首相にとっては、そんなことは問題じゃない。首相と財務省の勝栄二郎事務次官による、増税のための『勝・野田内閣』なんですから。誰が大臣になっても、勝次官が裏で振り付けを考えて、増税シフトを組んでいくのでしょう」
財務省の超強力バックアップがあってこその安住財務相、なのである。
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